【ライブレポート】aimi First One Man Show | R&Bの魅力を全身で伝えた初ワンマン

プレイヤーがこれだけ増える中で、R&Bを自認しているアーティストの単独公演って意外に少ないんですよ。まずは自分がそれを成し遂げたい、それができたら絶対にR&Bシーンのためになると思った。USのR&Bを観るのと同じようなクオリティの音をバンドで出せるようにいまチャレンジしてるし、Gakushiさんを中心にバンドも組んでもらってます。いま、R&Bならではのライブアレンジをやれる人って国内でもほとんどいないんですよね。それに、R&Bってライブが一番楽しいと思うんです。コードも展開も様変わりするし、コーチェラのVictoria MonétみたいなああいったすばらしいR&Bのステージを、aimiでしかできない形で見せられたらいいなと思います。(aimi)

これは、ワンマン公演の開催を決めた理由を訊いた際に本人から返ってきたアンサーだ。昨今盛り上がりを見せている国内のR&B/SOUL/POPシーンにもかかわらず、確かに、自らがR&Bアーティストと名乗っているケースはあまり多くはない。aimiは率先してその先頭に立ち、R&Bシーンを盛り上げようと主催イベントを行なったり、各種メディアでR&B愛を熱く語ったりしてきた。それは、自身の音楽を多くのリスナーに聴いてもらいたいという気持ちはもちろんのこと、R&Bという音楽のすばらしさについて世代を超えて伝えていきたいという啓蒙の想いもあるのだろう。日ごろから各方面のさまざまな人たちにアクセスし、R&Bの魅力を伝えるために奔走している姿を知っているからこそ、この日のワンマンライブは彼女のつくってきたコミュニティの輪が可視化されるタイミングになるだろうとわくわくしていた。

SHIBUYA WWWに入ると、まず人の熱気に驚く。ぎゅうぎゅうの入りで、年齢層も幅広い。若いカップル、何十年にも渡ってこのジャンルを聴いているであろう年輩のリスナー、さらにアーティストもちらほら。aimiら有志メンバーが運営するコミュニティ「R&B Lovers Club」のTシャツを着ている人も目につく。皆、程度の差はあれどR&Bという音楽・文化に対してある程度意識的に向き合っている人たちが集まっているだけあって、独自の熱気が生まれている。このお客さんたちが今日どのような空間を作り上げるのか、とても興味深い。そうこうしているうちにバンドメンバーが現れ、サウンドを鳴らしたところで一気に歓声が沸き起こる。メンバーは、キーボードのGakushiに加えてベースのKeiichi Horii、ドラムスのYukino Matsuura、そしてDJ DAISHIZENというラインナップ。

まずオープニングに披露されたのは“Chosen One”。いきなりの代表曲に早速フロアは大盛り上がりだ。アレンジが大きく加えられており、音源の骨組みは残しつつもダイナミック。まさに、本人が語っていた「R&Bならではのライブアレンジ」が初っ端から最高の形でプレゼンテーションされ、皆の身体も揺れる。そのまま"Love Like That"、"(wanna vibe)with you"と続き、パーティライクなグルーヴが炸裂。aimiはゴージャスな衣装に身を包み、華やかなY2K期のR&Bにインスパイアされたグルーヴを全身で表現しているように見えた。とにかくバンドサウンドのキレが良く、冒頭で引用した本人の言葉通り、Victoria Monétを思わせるステージだ。

歌い終えると、満面の笑みで「とうとうこの日が来てしまいました……!」と想いを吐露。アーティストにとって初のワンマン公演がどれだけ重く意義深いものであるかは今さら説明するまでもないが、それにしても、ここまで感情をさらけだす人もそういないだろう。デビューから5年以上が経ち、ようやく念願叶ってのワンマン。ここにたどり着くまでにどれだけの苦労があっただろうか。彼女が「(デビュー曲の)“Water Me”から聴いてくれている人?」と訊くと、たくさん手が挙がった。そう、5年間皆が待っていたのだ、今日という日を。

続いて、“Show Me”、“Sorry”、“Thinkin’ G-remix”、“Lovesick”をメドレーで披露。歌はもちろんだが、振付も、aimiのパフォーマンスの見どころのひとつだ。この日も歌いながら感情の機微を手の動きや指先で繊細に表現していた。しかもバンドの演奏と振付がぴったりと合っていて、ドラムを中心としたキメに合わせて動きがシンクロするという見事な連携プレイ。Yacheemiのディレクションによる所作と、バンドの演奏がシナジーを生み出しひとつのパフォーマンスになるという、チームaimiの総合力が結実しアウトプットされていることに感動を覚える。

次の曲に向けて、「R&Bが好きな人?」と問いかけるとフロアからは「はい!はい!」とたくさんの声が。彼女が用意していたのは、SZAの“Snooze”とBeyoncé の“Me Myself and I”のマッシュアップだった。以前YouTubeやSNSで動画を公開していたが、それがまさかライブで聴けるとは驚きだ。さらに“The Fool,The Lovers”では大胆なアレンジでこの上ないテンションを演じ、終盤ではGakushiがトークボックスで熱唱するシーンも。と、あの手この手で盛り上げつつ、続いてEMI MARIAが出てくるという贅沢な流れにさらに会場が沸く。二人で“Day N Night”と“How’s The Weather?”を熱唱し、aimiは「EMI MARIAさん、ずっと歌い続けてください!」とまっすぐなメッセージを伝えていた。そして、“Good Without You”に“No One Is”という隠れた人気曲が続いたのち、二回目のカバータイム。なんと、Tylaの“Water”! Yacheemiが登場し二人でダンスを披露すると、フロアも呼応するように踊りはじめる。

もう一人のゲストも、芸達者だった。「私が活動を始めた頃にクレイジーな女性と出会ったんです」という紹介によって招かれたのは、JASMINE。“Risk It All”を歌い、終わってからはアカペラでも二人が魅せる。お互いが心を許し合っていないと出てこないであろう、胸が熱くなるヴァイブスが生まれていた。

ライブも終盤に突入し、会場にはエネルギーが充満。そんな時にぴったりの曲が、“Sippin Sake”だ。ラテンなサウンドに乗ってaimiはカクテルをゆらゆら揺らしながら、細かくリズムを刻む技巧的な歌を聴かせる。その後“You Are”を歌うと、フロアの一人ひとりの顔を見ながら語りはじめた。2年前に喉を手術したこと。もうaimiとしての活動を続けていくのは無理かもしれないと挫折しそうになったこと。ずっと自分の完璧主義から逃れられなかったこと。そして、そういった悩みと葛藤を乗り越えたからこそ、ちゃんと自分を抱きしめてあげられるようになったこと。この流れで届けられる曲は、もちろん“I’m OK”。あの場にいた皆が、“I’m OK”がaimiの再デビューとも言える重要な曲であることを再認識したはずだ。リラクシングで幸せなムードは、そのまま“The Wave”に“Wish You Better”、さらに“The Bdst.”、“Black Coffee”といったナンバーによって最高潮へ。なんという幸福感だろう。

熱いアンコールののちに“Fight No More”と“KMHH Cali Remix”がパフォーマンスされた時には、皆が今日一番の笑顔で心からR&Bを楽しんでいるように見えた。こんなにも温かく、歓びに包まれたライブはなかなかお目にかかれないように思うが、それはaimiがこの日のステージでR&Bの魅力を全身で表現していたからだろう。言うまでもないが、R&Bとはエモーションの解放であり、愛を表現する音楽でもある。抑圧されてきたブラックコミュニティの人々が日々のリアルな感情をストレートに表現するという美しさこそが、R&Bの神髄だ。aimiは、ダンスや振付、バンドサウンド、歌の力によって感情を最大限に表現しながら、それと同時にR&B好きが集うコミュニティを作り出すことによって人と人を繋げ、輪を広げていることがはっきりと可視化された。これは集大成であると同時に、恐らくひとつのはじまりだ。これからaimiとR&Bがもっともっと、多くの人に愛されるための。(取材・文 : つやちゃん 撮影 : 金子海香 )

info

■セットリスト
1.Chosen One
2.Love Like That
3.(wanna vibe) with you
4.Show Me
5.Sorry
6.Thinkin'
7.Losvesick
8.Snooze Mashup Cover
9.The Fool, The Lovers
10.Day N Night w/ EMI MARIA
11.How's The Weather? w/ EMI MARIA
12.Good Without You w/ Yacheemi
13.No One Is
14.Water - Tyla Cover w/ Yacheemi
15.Risk It All w/ JASMINE
16.Sippin' Sake
17.You Are
18.I'm OK
19.The Wave
20.Wish You Better
21.The Bdst.
22.Black Coffee

En1.Fight No More
En2.KMHH (grooveman Spot Cali Remix with Kzyboost)

本公演のセットリストをまとめたプレイリストはこちら

Apple Music:https://music.apple.com/jp/playlist/aimi-first-one-man-show/pl.u-mJy8KxRtGlZLjd

■「aimi First One Man Show」ライブ本編映像が予約販売決定!

ご予約はこちら↓
https://aimimusic.stores.jp

※来場者限定のライブフォト&特典付き映像をご購入いただいた方へ優先的にご案内した後、視聴URLのリンクをお送りいたします。ご了承ください。

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