【インタビュー】PAS TASTA 『GRAND POP』 │ おれたちの戦いはこれからだ
2022年にプロジェクトを発足した〈PAS TASTA〉。メンバーであるhirihiri、Kabanagu、phritz、quoree、ウ山あまね、yuigotというプロデューサー/SSW/ボカロPの6人は、DAW上の操作から音楽表現を探求し、DTMコミュニティやコアな音楽リスナーを中心に国境を超えて人気を集めてきたサウンド・ギークたちだ。
1stアルバム『GOOD POP』に至るまでの道程については前回のインタビューを参照してほしいが、それ以降、FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大きな舞台への出演を経験した6人組は、2ndアルバム『GRAND POP』にて新たな挑戦を試みたようだ。つまり、自我の音響的露出である「エッジーなエレクトロニック・サウンド」よりも「PAS TASTAのカラー」を求め、バンド(=団結)をアンプにして出力されるデッカいアンサンブルにより「Jポップ」を目指したのだという。
とはいえ「PAS TASTAのカラー」とやらは個性を塗りつぶすものではなく、6人のだいぶ異なる個性の混交体である。そんな様相は、『GRAND POP』全曲セルフ・コメンタリーともいうべき今回のインタビューからも伝わるはず(※イントロ曲除く)。バギーの誕生秘話から客演陣への思い、制作時のエピソード、そして現在のJポップ観などなど、二時間弱のZoomにて。
取材・構成 : namahoge
「非公式MOD」でJポップを駆け抜ける
- 1stアルバム『GOOD POP』(2023)のリリース以降、反響はどうでしたか?
ウ山あまね - 僕は思ったより反響あるなってずっと思ってましたね。それこそ“all night”から、シングルを出す度に想像よりも聞いてもらえている感覚があって。
yuigot - たぶん『GOOD POP』を作っていた段階って、PAS TASTAがどんなグループになるか、どんなスタイルでライブをやっていくのかもほぼほぼ決まってなかった状態で。やっぱりオファーをいただいてライブに出演するにつれて、自分たちが音楽シーンでどう捉えられているかを客観視できた気がします。『FUJI ROCK』や『SUMMER SONIC』みたいな大きいフェスもそうだし、ZERO TOKYOもそうですけど、大きい場所でのライブを期待されてるんだなっていう認識がだんだんできていったというか。
hirihiri - でも、それでDJ集団と見られることも多かったっすよね。それがあって今回の作品になってるところもあるかもしれないです。
- たしかに2ndアルバム『GRAND POP』では大きくバンドサウンドを導入して、「トラックメイカー」とは一概に言いづらい作品になっていると思います。今作の話に移りますが、まずプロジェクトを開始したのはいつ頃でしたか?
ウ山あまね - いつだっけ?
hirihiri - ええと、一番最初どうだったっけ。
Kabanagu - 今、Discord遡ってるんですけど……
(各自PAS TASTAサーバーを確認したり、カレンダーの予定を見返したり、憶測で語りあったりする時間)
- ……整理すると、2023年の夏頃には次に呼びたい客演を検討しはじめ、次第にオファーを開始。客演陣が固まってきた中、3月時点で12月8日のO-EASTを抑えたため、ワンマンライブの日程から逆算して『GRAND POP(仮)』の制作が本格始動する、ということですね。
hirihiri - ワンマンのチャンネルが3月15日にできて、ちょうどその日にFigmaのボードが貼られてます。
yuigot - そのあたりで「あらためてみんなで話し合おう」ってなったんだ。
- 制作に向けて『GRAND POP(仮)』のコンセプトから固めていこうと。
ウ山あまね - 最初はたしか、『GOOD POP』の兄弟じゃないですけども、そのバディみたいなキャラクターを作るというアイディアを僕が出したんです。そしたらKabanaguが「『GOOD POP』の非公式MOD」ということを言い出して。
- 「非公式MOD」。
Kabanagu - そう。続編って言ってもいろいろあるじゃないですか。単純に続きをやるとか、仲間が出てくるとか。いろんな選択の中で、一番面白くなりそうなのが「非公式MOD」だと思って。
ウ山あまね - でも難しくて、MODの解釈が。
Kabanagu - ゲームやってないとわかんないかも(笑)。
yuigot - おれは正直今でもあんまり掴めてないかもしれない。
- 「非公式MOD」って要するに、ゲームにおけるファンメイドの二次創作みたいなものですよね。
hirihiri - 改造●●●●みたいな。
Kabanagu - 固有名詞を出すのはやめよう。
- (笑)。でも、チートとはニュアンスが違いますよね。ファンカルチャーの一種としての、遊び方の拡張という印象があります。
Kabanagu - それを好きすぎるユーザーが「いやこれがいいんだよ」ってオリジナルになにか変更を加える、みたいなイメージですね。
hirihiri - 正統な真っすぐな進化かって言われたら全然そんなことはないっすからね。普通に考えて、『GOOD POP』のキャラクターが実は車でした、って意味がわかんない(笑)。でも完成してみると、そんなに違和感がないのがすごいなって思います。
ウ山あまね - 「非公式MOD」以外にも「ズームアウト」と「乗り物」というキーワードがあって。これらは全部繋がっているんですけど、まず『GOOD POP』のキャラクターを「ズームアウト」したらどうなっているのか、というのをみんなで話し合ったんです。で、たとえば『GOOD POP』の顔が生きものの一部だったらとか、いろんなアイディアが出たんですけど、あの顔が実は「乗り物」だったんじゃないか、という話になったら結構みんなノリノリになってきて。
yuigot - ブチ上がった記憶はあるけど、なんでなのかはわからない。
ウ山あまね - それからみんな『GOOD POP』の顔をかたどった乗り物をFigmaのボードに落書きし始めて、特にphritzさんは車から派生した「Jポップを駆け抜ける」っていうキーワードを気に入っていて。
- 『GOOD POP』をもとにキャラクターイメージの構想から始めて、表象としてもスタンスとしても「車」に決まっていったと。
phritz - やっぱり前作の地続きで、いろんなアーティストとコラボレーションして鮮やかなパレットのアルバムを作ることは継承路線だったので、そういう意味で『GOOD POP』から始まった道をそのまま突き進んでいく、みたいな考えはあったと思うっすね。
ウ山あまね - 『GRAND POP』という名のライセンスで。
phritz - 『GRAND POP』という名のでかい道路。
hirihiri - なんなんだそれは。
個から集団へ │ “BULLDOZER”
- 「車」のコンセプトが決まってから“BULLDOZER”の制作が始まったんですか?
ウ山あまね - いやたしか“BULLDOZER”が先にあって、「車」が後から決まって。
hirihiri - あれ、決まってからでしたっけ?
ウ山あまね - だって昨年の年末には……
(各自PAS TASTAサーバーを確認したり、カレンダーの予定を見返したり、憶測で語りあったりする時間)
- ……整理すると、Eastern Marginsのコンピレーション・アルバム『Redline Impact』に収録される楽曲として、2024年3月には“BULLDOZER”の制作が始まった。なので「車」のコンセプトが決まったのとほぼ同時期に取り組んだ曲ですね。
ウ山あまね - そうか。記憶が曖昧だ。
phritz - もともとEastern Marginsのコンピのコンセプトが「アジアのハイパーポップ」みたいな、マキシマリズムをテーマに掲げていたんですけど、単純にハイパーポップやるよりはっていうので今みたいな方向性になったんだと思います。
yuigot - インディロックをキーワードに、Mura Masaの“No Hope Generation”やslowthaiをレファレンスにして作ろうって話でした。
phritz - そうだ。エイトビートでブンブンブン……ってベースを刻むやつを作ってみたいよね、みたいな話でまとまって。で、自分がデモ作って。
- バンドサウンドが思いきり導入されるのは、PAS TASTA的には大きな方向転換ですよね。
yuigot - でも僕のイメージとしては、ロックをやってみたいだけで「生演奏するぞ」とはあんまり考えてなかった気がします。だからライブで演奏することも想定してなかったような。
phritz - その前に作ったパソコン音楽クラブ“KICK&GO”のリミックスで、ちょっとロックっぽいことやったじゃないですか。あれが自分的に結構ハマってて、その路線でパスタの曲をやってもいいんじゃないかと思った記憶もあります。
- 結果的に、アルバムのバンド風な方向性を決めた一作なのかなと。
yuigot - その頃は全然そういうつもりじゃなかったんですけどね。
phritz - けど、“BULLDOZER”が完成に向かうにつれて「ロックっぽいのいけるじゃん」みたいな思いは共通してあったんじゃないですかね。ただ、その後の方針としても「ロックでやろう」っていうよりは、「ウェルメイド感」ですね。やっぱりネクストステージに行くためには、インターネットおふざけ音楽集団から脱却して、PAS TASTAという集団で勝負したかったというか。
yuigot - 「DTM集団でいいのかよ、俺ら」みたいな感じだった気がする。phritzくんは特に。
- とはいえ、往年のダブステップ意匠が混ざるブレイクダウンが挿入されるのに「ふざけ」の片鱗を感じなくもないですが(笑)。
Kabanagu - 最初はシンプルな構成のロックだったんですが、自分のターンでふと思い立ってブレイクダウンパートを挿入してみたらめちゃくちゃしっくり来てしまい、そのまま採用されました。この曲をこの曲足らしめる要素を追加できた感覚があり、うれしかった! そのあと、hirihiriに「古すぎるワブルベースを加えてくれ」とお願いして今の形になりました。
hirihiri - ちょうどその頃、webcageが“TENSIONNN”っていう2010年代ダブステ回帰みたいな新曲を出してたんですよね。“BULLDOZER”のダブステっぽい箇所はだいたい俺の音っすね。
phritz - あの声ネタは? 「ルーボーイベース!」っていう。
hirihiri - それも自分かな。
yuigot - いや、そこは俺。覚えてるもん。“zip zapper”の時の声ネタ拾ってきて、ニヤニヤしながら入れたから。
hirihiri - まじか。
- でもアルバムの全体として、「ここは誰々が入れたんだろうな感」はかなり薄まっているかもですね。“BULLDOZER”は派手に展開しつつもまとまりがあるのがいいなと。
phritz - みんなが自分の音を入れつつも、ごちゃつきがないっていうか、いいバランスで「パスタらしい」音を入れてくれた曲だとは思いますよね。そもそも2ndアルバムでは、一人ひとりの色を突っ込んでいくというよりは、「パスタのカラーを追求していこう」っていう裏テーマがあったんで。パスタとしての熟練というか、自覚というか……
yuigot - 前作のぶつかり相撲感から、もっとグループとしての連帯を見せたい、というのは「車」のコンセプトを決めた時から話していたことで。それを最初に体現できたのが“BULLDOZER”なのかも。アルバムのコンセプトをうまく完遂できた曲でもあるなと思うっす。
ポップへの回帰 │ “byun G feat. JUMADIBA, LIL SOFT TENNIS”
- 遡って、年始から手掛けていたというJUMADIBA & LIL SOFT TENNIS参加曲“byun G”は、完成形になるまで難航したとのことですね。
ウ山あまね - ジュマテニス曲は実質3曲ぐらい作ってるんで。
Kabanagu - そう(笑)。
phritz - その第一弾がBalming Tigerみたいな、ゆっくりめのビートで、暗めのトーンで。JUMAさんに送ったけどボツになって。
hirihiri - 拍子も変で、途中でBPMも変わって、ラップ乗せるの普通にムズいってなったんすよ。で、パスタだけの曲に回そうとなって、あまねさんの歌も入って「パスタ始まったー」って思ったんですけど、それも結局ボツになっちゃった。
phrtiz - というのも、いつかPeterparker69と「次のパスタどんな感じなん」みたいな話になったので、その時のデモを聞かせたら、Yさんが「ハロウィンみたいな曲だ。ミイラの格好して踊ってるミュージックビデオ撮ってほしい」みたいに言っていて。本人は悪い意味で言ってるわけじゃないんですけど、その感想をあまねさんに伝えたら、あまねさんちょっと拗ねちゃって(笑)。
- (笑)。
ウ山あまね - いや、今聞いたら別にいい感じなんですけどね。
phritz - 別に悪い曲とは誰も言ってない。Yさんは「この曲は恥ずかしい。でもそれがいい」みたいなことを言っていて。
ウ山あまね - 「でもそれがいい」なんてことはないだろう!
yuigot - 真に受けんなよと思ったけど(笑)。
- (笑)。二度続けてボツになったのが第一弾のデモだったと。
ウ山あまね - 話を戻すと、第二弾はスタジオでセッションで作ろうということになって。
hirihiri - その時はデモ4つくらい持ってったよね。
phritz - 第二弾はそれこそ“Rumble”みたいな、テンポ高めのダークなグライムをやろうっていって、なんとなく曲の形が見えるまでセッションもできたんですけど、これも結局……「俺らみんな、暗いの得意じゃないよな」みたいな、UKベースでクールにいくのもちょっと違うような気がしてきて。ジュマテニスのラップはもう録れていたので、トラックを一新したのが第三弾ですね。
yuigot - ダークな第一弾、第二弾を経て「やっぱポップだな」となった記憶はあるっす。
- そして第三弾はどういうふうに?
phritz - okgiorgioっていうイタリアのプロデューサーがいるんですけど、4つ打ちにオーガニックなギターを合わせる感じで、一旦そこをレファレンスにしたら一気に進みました。ジュマテニスの歌詞のオラオラな感じにギターの爽やかさをぶつけていくのは、これはこれでパスタっぽいアプローチなのかな、と。
- 最終形の“byun G”はダンストラックとしてもだいぶ華やかで、たしかにポップさを感じます。これがグライム路線のままだったらアルバムの雰囲気も随分変わるでしょうね。
hirihiri - いやあ、いい曲になったよ。
ウ山あまね - 総括。
hirihiri - だって第二弾のデモの時期、不安でしたもん。「これでいいのかな」みたいな。yuigotとquoreeくんにラーメン屋で相談した覚えがあります。
yuigot - あ、そうだ、ラーメン屋で。
hirihiri - ラーメン屋の時、quoreeくんがめちゃめちゃ熱かった。「まだいける」って。
quoree - たしかにすごく情熱があった気がする。ラーメン屋だったし。
ウ山あまね - ラーメン屋は関係ある?
hirihiri - quoreeくんがたまに出す熱さ、すごい助かる。
ミク・バイレファンキ │ “B.B.M. feat. ピノキオピー”
- 続いて“B.B.M.”。ピノキオピーさんについては、あまねさんが強い影響を受けていることを公言していますね。過去のツイートからは「人格形成レベルで影響」があるとのことです。
ウ山あまね - 今回ピノさんにお願いすることになったのは、もちろん僕のプッシュが強かったと思うんですけど、そもそもパスタとしてボカロPとコラボしたいという話はあって、みんな納得感のある方というのがピノキオピーさんでした。パスタとしても一度『NIGHT HIKE』で共演させていただいて、僕らのことをすごく褒めてくださって……「今(Martin Garrixの)“Animals”流すのが本当によかった」って。
- 妙な共鳴が(笑)。それでオファーして、PAS TASTAでデモを作ったと。
hirihiri - たしかあまねさんのデモが使われたんすよね。
ウ山あまね - そうっすね。hirihiriもデモ出してくれてたんすけども、僕がやっぱ言い出しっぺだしと思って頑張って。今回ピノさんにぶつけるのにバイレファンキが面白いんじゃないか、というのはメンバー内で決まっていたので、Pabllo Vittarを聞いて研究してバイレ・ポップスを作って。
- バイレファンキといえばhirihiriさんのイメージがありますが、そこはあまねさんのデモで進んだんですね。
hirihiri - いや、めっちゃよくてびっくりしました。さすがです。
ウ山あまね - それからデモを回して、わりと荒唐無稽な風のバイレ曲が出来上がったので、「えいや」とピノさんに投げたんですけども、返ってきたら完全にピノさんの曲になっていて、めちゃくちゃ感動したのを覚えてます。投げた時点ではパスタの曲だったはずなのに、ピノさんの言葉やボーカルのラインで完全に持っていかれたっていうか、「本気なんだ」みたいな……マジでぶつかっていかないと食われる、みたいな。
hirihiri - 抑えると全然パスタの曲にならない感じでしたね。
- それから“B.B.M.”についてはReeeznDさんによるMVも制作していますね。コメント欄を見ると海外からのコメントも多いです。
Kabanagu - めっちゃ多いっすね。
hirihiri - ピノさんの海外リスナーが聞きにきてるのかな。
ウ山あまね - たぶんそれもあるし、偶然その時「ブラジリアンミク」が流行っていて。
hirihiri - そうだ。“B.B.M.”が完成した頃ぐらいにめちゃくちゃ流行り始めて。
- Picthforkのアルバムレビューでも「ブラジリアンミク」に触れられていましたけど、あれは偶然のタイミングだったっていう。
ウ山あまね - 完全なる偶然。追い風って言っていいのかわからないけど、ラッキーでしたね。
- ちなみにMVのCGのモーションアクターにはyuigotさんがクレジットされていますね。
yuigot - あれは本当に頑張ったかもしれない。
Kabanagu - すごかった。感動した。
ウ山あまね - そもそもダンスっぽいMVにしたいというアイデアが最初にあって、合宿の時にみんなで振り付けを考える時間があったんですけど、yuigotの動きが信じられなさすぎて(笑)。
hirihiri - ブラジルのパッシーニョという踊りを入れてみるかという話になったり、phritzくんが買い物袋を持ってくねくねする踊りを考えてみたり、そういったのをyuigotがコピーしようとしたら全く別の独特なものになって(笑)。それがすごすぎたからyuigotに頼んだんですよ。
Kabanagu - 「人間ってこんな動きできるんだ」って。
yuigot - 完全にクリーチャーの動きになってたから。
hirihiri - 真夏に川で踊らされてかわいそうだった。
yuigot - トラッキングアプリ動かねえし。
ウ山あまね - トラブル多かったんですよね(笑)。
yuigot - 曲よりもダンスの方に貢献してるまであるんで……
ファビュラスな改造車 │ “My Mutant Ride feat. 柴田聡子 & TAKU INOUE”
- 次にシングルカットされたのは柴田聡子 & TAKU INOUEが参加した“My Mutante Ride”ですね。まずはその座組になった経緯を教えてください。
yuigot - もともとTAKUさんがパスタのことを好きだって言ってくれてたのと、僕らもファンだしというところから始まって。でもTAKUさんもプロデューサーなので、誰かボーカリスト立てた方がいいよねと検討していたんですけど、ちょうど柴田さんが『Your Favorite Things』を出したくらいのタイミングで、誰かがポロッと名前をあげて。そのアルバムがめちゃめちゃよかったし、後からわかったことですけど実は柴田さんもMaltine Recordsの文脈に詳しかったりして。
Kabanagu - “Reebok”のtofubeatsリミックスもありますもんね。
- 意外にも接点があったと。制作はどのように進行しましたか?
ウ山あまね - TAKUさんは最初から「yuigotとギターバトルをしたい」みたいな話をしてたと思うんですけど、そこからPolyphiaの“ABC feat. Sophia Black”をレファレンスにして、早い譜割りで柴田さんに歌ってもらうのが面白いんじゃないか、という話になって。たしかyuigotがビートを作ってTAKUさんに投げて、返ってきたものを僕らの方で魔改造して……というかたちで進めました。
- Drift Phonkっぽいカウベルが鳴っているのも気になりました。
ウ山あまね - それは柴田さんとの最初の打ち合わせで、「Pimp My Ride」という金持ちのラッパーが車をめちゃくちゃ改造するコメディ番組が好きだという話をしていて。「改造車」がキーワードになったので、それでPhonkになったんじゃないかな。それからちょうどその時、柴田さんが叶姉妹と対談していたのも記憶に新しかったので、「ファビュラス」もキーワードのひとつでした。
- 「改造車」と「ファビュラス」?
hirihiri - だからPolyphiaとPhonkみたいな。
phritz - あと、一応IDMもあったね。
hirihiri - PhonkもIDMもあんまり残ってないけど。
- (笑)。
ウ山あまね - この曲はhirihiriのベースがいい仕事してるなって個人的には思ってる。曲の推進力が生まれてるような印象があります。
hirihiri - ウソ。嬉しい〜。
ウ山あまね - あとこれも個人的かもしれないですけど、柴田さんから仮歌が返ってきた時の感動もすごかった。
Kabanagu - ヤ〜バかったですよ、あれ。
ウ山あまね - ウソだろ、みたいな。ちょうどこの間柴田さんと直接会う機会があって、「仮歌がきた夜のこと鮮明に覚えてます」って言ったら、柴田さんもその日のこと覚えてくれていたみたいで、「あんな真夜中なのに、みんな起きていてすごい」って。
一同 - (笑)。
ウ山あまね - 「深夜なのにリアクションが早くて嬉しかった」という、我々の不健康が功を奏したエピソードが……
yuigot - めっちゃいい話じゃん。
- 情報量の多いトラックに対して、軽やかな歌詞とフロウで乗りこなす具合が見事ですよね。
yuigot - やばいっすよね。
ウ山あまね - 今、シンガーソングライターで一番面白い曲書くの柴田さんだなって確信しました。
Kabanagu - 日本語ってこんな乗せ方できるんだっていう驚きですよね。どんな影響受けたらああなるんだろう。
phritz - めちゃくちゃフロウが海外のそれで感動した記憶がある。言葉の切れ方とか。
ウ山あまね - なんやかんや聞いたことのない曲。本当に素晴らしい。
yuigot - 素晴らしい。
BPM200の無印良品 │ “丁寧 feat. chelmico”
- ここからはアルバム曲で、chelmicoの参加した“丁寧”について。前作では鈴木真海子さんソロでの参加でしたが、chelmicoとしてのオファーとなった経緯から教えてください。
hirihiri - 最初、僕がRachelさんとクラブで喋った時に、「パスタ誘ってよー」みたいに言われて「忙しいかなとか思ってたんですけど」と言ったら、「全然いいのに」ってなって。で、「めちゃくちゃ速いのやりたい」とのことで、“初音ミクの消失”とかも出てきて。
- アルバム内でも“丁寧”のBPMは最速ですね。
Kabanagu - ちょうどぴったりBPM200。
hirihiri - その後にchelmicoの2人と打ち合わせをして、「恐竜」だったり「丁寧な暮らし」だったりのテーマが出てきて。「少女漫画」って話もありましたよね。あと「ブリジャートン家」、「クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶジャングル」、「チャゲアス」……
Kabanagu - そんなだったっけ(笑)。
hirihiri - 「マミコさんは忙しい、XGいいよなー、チャゲアス」ってメモがあります。
ウ山あまね - 鈴木真海子さんは好きな恐竜がプテラノドンで、Rachelさんはアンキロサウルス。
- 具体的すぎるヒアリングが(笑)。それからトラックの制作はどのように?
phritz - 今チャット遡ってるんですけど、MilkyWayの“アナタボシ”っていう曲が最初レファレンスになってますね。
Kabanagu - 「きらりん☆レボリューション」の。おれが貼ったやつ。
yuigot - 名曲。
phritz - そっからyuigotが「アイルランド民謡っぽいスケール面白そう」って言ってて、自分もフィドルっぽい感じいいかもと思いはじめて、そこから「BPM200の無印良品」っていうコンセプトが、おぼろげに……浮かんできて、そっからって感じですね。
- じゃあ、制作はphritzさんから始めて。
phritz - そうっすね。メインのリフはSpliceのサンプルなんですけど。
ウ山あまね - えっ、そうなの!
Kabanagu - 吹いたのかと思った。
phritz - そのメロディーを吹き直したりとかはしたけど。
- その辺はわりとメンバーも知らないまま進むんですね(笑)。
hirihiri - たしかにphritzくんにしてはすごいキャッチーな。
phritz - なんだと。
hirihiri - いや違う違う(笑)、ああいうリフってphritzくんあんま作んないじゃん。
Kabanagu - たしかに毛色違うかもっていう感じは。
- さておき、“丁寧”後半のカオスになってくる展開は、インターネット感というか、ある種の期待されるPAS TASTAらしさがあるな、と思いました。
yuigot - やっぱり曲が出揃ってみて改めて『GRAND POP』の曲を聞くと、これが唯一はっちゃけてるアレンジかもなと思いますね。
phritz - でも前半の無印パートで結果的にバランス取れてるのかなと自分は思うっすけどね。ほどよいインターネット感というか、やっぱりJポップが前に出ていて。
- ひときわポップさを担保するのは、chelmicoの2人の歌声ですよね。
yuigot - 2人はマジですごい。
Kabanagu - レコーディングの日、しょっぱな歌が乗った瞬間にあまねが「うわっchelmicoだ!」と言ったら、「chelmicoだよ!」と言い返されていてすげーよかった(笑)。
- レコーディングにも同席したんですね。
ウ山あまね - 変な曲すぎて、途中Rachelさんの笑いが止まらなくなって、レコーディング中断するくだりがあって(笑)。
phritz - その笑い声もうっすら入ってるんですよ、曲の中に。「皆さん見つけてくださ〜い」っていう。
ウ山あまね - イースターエッグみたいなね。
phritz - レイチェル・イースターエッグが。
ウ山あまね - あと、歌のディレクションもあって、「こういう歌い方のほうが、将来カラオケに入った時みんな喜ぶと思う」って言ったら、Rachelさんが「カラオケになるわけねーだろ!」って(笑)。
一同 - (笑)。
Kabanagu - 「歌うわけねーよ!」ってデカい声でいわれて(笑)。
ウ山あまね - いやあ、歌ってほしいっすねえ。
国道ポストロック │ “亜東京 feat. キタニタツヤ”
- では続いてキタニタツヤさんの“亜東京”。うねうねと曲がりくねるギターリフが印象的な一曲ですが、オファーの経緯からお願いします。
yuigot - 『GOOD POP』を出した頃からパスタに言及してくださっていたのがまずあって。「今をときめく」といったらあれですけど、Jポップシーンのド真ん中で活躍しているキタニさんを一度フィーチャーしてみたい、というのもあって、前から面識のあった僕やKabanaguからオファーしたら、まさかの受けていただいたという。
Kabanagu - ありがたい、本当に。ポストロックのルーツを感じさせながらも、同時に万人にもマニアにも刺さるポップさのあるキタニさんに憧れがあって。一緒に制作できたらポストロック・パワーを互いに高めながら最強のポップスが生み出せるのではないか、とずっと感じていたので、お呼びできてうれしかった!
yuigot - 『GRAND POP』はみなさんのご厚意によって成り立ってることを痛感いたします。
- それから制作はどのように?
yuigot - この曲はワークフローが特殊で、前提としてキタニさんのボーカルとギターの両方を入れてもらいたくて。それで、僕ら側でビートだけのデモをいくつか作って、キタニさんに選んでもらうっていう流れがありました。
- コンペ形式で。
ウ山あまね - たぶん10パターンぐらい出していて。「この中から気に入ったやつ使ってください」って、デモの中の1曲だけが使われるんだろうなって思ってたんですけど、キタニさんすごいのが、3曲ぐらいのパターンで返してくれたんですよ。
hirihiri - 忙しいのに。
Kabanagu - しかも全部よくて選べないっていう。めっちゃ話し合ったね。
ウ山あまね - それで、あまりに選べないので、僕ら側もそのうちから同時進行で2曲作ってみて。
yuigot - もったいないから。
- 6人いるからこそのやり方ですね。
ウ山あまね - 最終どっちにするかを本当にギリギリまで悩んで。もう片方のパターンもマジで出したかった。
Kabanagu - 出したかったー! おれとquoreeがポストロック濃度を高めまくったやつね。めっちゃよくなかった?
yuigot - いいよね。
ウ山あまね - で、キタニさんがもともと提案していた「国道」っていうテーマで歌をつけてもらって。それをもとに、こちらで完成まで回した感じです。
- 他の曲についてもなんですが「車」というテーマを伝えて、それぞれの客演アーティストの関心から歌詞を書いてもらう、という流れだったのでしょうか? 「改造車」にしろ、「国道」にしろ。
hirihiri - 打ち合わせの段階で「車」はあくまでキーワードだから使っても使わなくても、みたいな感じで伝えてたんですけど、意外とみんな「車」に関心あるみたいで。
ウ山あまね - 車に一家言あり、みたいな。
- それから制作のレファレンスとなったのは?
hirihiri - ポストロックとbrakence?
Kabanagu - 制作当初の個人メモを読み返していたら、pegmap、NUITO、宇宙コンビニ、ハヌマーンの名前もありました。
yuigot - ポストロック文脈はキタニさんだけでなく、メンバー間でも僕やquoreeやKabanaguがそっちにルーツがあるので、そこにフォーカスしてみるのもいいんじゃないか、みたいなムードは最初からあった気がする。個人的には凛として時雨やthe cabsやPeople In The Boxとかの日本のポストロックがすごい好きで、キタニさんの入れたリフや歌い方からそういう雰囲気を感じたので、思いっきり自分のルーツを爆発させてみた、みたいなところがありましたね。
Kabanagu - “亜東京”は制作の最後の方にさらに爆裂よくなった気がしてて。あれってphritzくんかな、ギターをモジュレーションするやつを入れてくれて。あれでめっちゃ締まった感じがする。
yuigot - phritzくんっすね。
Kabanagu - あれがすげーよかったのと、あとドラムめっちゃ連打してるの入れたのって誰ですか?
yuigot - それは俺っすね。
Kabanagu - あれ、めっちゃいいっすねえ……ただいいっすねえと言うだけになっちゃうけど。
歌のパワーで押し切る │ “ISEWAN feat. 清 竜人”
- さて、次は清 竜人さんが参加した“ISEWAN”。おそらくオファー時点で接点のないアーティストとのコラボは初めてですよね。
Kabanagu - シンプルすぎる理由なんですけど、清 竜人さんのことめっちゃ聞いてて……曲もスタンスもとにかくかっこいいじゃないですか。それで、みんなから「無理っしょ」と言われる前提で言ってみたら、みんな「やりたいよね」と言ってくれて。
yuigot - 一番ダメもとではあったかも。
Kabanagu - それで声かけさせてもらったら、「ほぼOKだけど、とりあえず一旦会いましょう」みたいになったんですよ。で、めちゃくちゃ緊張しながらみんなで向かって。
yuigot - あの日ありえない緊張してた。
- そして制作が始まり……“ISEWAN”で気になっていたのは、リリックがまさかの心中の話じゃないですか。一挙に清 竜人ワールドが展開されるのに「この人ってどこにいても清 竜人なんだ」と感動しました。
Kabanagu - 本当に感動した!
ウ山あまね - 歌詞については「車」がテーマということくらいしか話してなくて、「サーキット」が好きとは聞いていたんですけど、竜人さんから返ってきたらいきなりあの歌詞で。天才ですよね。
- それから“ISEWAN”のトラックはどういう風に進めましたか?
yuigot - 僕が清 竜人25や『MUSIC』での華やかな路線の曲が好きで、これまで作ったパスタの曲の方向性的にも、そういう曲調が合う人となると竜人さん以外いないんじゃないかと思っていて。具体的にはJacob Collierの『Djesse』シリーズの豪華な音像をイメージしてビートを作って、みんなで回して。そこから僕が個人チャットで竜人さんとやりとりしていたんですけど、急に歌詞全文と歌がやってきて、〈もうお前となら死んじゃう〉って、本当びっくりして(笑)。
- Jacob Collierの名も出ましたが、ゴスペルやソウルとトラップが合流した2010年代後半のUSのサウンドを思い出しました。
ウ山あまね - Brasstracksの感じは個人的にはあったかもしれないです。Chance The Rapperとか。
- PAS TASTAにはこういう引き出しもあるんだなと。
ウ山あまね - 楽しかったですね、この曲作るの。
hirihiri - 自分はあまねさんとphritzくんのコーラスがマジでかっこよくて好きです。
- 個人的には〈どこまでも視界を奪っていく〉の箇所であまねさんの声が重なってくるあたりに、「本当にコラボしてるんだ……」と胸を熱くしたり。
ウ山あまね - そんなに量感あるかわかんないですけど、たぶん16本ぐらい重ねてますね。作っている時も「この曲は歌のパワーで押し切る」とphritzさんがしきりに言っていて、あんまり過度な味付けはしないみたいな、とにかく歌を前面に出すっていう。
yuigot - 俺がビート足そうとしたら「歌が」って。
phritz - フューチャーベースとかになりすぎても面白くないよなと思って。最初はシンセで音を重ねてデカくしよう、みたいな話もあったんですけど、そうじゃなくてここはオーガニックに、声を重ねて分厚くしようみたいな。「歌の力だ!」みたいな。
ウ山あまね - あと、実はちょっぴりKabanaguのコーラスが入ってて。
Kabanagu - けっこう入ってます!!! 頑張りました(笑)。
ウ山あまね - Kabanaguから回ってきたプロジェクトファイルだと声の音量がめちゃくちゃちっちゃくて、「意味あんのかな」と思ってミュートして聞いてみるんですけど、「あった方がいいな」ってなるんですよ。ちゃんと意味があって入れてんだなっていうのが面白かったですね。“ISEWAN”だけじゃなくて、“My Mutant Ride”や “THE CAR”でもそう。
Kabanagu - うれしー、やったー。
yuigot - ありがとうKabanagu。
Kabanagu - あとphritzくんもさりげなく声を変えて忍ばせてることあるっすね。
ウ山あまね - それこそ“丁寧”の最後の「生きてみたいな」っていう子どもみたいな声とか。
hirihiri - そうなの?!
phritz - 「生きてみたいな!」っていっぱい録って、ピッチあげて。わんぱくなガキンチョがいっぱいいる感じにしたくて。
〈はやさの中にしか/おれは いないのだろうな〉 │ THE CAR
- 最後の曲です。パスタメンバーのみで制作した“THE CAR”。これは合宿で作ったとのことですね。
Kabanagu - 那須塩原に2泊して。
yuigot - phritzくんの運転で。
hirihiri - 前回もそうでしたけど、1回は合宿してテンション上げたいみたいなのが多分あるんですよね。“zip zapper”も“THE CAR”も、行かないと作れなかった曲ではあるなって思います。
Kabanagu - そう、絶対そうだわ。
ウ山あまね - あと、なんだかんだでみんな楽器ができるんですけど、セッションして作ったのはたぶんこれが初めてです。
- そもそもバンド経験のあるメンバーが多いですよね。これまでのインタビューで聞いたのは、DTMを始める以前にバンドをやっていたhirihiriさんやあまねさん、ドラムもギターもいけるyuigotさん……
Kabanagu - 軽音部とかを入れていいなら自分も。
quoree - 自分はないですね。
- でもquoreeさんはギターも弾けるし、ポストロックのルーツがありますね。phritzさんは?
phritz - バンド通ってないっすね。
- 経験や嗜好からしてphrtizさんが一番バンドから遠い。そんなメンバーで、“THE CAR”はどうしてシューゲイザー的な方向に向かったのでしょうか?
yuigot - めっちゃ覚えてるのは、あまねさんがいろいろ案を出すのに対して、quoreeがかたくなに方向性を提示していたことで。
quoree - まず、あまねさんは合宿になると絶対におふざけアイデアを提案するんですよ。
一同 - (笑)。
quoree - 個人的には、アルバムの最後は綺麗に終わりたい気持ちがあったんです。おふざけは無しで、ストレートないい曲で、真剣にやろうよと思って。
hirihiri - quoreeくんの熱いところが。でも最後の曲って決まってたんだもんね。
quoree - そうですね。
ウ山あまね - それでquoreeがレファレンスを提示してくれて。
quoree - Sweet Tripです。いいよなーって思ってて。
yuigot - それ、個人的にはめっちゃ共鳴してる。
- ゲスト無しの楽曲としては、オープニング曲“BULLDOZER”と対になっているような印象もあります。
ウ山あまね - 自分としては対というより、続編として書いていて。“BULLDOZER”がまず、闘牛が闘牛士に勝つっていう歌なんです。そもそも闘牛って、牛を殺すための催しなんですよ。牛に短剣を刺して、怒らせた牛を闘牛士が避けて、徐々に出血量を増やしていって、最終的にいかに美しく牛を殺すかっていう……僕、それが許せなくて。
- 道義的な目線が。
ウ山あまね - 牛があまりにかわいそうすぎるじゃないですか。歌の中だけでも牛が闘牛士に勝つものにしたかった。とはいえ、文化として闘牛を否定することはできないので、“BULLDOZER”は負けた闘牛士の方にもスポットライトを当てるような詞にしているんですけども。で、その続編を考えた時に、「じゃあ闘牛に勝った後の牛ってどうなんの」みたいなことに思い至って。パスタも一緒だなっていうか、「これ作った後どうすんの」と。
- パスタも!
ウ山あまね - それに、今回のライブもそうです。詳しいことは言えませんが物語が終わった後、やっぱり「どうすんの?」みたいな。だから3つ物語があって、全部のエンディングとして機能するようにしたかったんですね。そこで坂口安吾の『白痴』を読み返したんです。そのラストも、「全部終わった。さあどうする?」みたいな、そこがスタート地点であって、その後めいめいはどうするのか、という話なんです。最終的に出た結論が、“THE CAR”の最後の数行なんですけども。
- 〈はやさの中にしか/おれは いないのだろうな〉……
Kabanagu - インタビューでようやく歌詞の意図を聞くっていう(笑)。
hirihiri - そんなに詳しくは言ってなかったけど、どっかで実存主義みたいなテーマだと言ってましたね。歌詞見てるとそういう雰囲気はすごい感じ取れます。
ウ山あまね - サルトルとかちゃんと読み直して書きました。
- でも、他のメンバーからしてもリリックはあまねさんに一任しているんですね。
yuigot - 信頼があるっすね。
quoree - あまねさんの言葉を信じているから。
- いい話……。そしてアルバムが完成し、ワンマンライブが控えています。自分も脚本を書いており、結構内容にも関わっておりますが、あんまり突っ込んだ話はしないほうがいいですか?
Kabanagu - まあ、お楽しみということで。
hirihiri - 練習してます。
yuigot - めっちゃ練習してます。
「おれたちの戦いはこれからだ」
- では最後に今作の総まとめというか、今後の方針を含めてお話を伺えたらと思います。
ウ山あまね - いろんな局面でそれぞれ向いている方向が異なるとは思いますけど、個人的に思ってるのは、パスタだけで作るEPにも挑戦してみたいですね。それこそ“THE CAR”がセッションで1曲できた成功体験になったので、そういう作り方で何曲かやってみたいなと思ってます。
hirihiri - 普通にパスタだけの曲も聞きたい。
yuigot - でも今後というと、やっぱりワンマンが終わってからじゃないですかね。『GOOD POP』の時もワンマン後に自分たちの立ち位置が見えてきたところがあるし、終わってからはじめてスタートみたいな。
hirihiri - あまねさんの書いてくれた歌詞と同じだ。
- 〈はやさの中にしか/おれは いないのだろうな〉……
ウ山あまね - 早さの中にしか人は存在できないんですよね。
- このままインタビュー締めていいのか分からない(笑)。
ウ山あまね - いやー、嫌ですね(笑)。
- 今後について、PAS TASTA発起人としてphritzさんどうですか?
phritz - 『GRAND POP』でリスナー層も確実に広がっているとは思うんですけど、やっぱりJポップってやっぱ産業ありきというか、Jポップ自体が一つの産業みたいなものなんだっていう話を知り合いの音楽家と話して、ようやくそれを体感した感じがあって。Jポップって音楽のジャンルじゃなくて、ドラマやアニメのタイアップありきだし、それでJポップっていうものが出来上がってる、みたいな。そう考えると、今作で一つ上のステージに行けた感はありつつも、全然まだ道半ばだなっていう感覚がありますね。
hirihiri - まだJポップじゃない?
phritz - いやJポップなんだけど、Jポップであり、Jポップじゃないっていうか(笑)。自分たちがPAS TASTAを始めた頃に思っていたJポップよりも、本当のJポップって遥かにデカいものなんだなっていう。「ズームアウト」の話じゃないですけど、我々は世界地図の一部だけを見ていた的な。
yuigot - Jポップという名の暗黒大陸。
hirihiri - Jポップと言い張ることでJポップを拡げたい、みたいなことを最初の頃言ってましたけど、たしかにまだまだ先がある。
phritz - でも、だからといって悲観するわけじゃなくて、まだやるぞっていう。
ウ山あまね - うん。
hirihiri - そうすね。
phritz - 「おれたちの戦いはこれからだ」っていうか。
Kabanagu - 打ち切りじゃん(笑)。
一同 - (笑)。
- じゃあ「おれたちの戦いはこれからだ」ということで締めてよろしいでしょうか(笑)。
hirihiri - まだ王位継承編。
Kabanagu - これからだ。
phritz - でも、これで解散したら面白いっすね。
一同 - (笑)。
yuigot - フラグすぎるって。
Kabanagu - ノシ
ウ山あまね - いやー、もっと忙しくなってから解散したいっすね。
hirihiri - まだまだ忙しくなれますね。
ウ山あまね - 喧嘩するほどには忙しくないから。
phritz - 毎回インタビューで解散に言及して終わるっていう(笑)。
ウ山あまね - うちらはどうやって終わるのかという。
yuigot - チェックポイントみたいな感じで。
Info
Title: GRAND POP ODYSSEY
Date: 2024.12.8 (Sun)
Venue: Spotify O-EAST
Open/Start: 17:30 / 18:30
Door: ¥5,800(税込 / ドリンク代別)※オールスタンディング
11月1日20時よりチケット一般発売開始
Artist:PAS TASTA
Title:GRAND POP
Release date:2024/10/30(水)
Trak list:
1.GRAND POP!!!!!!
2.BULLDOZER+
3.My Mutant Ride feat. 柴田聡子 & TAKU INOUE
4.byun G feat. JUMADIBA & LIL SOFT TENNIS
5.丁寧 feat. chelmico
6.B.B.M. feat. ピノキオピー
7.亜東京 feat. キタニタツヤ
8.ISEWAN feat. 清 竜人
9.THE CAR
Mixing & Mastering:phritz
Art Director:Ray Masaki(Studio RAN)
Car Design & Modeling:Timur Dautov
3D Texture & Rendering & Rigging:Tomoro Hanzawa