【インタビュー】Bonbero 『For A Reason』| 常に自分を更新したい

Bonberoが昨年11月にリリースした待望の1stアルバム『For A Reason』は1stアルバムらしく、これまでの軌跡に沿った内容となっている。プロデューサーは親交の深いascii、TAXONを軸に、D3adStockやuinといった気鋭が、ラップの魅力を最大限引き出すトラックを提供した。客演には『FSL』から交流が続くBenjazzyをはじめSEEDA、Jinmenusagiといった年長の実力者、同世代のKohjiyaや、"SCENE!"でのコンビネーションも記憶に新しいSkaaiと、Bonbero好みのラッパーが集結。彼自身は最大の魅力であるラップに思う存分フォーカスしている。
ただ、これまでの集大成と言える作品を出しても、Bonberoは歩みを止めるつもりは全くないようだ。よりハングリーになったBonberoのインタビューをお届けする。
取材・構成 : 和田哲郎
-『Bandit』をリリースしたのは結構昔に感じますか?
Bonbero - 2年しか経ってないけど、結構昔という感覚です。
- そこから今作まで、状況や環境も大きく変わっていると思います。調べた限り2年間で15曲以上は客演に出ていますね。
Bonbero - 15曲もやったのかみたいな感じですけど(笑)。やばいっすね。
- それに、ライブでは『POP YOURS』で幕張、BAD HOPの客演で東京ドームと大きなステージも経験していて。『Bandit』からの2年間が昔に感じるということについて、どこら辺が一番変わった部分だと思いますか?
Bonbero - 2年前に『POP YOURS』出て"Makuhari”があって、そこら辺から変わってる感触はありますね。“Higher Remix”に参加したり『FSL』出たり、トントン進んでった感じなんで……でも、大きかったのは『Bandit』ワンマンかもしれないです。2年前の1/31のWWWでのワンマンから意識が変わった感じありますね。
- ワンマンライブについては"Makuhari”のリリックにも出ていますが、特にどういう部分が印象的でした?
Bonbero - 初ワンマンだったんで、自分のライブを見に来てくれる客が見えるわけじゃないですか。それが素直に嬉しかったですね。あと、WWWには普通にヘッズとして遊び行ってたんで、意識変わったっすね。
- ほかにも『FSL』はBenjazzyさんとの試合のインパクトも大きかったですが、そこから”B2B”や今作の"For a reason"に繋がったりと、ひとつひとつのインパクトが大きいものをやってきた感じがします。Bonberoさんの内面的には成長したなと感じますか?
Bonbero - ありますね。感触的には2年前くらいは「名前を売りたかった」っていう記憶が残ってて。マジで前に進むことだけを考えてたんで、それはそれで前向けてたんですけど、今は自分にフォーカスできてる感覚があって。やりたい曲とか、自分が一番フィットする音感を探してる感じがあります。
- ただ、忙しすぎて作品作りが大変だったという話も聞いています。
Bonbero - あるかもしれないですね。作品に「集中するぞ」ってタイミングで客演のオファーでやりたい曲が来るんで、「じゃあやるか」ってなって(笑)。
- 前のインタビューから「次はファーストアルバムだ」と言っていたので、2年前くらいから構想があったと思うんですけど、実際制作を始めたのいつだったんですか?
Bonbero - 一番古い曲は“Million Back”で昨年の2月くらいですかね。
- じゃあ、「次がファーストアルバムだ」と思ってから1年以上経過していますね。
Bonbero - そうですね。客演だと誰かの土俵の上で自分を発揮する事になるんですが、自分のアルバムとなると、自分はどんな感じなんだというのを探るのが必要で……だから、その1年間はデモが多かったですね。やりたいことのアイデアも、時間が経つところころ変わるんで。曲にはなってなくてバースだけとか、宇宙語が乗ってるだけのデモもありました。
- どこかでしっくりこない感じがあったんですか?
Bonbero - そうっすね、しっくりこなかったですね……しっくりこなかったです(笑)。
- それはどういうところですか?
Bonbero - 自分が気に入るか気に入らないか、マジで自己満でしかない。その日作って、次の日聴いて、「うーん」って感じだったらもうやめちゃうし。その日に作った歌詞をそのまま引用して別のビートに乗せたりもするんですけど、ずっと満足できなかった感じです。
- “Million Back”はアルバムに収録するものとして初めて満足できた?
Bonbero - いや、それもあんまなくて(笑)。“Million Back”もなぜかフックだけができてて、アルバム制作の後半の方に「これもアルバム入れるか」ってバースを書いた感じなんで。その感触は“Million Back”にはなかったっすね。

- はじめてBonberoさんの基準を超えた曲は、アルバムの中だとどれでした?
Bonbero - 時系列を忘れてしまったんですけど……"Oil Freestyle"かもしんなくて。あれはノリで1~2テイクで録ったやつなんですけど、俺がナチュラルにかっこいいなって思えるラップができてて。で、これをボツにしたらもう進まない気がして(笑)。
- 感覚的な話かもしれないですけど"Oil Freestyle"がいいなと思えたのはどういう部分だったんですか?
Bonbero - "Oil Freestyle"がuinくんと作った中で、一番最初に形になった曲で。uinくんも「これいいじゃん」みたいな感じだったんで、「じゃあ入れましょう」って。
- そこからはちょっとずつ進んでいった。
Bonbero - やっと進んだ感じですね。"Jerry"とか作って。
- 後半の5曲が全部uinさんのビートで、でも全部違う感じのビートになっていて、タグがなかったら同じビートメーカーと思わないくらいの幅ですよね。アルバム自体の幅をもたらしているのはuinくんなのかなっていう。
Bonbero - uinくんのビート好みなんですよ。ビートのジャンルは違ってもあの人の統一感があって、そこが好きだったんで、ジャンルはあんまり決めてなかったです。
- "Jerry"も、これはジャンル的には変形なセクシードリルですよね。ちなみに"Jerry"というタイトルはどういう意味なんですか?
Bonbero - これは、トムとジェリーの"Jerry"です。"Jerry"は最初のラインができてて、〈誰もがジェリー/必死に追ってるCheddar〉っていうあれなんですよ。俺も追いかけてるし、みたいな。Leiseさんが入ったのは、バースが出来上がった後です。迷わず、Leiseさんだなって思ったっすね。これが"Oil Freestyle"の後に出来た曲で、でも9月ぐらいですね。
- そしたら、”Naked Eyes”と"Seven”の方が先に出来てるってことですね。
Bonbero - あ、そうでした。“Naked Eyes”と”Seven”の方が早いですね。
- 本当にリリース直前まで作ってたんですね。
Bonbero - そうです(笑)。なんなら最後の3ヶ月ぐらいだったと思います。
- ”Naked Eyes”についても聞きたいんですけど、前回のインタビューの時に「一緒にやりたい日本のラッパーいますか」と聞いた時にSkaaiさんの名前も出ていたんですけど、同時にKohjiyaさんの名前も出ていて。
Bonbero - 言ってましたっけ(笑)。アツいっすね、それ。
- あらためて、Kohjiyaという同世代のラッパーをBonberoさんからみると、どういうラッパーだと思いますか?
Bonbero - 音的な部分で言ったら、一発目に出るメロディーが他と違うってもう分かる。メロディーセンスが他と違うレベルだなってKohjiyaは思いますね。だし、俺Kohjiyaの歌詞も好きで。歌える言い回しがどこかしらに絶対あるから、キャッチーさが最高っすね。
- この曲でも〈I did it, I did it, I did it〉の部分とか、すごい残りますね。
Bonbero - 残るんすよね。何かしらやってくる感じがめっちゃいいっすね。
- 初めて聞いた時、ビートがすごくいいなと思って。派手なビートってわけじゃないと思うんですけど、すごく2人の魅力を引き出すビートだなと思ったんです。これは、こういうビートにしたいとasciiさんに言ったんですか? それともストックから?
Bonbero - asciiが一人である程度の型を作って、「これBonberoに合うと思うんだよね」って渡してくれて。「これヤバいね」ってなって俺が乗せて、構成とかは一緒に組んで作ったのをKohjiyaに渡して、さらにちょいブラッシュアップした感じです。
- Bonberoさんのバースも、前半と後半でかなりフローを変えていて、全体的により緻密になっているのかなと思ったんですけど、そのあたりは意識的に? それとも無意識で?
Bonbero - あー、緻密にしようみたいな意識はしてないですね。けど、「急に入る構成いいよね」っていうので、あんま考えてなかったかもしれないですけど、asciiとよく喋ってましたね。
- 今作でもTAXONさんとasciiさんとのコンビネーションは、すごく良いチームなんだなって。
Bonbero - 作りやすいですね。言いたいこと言えて、遠慮がないっていうのが作りやすさに直結するんで。
- 先行で"Seven"も出ていますが、これまで地元にフォーカスした曲ってそこまでなかったと思います。逆に今、多忙で地元に戻る時間も減ってきたのかなと思って、だからこそ思い出すみたいな部分もあるのかなと思いましたが。
Bonbero - あー、俺ちょくちょく実は戻ってて(笑)。八千代に住んでる友達とかと遊ぶんで、やっぱそこで時間の流れを感じるんですよ。俺からしたらその時間は大切な時間で。
- 地元に帰った時はリラックスできる?
Bonbero - やっぱ東京と違ってガヤガヤしてないっすね。Bonberoとして接する友達が地元にはいないから、マジでラフに地元ならではの遊びができます。
- 実際、東京に引っ越してきてどうですか?
Bonbero - マジこれ決めれないなって、田舎と都会論争(笑)。東京のよさもあるから。けどやっぱ、みんな時間の流れが早いなとは感じますね。その分自分も早くなれる気がしてるんで、今は馴染んできたんすけど、最初の方は頻繁に千葉帰ってたっすね。もう嫌すぎて(笑)。"Hagishiri'は4月にJinmenusagiさんのバースをもらってるんですよ。で、俺はバースを10月ぐらいに書きました、直前に(笑)。
- 最初Bonberoさんのバースがあって、それを元にJinmenusagiさんが書いて、さらに書き直した。
Bonbero - そうです。傍から見たらバースは書き直さなくても「これでいいじゃん」って言われるレベルなんですけど、これも自分が満足しなかったっすね。「うーん」みたいになってて。最初タイプビートで書いて、その後にビートを作ってもらったんですけど、それがあんま刺さらなくて、結局元のビートでJinmenusagiさんとやったんですよ。けど、また「うーん」ってなってuinくんにまたビート作り直してもらってOKが出た感じです。
- "Hagishiri'の満足できてない部分ってどこだったか覚えてますか?
Bonbero - うーん、どこなんですかね。歌詞もいつもの感じでラップしちゃってたんで、もうちょっとトピックに沿って「歯ぎしり」入れようかなみたいな、実際歯ぎしりしてたんで。
- じゃあ、この曲についてはリリックの部分。
Bonbero - そうです。全部変えました。
- 歯ぎしりするって、やっぱりストレスからくるものかなと思うんですが。
Bonbero - あと歯並び(笑)。歯医者をちょっとサボってた時があって、そこにできた穴が一個崩れて、明らかに左でしか噛んでない時期を過ごしてて。ストレスっていうのも嫌なんで、そういう物理的な問題ってことにしてください(笑)
- Jinmenusagiさんも含め、客演の人のチョイスがやっぱりBonberoさんらしいなって思います。スキルはあって当然みたいなところで、ラップに自分の世界観がしっかりある人たちしか参加してないなという感じがします。
Bonbero - 今回の客演の人たちはそうですね。完全俺好みのラッパーですね。

- 前にインタビューさせてもらった時にライムスキームの話をしていて、「完璧でもあんまり面白くないんですよね」とBonberoさんが言ってたんですよ。ただ完璧なラップをしててもイコールかっこいいではないじゃないですか。かっこいいラップってBonberoさんの言葉で説明するとどういうものだと思いますか?
Bonbero - 俺が思うに、どれだけラップが上手くても言葉の強さが一番っていうのはあって、それに付属するスキル、それを伝える技術だと思うんで。言ってることとその人のやってきたことと……誰が何を言うかですよね。これだって決めるのは難しいですね。
- 言葉の強さというところだと、冒頭に置かれてる”For A Reason”と"Ringdidiringring”…これ読めないんですよね(笑)。
Bonbero - 俺もフルで読んだことないっす(笑)。
- この2曲も、Bonberoさん含めて全員が言葉の強いラップをしつつ、しかもちゃんとその人らしいラインになっている2曲ですよね。Benjazzyさんは”B2B”の流れでまたやることになったと思うんですけど。これぐらい2人ともラップができたら、すごく楽しいだろうなって(笑)。
Bonbero - ビートがシンプルだったんで楽しかったっす。
- あれぐらいビートに隙間があると、いろんなアプローチもありますからね。
Bonbero - マジで「どういう感じでしてやろうかな」って感じっす。ベンさんにも最初20小節で渡しちゃったんで、20で返ってきて。めちゃめちゃいろんなフローしてて、じゃないともたないから(笑)。だから「4削っていいですか」って言うのが悪くて(笑)。
- 返ってきたときどうでした?
Bonbero - パンチラインが何個かあって、やっぱこの人やべーなってなりました。
- "Ringdidiringring”のSEEDAさんもヤバいですね。
Bonbero - いかつかったっすね。いや、「口座番号いっちゃっていいっすか」って、言って大丈夫かを調べて(笑)。口座番号は大丈夫らしいみたいになって、シャウトしてました。
- SEEDAさんはどういうラッパーだと思いますか?
Bonbero - めちゃめちゃピュアな、フレッシュな人って感じのイメージがあって。嫌なものは嫌だし、自分のことをすごい素直に表現できてるなって。俺から見てOGっす。自分がラップやってなかった時期からめちゃめちゃ活躍してる人だし、すごいことをやってきている方ですね。
- フレッシュだしハングリーですね。
Bonbero - ハングリーっすね。本当に。話を聞いてても、あの人にはすごい感銘を受けます。
- 電話が鳴り続ける状況って、超忙しいってことですよね。実際Bonberoさんもそういう状況だったってことですか?
Bonbero - そうですね。客演の連絡がすごい来てて。「この人かっこいいな、やろう」って感じで。この3日間でこの客演やって、その次これで、みたいな、夏とかはスタジオに客演のスケジュールがあって。誕生日に客演の連絡きてたんで(笑)。えっぐ、みたいな。そういう曲です。
-「Bonberoとはこういうラッパーだ」と見せる場所として客演をこなし続けて、今作に活きた部分ってありますか? もしくは感じたことでも。
Bonbero - 楽曲作りの難しさがわかりましたね。やっぱTade Dustと2人でずっとやってた分、バースをお互い蹴って1個の曲にすることが多かったんで、自分の曲ってなるとバースフックでちゃんと楽曲として言いたいことをまとめないと、とか難しかったですね。「この筋肉使ってなかったな」みたいなところが出てきて。それはありましたね。
- さっきのハングリーっていう意味で言うと、Bonberoさんもそうですよね。同世代のヒップホップのアーティストとかの中でもかなり成功は収めてると思うんですよ。でも、フレックスみたいなのがあんまり歌詞の中で出てこないあたりに、逆にハングリーさがより強く出てるのかなっていう。無駄なことはしたくないという感じというか。
Bonbero - そうですね。前よりラップで金をもらえるようになって、たぶんこれって満足しないんだなっていうのを(笑)。
- おお。
Bonbero - いや、自分が言うのはあれなんですけど。安定とか金を求めてるっていうよりは、最近は前よりハングリーっすね。やっぱ時間の流れが早いんで。あとは「もっと俺できんのにな」っていう気持ちが強い。そこかもしんないっすね。もっとできるし、俺はまだ全然何割かしか本当の力出してないのになっていうのがあって。なのにBonberoって像は2年前に出した曲での評価になってしまうっていう。自分の中では「更新したい」っていう気持ちが一番強いかもしんないっすね。
- 自分自身のイメージを、常に塗り替え続けていきたい。
Bonbero - そうですね。『Bandit』出して2年経ったんすけど、初めましてって会う人は俺の2年前のEPで情報が止まっているわけだから、今の俺とのギャップをすげえ感じたんですよ。客演とかやりまくってた時の後ぐらいに、「自分の作品ねーな」みたいに思って、それは強かったっす。
- この曲はD3adStockさんのこのビートもおもしろいですよね。
Bonbero - おもしろいっすね。グライムっていうか、うん、グライムなんすけど……
- 今作のビートは、あまりジャンル分けできないビートが多いかもしれないですね。前の方がもっとシンプルだった気がします。
Bonbero - 確かに。
- そういうビートを自分で求めていた部分もありますか?
Bonbero - 意図してるわけではないんですよね。けど、自分がやっぱ、わりかし隙間あるようなビートが好きで、それでラップするのが好きだったんで……気づいたらこうなってたっていう(笑)。
- ジャンルの定型から外れていくというか。
Bonbero - だいぶズレてる。「これどうですか、セクドリなんですけど」、「これセクドリじゃないよー」みたいなやりとりをレーベルの人ともしました(笑)。
- だから、ビートへの意識もより高まってるのかなっていう感じがしたんですよね。
Bonbero -「こうなってた」って感じでしかないんで(笑)。ビートに対するこだわりはあるかもしれないですね。
片平 - でもだいたい、ビート作る時に一発目からBonberoさんが横にいることが多いです。
Bonbero - 多いっすね。
- それは珍しいですね。
Bonbero - ビート作りの過程は見てて楽しいっすね。「おお、その音なんだね」って(笑)。
- それはasciiさんとかTAXONさんのスタジオで、セッションする日を決めて行ってる?
Bonbero - そうです。決めて行って、ビート作ってみたいな。
- じゃあストックのビートでやるんじゃなくて、ゼロから作っていくのが基本のパターンみたいな感じですか?
Bonbero - 基本なってますね。TAXON、asciiもめちゃめちゃストックがあるってよりは、その場で一緒に作るっていうやり方の方が楽しいんすよね。みんなで作って。思い入れがあると好きになるじゃないですか。それ大事な気がしてるんで。
- これは別のプロデューサーの方も言ってましたね。
Bonbero - 楽しいっす。マジで。ビートメーカーもテンション上がってるんすよ。普通ストックだったらまあ「いいよね」ってなるくらいじゃないですか。でもこっちも沸いてるから、「やんなきゃな」って、「カマしたバース録りてえな」って。その場その場を沸かすためにやってんのかもしんないですね、バースとかも。
- 今のBonberoさんも、タイプビートで最初やる以外はストックのビートではあまりやらない?
Bonbero - めっちゃ好みなのがあればって感じですね。uinくんとかはビートのストックを送ってくれて、どれか一個選んでスタジオ持ってって、自分でちょっと変えようみたいなことができるんで、ストックを絶対取らないってわけではないんですけど、楽しいことを選んでたいみたいな感じっすね。
- あとは"Flafla"と"Twisted"。"Twisted"はもともとアルバムに入れるつもりはなかったって、Apple Musicのインタビューで言ってましたね。
Bonbero - そうですね。Skaaiくんももともと入ってほしかったんですけど、俺の制作スピードが遅すぎて、向こうのタイミングが悪い時期に入っちゃったから今回は無しにしようってなってたんですけど、Skaaiくんが納期2日前に「いけるよ、今からやるよ」って言ってくれたんで、そんなこと言ってくれるならやるっしょみたいになって。スタジオ入って9時ぐらいにビート作ったんですよ。そして「これでやろう」みたいになったけど「うーん……」ってなって2個目のビート作って12時ぐらいから始めましたね。で、朝6時ぐらいに出来上がりました。
- すごいスピード感ですね。
Bonbero - マジそういうノリでSkaaiくんとは作れましたね。
- Skaaiさんとは”SCENE”に続き2曲目ですね。Benjazzyさんともそうだし、Kohjiyaさんとも2曲やってるじゃないですか。Jinmenusagiさんの向こうのアルバムにも参加していて、関係性が1曲で終わっていないのがいいなと思いますね。
Bonbero - 作りやすさもあるっすけど、やっぱりやりたいじゃないですか。今回の客演は、組み合わせのフレッシュさみたいな意外性ってよりは、これまでの関係性がある人たちを呼んだ感じになってますね。
- でもそれぐらい思い入れがある人たちしか呼んでないのはやっぱりいいですね。しかもSkaaiさんの最初のバース、すごいリリックだなって(笑)。
Bonbero - すごいですよね。俺も驚いたっす。「Skaaiくん今どこまで書けてます?」って聞いて、「今〈排便処理〉で……」って、「え、え、もう一回言ってください」って(笑)、歌詞送ってもらったんですよ、その時に。
- タイトル通り"Twisted"な感じですね。
Bonbero - ひねくれた感じの歌詞を書いてます。
- これはある意味本心の……まあ本心じゃないと書かないと思うので、今のラップのシーンに対する気持ちが出ているっていうことでもありますか?
Bonbero - ラップシーンってよりは、自分がよく言われたりすることについて書きましたね。とある取材の人がスタジオに来て、俺に「その早口すごいね、稽古とかしてんのこういうの?」とか言ってきて。
- えっ、そんな人いるんですか?
Bonbero - いるんですよ。だから俺、めっちゃそいつ嫌いになっちゃったんで(笑)。でも、まあ、逆になんも知らないからグイグイ言って和ませたかったんだろうなとは思うんですけど。世間じゃ若手のラッパーだし、こうだよなーみたいな。なんて言ってんのかわかんないよなーみたいなひねくれから、”Twisted”だし入れようかなっていう。作る直前にそういうことがあったんで、だからひねくれバースです。
- ひねくれっていうか、怒りをひねくれに昇華したっていう。
Bonbero - そうかもしんないっすね(笑)。あれは結構トラップだったっす。
- ちなみにリリックについて、以前インタビューした時には「メモ帳をつけていて、そこからテーマを拾ってくる」と言っていたんですけど、それはずっと変わらず?
Bonbero - 変わらずです。今もメモ帳に貯めてます。
- そこからアイデアとかラインを引っ張ってきて派生させていくみたいな。書き方や歌い方で意識的に変えてみた部分ってありますか?
Bonbero - 今回はそこまでないと思いますね。発声も今回はそんな変えてない気がします。いろんなことをやってみたいなっていう気持ちは強いんですけど、今回のアルバムは「これまでの」って感じにしてます。
- それはやっぱりファーストアルバムだからということですかね。Bonberoとしてやってきたことの集大成みたいなイメージも。
Bonbero - それはありますね。新しいことをめちゃめちゃするアルバムっていうイメージではなかったです。
- このアルバムを出して、次に新しくやっていきたいことは具体的にイメージできていますか?
Bonbero - やりたいことはあるっちゃありますね。もう次のことも考えてます。もうちょっと聴きやすいミニアルバムみたいなのを作れたらなって思ってて。今回は自分のことを多めに歌ってるんで、たくさん聴いてほしいんですけど、聴くタイミングが限られるっちゃ限られるっていうか。もっとラフに聴けるようなミニアルバムみたいなやつを……でも、結局ラフに聴けなくなってもいいなっていう、この意識で作ってみようかなって感じです(笑)。
- 今回は本当にパーソナルな感情が出てるってことですよね。
Bonbero - そうですね、出てます。
- 前回も聞いたんですけど、今後の展望を聞きたくて。前回より客観的に見てすごくステップアップしていると思いますが、今後こういう場所に行きたいなとか、こういうアーティストになっていきたいなというビジョンはありますか?
Bonbero - 世界の人たちにも聞かせられるサウンド感を作りたいですね。だからもっと国外も見てみたい。自分が思ってるヒップホップが、実はただの仲間内の妄想で現実と違かったりすると思うんです。だから、もっといろんなとこ行ってみて、実際に見てみた後の自分がどうなるかはわかんないですけど、見てみたいなっていう気持ちはあって。それまでの準備をする期間なのかなっていう感じです。
- それは具体的に海外でレコーディングをしてみたい、とか?
Bonbero - そういうことです。UK行ってみたりとか、アメリカもそうだし。もっといろんなもの見たいです。
- これちょっと話ズレるかもしれないですけど、Bonberoさんで印象的なのは、自分が出ない時も他のアーティストのライブをめちゃめちゃ見に行ってますよね。ラッパーってあんまりそういうことしないじゃないですか。
Bonbero - あ、そうなんですか?
- あんまり他の人に興味ないよっていうフリなのか、そういう人たちなのか、その中だとかなりすごい見てるなっていう感じがあって(笑)。
Bonbero - そんな多いですかね?
- 自分が偶然見てるだけかな?
片平 - 例えばJinmenusagiさんやACE COOLさんがやってる時は見に行ってましたね
Bonbero - 気になるライブは海外アーティストも含め見に行きますね、JID、Denzel Curryはこないだ行きました。Sminoとバックスが来てたのも見に行ったっすね。
- Denzelはライブやばいっすよね。
Bonbero - やばいっすね。結構衝撃だったっす。あれ生で聞くと、「やっぱそういうことだよな」ってなるんですよね。びっくりしました。
- 他のアーティストのライブを見るのは、単純に見たいからなのか、アーティストとして吸収したいみたいなマインドがあるからなのか、どうですか?
Bonbero -「見たい」って気持ちっすね。吸収って感じじゃないっすね。参考になるところはもちろんあるんですけど、第一に「見たい」がないと行かないっすね。吸収したいから見に行くって感じじゃないかもっすね。
- でも、ちゃんとライブがいい人を見ているなという感じが。
Bonbero - かもしんないっすね(笑)。
- JIDも自分は見てないんですけど、めっちゃやばかったって。
Bonbero - 後ろのボーカルなしでちゃんとライブでやってくれるんで見応えがあったのと、やっぱここイントロ長いよなっていう曲ちゃんとミスってて「あっつー」みたいな、JIDミスるんだみたいな(笑)。イントロ16ぐらいある曲で、これ長えよなってうすうす俺も思ってたんすけど、やっぱ入りミスってて「あっつー」って。同じプレイヤーなんだなっていうのは、画面越しで見てると忘れちゃう部分があるし、見に行かないと。
- 遠い人みたいな感じじゃなくて。
Bonbero - ちゃんと生身でやってる人なんだなっていう。
- そういう意味だと、Bonberoさんもライブはほとんどトラックだけですよね。今後ライブをどうしていきたいかって考えていますか?
Bonbero - もっと精度を上げるとか、そういう部分はもちろんなんですけど……自分のライブはもっといけんなって、もっと自分を出していきたいなって思いますね。
- 楽曲もそうだし、全ての面においてもっと自分を更新していけるっていう感覚が今ある。
Bonbero - ありますね、めっちゃあります。
- 今年はどういう一年にしたいですか?
Bonbero - 今年はもっとライブしたいっすね。今回ワンマンとかツアーで大阪福岡東京とかしか回ってなくて、めっちゃたくさん行ってた時期に比べたら全然行ってないから、今年はちゃんと全国回りたいです。もちろん自分をもっと出した作品も出したいなって思ってますね。
- 最後に、昨年を振り返るとどういう一年でしたか?
Bonbero - ええー、なんすかね……波乱万丈(笑)。いろんなものを見れたなっていう。まあ東京ドームもそうですけど、音楽関係ない部分でもいろんな経験をさせてもらったから、その部分が成長したなっていうのが強いっす。そこもアーティストとしてのBonberoとやっぱ関係してるんで。だからそういう成長が昨年はすごい多かったっす。
Info

Bonbero - For A Reason (Album)
https://bonbero.lnk.to/ForAReason
収録トラックリスト
Intro (prod. ascii)
For A Reason feat. Benjazzy (prod. ascii, D3adStock, TAXON)
Ringdidiringring feat. SEEDA (prod. D3adStock)
Million Back (prod. ascii, TAXON)
Way (Interlude) (prod. ascii)
Naked Eyes feat. Kohjiya (prod. ascii)
Seven (prod. daveyoh_)
Flafla (prod. uin)
Hagishiri feat. Jinmenusagi (prod. uin)
Twisted feat. Skaai (prod. uin)
Oil Freestyle (prod. uin)
Jerry feat. Lil' Leise But Gold (prod. uin)

Bonbero “For A Reason TOUR”
オフィシャル先行:受付期間:11/21(木)20:00~12/15(日)23:59
https://eplus.jp/bonbero/
日程:
2025年2月22日(土) 大阪 Yogibo META VALLEY
2025年2月24日(月・祝) 東京 Spotify O-EAST
時間: 17:00 Open / 18:00 Start
料金:
大阪:¥4,000 (消費税込み) ※ドリンク代別
東京:
1階スタンディング 前売り ¥4,500 (税込) ※ドリンク代別
2階指定席 前売り ¥4,500 (税込) ※ドリンク代別
出演: Bonbero and more
主催: Mary Joy Recordings