My Classics Vol.7|MASS-HOLE

連載『My Classics』。この企画ではアーティストやデザイナーなどのお気に入りの一品と、これから欲しいアイテムや気になっているものを紹介していく。普通のインタビューでは中々見ることのできないアーティストの嗜好や素顔などが垣間見えるものに。

第7回となる今回は、長野・松本を代表するアーティストとして、日本HIPHOPシーンの最前線で活動を続けるビートメイカー/ラッパーのMASS-HOLEをフィーチャー。

取材・構成:島田舞
写真:小林直博

MASS-HOLEのMy Classics フード編 : テンホウの肉揚げタンタン麺

- テンホウは長野発祥のラーメンチェーンということで、長野在住のMASS-HOLEさんには昔から馴染み深いお店なのでしょうか。

MASS-HOLE - 諏訪が本店というか、発祥で、そこから今は店が超増えてますね。家族で昔からずっとテンホウには通ってて、あと、所縁というかうちの婆ちゃんが俺が3歳くらいまでラーメン屋をやってて。県ヶ丘高校っていう高校の横でやってたんですけど、あがたの森公園っていう大きい公園があって、そこを開発してる時に土方の人とか、当時、県ヶ丘高校に寮があったんで、そこの学生さんが食いに来てて、繁盛してたらしいんですよ。10年ぐらいお店やった後、立ち退きみたいな形になって、結局、店は辞めちゃったんですけど。だから割と昔ながらのラーメン屋とかに関してはルーツを感じる部分があって。今は、ジム通ってて、ラーメンは抑えてる感じなんですけど、昔から家族と一緒にとか、部活が終わって仲間とテンホウ行って食べるっていうパターンが多かったですね。

- いつも肉揚げタンタン麺を食べますか?

MASS-HOLE - 基本そうですね。冬のシーズンは肉揚げタンタン麺で、夏はバンバンチー麺っていう冷たいラーメンがあって、それがすごい好きですね。

- 結構色々なメニューがありますよね。

MASS-HOLE - バリエーションはすごいありますね。でも唯一謎なのがテンホウにはチャーハンがないんですよ。どんぶり系とかラーメンも種類沢山あるんですけど、チャーハンがないっていうのが未だに謎な部分で。あと基本ここはめっちゃ安いです。普通のラーメンも今350円くらいで。

MASS-HOLEのこれから欲しいもの:NEOGEO mini

- NEOGEO miniが欲しいということで。

MASS-HOLE - 僕、本も読まないし、映画もあまり見ないし、レコードを買いに行くぐらいしか趣味が無くて。「今、何をやりたいか?」って考えた時に、ゲームすごいやりたくて。しかも昔のゲームがやりたくて。それで探ってたら今結構ファミコンとかスーファミとか、Neo Geo、メガドライブとかの復刻で同じようなシリーズがいっぱい出てて、マジ欲しいな~みたいな。

- ゲームは昔から好きなんですか?

MASS-HOLE - 昔から好きでしたね。格闘ゲームがすごい好きで、小学校の4,5年くらいからずっとゲーセン行ってやってましたね。それで4年くらいの時に、ちょうどストリートファイター2が出て、そこからはどっぷりでした。

- ゲーム音楽をサンプリングで使用しますか?

MASS-HOLE - 結構探るとあったり、何気にカプコンやコナミなんかのファミコンの音源ってかっこよいのが多くて。松本に「ほんやらどお」っていうレコード屋があるんですけど、そこにたまたま『悪魔城ドラキュラ』っていうゲームのサントラを買ったら、Mobb DeepのProdigyが使ってるネタが入ってて。やっぱり向こうもここら辺からサンプリングするんだなと思いましたね。嫉妬というか、すごいなぁと。

- ゲームは夢中になると時間が経つのを忘れますよね。

MASS-HOLE - 今はビート作ったりレコード聴いてる時間が多いですけど、なんかもうちょいストレスフリーでどこかにもう一個居場所置けたらもっとやりやすくなるかなって考えたときに、本とか映画とかあんま長い時間見れないんで、ゲームとかだったら結構スカッと出来るかなみたいな(笑)だからゲームが欲しいって感じです。

MASS-HOLEのMy Classics アイテム編 : 『373』と『MARIE』のイラスト

- お気に入りアイテムがイラストだとお伺いしました。

MASS-HOLE - 持ってきました。これなんですけど、373(みなみ)さんっていう長野県小諸市で「Tochka bowl」っていうスケートパークを運営して、なおかつイラストを描いているスケーターの方です。373さん自体はずっと東京に住んでたんですけど、ここ何年かで長野に移住をし、そこからリンクしてます。

- 元々お知り合いだったんですか?

MASS-HOLE - 373さんが東京にいた頃は知らなかったんですけど、ライブで東京に行くと、誰かしらから「373さんが長野に移ったから遊んであげてよ」っていう風な話を受けて(笑)それで会ってみたら、翌週には日本酒の宅呑みがはじまるという(笑)

- 結構長野の繋がりって狭いというか密な感じなんですか?

MASS-HOLE - 基本狭いと思いますけどね。373さんもスケーターなんで、松本でスケボーやってるやつは週末になるとさっき言ったtochka bowlに行ったりとかそういう遊び方してますね。僕自体は全然スケボーやってないんで、あれなんですけど。373さんはいろんな方のMixCDのイラストやったり、Tシャツ作ったりとか結構活動が広いんで、すげー尊敬してる先輩です。

- じゃあ結構ヒップホップとも縁のある人なんですね。

MASS-HOLE - そうですね。あと、もう1個がこれなんですけど。埼玉にJAMESっていうアメリカンなfood shopがあって、そこはimuha君っていうラッパーが経営してるんですけど、そこでスタッフで働いてるMARIEさんっていう方がフライヤー用に書いてくれて。MARIEさんはイラストレーターで、お父さんがシュガーベイブのジャケットを書いた人らしく、後にびっくりするっていう笑。結構、俺のやるヒップホップのイメージはダークとか暗いっていう人多いと思うんですけど、実はこういうポップ系の絵とかも全然好きで。なんか本当、壁に貼るだけでも景色とか変わるんで。こういう絵を頂いて、部屋に貼ることによってちょっと目覚めたというか。

- ご自宅にはこれ以外にも色々アート作品とか飾ってあるのでしょうか。

MASS-HOLE - そうですね。あと、基本的に自分のCDのアートワークはうちのレーベルのdaichiさんっていう方がやってくれてるんですけど、daichiさんからも作品で使った原画を頂戴するんで、結構色々ありますね。やっぱりそれぞれに思い入れとかもあるんで、なんかこの作品作った時の音の感じとか、昔を思い出すと懐かしかったりします。

- ジャケットのアートワークをお願いするときに、こういうふうにお願いしますとか要望を言ったりするんですか?

MASS-HOLE - どっちのパターンもありますね。この絵をサンプリングして作ってもらいたいっていうのもあるし、ほんとお任せで作ってもらう時もあるし。あとは、やっぱパーティーとかやる時に作ったフライヤーとか、カラーがあるじゃないですか。これとか373さんが普通に書いたイラストなんですけど、フライヤーの原画で、これとかもそうなんですけど。結構かわいいんですよ。パッと見るとあんまりヒップホップな感じはしないけど、結構ゴリゴリのヒップホップのパーティーのフライヤーに使ってみたりっていう違和感が面白いのかなっていう。

- 『PAReDE』のジャケットはどなたが描かれたのでしょうか。

MASS-HOLE - あれはうちのdaichiさんです。元ネタとしてはNasの『Street Dream』の12インチのジャケットとClipseのジャケットをサンプリングして描いてもらいました。うちらの作品はアートワーク自体、結構面白いやつありますよ。

 

この投稿をInstagramで見る

 

pass through your town on3.25 #PAReDE 🚙🚗🚕

MASS-HOLEさん(@blacksnow1982)がシェアした投稿 -

- 音源もレコードからのサンプリングが多いのでしょうか。

MASS-HOLE - 基本レコード買うのすごい好きなんで、それに費やす時間とお金ってのもあるんで。それをどう自分のヒップホップに反映させるかみたいな。あんま考えてはいないですけど、結局そういう作り方になってるのかなっていう感じですね。

- ご自身もレコードでリリースされることが多いですが、そこに関するこだわりとかはありますか?

MASS-HOLE - こだわりというか、作ったものをデカい音で聴いたりとかデカいジャケットで見たいっていうだけですね。性格的にもあまり細々してませんので笑

- 全然関係のない話なのですが、Mass-Holeさんが体を鍛え始めてビートが変わったという話をききました。

MASS-HOLE - どうなんすかね(笑)でも、だんだん健康志向になって体に無駄な事はしなくなってますね。それこそイベントとかない日は朝6時からジム行って。皆がパーティから帰る時間にジムに行くっていう。

- 健康的ですね。体を鍛え始めたきっかけは?

MASS-HOLE -  やっぱFATなラッパーって超かっこいけど、それは自分の役目じゃないなっていう。(笑)

- じゃあ今の1日のルーティーン的には?

MASS-HOLE - 起きてジム行って、家のことやって、合間合間にビート作ったりとかレコード買いに行ったりとかして、それで夕方くらいに出発してイベント行ってライブやってっていう朝帰ってくるっていうルーティーンが多いですかね。やっぱ不健康っすね(笑)

- 結構ハードですね(笑)

MASS-HOLE - でも、もう慣れましたよ(笑)

- 現役でアーティストとして活動されながら、トレーニングもされてるのは尊敬します。今何歳ですか?

MASS-HOLE - 82年生まれなんで、今年37になります。それこそMONJUとかYuksta-ill、田我流とかそこらへんは82年生まれですね。

 - 最後に、 Mass-Holeさんは松本のシーンを引っ張ってる方だと思いますが、松本のヒップホップシーンに対してどういう感情を抱いてますか。

MASS-HOLE - なんだろう...ほんと気負いとかそういうのせずにやっぱ自分の好きな音楽をデカい音で聴きたいっていう欲だけでやってて、今はそこにfourhorsemenの皆や若いやつらがついてきてくれて、東京のmidnightmealやWDsoundsのサポートも含め、1人だと出来ないことも案外皆でやればでかい事も出来ちゃうんだよっていう意思表示というか。本当に、人生1回きりだし、ラッパーはでかい声の奴が一番かっこいいし、hiphopはでかい音出した奴の勝ちだから。

 

info

MASS-HOLE - agata tape
http://ebbtide-records.com/?pid=145452248

songs
case1:blizzard
case2:quiet storm
all track by MASS-HOLE
artwork by silentnumeral
product&distribution by ebbtide records

MASS-HOLE
Instagram
https://www.instagram.com/blacksnow1982/

RELATED

My Classics Vol.15|サーヤ(ラランド)

連載『My Classics』。この企画ではアーティストやデザイナーなどのお気に入りの一品と、これから欲しいアイテムや気になっているものを紹介していく。普通のインタビューでは中々見ることのできないアーティストの嗜好や素顔などが垣間見えるものに。 第15回目には、お笑いコンビ・ラランドのサーヤ...

My Classics Vol.14|YamieZimmer

第14回目には、ビートメイカーのYamieZimmerが登場。彼の地元・根岸駅にある中華屋の三和で、最近の制作事情や先日リリースした2ndアルバム『TEMPLATE』に加え、地元について、周辺のラッパー達との繋がりについてなどを訊いた。

NF ZesshoがMASS-HOLEをプロデューサーに迎えた新曲"Axe of despair"をリリース

NF ZesshoがMASS-HOLEをプロデューサーに迎えた新曲"Axe of despair"を、6月12日0時よりリリースする。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。