【特集】Life with Tattoo Vol.1|サカヨリトモヒコ(カルチャー&タトゥーマガジン『SUMI』編集)インタビュー
タトゥーはファッションの一つとして世界的に親しまれるものであり、また同時にその人の感情やライフスタイル、信念を表現する方法の一つとして世界各地でカルチャーとして根付いてきた。
しかしここ日本では、長い間タトゥーに対して冷たい視線が向けられてきた。主にアウトローを象徴するものとして、入浴施設の利用を制限され、タトゥーがある芸能人やアーティストはマスメディアに姿を現す際にはタトゥーを隠すことが慣例となる。ある自治体が、海外から訪れた観光客にタトゥーが入っていることを想定し、入浴施設を利用する際に「みなさんと銭湯に入れて嬉しいです」と記されたシールを配布するといった、それ自体がブラックジョークのような試みを大真面目に行ったこともあった。
先日タトゥーの彫り師が医師免許を取得していないという理由から摘発された一件の裁判が、弁護側の尽力により無罪という形で幕引きを迎えたばかりである。このような理不尽がつきものであったタトゥーを巡る状況は、若い世代を中心とする動きによって徐々に、そしてようやくポジティブなものとして受け入れられるようになってきた。お気に入りのアーティストがタトゥーを入れていたり、あるいは自分でもタトゥーを入れた経験がある方も増えてきたはずだが、その一方、タトゥーを入れることに興味はあるものの、その一歩を踏み出せない方も、まだ多いだろう。
今回FNMNLでは、タトゥーへの理解を深め、より私たちの社会にとって身近に捉えるための特集をスタート。様々な形でタトゥーに関わる人々を通して、クールなファッションや自己表現として存在しながら、同時に社会の奇妙な歪みの煽りを受けてきたこの文化について改めて考えるきっかけとなれば何よりである。
第一回はインデペンデントなカルチャー&タトゥーマガジン『SUMI』の編集を手がけるサカヨリトモヒコに話を聞いた。『SUMI』は「タトゥーの有無に関わらず楽しめるカルチャーマガジン」として、2019年の創刊以来、これまでに全3号を発売してきた。WILYWNKA、Jin Dogg、DOGMA、戦慄かなのといったアーティストや伝統的な文化に携わる職人など、身体にタトゥーを入れながらカルチャーを作り上げる人々へのインタビューから、大のラーメン好きとして知られるYENTOWNのJNKMNをフィーチャーした連載『RAHに感謝』、Black Brain Clothingを手がけるILLNESSによる人生相談連載、また銭湯のレビューなど、その内容は多岐に渡る。
そんな同誌の編集を手がけるサカヨリの、タトゥーをあくまでもカルチャーの中で当たり前に存在し、社会と共存する存在として捉えるスタンスが窺えるインタビューとなっている。
取材・構成:山本輝洋
撮影:西村満
- 今回はタトゥーをテーマとした特集の一環ということでお話を伺いたいのですが、まず、タトゥーに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
サカヨリトモヒコ(以下、サカヨリ) - タトゥー自体を知ったのは高校の頃に、自分が好きなアーティストが入れているのを見て興味を持ったのが最初ですね。BLANKEY JET CITYとか。茨城の田舎に住んでいたので身近に入れている人は居なくて、東京に来るまでに身近に入れている人を見たことがなくて。あと、『BURST』って雑誌が昔あって、結構タトゥーを取り扱っていて。僕が高校の頃はまだ姉妹誌の『TATTOO BURST』も無くて、本誌の方が好きでよく読んでいましたね。ど田舎で「いいな」とか思っていたんですけど。割と『BURST』を読み始めてから「自分で入れてもいいんじゃないかな」って気持ちにはなっていましたね。
- ご自身で実際に初めてタトゥーを入れたのはいつ頃だったのでしょうか?
サカヨリ - 18か19ぐらいですね。上京してしばらくして入れたって感じでした。
- 地元にタトゥーを入れている人はあまり居なかったとのことですが、東京に来てみてタトゥーがより一般的な物になっているような実感はありましたか?
サカヨリ - 多少はありましたね。でも、やっぱり今ほどじゃなくて。僕は41だから上京したのはもう20年以上前なので。ガーって入れているのは一般の人というよりアーティストだったり、特別な感じの人というイメージ。もちろんパンクスとかは入れていたと思うんですけど、そこら辺の兄ちゃんまで入れるようになったのは割と最近かなって思いますね。
- 初めてタトゥーを入れるにあたって迷いなどはありましたか?それとも、すぐに入れる決心がついたというような感じだったのでしょうか。
サカヨリ - そうですね、割となんとなく。それこそ雑誌とかにあった彫り師さんの広告を見て、自分の住んでいるところから近い場所にあったので電話してみて。
- 最初に入れたタトゥーはどんなものですか?
サカヨリ - 最初は胸のあたりに蝶の柄を入れましたね。ガーリーなものを入れました(笑)。
- 蝶の柄にしたのは、何か理由があるんですか?
サカヨリ - 特に意味は無いですね。ただなんとなく、個人的な趣味ですけどスタンダードなモチーフや絵柄が好きで。腕に入っている馬蹄やサソリとか、薔薇とかハートとか、割とトラディショナルな、アメトラでは一般的な図柄で。蝶も割と良く見るじゃないですか。そう言う感じですね。
- それでは、タトゥーを入れる前と後の心境の変化のような物も特に無かった?
サカヨリ - 無かったですね。でも、始めはそんなにいっぱい入れるつもりは無かったので、一個入れたら「もうちょっとこの辺にあった方がいいんじゃないか」っていう風にどんどん増えていきました。
- 一つ入れると色々なところに入れたくなるというのは、結構多くの方が言うことですよね。
サカヨリ - そうなんですよね。バランスを取っていくとそうなってしまうこともあって。
- 『SUMI』について伺いたいのですが、ご自身で雑誌を創刊するに至るまでの経緯を教えていただけますか?
サカヨリ - 学校を出た後就職したのが『BURST』を出していたコアマガジンっていう出版社だったんですよ。僕は『BURST』の編集部ではなくて、実話誌やエロ本を作っていて。そこに就職して雑誌編集を2、3年やったんですよ。その後に転職して、雑誌のデザイナーになって。それからデザイナーを15年ぐらいやって、去年ぐらいに「何か作りたいな」って思った時に、自分に作れる物といえば雑誌かなって。デザイナーなので編集の記憶もだいぶ古いものですが、デザイナーの仕事も編集者と被る部分があって、雑誌作りは20年ぐらいやって来ていることでもあるので。始めはもっと小規模なZINEのようなものを作ろうとしていたんですよ。今もZINEみたいなサイズではあるんですけど、ZINEって凄く書きたいものや伝えたいことがある人が凄い熱量で作るようなイメージがあるんですけど、僕はそんなにいっぱい書きたいことが特に無いので。音楽も好きだしファッションも好きですけど、普通に好きなだけなので評論みたいなものを書いたりってことは考えてなくて。そしたら雑誌みたいな、もう少しライトなイメージのものが良いんじゃないかと思ったんです。タトゥーの定期媒体ってものは今無くなっていて、タトゥーをテーマにした雑誌が一応あると良いかなっていうところがあって。タトゥー雑誌があった頃よりも今は状況が変わっていると思うし、タトゥー自体も、もう少し身近なものになっているんじゃないか、っていうこともありますね。まずタトゥーの何かを作りたい、というのではなく、先に雑誌を作りたいと思ってから中身を決めたって感じですね。
- 『SUMI』におけるタトゥーとの距離感って、タトゥーがメインというよりは誌面で取り上げられているカルチャーと当たり前に同居しているものとして取り上げているような印象があります。それもサカヨリさんご自身の実感から来るものなのでしょうか?
サカヨリ - そうですね。それもあるし、「カルチャー&タトゥーマガジン」って書いてるんですけど、「タトゥー&カルチャー」ではなく「カルチャー&タトゥー」という順番にしていて。今はインタビューの中でタトゥーの話も聞くようにしているんですが、1号目はタトゥーの話もそんなにしていなくて。バーバーの取材をした時に、普通に理容師さんの腕に入っているとか、あくまでバーバーが主役で、タトゥーは普通に入っているものとして。そういう形にしたかったので、タトゥーは影の主役じゃないけど、タトゥーだけを前面に押し出したような感じには作っていないんです。僕自身は、タトゥーって物はもっと身近な感じになっているのかなと思っているんですが、僕の場合は自分が入れてるから、ちょっとバイアスかかってるのかなと。僕から見える自然さ、ぐらいに作っている感じですね。だから一般の人から見たら「うわ、いっぱいタトゥー入ってる!」って思うかもしれない(笑)。でも、それぐらいタトゥーを自然に扱いたいと思っていますね。
- だからこそタトゥーが入っていなかったり、入れようという気持ちの無い人が読んでも面白い作りにはなっていますよね。
サカヨリ - そうなればいいなと思ってますね。だから銭湯も取り上げるし、タトゥーが入っていない人が入っている人の音楽を聴くのも、それが普通なわけだし。床屋さんに髪を切りに行くとか、銭湯に行くとか、そんな感じに読んでもらえたらと思いますね。
- 1号目から最新号の3号目に至るまで毎回銭湯が取り上げられていますよね。タトゥーと入浴施設に関しては議論が起こる機会も多いですが、これはどのような理由で取り上げているのでしょうか?
サカヨリ - 健康ランドやプールのような場所はタトゥーが入っていたら入れないんですが、銭湯はタトゥーは入っていても大丈夫なんです。肌を出して行ける唯一の娯楽施設というか。もちろん『SUMI』に登場した銭湯は入っていてもいなくてもどちらでも、という感じなんですが、場所によっては歓迎している訳じゃないけどOK、というテンションの銭湯さんもいて。そればかりは仕方ないですけどね。でも、一応OKな場所、という意味で取り上げています。僕自身も銭湯は結構行くので、自分でなんとなく「ここにしようかな」という場所があったらまず下見で風呂入りに行って、良い感じだったら後日改めて申し込むという形にしていて。見栄えが良いから取り上げるんじゃなくて、設備として良いところを載せたいなと思っていますね。
- 銭湯についてのページは、設備やお風呂の温度といった内容から実際に入った時の感覚まで、かなり詳細かつ丁寧なレビューがなされていますね。
サカヨリ - ありがとうございます。でも、1号目は僕が書いたんですけど、僕の友達で凄く銭湯が好きな人がそれを読んで、「もうちょっとあそこの設備を書いて欲しかった」みたいなことを言って来て(笑)。だから「じゃあ君書いてくれない?」って言って、2号目と3号目はその人が書いているんです。せっかく人に書いてもらうんだからいっぱい書いてもらおうかなと思って、ちょっと分量を増やしたりして(笑)。
- 銭湯が好きな方は強い情熱を持っていることが多いですよね。
サカヨリ - 「あそこはアメニティが充実してるから、そこに触れた方が良かったんじゃないか」とか言ってくるんです(笑)。だから「あなたが書いてください」って感じで頼みました。
- JNKMNさんのラーメンの連載も第一号から続いていますね。こちらはどのような経緯で実現したのでしょうか?
サカヨリ - JNKMNさんのインスタはずっと注目していて。メインのアカウントと、ラーメンのアカウントがあるじゃないですか。そっちの方をヤバいなと思っていたので、この一冊の中で一番最初に思いついたのがあのページで。『RAHに感謝』ってハッシュタグをいつも付けてるから、『RAHに感謝』ってページでラーメンと、JNKMNさんの手元が映っている画がパッと浮かんで、面白いなと。JNKMNさんって手だけで誰か分かるじゃないですか。ラッパーの方は結構特徴的なタトゥーを手元に入れていて、ANARCHYさんだったら手錠とか。手だけで分かるってやっぱり凄いことなので、これは毎号続けるぞって気持ちでいます。
- ちなみに、サカヨリさんご自身が今までに取り上げた中で特に好きなラーメン屋さんや銭湯はどこになりますか?
サカヨリ - どれも美味いんですよね。1号目の伊藤さんは取材のために初めて行ったんですが、煮干しが凄く効いてて。たまたまなんですが、今住んでる清瀬ってところに凄く煮干しが効いたラーメン屋さんがあって、「伊藤を思い出すな」と思って検索したら店主が伊藤が好きで作ったお店だったらしいです(笑)MEN YARD FIGHTさんはインパクトが凄かったですね。麺が固くて太くて、インパクトを感じました。銭湯もこれっていうのは決められなくて、全部おすすめなんです。どれも機会があれば行って欲しいな、という気持ちですね。
- 取材対象となっている人の選び方というか、話を聞きたいと思うアーティストの方に何らかの基準や、共通する部分などはありますか?
サカヨリ - これは個人的な好みですね(笑)ルックスだけで言えばタトゥーが入っているカッコいい人は沢山いますけど、僕が全然聴かない音楽だったら取り上げるのは......媒体がもう少し大きくなったりした時にニューカマーを取り上げたり、人気だから取り上げるのはアリだと思うんですけど、現状このサイズでやるのであれば、僕が興味が向いたものについて作って、しばらく様子を見ようかなというところがありまして。
- いずれもご自身が普段から聴かれるアーティストということでしょうか?
サカヨリ - そうですね。YENTOWNはずっと凄く好きだし、バーバーは2、3号でも取り上げたかったけど上手くいかなかったので取り上げていないですが、僕もバーバーの髪型が好きなので。自分の好きなものを並べてるって感じですよね。2号目のぼく脳さんは、Twitterを始めた10年前ぐらいから、なんとなく面白いなと思ってずっと見ていたんです。そしたらここ2、3年でタトゥーを入れたので、タイミングがちょうど合った感じです。ILLNESSさんもタトゥーをどこかに出したりはしていないけど、入っているのは知っていて。
- ILLNESSさんの連載も、毎回の切れ味がとても印象的ですね。
サカヨリ - それもインスタのストーリーを見ていて思いついたんです。ILLNESSさんはよくストーリーで「何か質問ありますか?」ってコーナーをやっていて、そこに人生相談が寄せられるんですけど、結構バッサリ返してたんですよね。「タトゥー入れようと思っているんですが絵柄に迷っています」って質問には「知らねえ。じゃあウンコの絵でも入れろ」って返したり(笑)しょうもない悩みはバッサリ切るんですけど、結構優しいんですよね。「こんなこと言われた」って傷つく人もいないことは無いそうなんですが、ちゃんと読めばそうやって突き放された理由も絶対分かると思うし。そこで人生相談っていうトピックを思いついて。彼は凄く読書もするので、そこをくっつけて「悩みに効く本を紹介する」っていうのをパッと思いついたんです。正直断られるんじゃないかと思ったんですけど、割と快諾してくれて。基本はどの方も「断られるんじゃないか」って気持ちでお願いしてるんですけどね(笑)。何の伝手も無く、パッとお願いしているだけですからね。
- いずれも、あくまで自分が好きなものを自然に詰めていく形で一貫して作っているということですか?
サカヨリ - そうですね、後はバランスを見て......。3号目はラッパーさんとかアーティスト寄りになっていて、それは悪いことではないんですけど、もう少し職人さん的な人を入れたかったってところもあるんですよね。床屋さんですとか、色んな職業の人がいた方がコンセプトとしての「身近」って部分が強調されると思う。やっぱりアーティストって少し特殊な存在じゃないですか。一般の僕らからしたらタトゥーを入れてもOKな感じがしちゃうし。だから床屋さんに入ってるとか、その方が身近に感じられると思って。
- 2号にもタトゥーが入っている盆栽作家の濱本さんという職人の方が登場しますね。
サカヨリ - 見た目的にもタトゥーが好きなのが分かる感じで。独立するまで師匠にバレたりはしていなかったらしいです。長袖で過ごしていたみたいで。
- タトゥーが入っているアーティストの方や、入っていないイメージのある仕事をしていながらタトゥーを入れている方はどのようにして見つけているんですか?
サカヨリ - いやー、むしろどうやって見つけようかなって......(笑)。実はそんなに居ないですからね。地道にInstagramで探すことが多いですね。今回もペンキを使って看板を塗る職人の方にお願いしようと思ったんですが、職人さんはシャイな方が多く、「インタビューや撮影はちょっと苦手なので......」って断られちゃったりして。
- 3号目になると紙の種類や誌面の構成も変化していますね。
サカヨリ - これは厚さが変わったので、ページ数によって仕様変更を余儀なくされたと言いますか。1号目と2号目は中綴じっていう、真ん中をホチキスで留めるタイプなんですが、あまり分厚いと出来ないんですね。本当は中綴じで行きたかったんですが、あまり値段も変わらなかったのでこっちにして。この表紙のPP加工は、1号目も実はPPを貼っていて。でもマットPPなのでツヤ消しをしていて、3号目はグロスPPなのでツヤがあるんです。ただ個人的にはサラサラしたマットPPが好きなので、よりサラサラな上質紙にしようとしたら、ちょっとイメージと違って(笑)だからPPを貼ることにして、今回は表紙も男性だし、色々変えてみようと。これも全部ノリですね。
- 実際に持ってみると手触りが良かったり、誌面の構成にもこだわりが感じられるんですが、サカヨリさんが『SUMI』を作るにあたって影響を受けた雑誌などはあるんでしょうか?
サカヨリ - 絶対にあると思うんですが、これと言って、という物は無いですね。ずっと仕事で雑誌を作っていますし、自分が関わっていない雑誌でも資料として凄く沢山買うので。少しずつ何かの影響を受けていると思います。
- 例えば『BURST』などはタトゥーを取り上げる上で、ある種アウトロー的な世界とセットであったりとか、サブカルチャーとしてアプローチしていた感じですよね。でも『SUMI』におけるタトゥーの扱い方はとても今っぽい印象を受けたんですが、そこは意識されたところですか?
サカヨリ - 実際タトゥーが日陰者だったりアウトローだったり、そういう特別な人だけのものじゃなくなっているという点があると思います。今は普通の人でもちょっと入れてたりするじゃないですか。
- 3号まで出してみた上で、読者からの反応や手応えのようなものは感じていますか?
サカヨリ - ちょっとずつ上がっているんです。認知度が増えているとは思わないですけど、なんとなく手応えは少しずつ感じられています。登場してくれる方がSNSで告知してくれたり、それ頼みって訳じゃないですけど。書店でも置いていただいてはいるんですが、ネットの僕のページで売れるのが殆どなので。手応えはそこそこですかね。でも、雑誌名が凄くエゴサーチし辛くて、そこは諦めてるんですよね(笑)。「SUMI」で検索しても別のアカウントが出て来ちゃうし、「SUMI タトゥー」まで入れちゃうと凄く絞られちゃって、自分のツイートが現れちゃったりして。
- 「今後、もっとこういう人に読んでもらいたい」というようなイメージはありますか?
サカヨリ - そうですね、僕がおじさんってこともありますけど、どちらかと言えば若い人が読んでくれてる感じがして。もう少し職人さんを出したりして、幅広い年齢層の方に読んでもらいたいですね。若い人には今まで通り読んで頂いて、もう少し読み物みたいな部分も増やして、年齢的にしっかりした読み物が読みたいって人にとっても読み応えがあるようなページを作ったりとか、そういうことはしてみたいですね。
- 言える範囲で、今後やってみたい企画などはありますか?
サカヨリ - 今は......無いですね(笑)。でもこの前JNKMNさんとラーメン屋さんに行った時に、ゲストを読んで特別な回をやっても良いんじゃないかって話をして。そうなると他のページでも食事をコッソリ混ぜてみるとか。雑誌は結構「特集」という形でやるじゃないですか。「台湾」だったらずっと台湾のトピックを扱うとか。一本特集を作っても良いのかな、と思ってますね。 やっていることは今までと変わらなくても、テーマに沿ってそれぞれの取材を進めて、一冊通してテーマに沿った内容にするとか。そういうことは次の号でやっても良いかなと思ってますね。
- 今回の特集を実施するにあたって、タトゥーに興味はあるけれど、実際に入れるところまでは踏み切れない人に届けたい、という部分があるんですが、そのような方にアドバイスや伝えたいことなどはありますか?
サカヨリ - イメージなんですけど、「入れようかな」って本気で思ったら色々気にしないで入れちゃうと思うんですよね。僕自身はあまり何も考えてなかったし。でも身近な人が「入れようかな」って言って来たら、「いや、あんまり入れない方が良いんじゃないかな......」って言うかもしれないです(笑)。でも、僕自身は特に困ったことも無ければ、逆に良かったことも無いですからね。単純に「カッコいいの入ったな」っていう自己満足なので。特に良いことは無いですしね。別にモテないし。むしろマイナスの方が大きいのかもしれない。だから、これから入れたいという人はリスクを一通り確認した上で、それでも入れたいと思ったら入れれば良いと思いますね。僕は2年前まで会社員だったんですけど、長袖で行ってました。でもバレなかったですね。健康診断とかも個別で行くから、ササっと行ってきたり。後は保険かな。一昨年ぐらいに生命保険に入ったんですけど、その時も何も言わず長袖で保険屋さんと喋ってて。「健康診断に一緒に行きましょう」って言われて「え、マジで?」と思って、行ったらそこでバレて。でも入れないってことは無いですからね。「血液検査も必要になっちゃうんですが......」っていう、それぐらいですね。面倒だったぐらいで。後は、子供がいるので幼稚園には長袖で迎えに行ってて。ある時に出先から行かなきゃいけなかったので半袖で行ったら、他のお母さんに軽くクレームを入れられました。「長袖で来るように行ってください」って。でもそれを言われると思って普段から長袖で行ってた訳だから。入れたことで不利益は生じるとは思いますけど、ちょっと考えた以上のことは起きないと思うので。「入れたらプール入れなくなっちゃうな」とか、それぐらいのことを踏まえて「良いか」って思ったら、入れちゃって良いんじゃないかなって。個人的にはそう思いますね。
- 3号目の戦慄かなのさんのインタビューでは、今の日本のタトゥーをめぐる状況についての話題にかなり触れられていました。サカヨリさんご自身が今の日本の状況を見ていて「もっとこうだったら良いのにな」と思うことなどはありますか?
サカヨリ - この前の裁判などは、凄く馬鹿げたものだったと思いますけどね。あの裁判に勝ったことはかなり大きなことだったなと思います。基本的に、色んな物が昔よりもOKになって行く流れがあると、押さえつける力も強くなると思うんです。だって彫り師さんなんてずっと居る訳で、でもそれがあんな風になったのはここ最近の話で。どんどん身近な物になるにつれて、押さえつける力が強くなっている印象です。あの裁判以外の部分で言えば、単純に身近になって来てるなって感じですね。若い子は結構思い切ったところに入れたりしますが、あれは僕らの頃には無かった感覚だと思います。首や顔に入れたりしますが、僕らの時代だとガッツリ入れている人でも、手の甲までは入れなかったんですよ。指に入れたりはするかもしれないけど。だから、そこの感覚が明らかに変わってきてる感じがします。小規模な雑誌ですが、こういうものを作っている以上もう少し考えないといけないタイミングだなとは思っていたんですよね。社会の流れも踏まえてタトゥーの在り方を真面目に考えている人にも申し訳なくて(笑)。『TATTOO BURST』の元編集長だった方は「Tattoo Friendly」というサイトを立ち上げて、タトゥーが入っていても利用できる設備を紹介したりしていて。
- 最後に、『SUMI』について今後のご予定などはありますか?
サカヨリ - 無いんですよね......(笑)。行き当たりばったりなので。いつも「出来た~」と思って印刷所に入れてから、慌てて書店さんに連絡したりしていて。全部自分でやっていて、今回から写真も自分でやっているんです。1号目と2号目はカメラマンさんにお願いしたんですが、カメラマンさんと出てくれる方と自分の予定の3つを擦り合わせるだけですら「うわー」ってなっちゃうんで(笑)。だから今回は自分で撮ってみましたね。次号はもうちょっと計画的に、きっちりやりたいですね。
- ありがとうございました。
Info
誌名:SUMI(スミ)
編集・デザイン・問い合わせ先:Sakayori Design Publishing info@sakayoridesign.com
販売
【特集】 Life with Tattoo
Vol.1 サカヨリトモヒコ(カルチャー&タトゥーマガジン『SUMI』編集)インタビュー https://fnmnl.tv/2020/11/09/108981
Vol.2『タトゥー彫り師医師法違反事件』を担当した亀石倫子弁護士 インタビュー https://fnmnl.tv/2020/11/12/110669
Vol.3『10人のFirst Tattoo』https://fnmnl.tv/2020/11/17/108197
Vol.4 Kaji(Joytown Tattoo )インタビューhttps://fnmnl.tv/2020/11/20/110465
Vol.5 My First Tattoo Report https://fnmnl.tv/2020/11/21/111429