Chance The Rapperらがアメリカ最高裁にラップの意義を説明する文書を送る
ヒップホップというジャンルの特性上、ラッパーの中には罪を犯し逮捕される者も多い。そうした際に彼らの楽曲のリリックが証拠として扱われることがあるが、複数のヒップホップアーティストがそれに反対し、裁判所にラップを理解する手引きとなる文書を送ったという。
2014年、ピッツバーグのラッパーJamal Knoxが裁判で2年の服役を命じられた。彼は2012年に銃器と薬物を所持していた容疑で逮捕され、その後“Fuck The Police”という楽曲をリリース。そのリリックの中のいくつかの部分が問題となり、テロの予告や目撃者への脅迫だとして再び告発され、その結果として有罪判決が下ることとなってしまったという。
New York TimesやSPINが報じるところによると、Chance The Rapper、Meek Mill、Killer Mike、21 Savage、Yo Gottiたちがこの一件に抗議し、今月3月6日に最高裁判所に宛ててラップの意義を説明する文書を送付。そこで彼らは「ラップを実際の犯罪の証拠として扱うべきではない」と説明している。Knoxの“Fuck The Police”の歌詞は「詩歌の一つ」であり、犯罪を示唆するような部分は「ラップのスタイルの中で作られた二つのキャラクターによって語られている。それは誇張された暴力的なレトリックで知られており、複合的かつバラエティに富んだ言語を用いる」として、Knoxのラッパーとしてのスタイルを解説。そして「暴力的な部分は文字通りに受け止められるものではなく、ラップの知識があるリスナーに向けてラップを理解させるために用いられたものである」と、ラップを理解するためにある程度の前提知識が必要だとしてKnoxを擁護した。
ラップの中でもギャングスタラップはいかにリアルかつサグなスタイルを提示出来るかを競うものであり、アーティストには実際に犯罪歴のある者も多い。しかしアートとしてのラップには誇張された表現も含まれるため、文字通りの犯罪の告白や脅迫であるとは限らない。それらを犯罪の証拠として扱うのは安易かつ危険だといえるだろう。
Chance The Rapperらによる文書によって裁判官たちがラップという文化のマナーを理解できたかどうかは不明だが、多少なりとも知識を得ることが出来れば状況は改善されてゆくかもしれない。