【特集】Life with Tattoo Vol.4|Kaji(Joytown Tattoo )インタビュー

タトゥーへの理解を深め、より私たちの社会にとって身近に捉えるための特集『Life with Tattoo』。本特集では、様々な形でタトゥーに関わる人々を通して、クールなファッションや自己表現として存在しながら、同時に社会の奇妙な歪みの煽りを受けてきたこの文化について改めて考える。

その第4回は、タトゥースタジオ・Joytown TattooのタトゥーアーティストKajiにインタビュー。タトゥーアーティストから見た日本におけるタトゥーカルチャーの変遷や、デザインの多様化、実際にタトゥーを入れに来る方の傾向などについて訊いた。次回の第5回では、実際にKajiにタトゥーを入れて貰った際のレポートを掲載予定なのでそちらも合わせてチェックしてみて欲しい。

取材・構成:島田舞

写真:寺沢美遊

 - FNMNLはヒップホップやストリートカルチャーを軸としたメディアでして、ピックアップするアーティストもタトゥーを入れている方が多いです。Joytown TattooにはTohjiさんも来ていると伺いました。

Kaji - そうですね。Tohjiさんはちょうど1年前ぐらいから。今は色んなスタジオがありますからね。うちはアパレルと一緒にスタジオをシェアさせてもらっているので、どちらかというとファッション的に見られていると思います。

 - ファッション感覚でタトゥーを入れる方も近年多くなってきていますね。

Kaji - 今はインターネットやSNSがあり、昔と違って事前にアーティストさんの世界観や情報を調べてからコンタクトを取れるのでタトゥーは大分入れ易くなってきたと思います。でも一生ものなので、勢いとかではあまり入れすぎない方が良い気もしますね(笑)

 - 中には目立つ箇所に沢山入れる方もいますが、そこに対してはもう少し慎重になった方が良いと思いますか?

Kaji - いや、別にそんなことはないですけど。ただ、入れすぎちゃった人も僕は仕事上見てきているので、勢いも大事ですけど、勢いがつきすぎて失敗するのは気をつけた方がいいと思います。日本でもタトゥーは表現方法として認められては来てますが、そういう部分もあるので。初めての方は入れる場所には気をつけた方がいいですね。

 - 最初は自分にしか見えないところからがいいでしょうか?

Kaji - そこから試していっても良いですね。タトゥーは年を取ってからも入れられるので。いきなり埋めたいじじゃなくて、入れたいものが出来たら入れながら楽しんでいくっていうのも良いかなって思います。あんまりこういうことを言うと、俺がおじさんっぽいかもしれないですけど。タトゥーはシールみたいに剥がせないので。

 - Kajiさん自身が最初にタトゥーを知ったきっかけや、憧れを抱いた経緯はどういったものだったんでしょうか?

Kaji - 90年代の海外のグラフィティの雑誌かな。僕は元々はグラフィティが好きで、10代から20代前半の頃にハマっていたのですが、その頃のグラフィティライターの中に彫り師になる人達が出てきて、僕の中にグラフィティからタトゥーという動線が無かったので衝撃的でした。そこから「タトゥーっていう表現方法も良いな」って考え始めたんです。

 - 当時国内にはグラフィティライターから彫り師になる人は少なかったんですね。

Kaji - 当時は和柄か、アメリカントラディショナル。後はトライバルとか、大きくその3つ位しかなくて。グラフィティを糧にするっていうのは当時は珍しかったかもしれないです。僕は元々絵が好きで子供の頃から絵は描いていたんですが、そのままグラフィティを通してタトゥーに繋がっていったという感じです。

 - 誰かに師事されたのですか?

Kaji - タトゥーアーティストになるためには、刺青の一門に入る方と、独学で学ばれる方がいらっしゃるんですけど。僕は独学で、知り合いの中にタトゥーアーティストがいたのでスタジオに遊びに通わせてもらいながら色々と覚えていった感じです。最後はLAのスタジオで2年ぐらい働いて、そこから日本に戻って来てという感じですね。

 - 練習する時って、自分の体を実験台にするのですか?

Kaji - 僕は自分の体ですね。主に足です。太ももはカラーチャートみたいになっています。インクの発色は時間と共に変わるので経過観察したりしてます。子供の自由帳みたいになっちゃってますね。でも今はシリコンの人工皮膚みたいなのがあったりするので、そういうもので練習する方もいます。でも人の肌がやっぱり一番リアルで感覚が掴めるので、僕は足で練習してました。

 - 初めてお客さんに入れたときはやはり緊張しましたか?

Kaji - めちゃめちゃ緊張しましたね。ちょっと手が震えていたかもしれないです。多少の緊張感は今でもありますね。

 - 入れる時は、その人の一生ものになるということが頭をよぎりますか。

Kaji - そうですね。僕にとっては毎日のことで、変に慣れてきてしまう事もありますが、タトゥーを彫りに来てくれる人にとっては人生で何回かしかないタイミングなので、それは大事にしてあげたいなと。毎日やってると日常になりすぎちゃうので初心を忘れべからずですね。

 - それを仕事にするのは凄いことですよね。

Kaji - 本当タトゥーを仕事にしている人達は全員リスペクトしています。海外には凄腕の彫り師さんたちが沢山いますし、日々素晴らしい作品が生まれていると思います。

 - 例えばどんな方がいるのでしょうか?

Kaji - タトゥーはもちろん、サーフィンも、スケボーも上手くて、男前の上におしゃれで、性格もめちゃくちゃ良い、みたいな。神ですね。今は海外のタトゥー市場は凄く大きいので、彫り師さんの数も多いし本当にピンキリです。

 - SNSの話が先ほど出ましたが、タトゥーアーティストを探す時にその彫り師さんの服装とかスケボーのスキルなどをSNSで見て、そういった基準で選ぶ方も多いのでしょうか?

Kaji - そうですね、センスってその人の色々なチョイスにも出る気がして。そう言うところを見ていくのも自分のセンスと近いアーティストを探すのに良いと思いますね。作品を作る時って言葉に出来ないところを伝えるというか、2択があったとしたら「せーの」で同じ好みの方を選べるアーティストにデザインを任せた方が良いと思います。

- 言語化しづらい微妙なニュアンスが理解出来るということでしょうか。

Kaji - そうですね。そういう部分は今SNSで見ることが出来るので、選びやすくはなってると思いますね。

 - SNSはInstagramが主流ですか?

Kaji - Instagramが今は主流だと思います。開いてパッとスクロールするだけで好きか嫌いか、数秒で判断出来ちゃう。タトゥーは特にビジュアルの表現なので。

 - Instagramが普及する前は、みなさんはどうやって探していたのでしょうか。

Kaji - タトゥーの専門誌が何冊か出版されてました。今はほとんど無くなっちゃいましたけど。『TATTOO BURST』とか『TATTOO THE LIFE』とかで1500円くらいするんですけど(笑)。でも定期的に出ていて、クラブとかでやっていたタトゥーイベントのスナップも載っていたりとかしてましたね。昔はそういうのを参考にしてました。後は口コミですかね、インターネットも無かったですし。

 - タトゥーが国内で浸透してきたのは大体いつ頃なんでしょうか?

Kaji - 90年代頃ですかね。国際的で大きなタトゥーコンベンションが恵比寿であったりとか。その頃は規制も厳しくありませんでしたし。2000年を過ぎた頃からタトゥー雑誌が出てきたりしてタトゥーを入れる人が増えてきました。

その一方で凄く輩みたいのも増えてきてしまってタトゥーのイメージが大分アウトロー寄りになってしまい、プールや温泉、海などタトゥーはダメになってしまい。公共の場所も一気にダメになっていってしまいました。

 - アウトローといえば本職の方たちもいますけど、そういう方達とは別に入れる方々が増えたんですね。

Kaji - 最近はまたタトゥーを入れる人の動機が変わって来ていて、アウトローなイメージよりもアートやデザイン寄りなタトゥーを選ぶ人も増えて来ていると思います。若い子たちの間では特にハイファッションとして表現している人達もいるので。彫り師側もアートスクールを卒業した人や、イラストレーターやファッションデザイナーから、色んな人たちが入ってきています。タトゥーの新しい表現がどんどん出てきているのでタトゥーという概念がどんどん広がってきているんだと思います。

 - アニメや漫画キャラのタトゥーを入れている人とかも、沢山見かけますよね。

Kaji - 今はタトゥーで自分の好きなものを入れて、誰も文句を言わなくなってきたというか。タトゥーは自己満足の世界でもあるので自由だと思いますね。でも良いタトゥーをゲット出来ると本当に自分の宝物のようになるので。最近ではやっと、日本でもその部分を理解してもらえるようになってきた気がしています。こうやってメディアでタトゥーを特集してもらえるのも本当に有難い事ですね。最近は取材のお話を頂く事が増えました。以前に取材で来てくれたライターさんも取材時に最後タトゥーを入れて帰りました(笑)。みんな体を張っています。雑誌やメディアでもタトゥーを見る機会が増えてきている気がします。

 - ここ一年ぐらいでタトゥーブームが来て、お客さんの数も増えましたか?

Kaji - 増えましたね。知り合いのスタジオも昨今は皆さん忙しそうです。そのうちに海外のスタジオみたいに、1,2年待ちのアーティストとかも出てくるかもしれないです。

- 客層はかなり幅広いと伺いました。

Kaji - そうですね、アメリカだと女性の方がタトゥーを入れている方が多いらしいです。女性の方はワンポイントが多いのでアクセサリーみたいな感覚で入れに来る方もいます。40代、50代でタトゥーデビューする方も増えていて、そのぐらい価値観が落ち着いてから入れるタトゥーもまた良いと思います。

 - 確かにその位の年齢になれば自分のスタイルが定まってるので、歳をとってからタトゥー入れるのもいいかもしれもせんね。

Kaji - その方が自分の好みを選ぶ時に迷いが少ないです。

 - では、ファーストタトゥーに年齢はあまり関係無い?

Kaji - 関係無いですね。この間80歳ぐらいのおばあちゃんがファーストタトゥーを入れに来てくれて、足首に小さなパンダのタトゥーを入れたんですが凄く嬉しそうな顔をしてました。娘さんが元々のお客様で。おじいちゃんと来てくれたんですが、おじいちゃんはちょっと呆れてました(笑)

 - いくつになっても、タトゥーを入れたいという気持ちはあるんですね。

Kaji - たしかに、本能なのかもしれないです。タトゥーは世界中に昔からありますからね。マンモスを追いかけていた頃の、南極の氷から発見されたアイスマンっていう原始人みたいな人たちにも、ワンポイントのシンボル的なタトゥーが入っていたらしいですからね。

寺沢美遊 - 私は友達に、「凄く入れたいと思っているけど、何を入れたら良いか分からない」って言われるんですけど、何て答えたら良いと思いますか?

Kaji - 今はネットで世界中の彫り師さんのスタイルを見れる時代なので、探せば自分が入れたいタトゥーのデザインは出てくると思います。Instagram以外だと、Pinterestというアプリがタトゥーの画像が沢山あるので探すにはお勧めです。

寺沢 - 答えは「探せ」と(笑)。確かに私もインスタを見てから急激に興味が湧きましたね。韓国で初めてタトゥーを入れたんですけど、「ヤバい人いっぱいいる!」ってなって楽しくなって、これなら入れたいってものが見つかって。みんな入れたいって気持ちはあるけど、和彫りも違うし、『TATTOO BURST』的なものも違うと思ってるみたいで。

Kaji - タトゥーを入れたいって思ってる人と彫り師さんの出会いもあると思います。タトゥーを彫るタイミングって突然来たりもするんで。今日まさに入れたいと思ってたのが、今こうやって入れるタイミングが来ちゃって.....(笑)。

 - もう私は今日入れるしかないですね(笑)。

Kaji - タイミングも大切です(笑)

  - 確かに私は予約を取れるのがずいぶん先の日程だと、一旦考えてしまうかもしれないです。

Kaji - 海外だとアーティストによっては10年待ちのタトゥーもあるんですよ。それぐらいのタトゥー熱が海外にはあります。

 - 逆に10年どうやって予約の管理をしてるんでしょう(笑)。

Kaji - 本当ですよね。キャンセルしちゃったら「次10年後!?」みたいな(笑)。ちょっと有名になれば1、2年待ちは海外はザラですね。

 - 4月頃の自粛期間中は、予約などはいかがでしたか?

Kaji - 4月は予約制限をかけたりしていたので普段の半分位の予約状況でした。

 - 明けてから凄くなったと。

Kaji - 明けたとたん......(笑)。給付金でタトゥーを入れに来てくれたお客様もいました。

 - コロナ渦以降にお客さんが増えた理由は何だと思いますか?

Kaji - 9月に出たタトゥー裁判の判決も大きいですかね。あの裁判はタトゥーの違法性に関する大きな裁判だったので、日本のタトゥーシーンの1つの分岐点でもあると思います。

 - 今後流れが変わっていきそうですね。

Kaji - タトゥーのイメージもまた変わってくると思います。

 - 今回の特集の一環として、その裁判を担当された弁護士の亀石先生にもお話を伺いました。

Kaji - 関西の方では、実際にタトゥースタジオが摘発されたり彫り師さん達が逮捕されたりでかなり難しい裁判だったと思いますが、弁護士の亀石先生がタトゥーの事を理解して頂き一緒に戦ってくれたおかげで勝訴を勝ち取れたんだと思います。本当にお疲れ様でした。

- そもそもタトゥーアーティストがタトゥーを彫って捕まるというのは奇妙な話です。

Kaji - 本当ですよ。タトゥーが医師法違反なら病院の何科に行けばタトゥー彫れるんですか?って話なので。日本のタトゥーシーンもこれからやっと世界と並んでいける様になってくると思います。

 - このような裁判があるのって日本ぐらいですよね。

Kaji - 先進国というか、文化がある程度根付いた国なのにこれだけタトゥーには厳しいのは日本だけだと思います。

 - やはり「タトゥーを入れている=怖い人」のイメージが残っているからなんでしょうか。

Kaji - そうですね。タトゥーを威嚇的というか自分を大きく見せようとしてしまう魔力に取り憑かれてしまう人もいますからね。

 - 魔力というのは?

Kaji - 人間の変身願望。タトゥーで何者かになろうとして結局何にもなれないことに気づくのか......分からないけど、タトゥーには魔力があるんですね。

 - 自分を変えたい、みたいな。

Kaji - そう、良い風にも悪い方にも。それだけタトゥーはパワーの強いものだと思います。

 - ありがとうございました。

Info

Joytown Tattoo

https://www.instagram.com/kaji.jt/

特集】 Life with Tattoo

Vol.1 サカヨリトモヒコ(カルチャー&タトゥーマガジン『SUMI』編集)インタビュー https://fnmnl.tv/2020/11/09/108981

Vol.2『タトゥー彫り師医師法違反事件』を担当した亀石倫子弁護士 インタビュー https://fnmnl.tv/2020/11/12/110669

Vol.3『10人のFirst Tattoo』https://fnmnl.tv/2020/11/17/108197

Vol.4 Kaji(Joytown Tattoo )インタビューhttps://fnmnl.tv/2020/11/20/110465

Vol.5 My First Tattoo Report https://fnmnl.tv/2020/11/21/111429

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