【インタビュー】JAKOPS | XGと僕は狼
11月8日に、セカンドミニアルバム『AWE』をリリースしたXG。ちょうどこの秋から年末にかけては欧米をツアーでまわり、XGの世界観をワールドワイドに届けている最中。そんなXGのエグゼクティブプロデューサー・JAKOPS(SIMON)のインタビューが実現した。育成期間から長らくメンバーを支えてきた彼は、自らの思想をグループに投影する過程で強いリーダーシップを発揮し、その度に大きな注目を集めてきた。今回のツアーでも自身でDJタイムを設けてプレイ、多種多様な音楽を発信している。実際に話したJAKOPS(SIMON)は、エネルギーに満ちあふれ、常にストイックに、かつポジティブにXGの未来を語る真摯な姿勢が印象的だった。彼がいま何を考えているのか、その本音を探ってみよう。
取材・構成 : つやちゃん
撮影 : 寺沢美遊
スタイリスト:RIKU OSHIMA
ヘアメイク:MIU (KIND)
- プロデューサーとしてだけでなく、サイモンさん個人としての活動範囲も広がってきています。9月に開催されたパリファッションウィークANREALAGEのショーでは、サウンドプロデュースをされていました。どういうきっかけで決まったのでしょうか。
JAKOPS - デザイナーさんにお話をいただいて、私が音楽を作ってDJをすることになったんです。パリコレクションは今後XGのメンバーも行けたらいいなと思う、歴史ある文化の場でした。私は来年、リミックスとは違う形で自分の音楽を表現したいとも思っているんですよ。
- グループのエグゼクティブプロデューサーという立場を超えて、パワフルに活動されていることに驚きます。今回のXGのツアーでもDJをされていましたね。DJタイムを設けた理由は?
JAKOPS - 歴史に残るであろうXGの記念すべきファーストツアーで、自分にとって何ができるだろうと考えたんです。アーティストのステージをヒートアップさせるのは、DJプレイだった。さらに、XGの歴史というものを見せたいとも思ったんです。そうやって色々と考える中で、COCONAのラップコンテンツで使った曲のサンプリング元であるAretha Franklinの“One Step Ahead”をDJでかけて、そこからCOCONAのラップが始まるといった演出が生まれました。私は2歳、3歳の頃から音楽が大好きで、本当にたくさんの曲を聴いてきた。クラシック、ニューエイジ、ロック、黒人音楽、日本の音楽、韓国の音楽、フランスのラップ、シャンソン、アフリカの民族音楽……本当に何から何までです。それをXGのメンバーにも共有してきたし、だからこそ、その一部をDJで披露するというのも自然な流れでした。
- 選曲はどういった基準でされたのでしょうか?
JAKOPS - 例えば、Babyfaceの“Keeps On Fallin'(with Ella Mai)”をプレイしましたが、あれは僕の大好きなTevin Campbell“Can we Talk”を元ネタとしてサンプリングしています。DJでは、どちらの曲もかけました。“Keeps On Fallin'(with Ella Mai)”のMVはとても素敵で、Babyfaceはスーツを着てElla Maiと一緒に踊ってるんですが、なんか、僕とXGのメンバーみたいだな、これってリアルだなって思ったんです。そういった感じで、僕はプロデューサーとして色々な曲をアーティストに伝えたいし、分かち合いたいんですよ。
- そういった話をすると、XGのメンバーの皆さんはどういう反応をされますか?
JAKOPS - こういう話は間違いなく共感します。というか、こういう話に共感するからこそ彼女たちはいま僕と一緒にいると思う。僕たちはDNAが一緒だし、だからNEW DNAなんですよ。そうなると今はX-GENEだし、彼女たちはPUPPET SHOWなんかじゃないんです。GRL GVNGと言うけれど、ちゃんと大義名分があるギャングであれば僕はいいと思っている。僕は狼だし、皆も狼です。そういう文化なんですよ。
- なるほど(笑)。私はDJの選曲がとても興味深いと思いました。坂本龍一や久石譲を日本だけでなくアジア諸国でもプレイして、かつ韓国ではソウルオリンピックの公式ソングだったKoreanaの“Hand In Hand”を入れるなど、各国を象徴する曲をセレクトしていましたね。そのあたりは、どういったコンセプトがあったのでしょうか。
JAKOPS - ありがとうございます。DJの選曲について深く訊いてくれてすごく嬉しい、それについて話したかったから!(笑)その質問に対する答えは、まず、コンセプトなんかありませんということですね。なぜなら、自分そのものだから。私は日韓の血を引いていて、アメリカで生まれました。色んなところでアメリカ人だ、韓国人だ、日本人だと言われてきた。それによって良いことも悪いこともたくさん経験してきたし、それが自分のDNAです。韓国でプレイした“Hand In Hand”は1988年のオリンピックテーマソングで、韓国の今の若い方たちは知らない可能性がある。でも、あの曲がめちゃくちゃ良いんですよね。ソウルをグローバルにしていく初めての大きなイベントで、歌唱力も抜群で。それを僕は2歳で聴いていて、英語詞と韓国語詞で歌っていたそうです(笑)。他の国では、自分が生まれた年にリリースされた曲をプレイしたり、それぞれの地域で私がリアルに感じる曲を入れました。もちろん、この曲知ってもらえたら嬉しいな、という思いもあります。でも僕は、決して日本の音楽だから共有したい、韓国の音楽だから共有したい、といった気持ちはないんですよ。人間としていかに様々な文化を味わって、ポジティブになるかということしか考えてない。何事もそうだけど、考えを突き詰めていくと「自分らしさ」が大事なんです。僕はそれを、たくさん努力して学びました。でももう明日になったら、今日の自分を恥ずかしく思いながら捨てる。そのサイクルをやっているんです。
- 今たった少しお話を伺っただけでも、すごく伝わってきたことがあります。いわゆるダンス&ボーカルグループというと、戦略的でマーケティングに長けているイメージがありますね。けれどもXGの場合は、それ以上に、やはりサイモンさんが個人的に好きなこと、大切にしている信念が如実に投影されているように感じるんです。
JAKOPS - そうですね。これまで経験してきたことを振り返って、自分が考えるグループは絶対に世界的に見てもイケてるものになるという確信があった。それに、僕は一人で幸せになりたいとは全く思ってないんです。人間は社会的な動物なので、仲間と、家族と、XGという妹のような娘のような存在と、それに今日お会いした皆さんのような人たちとも生きていきたいし、期待に応えたい。
- XGはどんどん大きな存在になっていますが、その過程においては、グループに対する様々な意見も耳に入ってきていると思います。プロデューサーとして判断に迷われた際、何を軸に物事を決めていますか? 大切にしている価値基準や判断軸があれば教えてください。
JAKOPS - 判断に迷うことはないです。でも、仲間と議論はします。それはAじゃなくてBじゃないですか、Cじゃないですか、ということを言う仲間もいますが、そういう時でも僕はAなんですよね。そのAをどう伝えるかというのが、リーダーの仕事。リーダーシップの勉強をしている最中です。コアファンからライトファンまで、僕は色々な意見も見ますが、それらは全部学ぶために見ています。
- サイモンさんのリーダーシップというのは、どういった形で変化してきていますか?
JAKOPS - めちゃくちゃ変わってきましたね。僕は日本語を文字で学んでなくて、全部耳コピなんですよ。母のしゃべる日本語、クレヨンしんちゃんやサザエさんといったアニメの日本語、あとは黒澤明の映画やJ-POPから聴く日本語。リーダーシップって、言語で伝えて発揮していくものなんです。「いいじゃないですか!」「最高だよ!」と伝えていく必要がある。昔、僕は電話を3秒以内にとらないといけない環境にいたことがあって、それ以来ずっと電話は緊張するんですが、でも最近はスタッフともたくさん話していて毎日のように電話での恋愛相談を受けています(笑)。そういう繰り返しで、リーダーシップの力はついてきたのかもしれない。
- “WOKE UP”のリミックス曲、“WOKE UP REMIXX (PROD BY JAKOPS)”について教えてください。日韓8名のラッパーが参加しましたが、あの人選にはどういった背景があったのでしょうか。
JAKOPS - 記念すべき初のオールラップ曲だったので、ヒップホップカルチャーの中でその魅力を増幅させていく必要があると考えました。自分は日韓にルーツがあるし、日本と韓国にはしっかりとしたヒップホップシーンがあります。誰に“WOKE UP”のリミックスをやってもらいたいか想像していくと、あのメンバーになりました。AwichさんとOZworldさんは沖縄をルーツにカッコいいヒップホップをやっているし、VERBALさんは日本の音楽をレベルアップさせたと言っても過言ではない人です。自分も物凄く好きだった。AKLOさんは以前YouTubeで見つけたラッパーですが凄くラップのクオリティが高い。日本語は子音が少ないのでラップにした時にちょっと物足りない部分がありますが、AKLOさんは海外で暮らしてきた経験があるからかその課題をクリアしたラップスタイルですごくかっこいいですね。最近はまたラテン系の音楽を自分の中のアイデンティティとしてやっているという話もうかがったので、そのフロウを出してほしいと伝えました。
一方、韓国ではまずJay Parkにお願いしました。元2PMのリーダーで、とてもリスペクトしているアーティストです。Paloaltoさんは、昔私が音楽を教えてもらっていた師匠と同級生なんです。その後韓国のヒップホップにおけるリーダーとして活躍されていたんですが、ある時私が作った曲をサポートしてくれることになったんですよ。でもそれがちょっとうまくいかず、その曲をJUNGGIGOというアーティストに売ることになってしまって。“Want U”という曲なんですが、Beenzinoが客演に入って韓国で1位になりました。そういう経緯があったので、恩返しというと大げさですが、今回Paloaltoさんも参加してくださることになったんです。あとTakさんは、ヒップホップグループ・Baechigiの元メンバーで、今はソロで活動してます。サイモンには借りがあるからやるよ!と言ってくれました。そしてDok2は、若い時から韓国のヒップホップシーンを引っ張っているラッパーですね。ラップの実力は言わずもがなで、今はロスにいます。
- 8人全員に、ちゃんとした理由があるということですね。ちなみにサイモンさんは、XGとヒップホップカルチャーのどういった部分が重なり合うと考えているのでしょうか。
JAKOPS - 本音で本質を言うところです。自分らしいアティチュードで、言葉にすること。それがヒップホップに対して共鳴する点ですね。でもこの先はどうなるか分からなくて、もしかすると来年にはXGはロックグループになっているかもしれません(笑)。それが運命であるなら。
- セカンドEP『AWE』もリリースされました。タイトルに畏怖/畏敬という意味を込めたのはなぜですか?
JAKOPS - 『NEW DNA』からの続きとして、今までXGを見ている人たちが一番びっくりすることって何だろうと考えたんです。とにかく驚かせたい。(びっくりした表情で)こういう顔になってもらいたいんですよ。
- XGのメンバーも、『AWE』のそういったコンセプトについては共感されていましたか?
JAKOPS - もちろん。今みたいな話をしたら、こんな反応でした。(オッケー任せて!というジェスチャーをする)
- (笑)。私たちに任せて! ってことですね!
JAKOPS - めっちゃいいじゃないですか! という、そんな反応でしたよ。もう何年も、正月もなく四六時中一緒にやってきている間柄だから、メンバーとの意思疎通は早いです。皆さんには、ぜひこのEPの世界に驚いてほしい。
Info
XG
2nd Mini Album
AWE
2024.11.08 FRI
Tracklist:
- HOWL
- HOWLING
- SPACE MEETING Skit
- IYKYK
- SOMETHING AIN'T RIGHT
- IN THE RAIN
- WOKE UP REMIXX (FEAT. Jay Park, OZworld, AKLO, Paloalto, VERBAL, Awich, Tak, Dok2)
- IS THIS LOVE
Special Website