【インタビュー】LEX 『!!!』| 不幸の連鎖から抜け出すために

LEXが今年2作目となるニューアルバム『!!!』をリリースした。4月にリリースしたデビューアルバム『LEX DAY GAMES 4』以前から、SoundCloudを中心に楽曲を発表し、同年代のユース層などを中心に大きな注目を集めてきたLEX。『LEX DAY GAMES 4』では未来的なサウンドにフォーカスしていたが、今作『!!!』では、現実の世界に目を向け、攻撃的なビートをチョイス。LEXの類まれなフロウのアイディアとエネルギッシュなラップを楽しめる作品となっている。

今年は来年、再来年に向けた準備期間と語る17歳の才能に、今作の背景や彼から見える世界についてなどを語ってもらった。

取材・構成 : 和田哲郎

写真 : (クレジットがないもの)細倉真弓

取材協力 : BlackFile

- 今年はLEXくんにとって変化の1年だったと思いますが、実際はどうでしたか?

LEX - 自分の中だと、まだこれからの計画の方が多いから、そのための準備の1年という感じでしたね。2020年、2021年に向けて動きたいなと思っているので、これからだと思いますね。来年、再来年へのビジョンはもうあるんです。これからのお楽しみということで、まだそこは秘密ですね。

- 『LEX DAY GAMES 4』と『!!!』の2枚のアルバムを今年リリースしましたね。『LEX DAY GAMES 4』では未来的なサウンドにフォーカスしていて、前から新作は攻撃的な音にしたいと言っていました。攻撃的なものを作りたかったのはなぜですか?

LEX - 作るアルバムごとに変化をつけたいなと思っていて、前回はフューチャーサウンドで、今回は現実に目を向けたっていうか。人種差別のこととか、現実のいろいろな面に目を向けたアルバムにしたいなと思っていたんですよね。『LEX DAY GAMES 4』をリリースした時から作り始めていて、やっと完成しました。

- LEXくんから見える今の世界はかなり荒んでる?

LEX - それも思いますし、政治のこともそうですけど、1人1人の個人レベルでの不満を表現したアルバムとなっています。自分も今は不満を感じることが多いけど、人間としてもういっこ上の自分に到達したいので、作りました。

- もういっこ上の自分というのは?

LEX - 自分がなりたい自分というか。自分がなりたい自分になりきれていないことが多いと思うんですよ。そのための努力を怠らないことで、到達できるものですね。僕がなりたい自分は、言葉で表せられないんですけど、すごい色のある人というかキャラクターがある人というか。なんだろ、キャラクターって、自分がなろうとするキャラクターに無理やりなろうとすると、それって偽ってることだと思うんですよ。本来の自分となりたいキャラクターを合致させることが、僕の今したいことですね。

- LEXくんにとって今回のアルバムは、どういう位置付けの作品になりましたか?

LEX - 今回のアルバムはコンセプトがあって。革命もそうだし、その革命が聴いている人にも届けばいいなと思うし、聴いてくれた人たちが個々にやりたいことを切り開いてくれたらと思うし、この先の長いキャリアの中でも、個人的にも重要なアルバムになったと思いますね。僕の中の革命を共有できるのが音楽だと思うし、でもみんな受け取り方は違うので、個々の人生にとって助けになればいいなと思いますね。

- アルバムの内容について訊きたいんですが、すごいアルバムだなと思いました。特にフロウのバリエーションがとても豊かですよね。率直にどうやってフロウは思いつくんですか?

LEX - 色んな人に訊かれたりするんですけど、特にどうやってとかはなくて、ふふふ(笑)そこは直感というか、僕の才能だと思います。昔の話になるんですけど、小学生の時にガラケーを初めて買ってもらったんですよ。その時からガラケーのボイスメモで存在しない歌を録るのが好きだった、あまり人に言わないんですけど。小学校の時に好きだったモエカちゃんって女の子がいて、モエカちゃんが勝手に自転車のカゴから僕のガラケーを取ったことがあったんですよ。その歌のデータを聴かれちゃって、めちゃくちゃ恥ずかしくて「最悪だ」って思ったんですけど、なんかめちゃくちゃ好評で。そこからみんなにも広まっていったんで、昔からフロウというか歌を思いつくのは簡単だったかもしれないですね。

- ちなみにその曲はどういう内容だったんですか?

LEX - 『ピラメキーノ』ってTV番組があって、番組のテーマソングが何曲かあるんですよ。その中に芸人のはんにゃさんがギャルもおならをしていいんだよって歌があって、その曲を替え歌にしたのがそれですね。

- 曲作りで悩むことはあるんですか?

LEX - 他で悩んでる分、曲作りが楽になっている気がしますね。曲作りは日常にあるものなので。でも体が起きないときとかはあって、今日録りたかったけどダルいなという時もあるんですけど、それでもやり始めると楽しくなりますね。ストックが何曲あるかはほとんど把握できていなくて、おれに知られずにボツになってる曲もあると思いますね。

- 今回のアルバムは全体的に短いですし、クルーであるSOGをフィーチャーしている"RUN!!"は27秒しかないですよね。なぜ短い曲を好むのでしょうか?

LEX - "RUN!!"でいうとアルバムの構成を考えていた時に、すぐにエネルギーをチャージできるような曲が欲しかったんですよね。飲み物でいえばウィダーインゼリーみたいな感じ。長い曲だと飽きることもあると思うし、僕らの直感的に30秒でチャージさせてあげようって曲ですね。

- そうした爆発的な部分はLEXくんのパフォーマンスの特長だと思いますが、そういう部分はいつ頃から自分にあったと思いますか?

LEX - それも昔から自然に出ていましたね。爆発的なエネルギーはティーン世代の人が一番放出しているものだと思うから、自分たちにはジャストじゃないですかね。

- 1曲目の"STAR"では人種差別についても触れていますよね。実際に自分も言われたことなんですか?

LEX - それもあるし、世の中からそういう空気を感じたっていうのもあります。あと仲間もよく差別的なことを言われていますね。あの曲はアジア人が受ける差別についての曲なんですけど、自分が感じたことを歌っていますね。差別はずっとあって、アジア人はそう思って生きてきてるけど、誰も思っても言わないですよね。そういうところを言ってみようかなと思って歌詞を書き始めました。小さい時から持っているマイナスな何かを描きたくて。仲間ともそういうことを話すし、Instagramでもそういう負の部分に喰われている人をよく見るんですけど、本当の自分を見つけてそれで生きていくほうが、僕にとっては大事だし一番生きていて気持ちいい瞬間なんで、それを感じてほしい曲です。

Photo By Jun Yokoyama

- やっぱり思い入れが強いですか?

LEX - "STAR"が一番強いですね。それもそうだし、出来たときに「あ、これだ」みたいな、この曲を背骨にして、アルバムを出そうって感じました。そういう感覚になることは、あんまり多くないですね。

- これまで作った曲でそういう感覚になったのは?

LEX - あとは"Numb"もそうですし、"Speed Star"もですかね。でも"STAR"ほどの衝撃は感じたことないので、たくさん聴いてほしいですね。

- ゲスト陣はどうやってチョイスしたんですか?

LEX - 有名な人を入れたいとかはあまり思っていなくて、近くにいる友達とか周囲にいる人で作った感じですね。僕はそういうのが好きで、一緒に遊んでいて「今日作らない?」ってバイブスになって、そこで生み出す曲がすごい好きだし、完成した時の喜びが半端無いというか。曲は遊んでいる中で出来るものですね。曲作りが目的で会うと仲間だと堅苦しくて、嫌だし。昔携帯で作っていた時代は、ヤマダ電機の裏でレコーディングするやつもいたし。そいつはみんなでスケボーをしていた時に、「ごめん、レコーディングしてくる」って言って、チャリでヤマダ電機の裏にいって、ヘビメタボイスでレコーディングしてましたね。そこまでいくと、イかれていると思うんですけど、バイブス的には同じ感じですね。今録りたいから録るって感じで。

- アルバムは全曲そういう感じで作っていった?

LEX - そうですね、基盤の部分はノリで作って、あとは修正していくって感じで作りましたね。

- "RockFord Hills"とか"CLEOPATRA"みたいなメロウな曲でも一緒?

LEX - 同じですね。"RockFord Hills"を作っていたときは、すごくエモかったというか。あれは朝方の4時から作り始めて、6~7時に終わった曲なんですけど、バイブスによって作る曲は変わるんだなってまた実感しました。この曲は身の回りのことを歌っていますね、友達のこともそうだし、ドラッグのことも。

- 「未成年者が風邪薬をドラッグ代わりに使用するのが増えている」というニュースを最近見て。自分が10代のときは、そんなニュースはあまりなかった印象で、今っぽい現象だなと思いますが。

LEX - すごいありますね。みんなアホだと思うんですけど、僕も中一のときにその風邪薬にはまっていたんですけど、市販薬だから質も悪いし、体にかかる負担もその分大きいから、時間の無駄だと思います。思春期のやり場のない葛藤がドラッグの使用に向かわせるんじゃないですかね。その薬は僕が中一の頃は、まだ中身も入った状態でドラッグストアで販売してたんですけど、今は万引きされるからって全部空箱になっちゃったんですよね。それは僕も笑っちゃいましたね、みんなやってるんだって。

- アルバムはどういうシチュエーションのときに聴いてほしいですか?

LEX - どんなシチュエーションでも聴けるようにしましたね。ダウナーな曲もあるし、アッパーな曲もあるし、その中間の曲も用意したんで、どんなシチュエーションでもって感じですね。作品全体のバランス感は一番考えますね。散歩しているときに考えるかな。最初に携帯のメモとかで、曲を作る前に全体の流れを決めちゃいますね。その時はすごいワクワクしますね、1枚の絵を描いているような感じがして。

- いま活動しているアーティストで影響を受けたり共感するアーティストはいますか?

LEX - コンプトン出身のRoddy Ricchってラッパーに、すごい喰らってますね。仲間も僕もずっと聴いてますね。彼の良さはやっぱり声と、あと変わったラップをすることがあって。巻き舌を使うんですよ。それがラテン系な雰囲気も醸し出していて、すごいかっこいいなと思っていて。

- 音楽以外のことでもいいんですが、今やってみたいことはなんでしょうか?

LEX - 今ヨガをやりたいんですよね。あとはもう一回スポーツをやってもいいかなと思いますね、料理も全然作れないから作ってみたいですね。僕の中で情緒不安定な時があって、それを中和させたいというか、ヨガをすると自分の気分をコントロールできるようになるって聞いたんで始めてみたいなと思って、IKEAでヨガマットを買おうかなと思ってます。友達に言うと、「めっちゃイかれてる」って言われるんですけど(笑)今は散歩でリラックスしてますね。よく寝るとか言う人もいるけど、僕の場合は考え込んで解決する方が好きなんで、好きな曲をかけながらあてもなく1時間半くらい散歩するんですよ。夏より冬に散歩する方がよくて、寒いんですけどその方がまたいいんですよね。そこから曲を作ろうってなりますね。

- 料理も気持ちを落ち着かせる効果があるみたいですよね。

LEX - 僕もそれでやってみようかなと思ったんですけど、三日坊主でしたね。とりあえず目玉焼きを作ってみたいですね、焦がしちゃうので。一番好きなオムライスを今後は作ってみたいですね。

- 話は戻るんですけど情緒不安定になってしまうのは、やはり人間関係が原因ですか?

LEX - そうですね。これは親もわかってて、僕もわかってることなんですけど、お母さんと僕は2人ともすごい神経質で、傷つきやすいと思うんですよね。それで頭の中で考えちゃうことが多くて、それでよく勝手に傷ついたりしますね。あとは周りの不幸じゃないですかね。絶え間なく不幸が続いている気がして。めちゃくちゃ仲がいい親友が飛び降りたあとに、還ってきたんだけどそれからまた捕まっちゃって、会えずじまいとか。

- SOGのみんなはLEXくんにとってどういう存在ですか?

LEX - もう家族ですね。いつも一緒にいるし、大切ですね。小さい頃から仲が良くて親ぐるみで一緒にいたやつもいるし。そいつの彼女とおれの彼女で一緒に買い物に行くこともあるし、本当につながりで動いている感じですね。ピンポン押さないで家の中に入っちゃうし、僕が地元にいない時は、帰ってくるまで家にいていいよってこともあるし。僕の妹も僕の友達と付き合ってるし。だからその分、友達に何かあったらその分悲しいし、倍に寂しいです。

- そういう仲間とかの不幸の連鎖から抜け出すために音楽がある?

LEX - はい、そう思ってます。抜け出すための音楽だし、自分の中で不幸をうまく処理するためのものでもありますね。それをみんなに伝えるためのものでもあるし。音楽は最高です。

Photo By Jun Yokoyama

Info

artist: LEX
title: !!!
label: Mary Joy Recordings

Tracklist:
1 STAR
2 THUNDERSTORM!!
3 Bust down
4 DIE IN YOUR ARMS
5 ALIEN
6 GUESS WHAT? ft. XakiMichele
7 B.B.SIMON
8 RUN!! ft. SOG
9 FLASH! ft. Hezron
10 Super
11 ihate pussyboy&badbitch ft. AJAH
12 RockFord Hills
13 CLEOPATRA

Vocal mix & mastering by KM
Art Direction: Sou Ootsuki
3DCG / Design: Yusuke Oikawa

https://lexzx.lnk.to/ThreeExclamationMarks

related

【コラム】A New Form of Japanese Rap 2020|交差するラップとレイヴ

トラップのビートが一つのスタンダードとなり、メインストリームからアンダーグラウンドまでありとあらゆるシーンを席巻して何年も経つ。現行のラップミュージックのビートは大雑把に「ブーンバップ」と「トラップ」に二分されることが多いが、もちろんその大きな括りの中で様々なサブジャンルが生まれては消えることを繰り返している。

【インタビュー】Awich | 人ではない目線から視る

どこの誰であっても、足元が揺らいだ2020年上半期。そんな今こそfnmnlが話を聞きたいと思ったのが、この度ユニバーサルミュージックからメジャーデビューし、8月21日にEP『Partition』がリリースされるAwichだ。

LEXが早くも3rdアルバム『LiFE』を今月発表 | 先行シングル"Sexy!"をリリースしミュージックビデオをプレミア公開

LEXが早くもキャリア3作目となるアルバム『LiFE』を、8/26(水)にリリースすると発表した。

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。