2019年ベストアルバム40 Selected by FNMNL編集部

2019年も終わりを迎え、上半期に引き続き2019年リリースされたアルバムの中からFNMNL編集部によってベストアルバムとして厳選した40枚をコメントと共に紹介していく。登場順序は作品名のA~Z順となっている。

1. African Giant - Burna Boy

2010年代下半期の大きなトピックといえばアフロビーツシーンの台頭。従来のアフロポップにR&Bやヒップホップなどの要素をフュージョンさせたサウンドはナイジェリアを中心に、多くのアフロディアスポラが住むUKをはじめ、USシーンにも普及。USからのアフロビーツへの回答ともいえるGoldLinkのアルバムも記憶に新しい。アフロビーツを巡る状況がこれまでにないものとなった時にリリースされたのが Burna Boyのアルバム『African Giant』だった。Burna Boyは、2016年ごろから世界的な注目を集め始めた唯一無二の重厚なボーカルを持っている。本作は2010年代後半のアフロビーツシーンの世界的波及を総括するような、バラエティに富んでいる。アフロという芯を貫きつつも、世界全体を射程に収めた巨大なアルバム。(和田)

2. All My Heroes Are Cornballs – JPEGMAFIA

週刊少年ジャンプで現在連載中のマンガ『チェンソーマン』をご存知だろうか?同作は悪魔が人を襲う事件が多発する世界を舞台に、悪魔と契約した少年が壮絶な戦いに巻き込まれる様を描いたもの。ほぼ全編が露悪的なセリフ、暴力的な描写に満ちているが、同時に様々なポップカルチャーからの引用、「ヒーロー物」と呼ばれるジャンルに対する批評性、そして読者を惹きつけるキャッチーさを持ち合わせている。少年マンガという強固なフォーマットの構造に則りながらも、独自性を模索した『チェンソーマン』。同作のコミックを既刊の4巻まで読んだ時、筆者は今回のJPEGMAFIAのアルバムを第一に連想した。『All My Heroes Are Cornballs』はブラックジョークのようなリリック、政治への言及、インターネットミームを始めとする様々なカルチャーからの引用、奇妙かつ暴力的なサンプルで満たされていながら、時々ハッとするようなポップさが顔を覗かせる。前作『Veteran』と比較しても圧倒的にエモーショナルな展開が多い。1曲目“Jesus Forgive Me, I Am A Thot”では、合間に銃声のサンプルやがなり立てるように激しくスピットするパートを挟みつつ、フックでは美しいファルセットでリスナーを魅了する。前作がメインストリームのラップそのものを解体することを試みていたとすれば、今作は変わらずオルタナティブでありながらもトラックの構造自体はオーセンティックな楽曲が多く収録されている。まるで、日本の少年マンガと同様に文法が良くも悪くも確立されてしまったメインストリームのラップにあえて接近することで、そのフォーマット自体の批評を試みているようだ。ここ数年のラップが形式化された、という点においては「Type Beat」カルチャーの功罪が大きいが、文字通り“JPEGMAFIA TYPE BEAT”の名を冠したトラックでは唐突にメインストリームのラップとかけ離れたグラインドコア風のトラックを叩き込み、我々リスナーが思い浮かべる「オルタナティブで前衛的な」JPEGMAFIA像を「どうせこんなもんだろ」とばかりにコケにする。ポップに聴き手を引き込みながらも一切の予断を許さず、パブリックイメージの確立を徹底的に拒み、巧妙に撹乱する(まさに彼のタグ“You think you know me”が意味するところ)。そんな底知れなさが垣間見えるアルバムだった。(山本)

3. Andless - Daichi Yamamoto

Jazzy Sport所属のラッパーDaichi Yamamotoの1stアルバム。特筆すべきは幅広いビートを気持ち良く乗りこなしつつキャッチーなメロディを聴かせるポップセンスだ。中でもokadadaプロデュースの“U.F.O”は、独特なビートアプローチに彼の卓越したスキルが現れている。“上海バンド”や“She Ⅱ”などの、目で見た光景と心象風景が入り混じり、それらがリスナーの目の前に浮かび上がってくるようなリリックも特徴的。個人的にはKID FRESINO参加のガラージチューン“Let It Be”がお気に入りです。(山本)

4. Anger Management - Rico Nasty, Kenny Beats

今年を代表するプロデューサーといえばKenny Beats。EDM出身らしい楽曲の構成力と、フロア映えバッチリの硬質なトラックは、間違いなく2019年を象徴するサウンド。そしてそのKenny Beatsのエネルギッシュなトラックに一番合うラッパーはRico Nasty。その2人のタッグ作が悪いはずもなく、圧倒的にフレッシュなバンガー揃いで本当に最高でした。(和田)

5. Apollo XXl - Steve Lacy

楽曲制作のほとんどをiPhoneで行い、DIY精神を貫くSteve Lacy。当アルバムは彼のソロとして初のリリース作品となる。the internetの彼よりも全体的にpops色が強くありつつも、洗練されたサウンドが印象的だ。”Basement Jack”や”Like me feat. Daisy**”を筆頭にキャッチーな曲もありつつ、”Love 2 Fast”にてサイケなトラックに少しざらついたヴォーカルをのせたエモーショナルな曲もあり、情緒的な彼の新しい一面が垣間見える。手掛けた作品がグラミーにノミネートされ、アーティストとしての地位はすでに確立されているが、まだ21歳と若い才能なので今後も期待大である。(島田)

6. Assume Form - James Blake

昨年、自身が”sad boy”と評される事に対して男性が感情を吐露する事に対する不健全な意見だ、と批判したJames Blake。このステイトメントからも感じられるように、本作では彼自身の成熟と強い自信に溢れている。これまで培ってきたメランコラリックな表現方法を土台に、Travis Scott、Andre 3000など大物アーティストを招き、これまで見られなかったような大胆な楽曲にも果敢に挑戦している。(小出)

7. Bussin' - Devin Morrison

12月初めに来日し、Circus Tokyoにて念願のライヴを披露したDevin Morrisonによる1stアルバム。90sリバイバルが来ている中、当時のR&B、New jack swingを忠実に再現した他にはないアルバムとなった。中でも、日本人の両親を持つJoyce Wriceとの相性の良さを見せたWith YouやアルバムタイトルとなっているBussin’など、devinの魅力を最大限に引き出したトラックが詰まっている。(高田)

8. BUBBA – KAYTRANADA

アルバム全体に漂う怪しい雰囲気、一つ一つの音色の質感の気持ち良さ、「この音どこから出てんだよ」といった感触から、同じく今年新作をリリースしたMoodymannを連想させられた。ポストJ Dilla、Questloveらしいレイドバックしたムードは前作と共通するが、今作に至って明らかに煙たさ、ドラッギーさを増している(13曲目“Freefall”などに顕著)。クラブの大きい音で聴きたいアルバムでした。(山本)

9. Chasing Summer – SiR

今年は個人的にはR&Bをラップよりも多く聴いた1年でしたが、その中でも派手さはなくとも滋味がしっかり残るアルバムがTDEのシンガーSiRのアルバム『Chasing Summer』。人と人の微妙な距離感について優しくエモーショナルに歌い上げるSiRと、Kendrick Lamarをはじめとしたゲスト陣の差配も見事。(和田)

10. CHIMAIRA - Leon Fanourakis

今やシーンを代表する若手ラッパーの1人となったLeon Fanourakisが満を持してリリースした1st アルバム。アルバム全編を通してハードなビートが鳴り響くため、少々代わり映えしない印象を抱くかもしれないが、Leonの多彩なフロウに加えAnarchyやHigher BrothersのPsy P、Meloなど豪華フィーチャリングアーティストのラップにより上手く飽きさせない作りになっている。逆に、少し変わったテイストの楽曲をいれず、一貫して全て重いベースのトラップというスタイルでここまで作り上げたのは評価に値する。そこに関して言えば、Leonのラップのスキルはもちろんのこと、盟友YamieZimmerやChaki Zuluのビートがあったからこそ、ここまで完成度の高いアルバムになったと言えるだろう。(早坂)

11. crush - floting points

"イギリスの名門レーベル「Ninja Tune」と契約し、シングルリリースを挟んで発表された待望のニューアルバム。テクノ、ジャズ、アンビエントなどを全体の楽曲の要素に含んだこのアルバムでは、アルバムの幕開け”Falaise”から、ラストにくる楽曲”LesAlpx(Dub)”まで、floting pointsのオリジナリティー溢れるセンスを発揮。誰もが感じたことのないエレクトロニックミュージックを体感させてくれる。(高田)

12. Diaspora – GoldLink

2年ぶりのリリースとなった待望の新作アルバム『Diaspora』。Tyler, the creatorやjay prince、Wizkidなどが参加した今作は、”U Say”や”Yard”などトライバル調なダンスミュージック、ダンスホールといったトラックを入れつつも、“Rumble”や”Maniac”といったハードな側面も見せる、ジャンルレスなスタイルが印象に残った作品だ。(高田)

13. Endorphin - Octavian

『Endorphin』はOctavianのキャリアの中でも、様々なジャンルを行き来する彼のスタイルが特に強調された作品だった。OctavianはUSへの接近が顕著な現行UKラップシーンの中でも特に国やジャンルの垣根を超えたアーティストだが、今作でもゴスペルや歌もの、四つ打ちなど多様な楽曲たちを一つの色をもって纏め上げている。特にSBTRKT“Right Thing to Do”をカバーした“Walking Alone”はモダンなダンスホールやロックがない交ぜとなったユニークなトラックで、他のアーティストには無いOctavianの独特な感覚が顕著に表れている。(山本)

14. Fever - Megan Thee Stallion

XXLの恒例企画Freshmanにも選出されたMegan Thee Stallionによる1年ぶりのニューアルバム。パワフルな印象をより強調させ、力強いバースで聴き手を圧倒させる、彼女の存在が際立ったアルバムとなっている。中でも客演にDaBabyを迎えた”Cash Shit feat. DaBaby”は、互いにFreshmanにも選出されている新鋭ラッパーであり、いい相性を前面に押し出している。(高田)

15. Gappy - おかもとえみ

2015年に結成された5人組シティポップバンド、フレンズのヴォーカルを務めるおかもとえみが今年の10月にリリースした自身初となるソロフルアルバム。mabanuaやillmore、PARKGOLFなど今の日本の音楽シーンを代表するプロデューサー陣を迎えた同作は彼女の持つポップセンスにR&B、ヒップホップの要素が上手く組み合わさった良作だ。アルバム全体を通して、洒落たグルーヴを感じられるので是非、夜の散歩中にでも聴いてみてほしい。(早坂)

‎16. GODBREATH BUDDHACESS - 舐達麻

今年日本語ラップ界に突如に現れた刺客、舐達麻。正確には以前から活動していたが、今年の1月に公開されたMV”FLOATIN’”をきっかけに、彼らの強烈な個性も相まって人気が急上昇。FNMNL編集部内でも、今年一番聴いた曲に舐達麻の曲だったというスタッフが半数と、影響力は絶大。ビートで参加しているGREEN ASSASIN DOLLERの才能にも注目だ。彼のビートは、オーセンテックながらも今の空気感を取り込み洗練されており、その上に3MCのダーティーなラップが重なり絶妙なバランスを保っている。そして舐達麻と言えば、強烈なリリックだ。彼らにとっては日常をリリックにしているだけなのだろうが、近年ここまでサグいバースを生み出し、かつここまでリアルに体現しているアーティストはいなかったであろう。今後も彼らの動きに注目だ。(島田)

17. Hi This Is Flume – Flume

FLUMEの中でも最も攻撃的なサウンドのアルバム。特にHigh Beams(feat. slowthai)での無機質な高音にのせたslowthaiのラップや、Voices (feat. SOPHIE & Kučka)やUpgradeで現れるブツブツと切れる暴力的なビートには要注意。(島田)

‎18. Hot Pink - Doja Cat

シーン随一のセックスポジティブを誇るDoja Catの最新作。トラック1“Cyber Sex”からTygaをフィーチャーしたラストトラック“Juicy”に至るまで、ほぼ全編が下ネタで占められていると同時に驚くほどの音の良さが維持されている。Blink 182ネタのロック風味な“Bottom Bitch”からGucci Maneをフィーチャーしたメロウなダンスチューン“Like That”まで、バリエーションに富んだトラックの数々に対応するさりげないスキルの高さも聴きどころ。人肌恋しい夜のお供に最適なアルバム。(山本)

19. Ignorance Is Bliss – Skepta

ついにリリースされた、イギリスのグライムシーンを代表するラッパーの1人であるSkeptaのニューアルバム。今作では、前作の『Konnichiwa』からグライムらしい無機質な要素を残しつつも、USのトラップの要素も加えたような楽曲が多く、アメリカでの知名度も高いSkeptaの戦略を感じるとともに、全体としてうまくアップデートされている印象だ。曲の上では相変わらず彼らしい歯切れの良いラップが披露されているが、リリックに注目してみると自身が子供を授かったことなどもあってか、かなり内省的な歌詞もあり、その変化に注目して聴いてみても面白いかもしれない。(早坂)

20. IGOR - Tyler, The Creator

今年6月、ポップスをはじめ現代の音楽シーンに造詣の深いライター・ブロガーのimdkmとDU Booksの編集を手がける傍ライターとしても活動されている小澤俊亮の2名による今作のクロスレビューをこちらで行った。是非チェックして欲しい。

21. importance – dodo

その異質な存在感をもって、2019年上半期において最も注目されたラッパーの一人となったdodo。全7曲という小ぶりなアルバムでありながら、自身の内省が緻密に編み込まれたラインには、一度聴いただけでは受け取れない程の重みを感じる。Youtube上で彼が配信しているラジオ「ラジオーストラリア」も必聴だ。(小出)

22. Kirk – DaBaby

今年の頭にリリースされたデビューアルバム『Baby on Baby』に収録された“Suge”がバイラルヒットを記録して以降、XXL Freshmanに選出されるなど一気にスターダムを駆け上がったDaBabyが満を持して発表したセカンドアルバム。よくファニーな一面がフォーカスされがちな彼だが、このアルバムでは亡くなった父親のことを歌った"Intro"を筆頭に彼の真面目な側面も垣間見ることが出来る。また、単純にスキルが高いので、ラップが非常に聴き心地が良いのもDaBabyの特色の1つだろう。ビートもバンガーなものが多く、彼の“勢い”を存分に感じられる作品だ。(早坂)

23. LOVE AND COMPROMISE – Mahalia

R&BといえばUKのR&Bも大きな盛り上がりとなった1年でした。Burna Boyの項で書いたアフロビーツシーンの盛り上がりもあり、移民が多く住むUKのシーンのサウンドが多様化していったことなどがその理由でしょうか。ニュースターJorja Smithの大ヒット曲"Be Honest"にもBurna Boyが参加していましたし、MahaliaのアルバムにもBurna Boyはしっかりと存在感を残していた。そのMahaliaのアルバムは2018年にリリースされた先行曲で一気にその名を広めた"I Wish I Missed My Ex"や、こちらもUKのElla Maiをフィーチャーした大ネタ使いのメロウバンガーな"What You Did"など、多彩なサウンドを取り入れるのがスタンダードになったR&Bシーンにおいては文句なしの作品でした。(和田)

‎24. MAGDALENE - FKA twigs

今年11月、FKA twigs自身に今作についてスペシャルインタビューを行った。1stアルバムから5年を経てのリリースとなった今作だが、その間に彼女の身に起きた変化などからどのような想いを今作に込めたのか語ってもらった。是非チェックして欲しい。

25. Mandy & The Jungle – Santi

今作がデビューアルバムとなるナイジェリアのシンガーソングライターのSanti。軽やかなビートにトロピカルな雰囲気漂うフレッシュなサウンドが多く収録されており、全体的にメロウなトラックが多いのが印象的だ。見事に素晴らしいデビューとなったSantiの今後も目が離せない。(高田)

26. Not Waving,But Drowning - Loyle Carner

サウスロンドン生まれのラッパー、Loyle Carnerによるセカンドアルバム。彼の繊細でありながら淡々と繰り出されるライミングが、メロウなビートと合わさる事で絶妙なノスタルジーを与えている。ロンドンを牽引する同世代のTom Misch、Jorja Smithもゲストとして参加している。(小出)

27. Nothing Great About Britain – slowthai

ルックスの悪ガキ感もたまらないslowthaiの1stアルバム。ビートのバリエーションも、そのルックスにふさわしいソリッドでダーティーなものばかり。"Inglorious"における動のslowthaiと静のSkeptaのフロウの対比もバッチリだが、個人的にはMura Masaが手がけた"Doorman"がベスト。このスタイルで1作品作ってくれないでしょうか。(和田)

28. Only Diamonds Cut Diamonds – Vegyn

Frank Oceanとのコラボレーションで注目を集めたプロデューサーVegynの1stアルバム。JPEGMAFIAをフィーチャーした異形のトラップチューン“Nauseous/Devilish”、メンフィスラップにユニークな形でオマージュを捧げた“Thoughts Of Offing One”のような楽曲もありつつ、同時にAFXやレイハラカミを彷彿とさせる“Debold”、もしくは “It's Nice to Be Alive”などのIDMに接近したようなトラックも収録されている点に、彼が持つ独特なバランス感覚とフレキシブルさが現われている。いわゆる「IDM」や「エレクトロニカ」といったジャンルはストイックなアーティスト性に依拠する面もあるが、Vegynのトラックはトラップのプロデューサー的な感覚をエレクトロの音像に還元させているようだ。もちろん確かなトラックメイクのスキルが無ければ成立しない芸当ではあるものの、そこに耽溺しすぎない風通しの良いカジュアルさが彼の楽曲の特徴だろう。「ジャンルに捉われないミレニアル世代」といった世代論にここで加担するつもりは無いが、それでもサウスのヒップホップとUKのエレクトロニカを同時にリファレンスする感覚、あるいは楽曲のタイトルやビデオクリップに漂う乾いたユーモアのセンスには時代性を感じずにいられない。今後も様々なシーンを牽引する存在となるはず。(山本)

29. Over It - Summer Walker

“Girls Need Love”のヒットを皮切りに、今年にかけて一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたSummer Walker。そんな彼女のデビューアルバムが『Over It』だ。23歳とは思えない甘美な歌声とトリッピーでスロウなビートが相まってアルバム全体が妖艶な雰囲気を纏った同作は、女性R&Bアーティストの1週間のストリーミング回数の最高記録を塗り替えるなど数字の面でも実績を残しており、今年を代表するアルバムの1つといっても良いだろう。先日には、ファンとの関係性やライヴに疲れを見せ、引退をほのめかすなどメンタル面が心配ではあるが、無理をせずアーティスト活動を続けてほしい。(早坂)

30. Ride on time - 田我流

7年ぶりのソロアルバムとなった新作は、モダンなサウンドを巧みに取り入れながらも、家庭を持つなど自身にあった変化や、その中にある苦悩などを田我流らしい力強い言葉に落とし込んだ会心作。制作期間中に出会った人々をプロデュースや客演で招くという、ある意味で危険な賭けも必然的なラインナップにみえるというのも、さすがだ。時代に乗らされた作品ではなく、しっかりと自身の方向に波を引き寄せている。(和田)

31. So Much Fun - Young Thug

アトランタの鬼才ラッパーYoung Thugによる待望のニューアルバム。自身初となる全米アルバムチャート1位を獲得した同作においても彼の唯一無二の存在感は相変わらず健在で、その独特なフロウとワードセンスが際立つ“非常に楽しい”作品となっている。様々なテイストのビートをそつなく乗りこなし、自分のものにしてしまうスキルはもはやベテランの域に達していると言えよう。また、地元アトランタの後輩であるGunnaやLil Babyのみならず、新鋭ラッパーのLil Keed、盟友のFuture、Lil Uzi Vert、Travis Scott、そしてJ.Coleと豪華なフィーチャリングもアルバムの魅力の1つだ。個人的なハイライトはトロピカルなビートの上でGunnaとYoung Thugが見事なコンビネーションをみせる“Surf”。(早坂)

‎32. Songs for You – Tinashe

RCA Recordsから離脱したTinasheによる新アルバム。前作の『Joyride』に比べてポップに仕上がった今作は、前作に比べ客演が少ない中で、迷いのなくR&Bを披露。特にMAKJをフィーチャーした”Save Room for Us”や”Perfect Crime”のようなベースが四つ打ちで程よい歌声を混ぜ合わせたサウンドは、彼女にしか作れないトラックだろう。また、個人的には”Cash Race”のような変化球あるトラップは印象に残った。(高田)

33. The End – Shlohmo

個人的にはエモラップに対するShlohmoなりの回答と考えると、とてもしっくりした作品。エモラップが刹那的な快楽と、それに伴う痛みを並置させるような音楽だとしたら、このアルバムは快楽は先延ばしにされ、鈍い痛みだけが延々と続くようなもの。補足ですがShlohmoも所属するコレクティブWedidのシンガーDeb Neverのシングル群もとてもよかった。(和田)

34. The Lost Boy - YBN Cordae

今年8月、コラムとして今作のレビューをこちらで掲載した。大阪なおみとの交際でも話題になったCordaeだが、コラムでは彼のアルバムリリースまでの活動から今作を制作するに至るまでを紹介している。今作をきっかけに彼に興味を持った人は是非チェックして欲しい。

35. VVORLD – VaVa

リスナー待望のVaVaの2ndアルバム『VVORLD』。一曲目からラストにかけて彼が作り出す世界の中を旅するようなコンセプチュアルな構成もさることながら、一貫してパーソナルな独白をキャッチーで誰もが共感出来るように聴かせるバランスは彼ならでは。『MOTHER』サンプリングの“現実 Feelin’ on my mind”は今やアンセムとなっているが、VaVaという存在がナードなヒップホップヘッズたちに与える希望は大きいはずだ。(山本)

36. When I Get Home – Solange

「原点への探求」をテーマとし、自身の故郷ヒューストンに思いを馳せた作品。Pharrel Williams、Earl Sweatshirt、Playboi Cartiなど大物達をゲストとして招きながら、直感的かつ流動性を強く感じるアルバムに仕上がっている。リリースとほぼ同時に公開されたショートフィルムからは、これからの新しい音楽の在り方を模索しているように思える。(小出)

37. WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE WE GO? - Billie Eilish

Billie Eilishを名実ともにスターへと押し上げた1stアルバム。サブベースを強調したトラップ以降のサウンドをポップミュージックに取り入れる手法が一般的なものとなる中、今作のミックスのバランスは一つのスタンダードを確立した感もある。その発言やユニークなキャラクターなども含め、2010年代のカルチャーの中で同時多発的に注目されたトピックやコンセプトがBillie Eilish一人の登場によって一気に集約され(ポップのフィールドで)顕在化した、という点でも彼女は重要な存在だ。今作を語る言葉には「ベッドルームで作られた音楽が世界へ」のようなクリシェも散見されるが、そういった分かりやすい「新しさ」より、むしろ2019年における「当たり前」を改めて世界に示したことこそがBillie Eilishの功績ではないだろうか。(山本)

38. ZUU - Denzel Curry

ゴスでダークな前作『TA13OO』とは一転、ギャングスタラップ的なアプローチを採ったDenzel Curryの新作『ZUU』。本来90年代のサウスやGファンクへの強い思い入れを持つ彼のラッパーとしての身体性や高いラップスキルを存分に味わうことが出来るアルバムだ。Tay Keithプロデュースの“AUTOMATIC”やRick Rossをフィーチャーした“BIRDZ”、そしてラストを飾る“ P.A.T.”は爆発的なバンガーチューンとなっている。そして特にキャリア初期から彼を知るファンにとっては、古巣であるRaider Klan、そしてそのリーダーSpaceGhostPurrpへオマージュを捧げたインタールード“BLACKLAND 66.6”は涙無くして聴けないはず。(山本)

39. 7 - Lil Nas X

今年の上半期、良くも悪くも最も話題をさらったのは間違いなくLil Nas Xの“Old Town Road”だろう。ジャンルという枠組みに囚われないこの楽曲は、新たな時代の到来を感じさせた。そんな楽曲を収録したのが彼のデビューEPである『7』だ。正直、完成度の面から見るとイマイチな印象だが“Panini”のような流行を追った曲もあれば、つづく“F9mily (You & Me)”は入りから完全にロックで彼はもはや歌っている。“Old Town Road”で彼が見せたジャンルレスな姿勢がこの作品にも反映されていると言えるだろう。しかし、ここまで振り幅があると逆にコンセプチュアルな作品を作るのは難しくなっていきそうだが、その辺のバランスを上手く調整するのがLil Nas Xの今後のポイントかもしれない。(早坂)

40. !!! – LEX

今年の日本におけるヒップホップシーンを象徴するラッパーの1人、LEXが満を持してリリースした2ndアルバム。上半期のベストには前作の『LEX DAY GAMES 4』を選出したが、今作はインタビューで彼自身も語っているように、1stと比べるとかなり攻撃的な作品だ。とはいっても“RockFord Hills”やアルバムの最後を締めくくる“Cleopatra”などは今までの彼とは異なるテイストで、新鮮に映る楽曲も収録されており、飽きさせない。変幻自在なフロウと類い希なワードセンスも健在であり、来年も日本のラップシーンを牽引していくアーティストの1人であることは間違いないだろう。(早坂)

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