逮捕されたラッパーが自身のリリックを根拠に通常より重い判決を下される
ストリートでのリアルな経験を歌うことはある種のラップにおいて重要な要素の一つだが、それらが行き過ぎたためにシリアスなトラブルに巻き込まれてしまうこともあるようだ。
テキサス州ダラス出身のラッパーNaNaは、裁判において彼のリリックが暴力的であるということを根拠に12年の収監を言い渡されてしまった。
Dallas Newsによると、裁判官のBarbara LynnはNaNaのリリックを彼が関係していたとされる実際の事件の内容と照らし合わせ、通常より重い判決を下したという。彼のラップは強盗についてのストーリーや、人の顔面を8回も銃撃した、といった内容の典型的なギャングスタラップであった。
Lynnは裁判にて「あなたは人を銃撃したことを自慢げに言いふらしている」としてNaNaを激しく非難している。
リリックの内容が暴力的であることを根拠に重い判決を下されたNaNaだが、ここで問題となってくるのは、その裁判が暴力事件によるものではないということである。実際には、NaNaはコカインの配布によって罪に問われていたという。裁判官が事件とは無関係のリリックを判決の根拠にしたことは、どう考えても不当と言わざるを得ない。
ラップのリリックが裁判において取り上げられたことはこれが初めてではない。2014年にはラッパーBobby Shmurdaの裁判において彼の楽曲”Hot Nigga”が犯行の証拠として検察官によって提示されたが、根拠として不十分であるとして取り下げられている。
ギャングスタラップはストーリーのリアルさが重視されるジャンルだが、それはあくまでアートの一形態でしかなく、現実に起こった事柄と安易に混同するのは危険なことであると言える。FNMNLでは高校生がSoundCloudにアップロードしたラップが問題となった件を過去に取り上げたが、「過激な表現をどこまで現実と結びつけて考えるべきか」という議論は未だに世界中で続けられている。
NaNa側の弁護士は「ラップの内容は12年もの懲役を課す根拠になり得ない」と主張し続けているようだが、彼が正当な判決を受けることを願ってやまない。