Instagramがファッション業界に悪影響を与えている?

ニュースサイトHighsnobietyがコラム記事で、Instagramはファッション業界を衰退させる可能性があることを指摘。ライターのAleks Erorはファッション業界がInstagramのようなSNSを通してマーケティングを行うとファッション自体の価値が下がっていくと言及している。

Twitter, Facebook, Snapchat, Instagram… たくさんのSNSが存在するが、どのSNSも広告が表示されたり、企業の公式アカウントがあったりなどと、様々な業界のマーケティングに利用されている。どのSNSもはじめは広告塔になるつもりはないのだが、大きくなっていくにつれて、運営のために広告収入が必要となってくる。

そんな中で、写真や動画専用のSNSであるInstagramは視覚的要素が強いためビジュアルで勝負するファッションの分野と親和性が高い。言葉より画像を重視するこの独特なメディアでは、ブランド会社が服などの商品を写真で投稿して宣伝しても、広告っぽくないのである。Instagramではファッション関係の投稿を広告と思われずにユーザーに届けることができるのだ。

そして生まれたのがInstagramインフルエンサーと呼ばれる人たちだ。あるジャンルで特化した知名度があり、フォロワー数が多く、ファンに影響力のある人達をインフルエンサーと呼ぶ。たとえばInstagramインフルエンサーに売りたいブランドの服などを着させて、Instagramに投稿してもらえば狙ったユーザー層に確実にマーケティングキャンペーンを行えるのだ。しかも広告と思われずにマイナスな印象も与えずに自然に客の購買欲を煽ることができる。

人は心理的に友達や信頼する人物にオススメされたほうが商品を購入しやすくなる。Instagramインフルエンサーを使ったマーケティングは芸能人を起用した広告と同じことをしているだけなのだが、ブログやInstagramというプラットフォーム上でインフルエンサー本人が自ら投稿すると、まるで直接知人からオススメされているようにユーザーは錯覚するのである。

このInstagramインフルエンサーがファッション業界に悪影響もあるのではないかとAleksは懸念している。長い間刊行されている出版物はそれに伴った背景と歴史がある。何十年と積み上げてきて高めた価値がある。それとは逆に、まだ歴史が浅く新しいメディアであるブログやSNSは新規参入しやすい分、頼りすぎるとそのブランド自体の権威と価値を下げて安っぽくなっていってしまうのではないかとAleksは指摘。

Aleksはインターネットの普及とSNSの増殖は、ファッション業界へ参入するハードルを一気に下げた。ファッションは手の届きやすいものになったが、作り手側と消費者を一気に近づけたことで業界の威信が失われていくのではないかと危惧している。

ファッション業界は実力主義ではなくなる。モデルも競争の中勝ち残った少数のみが業界の顔として立つわけではなく、もっと平等で民主的に誰もがファッションの世界に飛び込み、業界の一部となることができるようになるのだ。

ファッションのクリエイティブな面にも影響はあると彼は語っている。デジタル時代の前は業界側と外の世界のやりとりが少なかったため、デザイナーはまわりを気にせず自分の作りたいものを作り、消費者はそれを買うか買わないかの購入意思でのみ業界に口出しすることができた。しかしインフルエンサーの登場によって、ファンの反応がすぐに見れるようになり、消費者の嗜好や求めるものは明瞭に現れるようになった。デザイナーもそのようなデータに影響をどんどん受けてしまう可能性がある。

しかしながら、ファッションとは消費者に着てもらってこそ意味がある。純粋なクリエイターの表現だけで成り立つ絵画などとは違い、ファッションは最終的には消費者のことを考えて作らないといけないため、昔から常に独創性と商業の間で揺れている。その点においてはSNSの登場前から変わっていないのでインフルエンサーはファッションの本質はそこまで変化させてなく、ただ民衆の声を大きくわかりやすくしただけなのかもしれない。

このコラムが指摘しているように、SNSが既存のファッション業界を変えようとしていることは確かだ。ここではマイナスの側面が強調されているが、これまでの業界のやり方では登場できなかったSNSから発信するブランドも増えている。それらのブランドはストリートファッションを中心に新しい流れを、作り出しているのは確かだろう。音楽同様にファッションでもポジティブな面でもネガティブな面でも既存の方法論では通用しない時代に突入している。(小林一真・和田哲郎)

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