【スペシャルインタビュー】FKA Twigs 『Magdalene』| 自分を再構築すること

FKA Twigsが1stアルバム『LP1』から5年ぶりとなる2ndアルバム『Magdalene』を本日リリースした。聖書に登場するマグダラのマリアに因んだという新作。FKA Twigsは1人のアーティストとして、1stアルバムよりパーソナルな部分をさらけ出しているが、単一ではなく、様々なFKA Twigsの姿を刻みつけている。

アルバム制作中には子宮の腫瘍の切除手術を受けるというショッキングな出来事もあり、大きな傷を精神的にも負ったという彼女。その辛い経験に打ち克ち新たな自己を掲示した最新作について、とFNMNLだけに答えてくれた質問も交えつつスペシャルインタビューという形でお届けする。

写真 : Matthew Stone

取材協力 : Beatink

- 前作『LP1』から5年という長い年月が経っていますが、「そろそろセカンド・アルバムを作らなければ」とあなたを駆り立てた出来事・感情はどんなものだったんでしょうか?

FKA Twigs - 私はアーティストだから、やっぱり自然に表現をしたい。だから、インスピレーションが降りてくるのを待っていた。表現したいという気持ちが高まって、自分の中から何かが出てくるのを待っていた。それが出てきたから、アルバム制作を始めた。

- 『LP1』というアルバムと、あの作品を作った当時の自分を今振り返った時、どんな感慨を抱きますか?

FKA Twigs - すごく誇りに思ってる。当時の私も今と変わらずアーティストとして自分自身を誠実に表現できたと思う。

- タイトルの『Magdalene』はマグダラのマリア(=新約聖書中の福音書に登場する、イエスに従った女性)に因んでいるそうですね。以前から彼女には関心を抱いていたのですか? 今回彼女に目を向けたきっかけはなんだったんでしょう?

FKA Twigs - マグダラのマリアには子供の時からずっと興味があった。彼女は娼婦とも呼ばれ、聖人とも呼ばれている。彼女には様々な説があって、すごく興味があって。一人の女性にストーリーの層があり、人それぞれの見方でそれが聖人にも罪人にもなる。このアルバム全体が彼女についてというわけではないけれど、彼女からは特に影響された。だから、昔から本も読んでいるし、彼女への関心は最近始まったわけではないよ。でもここ数年で、彼女への評価が見直されてきている。ヴァージンであったイエスの聖母、処女マリアと呼ばれ、処女ではないとされていたマグダラのマリアは罪の女と呼ばれていた。でも、彼女の「罪」とされるものに対する誤解が、現代になって解かれようとしている。私たちが求める究極の母親像、女性像の変化とともに、マグダラのマリアが一人の女性として再評価されつつある。一人の女性として彼女がどう生きていたのかにすごく興味がある。何が女性像、女性らしさで、人々がそれぞれに何を女性像としているか、そしてそれがどう変化しつつあるか。彼女はそれの象徴だと思う。

- アルバム制作に着手した当時、どんなアルバムを作るべきなのか、或いは、どんなアルバムを作りたいのか、具体的なアイデアはありましたか?

FKA Twigs - 自分を正直に表現すること。自分が感じるものをそのまま形にすることだった。でも、それがどんなサウンドになるかは想像できなかったね。

- アルバム制作中には、子宮の腫瘍の切除手術を受けるという事件に見舞われました。肉体的な傷を治癒するプロセスとアルバム制作が同時に進行したことは、アルバムの方向性にどんな影響を与えましたか?

FKA Twigs - あの経験が、私を強くしてくれた。だから、それがそのままアルバムに映し出されていると思うわ。再生できるという自信がついた。治癒力のパワーを感じたし、以前よりも力強いアルバムに仕上がったと思う。

- この出来事によって「女性としての自信を失った」と発言していますが、一方でアルバムには、まさに女性としての自信や強さを再確認している曲が見受けられますよね。あなたはどのようにして、そういう自信を取り戻したのですか?

FKA Twigs - 治ることが出来たから。打ち克つことが出来たからよ。自分にはその力があると実感できた。そこに自信を感じ、パワーを感じることにつながった。

- 「私がこれまで愛し、これから愛する全ての人のための作品」という発言もしています。真意について、もう少し詳しく説明してもらえますか?

FKA Twigs - 恋愛は、常に私の人生の一部だから。多くの人々にとってもそうなんじゃないかな。私は自分自身をそのまま表現するから、それは必ず私が作る音楽に出てくる。

- アルバムにはFutureが参加していますし、昨年A$AP Rockyともコラボしましたね。この2人との仕事で印象的なのは、どういう部分でしたか?

FKA Twigs - Rockyは昔からの友人で、コラボレーションしようという話は随分前からあったの。私たちはスタジオでたくさんの時間を過ごしてコラボレーションした結果、"Fukk Sleep"がしっくりときた曲だった。Futureに関しては、私自身の行いを悔いたくて、自分の別の一面を見せてくれるような人を探していたの。Futureはとても優しくて、コラボレーションに協力的だったわ。当時はそれが、自分にフィットしていた。

- コラボレーターの中でも特に大きな貢献をした人がいれば、その人の貢献について教えて下さい。

FKA Twigs - Nicolas Jaar。やっぱり、自分が出来ることには限界があるというか、表現したくてもなかなか出来ないことがある。自分が持っているもの以上の何かによって、それをより素晴らしく出来ることもあるよね。彼は、それを本当に助けてくれた。私が引き出したいと思うものを私の中から引き出して、表現したいと思うものを満足がいくレベルで表現するのを助けてくれた。すごく感謝している。

- レコーディング中のあなたは中世のドレスをしばしば着用していたというのはなぜですか?

FKA Twigs - 手術の後で、着たい服が着れなかったから。ただダボっとした服だとメリハリがなく見えてしまうけれど、あの形だとすごく素敵。ヴィンテージフェアで初めて見つけて、それ以来ずっとハマって着ていたよ。

- 他で最近お気に入りのコーディネートがあれば理由と一緒に教えていただけますか?

FKA Twigs - 最近は、古い18世紀の洋服と、現代のストリートウェアをミックスさせるのに、はまっている。自分の服をリサイクルしたりアップサイクルしたりするように意識するべきだと思っている。私たちは地球を大切にしなくてはいけない。最近私がはまっている服の多くはリメイクされたもの。私の手に渡る前に、その服には、それぞれの物語があったということが素敵でしょ。

- 本作ではピアノが重要な役割を果たしています。ピアノがそういう役割を果たすに至ったのはなぜですか?

FKA Twigs - 今回は、自分がこれまでに頼っていた方法に頼らず、まず原点に戻って、そこから更に深く自分自身と自分が表現したいものを形にする方法を探り、再構築し、新しくスタートしたの。だからよ。

- "Home with You"のミュージックビデオで眼帯をしているのが目をひきますが、この見え方は何を意味しているのでしょうか?

FKA Twigs - "Home with You"の眼帯は、直感を信じようというリマインダーなの。ビデオの最後で私の目がおへそにあるでしょう。それは、私が地に足を付け、根をはれるように、私の直感が私を家まで導いてくれたという意味がある。

- 今回は全体的にクラシカルな趣が強く、時に宗教音楽に似た荘厳さを湛えているように感じました。音楽的なインスピレーション源について教えて下さい。

FKA Twigs - 私はカトリックの学校に通っていたから、そういう音楽はずっと私の身近にある音楽だった。常に私の中に存在している音楽。それが自然に出てくるの。

-『LP1』では非常にミステリアスな存在だったあなたは、このアルバムでは、より身近なリアルに感じられます。あなた自身に、聴き手と距離を縮めたいという願望はあったのでしょうか?

FKA Twigs - 『LP1』では、まだ出てきたばかりで、誰も私のことを知らなかった。でも今は、時間もたち、音楽もたくさん聴いてもらってる。だから、私との距離が縮まっているんだと思う。作品を出すたびに新たな面がさらけ出され、より私を知っていくことになる。それは私自身が感じていることでもあるしね。

- Matthew Josephsと作り上げたアルバム・ジャケットのコンセプトを教えて下さい。

FKA Twigs - 私のヴィジュアルのイメージをちょっと壊すというか、ブラックな感じのイメージとは違ったデザインにしたかった。よりカラフルで、私なんだけれどもちょっと違うものを表現したの。

- このアルバムの制作を通じて、自分自身について学んだこと、新たに気付いたことがあれば教えて下さい。

FKA Twigs - 努力が必要だということ。人間誰もが、自分がどんなに素晴らしいものを持っていたとしても、努力し、それを押し広げようとアクションを起こさなければいけない。そうしないと、最高のものを生み出すことはできないということを実感したわ。そして、良いと思うものでも更に考え努力することで自分には想像できなかったそれ以上のものを作り出すことができるということ。

- すでに春から各地でライヴ・パフォーマンスも行なっています。今回のツアーのコンセプトを教えて下さい。

FKA Twigs - 今回は結構トラディショナルなパフォーマンスになっている。格闘技やコンテンポラリーダンスなんかから私が受けたインスレピーションを形にしていて、いくつか幕がある。歌舞伎にもインスピレーションを受けているわ。後、ポールダンスが入っていて。

- 元々ダンスをやられていましたが、特に最近はポールダンスを集中して習ったとのことですね。新しい動きを学ぶというのは、傷ついた体を回復させることともリンクすることのように感じられますが、その点についてはいかがでしょうか?

FKA Twigs - 私は人生の中で新しいことを常に学んできた。新しいダンスや、新しいプログラミング技術といった、音楽を作るさまざまな方法など。学ぶことに対して常に夢中!ポールダンスは確かに、私の回復に素晴らしい結果をもたらしてくれたね。ポールダンスは空を飛んでいるみたいだから。重み、力と共に感じる解放感。ポールダンスって、すごく力が必要。習得するのに一年かかった。

- 自身の音楽以外でもっとも今年よく聴いた曲と、その理由を教えてください。

FKA Twigs - Arthur Russelを聴いている。彼のループや、復唱、そして常に進化していく循環する輪のようなメロディが大好きだから。

- これからこのアルバムを聴く日本のファンにメッセージをお願いします。

FKA Twigs - 日本には戻りたくて仕方がない。また必ずショーで戻ってくる。私自身、再び日本へ行くことが待ちきれない。楽しみにしてて!

Info

label: Young Turks / Beat Records
artist: FKA twigs
title: MAGDALENE

release date: 2019/11/08 FRI ON SALE

国内盤CD YT191CDJP2 ¥2,200+tax
ボーナストラック追加収録/ステッカー/歌詞/解説封入
国内盤CD+Tシャツセット DISBD0002-0004 ¥6,000+tax
輸入盤LP+Tシャツセット DISBD0005-0007 ¥6,100+tax

BEATINK:
http://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10501
Tower Records: https://tower.jp/item/4959988/
HMV: http://www.hmv.co.jp/product/detail/10222967
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B07XJNND8X

iTunes Store: https://music.apple.com/us/album/magdalene/1477652618?l=ja&ls=1&app=itunes
Apple Music: https://music.apple.com/us/album/magdalene/1477652618?l=ja&ls=1

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