スポーツウェアとラグジュアリーの融合 -Astrid Andersen-
Astrid Andersenは、1/8にLondon Collection ManでAW17のコレクションを発表した。 今回のコレクションは、豪華で美しい華やかなストリートウェアというヴィジョンを主軸に置きつつ、ヒップホップに影響を受けたスタイルがベースとなっている。
ミンクやレース、ベルベット素材にゴー ルドやバーガンディーといったカラーを用いてゴージャスなトラックスーツなど、洗練された新しいスポーツとラグジュアリーの融合を提案した。
AW16のコレクションから、明確なインスピレーションやコンセプトから始める物作りから離れ、 自らの「直感」に従って製作を始めたAstrid Andersen。彼女が自らのスタイルを確立するまで、どのようなコレクションを発表してきたのかを見ていきたい。
デザイナーのAstrid Andersenはデンマークの首都コペンハーゲン出身、Royal College of Art でファッションを学んだ。彼女の原点である、初期コレクションのAW11はアーミーなフリース やペイズリー柄のジャージー、ショート丈にカッティングしたトップスなどゴージャスなヒップホップスタイル。ゴージャスで男らしい力強さを感じさせるビッグシルエットや、豪華なファー 使いはこの頃から既に確立されていた。コペンハーゲンは毛皮が世界中から集まり取引される場所である為、彼女はファーに関する知識が豊富なのだ。
SS12では、ユーゴスラビアの内戦で引き裂かれた2人のNBA選手の内面をスポーツウェアで表現。 また、このコレクションから彼女はボディビルダーの心と身体についての探求を始め、「逞しい肉 体を持つ反面、鏡ばかり見つめ身体の欠点を指摘されるとすぐに落ち込んでしまう」という二面性を表現したコレクションを製作する。バスケットボールユニフォームやトレーニングウェア を、シルクやレース、紙のように薄いナイロンで製作することで繊細な男性の内面を表現した。
その後、少林寺にインスピレーションを受けたコレクションやバスケットボール色の強いコレク ションを発表していくが、SS14ではより明確に彼女のヴィジョンがウェアに落とし込まれていく。 鉱物が持つ、硬いという「強さ」と、繊細で淡い色合いが持つ「弱さ」はボディビルダーの二面性と通 じるものであるとし、ホワイトで花柄のレースを使用したボディコンシャスなアスレチックスタイルや、ジェイドカラーのネオプレン素材を用いたトラックスーツ、グリーンのベルベットで製作さ れたトレーニングウェアなど、より無駄のないフォルムや素材使い独自のアイデンティティーを確立した。
SS15では、人気セレクトショップGR8代表の久保光博と両国国技館を訪れた体験から相撲や日本のカルチャーにインスピレーションを受けたコレクションを発表。ジャポニズム色の強い「まわし」のようなアイテムや着物シルエットのトップスをレイヤードアイテムとして提案した。AW15、 SS16も中国や日本の侍、忍者などがインスピレーションになったコレクションが続く。
そして、AW16で彼女はついに自らの直感だけを頼りに製作したコレクションを発表。潜在的なヴィジョンがよりリアルに表現されたこのコレクションは、彼女の今までのキャリアが昇華されたような、スポーツウェアとラグジュアリーが融合した新しいモダンウェアスタイルの提案だ。
SS17でもライフスタイルを重視し、目に優しいカラーを使用した気候に左右されないような ウェアを発表、これがAW17のゴージャスな素材使いでありながら機能的なシルエットも持つコレ クションへと繋がっていった。様々なインスピレーションを経て、自らの力だけで創作していくという境地に至ったAstrid Andersen。ストリートウェアの流行の中でも、一際異質な魅力を放ち、新しい世界観を消費者に提供する唯一無二のデザイナーに今後も目が離せない。