My Classics Vol.3 | machìna

連載『My Classics』。この企画ではアーティストやデザイナーなどのお気に入りの一品と、これから欲しいアイテムや気になっているものを紹介していく。普通のインタビューでは中々見ることのできないアーティストの嗜好や素顔などが垣間見えるものに。

第三回目は、韓国出身で東京を拠点に活動しているエレクトロニック・ミュージシャンであるmachìna(マキーナ)をフィーチャー。

大学でジャズを専攻、そしてK-popシンガーとして活動した後にエレクトロニック・ミュージックに転向。詩的な感覚のボーカルとモジュラーシステムによって作成されたアナログサウンドによって、machìnaの音楽は、テクノロジーと時間、そして感情のハーモニーを模索する。彼女の音楽は国際的な支持を得ており、2018年と2019年にはSXSWに出演を果たした。さらに、2019年にリリースされたアルバム『Archipelago』はPitchfork Mediaでも紹介された。日本と海外をクロスオーバーに活動し、今注目されているアーティストの一人である、彼女のClassicsに迫った。

取材・構成:島田 舞 / 山本 輝洋
写真:Cho Ongo

Photo by machìna

Photo by machìna

machìnaのMy Classics フード編 : ニンジンジュース

- ニンジンジュースがお気に入りの食べ物だと伺ったのですが。

machìna - はい、そうです。ジューサーで、毎朝切って。今日は人参が切れちゃったんですけど(笑)

- 普段から健康には気を使われているのですね。

machìna - そういうのは好きですね。

 

- 部屋にはワインが沢山置いてありますが、ワインもお好きなんですか?

machìna - 大好き!お酒大好き。

- 別のインタビューでも制作中にワインを一本飲んでしまうと言ってましたよね。

machìna - 飲んでしまいますね、マジで(笑)お酒は結構飲みます。これでも大分捨ててる。

- 大吟醸にドライフラワーを生けているのがユニークですね(笑)

machìnaのMy Classics アイテム編:ヴィンテージのハードウェア

- お気に入りのアイテムは、「ヴィンテージのハードウェア」だとおっしゃってましたね。

machìna - それがこれ。RolandのSpace Echoなんですけど。あと、これは蓄音機です。これは結構こだわってて、ロンドンで買ってきたものです。

- 機材が沢山ありますね。

machìna - 出ているものじゃなくて、中にも沢山ありますよ。棚の中が全て機材で。棚の中にも機材を安全に保管できているので、嬉しいですね。

- 蓄音機は制作に使用されるのですか。

machìna - はい。前のアルバム『archipelago』の中の “neon”って言う曲のスネアに音を混ぜて使ったりしています。

- 大体どれぐらい前のものなのでしょう。

machìna - これはね、ちょっと忘れちゃったんだけど...1920年代だと思います。これ用のレコードはヴァイナルではなくって、Shellacって言う材料を使っています。ガラスみたいに分厚いんです。針が太いんで、これでしか再生できないです。めっちゃ良い音しますよ。すごく重いんですけど、怖くて預けられないからずっと手に持って飛行機に乗ったんですよ(笑)

- レコードも集めてらっしゃるんですか。

machìna - 集めてるというよりは、ちょっとだけあるって感じです。内容もバラバラで、完全に遊びで。みんなはサンプルのために集めたりするけど、私は飲むときのBGMに(笑)色々あります。

- お部屋を見てると、収納が多いですね。

machìna - めっちゃ入ってる(笑)これは昔のタイプライターのデスクなんですけど、この上にモジュラーを置いて使いたいなと思って買いました。何が良いかと言うと、これはタイヤがついてるから、重いモジュラーをミキサーの方だったり、あちこちに動かせるんですよ。移動しながらレコーディングするのを楽しんでる。

- これもヴィンテージの家具なんですね。

machìna- すごく好きなんです。気に入ってます。

- ヴィンテージのアイテムはどちらで買っているのですか。

machìna - この台はネットでめっちゃ調べて。でも、海外とかではフリーの時間の時は必ず、ヴィンテージマーケットを行ってます。

- 他にお気に入りのヴィンテージアイテムはありますか?

machìna - このテープレコーダーもヴィンテージです。これもロンドンで買いました。自分の作品にも音が入ってます。一番最初のInstamatic camera だったので、126 filmのKodapak cartridgeを使うけど、このフィルムを探すのが本当に大変だった。

- 思った以上に機材が沢山あって驚きました。ピアノをされていらっしゃるのですよね。

machìna - 大学の時ジャズボーカルを専攻しました。 複数専攻でジャズピアノもやってました。

- 元々はiPhoneを使って音楽製作を?

machìna - はい。それは10年前のお話ですね。韓国でそれをやって、日本のレーベルから呼んでもらって。それが日本に来るきっかけになったんですよ。

- モジュラーでの制作を始めたきっかけはなんですか?

machìna- きっかけは別になくて。自分が持っているのは、Eurorackって言う種類で、ヴィンテージではないんですけど、モジュラーは、シンセサイザーの元の楽器になりますので、ある意味でヴィンテージに興味があることと繋がります。

- 結構複雑な機材ですよね。かなり練習が必要なのでしょうか。

machìna- 練習というより実験ですね。音が出るまでが大変。ピアノは押せば音が出るけど、こっちはツマミが分からないと音が出ない。でも、それは興味があったら分かるものです。このスタジオはQuadraphonicという、ステレオのLRとは違う4チャンネルのフォーマットなんです。60年代や70年代にはステレオの前に4チャンネルのミックスをしてて、そこからステレオになったんですよ。このQuadraphonicに今は興味があるんですけど、そういう意味でも昔のアイデアがすごく好きだから、こんな風にやってます。これはサラウンドの一番最初のフォーマットですね。

machìnaのこれから欲しいアイテム:ER-301 Sound Computer

- 新しいモジュールが欲しいそうで。

machìna - 高めのモジュールなんですけど、もうちょっとこのEurorackを音楽的に表現したいと思っていて。これがあると楽になると思ったんです。カッコいい理由は無いです(笑)見た目ももちろん、機能面で好きですね。あったらいいなって。

- 今メインで制作で使っている機材はやっぱりEurorackですか。

machìna - そうですね。必ず入るのはモジュラーとテープエコーです。Moogも必ず入れますね。ここにある他の機材はライブに使ったり。

- 棚にある本はどんなものですか?

machìna - これはアレン・ワッツというイギリス出身の哲学者で、このごろはまっている本です。

- 先ほど4チャンネルのミックスをすると言ってましたが、そういった音楽の面でもスピリチュアル的なものは活きていますか?

machina - そこまでいってるかはまだ分からない(笑)でも、それも良いアイデアかも。これからはそうなっていくかもしれないですね。

machina - PCを置いている机は部屋に合わせて作ってもらったんですよ。音楽制作用の机は、機能が良くて可愛いデザインがなかなか無くて、作るしかなかった。

- machinaさんは金髪が印象的ですが、いつから金髪なのでしょう。

machina - 3年ぐらい経つかもしれないですね。やめたいんですけど、印象がついちゃって。一回、今年の頭に黒にしたんですよ。でもそのすぐ後に撮影が入って、ディレクターさんに「金髪が良い」っていわれちゃって(笑)黒にして一週間で金髪に戻さなきゃいけなかった。そういうことが結構あるから、しばらくは変えられないなと思って。金髪だと傷むし、かなり難しいし、お金もかかるし(笑)

- メンテナンスが大変ですよね。

machina - 綺麗にするには色々かかりますね。

- ファッションが結構モードな感じですよね。好きなブランドはありますか?

machina - やっぱりヴィンテージが好きですね。具体的に好きなショップは無いんですけど、なんとなく入ったり。でも髪型に合わせてるだけで、派手な服も好きなんですけどね。難しいです(笑)頑張ってリップだけ明るくするぐらいで。服も派手にしちゃうと、GUCCIとかじゃないとお洒落にならない。

- でも、今のイメージは音楽と合ってますね。

machina - それもアーティスト活動では大事なので、そういう意味では悪くは無いかな。

- これから欲しい洋服はどんなものですか?

machina - 結構シンプルな服ばかり着てるから、すごくお洒落なパターンの服が欲しいです。色を使うと考えなきゃいけないじゃないですか。このイメージを保てる、カラフルなアイテムが良いですね。まあ、GUCCIかな(笑)ショーウィンドウから見てるだけなんですけど、逆にこの髪型で試してみたいです。

- ありがとうございました。

 

info

EP - 『Willow』 が10月4日(金)に発売予定

machìna
https://machina.link/
Instagram
Twitter

RELATED

My Classics Vol.15|サーヤ(ラランド)

連載『My Classics』。この企画ではアーティストやデザイナーなどのお気に入りの一品と、これから欲しいアイテムや気になっているものを紹介していく。普通のインタビューでは中々見ることのできないアーティストの嗜好や素顔などが垣間見えるものに。 第15回目には、お笑いコンビ・ラランドのサーヤ...

My Classics Vol.14|YamieZimmer

第14回目には、ビートメイカーのYamieZimmerが登場。彼の地元・根岸駅にある中華屋の三和で、最近の制作事情や先日リリースした2ndアルバム『TEMPLATE』に加え、地元について、周辺のラッパー達との繋がりについてなどを訊いた。

My Classics Vol.13|FACE

第13回目には、コミカルかつポップでながら、どこかシニカルな表情の顔が印象的な人物を描くイラストレーター / アーティストのFACEが登場。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。