【対談】AI × Awich | 私たちはそんなに違わない
AIが2/24(水)にリリースするミニアルバム『IT’S ALL ME - Vol. 2』の先行シングルとしてリリースされた"Not So Different"にAwichが参加したリミックスバージョン。メインストリームの一線に長年立ち続けてきたAIと、彼女の姿に憧れ紆余曲折を経て昨年メジャーデビューを飾ったAwichのコラボレーションには大きな注目が集まっていた。
"Not So Different Remix"は昨年のコロナ禍やBlack Lives Matterの中で、切実なメッセージとして響く1曲だが、楽曲の構想自体は2019年から既にあったものだという。ではAIはなぜAwichをフィーチャーしてこの楽曲を2020年にリリースしようと思ったのか、そして両者の関係はどのように始まっていったのか。明日2/20(土)にプレミア公開されるミュージックビデオの撮影現場で2人に話を訊いた。
取材・構成 : 和田哲郎
撮影 : 横山純
- そもそもお2人は元々親交が深かったということですが、初めて会ったのはいつでしたか?
Awich - 2年前の『NAMIMONOGATARI』に出演した時にAIさんがいらしてて、その時に「AIさんがAwichに会いたいって言ってる」って聞いて。
AI - ヤバい奴みたいだね(笑)。
Awich - (笑)。その時にお会いしました。
- AIさんはどうしてAwichさんに会いたいと?
AI - 元々MVとか、インスタとかも見てて「あー、いいね。かっこいいな」って思ってたんです。どういう人かはまだ、会って喋ったことなかったのでわからなかった。でも初めてそのイベントで会った瞬間に感動してしまって。「ワ~」っと、言葉に出来ないんですけど、涙が勝手に出てくる感じになってしまった。
Awich - 同じでした。私はやっぱりAIさんを昔から見てきたし、ずっとラッパーだと思ってたんですよ。
AI - ヤバいね、それは。
Awich - メジャーやメインストリームで活躍してる「日本初のフィルメールラッパーだわ」って最初は思っていたんですよね。もちろんシンガーでもあるんですが、ジャケも全部ヒップホップだったんですよ。高校生ぐらいの時に、「悔しい!私も急がなきゃ!」みたいな気持ちにさせられて(笑)。その当時の自分の感情を思い出したし、その方が今目の前にいる。私も色々あったけど、今はラップをやってるから、いろいろな思いが一瞬にしてこみ上げてきたんです。AIさんが私を見つめてくれる眼差しが優しすぎて、「全てを見られてる!」みたいな(笑)。そんな感じになっちゃって、涙をこらえてたんですよ。こんな所でいきなり号泣したらヤバい奴だと思われるから。
AI - 私もそうですよ。他の人は泣いているような人が誰もいない環境だったから(笑)。
Awich - AIさんはお子さんを抱っこして「うちの旦那と娘」って紹介してくれて。
AI - 私ちょうど妊婦だったんですよ。
Awich - それもあったかもしれない。妊婦さんにはミステリアスな、神秘のパワーがやっぱりあるんですよ。それで娘の平和ちゃんを紹介されて、名前に込められた意味を聞いたら、堪えきれなくなって号泣しちゃって。そしたらAIさんも堪えてたみたいで、一緒にいきなり号泣で。周りの人たちは「大丈夫?この人たち」ってなってましたよね。
AI - 完璧に二人の世界。
- いきなり通じ合ってたんですね。そこから2年間、ちょっとずつコミュニケーションはあったんですか?
Awich - そうですね。インスタだったり、AIさんが私のUnityのエキシビジョンに来てくれたりしてて。それでちょっとずつお知り合いになれた。
AI - いやもう、こっちからしたら......私はただのファンなんで。
Awich - 私こそですよ。
- AIさんから見たAwichさんの凄さどういったところですか?
AI - やっぱり、今日本にいる女性の中で「こんなこと出来る?」ってなるような、誰にも出来ないことをしてるのに惹かれるし。「どんな人なんだろう」って知れば知るほど、人生のストーリーもそうだし、若いけど色んなことを経験しているし全てが凄いって思うんですよね。一緒に制作しても、今まで出会ってきた女性の中でも違うって思う。一番ヤバいと思ったのが、一緒にレコーディングした時。最後のヴァースを入れるためにスタジオに入って、その時に彼女の声を聴いて、リリックを見て、もうヤバかったですね。
Awich - ありがとうございます(笑)。
AI - みんな「自分は本物だ」とか言うけど、私は「本物って何だよ」って思ってたんですよ。「リアルって何?」って。でも、彼女は本物。こういう時に使う言葉なんだなって思いましたね。本当に嘘がないし、ナチュラルなんですよ。それは練習して出来ることじゃないし、ヴァースを歌ってる時も、歌詞に自分の経験までを書いたりはしても、普通、他人の子供のことまで書かないじゃないですか。そうやって名前を入れてくれたりする思いが心に響いて、本当に感動した。今でも喋ったら泣きそうなんです(笑)。本当に素晴らしいアーティストだな、こんな人に出会えて嬉しいなって気持ちです。だから、多分知り合いになれなくても、ずっとファンです。「一緒に曲やりたくない」って言われたとしても好きだし、これからも見て行きたい。多分ここからまたどんどんレベルを上げて、ヤバいことやるから。普通のヤバい人ってどこかで止まることが多いけど、本人も「これから」みたいなこと言うし。それがやっぱり凄いなって思いますね。だから勉強になるし、刺激にもなるし。こんな人いないですよ。
Awich - もう恐れ多いっすよ、本当に。ありがとうございます。
- 一緒にレコーディングした時はAwichさんはいかがでしたか?
Awich - もう曲が出来上がってたんで、普通にヴァースを入れて、私的にはまあまあかましてるつもりだったんですけど、AIさんは「いや、もっとかまして欲しい」って笑)。「最高だよ、最高だけどもっと」って。それが逆に超嬉しくて。私のラッパーとしての立ち位置みたいなものを、これから私が前に出ることで道が開けることもあるだろうし、そのための一歩としての覚悟を逆にさせられたというか。だから一生懸命書いたし、それに「AIさん、こことか歌って欲しいんですけど」って言ったらすぐハモりも入れてくれて。そういうのは私には出来ないし、すげーなと思いました。
AI - 全然出来てるよ。歌も聴いてビビった(笑)。「歌も歌えるのかよ!」って。
Awich - 歌もAIさんが言ってくれてるなら、じゃあ頑張ろっかな、ちょっとは上手くなってきてるかなと思って。新しいことに挑戦するのは誰でも不可能じゃないと思ってるんで。だから、色んなことに挑戦して、一年後や二年後に「歌上手くなってきてる、ラップ上手くなってきてる、ダンス上手くなってきてる」みたいなのを毎年感じたい。AIさんの曲を貰った時に、やっぱりAIさんのパワーを感じたし、それに応えるためには自分のストーリーも曝け出さなきゃいけないと思ったし。AIさんと会った時の衝撃、お子さんの名前に込めた願いを感じたから涙を堪えられなくなったのは、私の娘にも意味のこもった名前をつけてるから、みんなそうだと思うけど。子供たちが次の時代を作っていくっていう意味で、悪いサイクルはここで終わりだっていう。
AI - 間違いない。ほんとにそうしたい。
Awich - っていう意味を込めて書いたんです。だから、リリックを書くっていうよりは記憶、自分たちの記憶を辿って書いた感じです。
- 今の話を聞くと、"Not So Different (Remix)"は筋が完璧に通ってるリリックですよね。そもそもリミックスバージョンは元々作る予定だったんですか?
AI - いや、全然そんな予定無かったんですけど、マネージャーと「やっぱりAwichと何かやったらヤバいんじゃない?この曲のリミックスを作って、参加してくれたりしないかな」って喋っていたんですね。でも「いや~、どうなんだろう。ウチのこと好きなのかも分からないし」って(笑)。
Awich - いやいや(笑)。
AI - 私はシャイじゃないけど、なんていうんだろう......。
Awich - 誰かにオファーするときはセンシティブになりますよね。
AI - 相手がどう思ってるか分からないときって誘えないし、無理矢理「ちょっとやって」って言って、断りづらくなるのも嫌だし。最初に会ったときの感動した経験はそのままにしたいし、でも自分は本当に凄く好きな曲で、もっと世の中に広く聴いて欲しい曲だったので、彼女がいてくれたら倍のパワーを出せるかなと思ったので。一応聞いてみて、ダメだったらすぐに引こうって(笑)。そんな感じでお願いしました。
- そのオファーに対してはいかがでしたか?
Awich - 感動しました。曲を聴いた時も「AIさんはめっちゃ私のこと考えてくれてる」って思って、また更に感動した。もちろんこういう曲でAIさんとやるってなったら、絶対世に広まるじゃないですか。こういう曲で最初に世に出るっていうことには、プレッシャーを感じるわけですよ。万が一その曲を気に入らなかったとしたら、私は絶対に言うと思うんですけど、完璧に私のことを考えてきてくれていて、曲をリリースした後のストーリーも描いてきて、超考えた上でオファーしてくれてるんだろうなって。
AI - 嬉しいな。こっちは必死ですからね(笑)。「どうやったら気に入ってくれるんだ」って。何回かリミックスのトラックもScott StorchとAvedonから送られてきたんですけど、「違うんだよ、もっと彼女の曲に」って言って。Awichさんの情報を、彼らにも色々渡したんです。
Awich - そうなんだ!(笑)。ありがとう。
AI - そしたら段々近づいてきて、「この感じだったら良いかな」って。
Awich - 私もやるなら本気でやるから、絶対に本気の気持ちをAIさんには言おうと思ってたし、でもそういうことさえ全部考えた上でやってくれてるから、AIさんこそ本物だと思いました。マジで本物のシスターっす。
AI - 嬉しいです。
- 楽曲のテーマも今の時代の中で切実なものですよね。楽曲自体はいつから構想があったんですか?
AI - 元々は2019年の夏に作ったんです。なんであれを作ったかと言うと、元々そういうテーマが小さい頃から大好きで。世の中では毎日色んなことが起きていて、やっぱり常にメッセージを言っていたいし、こういうテーマが一番好きで。やっぱり「違いはないんだ」ということを言ってないと自分でも忘れそうになるし。あと一番は、この曲を出せたのは元々オリンピックが日本に来るっていうことで、そしたら他の国の人たちが日本に来るじゃないですか。その時に、他の人たちの耳に入ってほしくて。「We're not so different」っていう言葉とか、日本の人たちもそんなに違わないって言葉を入れて、お互いに接して欲しいなって。海外の人は、「日本人はどういう人たちなんだろう」っていう人もいると思うんですよ。でもこういうメッセージを言って、仲良くしたい、仲良くさせたいなっていうのを勝手に思ってて。自分の国に帰った時に「日本は最高の国だった、人が凄く優しかった」って言ってもらえたら嬉しいし。喧嘩してる国もまだいっぱいあるし、上の人たちが勝手に喧嘩してても、私たち自身は仲良くなれると思ってるんで。自分のリリックでは戦争の話とか、人と仲良くしてほしいこととか、色々あるんですけど、周りのスタッフはやっぱり「戦争とかはちょっと......」って言う人もいる。でもそう言われると「だって、大変な思いをしてる人がいるんだよ」って私は言うんですよね。毎回こういうテーマの曲をシングルにするわけじゃないけど、今回もアルバムの中の一曲として、いつか出したいなと思っていて。Black Lives Matterとかコロナウイルスとか、昨年は色んなことがあったじゃないですか。そしたらついにスタッフも「この曲は今に合ってる」って思ってくれて。そういう自分に降りかかりそうなことがあると、みんな聞き出すし、自分にとってもこのメッセージを出すチャンスだと思って。良いメッセージだからもっとプッシュしたくて、でも一人の力じゃもう無理だから、そこで彼女がいてくれたことが、凄くありがたかったですね。
Awich - Unityのエキシビジョンにも来てくれたし。
AI - あの展示も感動しましたね。そういうことが出来るってことにも感動するし、しかもやり方がカッコいい。
Awich - 一緒に考えてくれる人たちがいっぱいいるから、カッコよく出来るんですよ。
- 最初のAIさんのヴァースでは普遍的な主張があって、その後にAwichさんのよりパーソナルな部分にフォーカスするっていうところが、凄く流れとして良い曲になっているなと思いました。
Awich - バランス良く出来ていますね。
- Awichさんは自分のストーリーを入れようというのは、最初から考えて?
Awich - いや、全然。最初は「どうしよう」って悩んだんですよね。でもやっぱり、私は私に言えることしか言えないし、正直まだ成長過程なので、「これが世界の答えだ」なんてことは言えないんですけど、一つだけずっと変わらずに思ってることは、絶対的な悪とか善は存在しないこと。だから答えはいつもバラバラっていうメッセージには超共感出来たし。自分のことしか言えないけど、もしかしたらその方が説得力があるかもしれない。人間ってストーリーでものを理解出来る動物だと思うから、私のストーリーをリアルに、そのまま伝えた方が逆に刺さるのかなって思ったりして。
AI - 刺さりましたね。刺さりすぎて血だらけでした(笑)。
Awich - アハハ!(笑)。バイオレンスとか、小さいことでジェラスとか怒りが起こる環境にもいたので、それも分かるし。日本は他の国に比べたら平和かもしれないけど、まだまだ人は悩んでるし苦しんでるし、「変わりたい、こんな環境嫌だ」って思ってる人もいるだろうし。そう考えたら日本に心から幸せな人なんて少ないかもしれないけど、だからこそ「We're so not different」ってメッセージも、だったら相手のことを一回思いやって、「何考えてるの?」とか「あんたのストーリーは何?」って聞き合うこととか、分かち合うことって超大事だと思うんですね。昔から「誰でも、ストーリーを知ってしまえば、その人のことを好きにならずにはいられない。」って言葉が好きで。
AI - 間違い無い。
Awich - だから嫌いな人でも、一回その人がどんな生活をしてるのかとか、どういう人生を送ってきたのかを聞けば、「そっか」ってなれる。だから「知らない」っていう状態と「好きになれない」っていう状態ってめちゃ似てるというか。知らないから嫌いだし、知らないから好きになれない。知ったら何とかなるぜ、って。だってみんなホモサピエンスだもん。ちょうど『サピエンス全史』を読んで、人類を一動物って見方をしていて、「みんなホモサピだし、何にも変わらないし」ってずっと言ってた時に、AIさんが“Not So Different”って言ってくるから、「マジそれっすね!」みたいな。「全員最初人間なんすよ」って思ってたから、そこに立ち返る意味でこの曲には感動したし、同感だと思いました。
- “Not So Different”っていうタイトルが良いなと思いましたね。「全員同じ」って言うと暴力的になるし、「自分たちは全然違う人たち」っていうと、またそれも違うし。「So」があるのとないのでは全然違うなと。
AI - 「まあまあみんな一緒だぜ」みたいな。言い切れないから、私は。
Awich - 「どっちか決めて!」って態度だと、それも絶対的な何かを強要してることになるし。でも、「そうだね」ぐらいの温度感の方が、「みんなそうなんだよ」っていうのがより分かりやすいし、伝わりやすい。「Extream good」の反対は「Extream bad」じゃないと私は思ってて。絶対的な悪の反対が絶対的な善なのかって考えると、「どっちも悪でしょ」って。本当に極論を言うと、絶対的な正義って紙一重だと思うし。それをみんな信じてきて、色んな人を傷つけてきたと思うし。バランスが一番の「Good」なんじゃないの、って私はずっと思ってるんですよ。「Extream」になるとどっちも悪なんですよ。「悪なんですよ」って言うのもまたアレなんですけど。“Not So Different”の「So」を入れるだけで、バランスが取れる。
- AIさんがタイトルに込めた想いは、今Awichさんが言ったことと近いですか?
AI - そうですね。やっぱり「私たちはそんなに違わないよね」ってことを言いたかった。「We're not different」って言うより、真ん中でいたいなっていうのがいつもあって。私も良い人ぶってるけど凄く悪い友達もいれば、悪い人なんだけど凄く良い友達もいる。自分が会ってきた人たちの中でしか自分の経験にはならないし、全部の人たちと話してないから分からないですけど。ただ自分の経験だけで言えばそんなに人間は違わないな、って思いますね。泣くとか怒るとか、苦しいとか悲しいとか嬉しいとか同じ感情があるし、そういう感情が湧くってだけで、全然違うタイプでも同じものを持ってるのかなって。喧嘩して誰かが刺されたり撃たれたりいじめられたりはダメですよね……。ただの喧嘩はいいんですよ。それは全然OK。ウチだって子供とも旦那ともいつも喧嘩してるし(笑)。でもやっぱり「憎しみ」になると、みんな辛い。でも本当に次の未来を良い世界に繋げて行きたいと思ったら、自分もたまには変わらないといけないのかなって。だから“Not So Different”って言うだけで、ちょっと和らぐかなって。「あの野郎!」って思っても、相手もそう思ってるかもしれないし、その逆もあるし。自分の気持ちに対して、相手が全く別のものを出すこともあるけど、自分がやり続けてみたらちょっとずつ変わっていくのかなとも思う。タイトルは、そういう気持ちでつけました。
- Awichさんにとって初めてのテレビ出演となった『CDTV ライブ!ライブ!』と『ミュージックステーション』についてもお訊きしたいです。
Awich - めっちゃ緊張しました。マジでビビりましたね。
AI - そうなんだ!(笑)。
Awich - AIさんが超助けてくれたんですよ。一番最初の『CDTV』なんて、ガチガチの女ラッパーなんて久しくいないから、どうやって扱っていいのか分からないだろうなっていう変な不安とか、イヤモニとかTVカメラとか、スタッフさんもたくさんいる現場も初めてだし。曲も出来たばかりだから歌えるかなっていう、色んな不安が(笑)。
AI - 間違い無い(笑)。
Awich - だから超練習して。でもリハの時にAIさんが私に「やりにくいよね」とか、めっちゃ「いつも毎回キツいんだよね」とか、ホッとするようなことを言ってくれるんですよ。「カメラはこうだから」とか、「イヤモニの音は、テレビで聴こえるものはもっとミックスされて出るんだよ」とか、自分の本番前でもあるのに細かいことを説明してくれて、登場の仕方も「ここの方がインパクトあるよ」とか、マジで神なんですよ。
AI - こっちからしたら、初めてのテレビ出演をこんな僕らが奪っていいのかっていう、そんな感じですよ(笑)。初めての経験って凄く大事だと思うんですよ。だからとにかく、自分としてはそれを絶対に変なものにしたくなくて。Awichが出た瞬間に「何この人!」っていう形にしないと、そうならなかったら本当に申し訳なさすぎて。ライブだからやり直しも効かないし。
Awich - 感謝してもしきれないくらいめっちゃやってくれたから、私もいつかそういうことを誰かに出来るくらい頑張らなきゃなって思いました。
AI - 私もそうやってもらったから。
Awich - そういう連鎖が、また泣きそうになってくるし。「私がTVに出る」ってことはそれだけじゃないんですよね。
- SNSを見ていても、やっぱりAwichさんがMステとかCDTVに出ることが良い波を生んでるなって感じがしました。
Awich - 日本のシーンにとって、ラッパーたちにとっての風穴じゃないけど、「そういうことなんだよ」っていうのを優しい言葉でめっちゃ伝えてくれるんですよ。それで私も「そういうことか!」って気付きましたね。もちろん私も覚悟は決めてるけど、「It's bigger than me」ってことだなと。それに気づいたら余計やる気が出てきて、「やってやりますよ、かましますよ、ここから何かが変わるくらいの奇跡的瞬間として臨みます」みたいな気持ちでやりました。
AI - 本当に最高でした。周りのアーティストも「あの子ヤバいね」って言ってて。
Awich - ほんとですか?(笑)。
AI - 彼女みたいな人って、今までだったらなかなかテレビに出ないんですよ。なかなかカッコいいラッパーは出ないから、彼女が出てくれるだけで、どれだけこの先カッコいい次の世代の人たちが出てくれるんだろうって。音楽業界も、いつまで経ってもラッパーの機会は少ないままだし、私はそれが残念でたまらない。私はどんな番組でも、自分がカッコよければ全然崩されないから、自分を持ってれば良いのに、テレビに出るとイメージが崩れるって言う人もいるじゃないですか。それはそれで決まりがあるのかもしれないけど、自分は自分のままでずっとやれば全然良い。曲を歌えればカッコいいんだから。それを彼女はやってくれた。歌う前とか後も大事なんですよね。「俺は挨拶とかしないし」みたいな人もいる。それは私は「お前カッコよくないよ」って思うんですよ。それは人として普通のことじゃないですか。私はこういう人が出てくれて、歌とかラップも最高で、人としてリスペクトできて、それで初めて好きになって、観てる人も感動して、っていうのにはなんでも協力したい。私は歌わなくてもいいから、どんどん出て欲しいって思います。
Awich - 19歳ぐらいの時に一回デビューしたことがあって、その時はまさにAIさんが言う、そういうラッパーたちの仲間だったんですよ。「テレビとか出たらシャバいっしょ」みたいな。
AI - 私もそういう時がありました(笑)。
Awich - でも大人になってからこういう機会を頂いた時に、「あの時の気持ちは恐怖心から出てたんだ」って気づいたんですよ。「飲まれたらどうしよう」とか「こう思われたらどうしよう」みたいな不安や恐怖からそういう気持ちが生まれてたから、「カッコ悪」って思って。「私別に何も怖くねーわ、取り敢えず娘いるし、最悪ジャングルに住めばいいし」って吹っ切れた。「なんでも来い」みたいな。「恐怖心が無いとこうなるんだ」って気づいたら、メディアとかに出てる人たちのことをめっちゃリスペクト出来るようになって。色んなところで色んな仕事をしないといけない、その中でもずっとやってるような人たちの方が百倍カッコよく思えたしリスペクト出来るし、強さも弱さも全部認めて、それでも良いと思える人の方が凄いと思えるようになって。だから自分も「その方がいいや」って思いました。しかも楽だし。
AI - それ、文にして飾りたいですね(笑)。
Awich - でもそれをやったとしても、しっかりその姿を見せないとダメだと思うんですよ。私がやったように、AIさんが見せてくれたように。それでもカッコよく続ける、みたいな。私は最後に年取ってバグった感じになっても、「あの人ぶっ飛んでるけど超影響力あるし、愛とエロスのことならあの人に聞け」みたいな人になりたいんですよ。
AI - やば(笑)。50年後くらいにそうなってる姿が見えた。
Awich - そんな感じになれたら良いなと思ってるから、やり続けることでみんなも「あの人がやってくれたから、この道は取り敢えずここまで行ける」って思えるようになって欲しい。そこからまた違う道を開く人がいるかもしれないけど、そういう人たちが「自分はめっちゃ変かも」みたいな不安を持たずに堂々とやれるようになったら嬉しいですよね。私の後に続く子たちが、「We're so not different」って思いながら生きることが出来たらいい。
- 最後に、去年はなかなか思ったようなライブ活動が出来なかった一年だったと思いますが、お二人の「今年はこうなればいいな」という展望を教えてください。
Awich - 私はリリースをいっぱいすると思います。ライブに関しては、本当に今めっちゃ考え中で。今年以上の、もっと先の未来のことを考えて、「私たちの住む世界はどうなるんだろう」みたいなことも考えた上で動きたいし。色んな人が関わってくれて、私のことを考えてくれてるんで、みんなと一緒にこれからの表現方法を今考えてる途中です。でも取り敢えず、作品とかリリースはガンガンやります。
AI - 私はAwichさんをチェックして(笑)。Awichさんを見て勉強して、今年こそはライブしたいなって。ツアーも去年あったんですけど、延期になったりキャンセルになったりしたんで。何かしらの形で見てくれてる人を喜ばせたいですね。
Awich - AIさんのツアーについて行きたいです。前座に使ってください。
AI - 何言ってるの、自分がやるわ!(笑)。
Awich - いやいや、やめてください!(笑)。
AI - いつか二人でやりたいですね。超やりたい。
Awich - 私はデジタルの世界の表現力も超高まってると思うんで、そこにも力を入れたいですね。
AI - ダンスもヤバいしね。
Awich - AIさんのツアーについていって学びたいです。
AI - 楽しみしかないですね。
- ありがとうございました。
Info
■ミニアルバム『IT’S ALL ME - Vol. 2』
2021年2月24日発売
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・シングル曲MV +メイキング映像
【CD】※初回限定盤&通常盤共通
1.Not So Different
2.JUMP
3.Off You
4.Expectations
5.HOPE
6.Not So Different Remix feat. Awich
All tracks Mixed by D.O.I. @ Daimonion Recordings
Mastered by Randy Merrill @ Sterling Sound, New York
【初回限定盤特典DVD】
Not So Different (MV)
Not So Different (Extended Behind the Scenes)
ギフト (MV)
ギフト (Extended Behind the Scenes)
Kokoro feat. Jenn Morel, Joelii (Lyric Video)
All Directed by 柿本ケンサク
Except “Kokoro” by Hideyuki Ishii
通常盤(CD)
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