Jay Rockの新作に期待できる3つのこと

MUSIC  2017.09.18  FNMNL編集部

TDE (Top Dawg Entertainment)は今年も好調だ。本年1月、イングルウッド出身のシンガーソングライター/プロデューサーSiRが同レーベルと契約していたことが明かされ、2月にEP『Her Too』をドロップした。4月にはKendrick Lamarが4枚目となるアルバム『DAMN.』をリリースし、ダブル・プラチナムを達成したほか、同作からの先行シングル“HUMBLE.”は自身のキャリア初となるビルボード1位に輝いた。さらに、6月にはSZAが待望のアルバム『Ctrl』をリリース。同作はセールス的に成功を収めただけでなく、そのリリシズムと歌声が多くの人々から称賛を集め、SZAはMTV Video Music Awardsでも新人賞にノミネートされた。

残すところ3ヶ月あまりとなった2017年、TDEからの次なる作品のリリースが待たれるが、その最有力候補がJay Rockのニューアルバムであろう。TDEのCEOであるAnthony “Top Dawg” Tiffithは先月、RockがスタジオでエンジニアのMixedByAliと共にミックス作業に取り組んでいる様子をInstagramにポストした。

In the stu mixing last nite with @jayrock and @mixedbyali ... We are getting close to lift off ppl... #TDE

gwadpotさん(@dangerookipawaa)がシェアした投稿 -

Jay Rock自身も新作のリリースが間近であることを仄めかすキャプションと共に写真を投稿しており、2015年の『90059』に続くアルバムのリリースまで秒読み段階に入ったと期待してもよいだろう。本稿では、Rockにとって3枚目となるアルバムに、我々が期待できるであろう3つのポイントを記す。

1. 正統派Gシット

ワッツのニッカーソン・ガーデンズ出身でバウンティハンター・ブラッズに所属していたJay Rockの十八番は、やはりギャングスタ・ラップだ。彼がその名を轟かすこととなった“Lift Me Up”のMVでは出身地がロケ地となっており、Rockはそこで「マザーファッキン・(ウェスト)コーストを(ラップ・ゲームに)取り戻してやるぜ」と鼻息荒くラップしている。そして、そのサウンドは紛れもないGシットである。

ミックステープ『Black Friday』(2010年)やデビューアルバム『Follow Me Home』(2011年)でも典型的な西海岸のサウンドがメインになっていた一方、『90059』ではギャングスタ的なトピックが扱われつつも、その作風はガラリと変わっていた。しかし、もうRockにコテコテのギャングスタ・ラップを期待できないと落胆するのはまだ早い。先日、あのDJ QuikがTwitterでRockとのレコーディングを示唆していたのだ。

Jay Rockの楽曲をQuikがプロデュースすることになれば、それは紛れもないGシットだと期待してよいだろう。ぜひともアルバムに入ってほしいものだ。

2. フッドのリリシズム

Kendrick Lamarの人気曲の一つに、2012年のメジャーデビュー作『good kid, m.A.A.d city』収録の“Money Trees”があるが、同曲で最もハードなヴァースを蹴っているのはJay Rockだということを忘れてはならない。彼は同曲において、荒廃したフッドの様子やドラッグディーラーとしての生活を生々しく描写している。

Bakin’ soda yola whippin’, ain’t no turkey on Thanksgiving
My homeboy just domed a ni**a, I just hope the Lord forgive him
(重曹でクラックが調理されようと、感謝祭に七面鳥なんて出てきやしない
ホームボーイが人の頭を撃っちまった、神様、奴を赦してくれ)

Gotta provide for my daughter and ‘em, get the fuck up out my way, bish
Got that drum and I got them bands, just like a parade, bish
(娘たちに食わせてやらなきゃいけないんだ、邪魔をしないでくれ
ドラム(銃弾)とバンド(お金)を持ってパレードみたいにハッスル)

Rockのリリシズムは、彼の初期作品からも窺える。『Black Friday』収録の“F**k the Police”では、「このビッチは俺が知ってる奴全員と1回はヤってるんだ」「好き嫌いが激しくてヒスパニックと黒人ばかり好き」「青いドレスを着たビッチだけど、クリップじゃないぜ」などとラップしており、Ab-Soulのフックでその「ビッチ」の正体が警察だと明らかにされる。また、『Follow Me Home』の“Just Like Me”では、ギャングバンギングやドラッグディーリングが悲しい結末しかもたらさないことを、自らの経験を交えて力強くスピットしている。

さらに、最新作『90059』の“Fly on the Wall”ではBusta Rhymesを客演に迎え、壁に止まったハエのような第三者の視点から、ある少年がギャングバンガーとなり殺されてしまうまでのストーリーを描いている。

There was a young ghetto child goin’ wild after runnin’ 'round
Who came from a happy home, then got lost in the jungle
Hit a lick for like ten chicks
Brought it back to the bricks then got everybody rich
(走り回ってた頃からワイルドに育ったゲットーの子供がいた
幸せな家庭に育ち、ジャングル(=フッド)に飲み込まれた
10kgのコカインを盗みに入って
家に持ち帰り、みんなをリッチにした)

Now this is the part where jealousy comes out here to play
Hood politics official when they want you out of the way
(ここで嫉妬が物事をややこしくする
疎まれるとフッドの政治が働くんだ)

Had his nose wide open while gettin' head at the park
She set the GPS location like this where we park
Now you know what's next
It's crazy how life can end all through a text
(公園でしゃぶられながら彼はいい気分だった
彼女はここに居るとばかりにGPSを付けてたんだ
次に何が起こるか分かるだろ
1通のテキストで人生が終わるなんてクレイジーだ)

Kendrick LamarやAb-Soulといったレーベルメイトの陰に隠れがちだが、Jay Rockもまたリリシストなのだ。新作でもクレバーなワードプレイやストーリーテリングに期待できよう。

3. Black Hippyのポッセカット

2013年、Black Hippyの4人(Jay Rock, Kendrick Lamar, Ab-Soul, ScHoolboy Q)がXXL誌の表紙を飾った際、“WITH KENDRICK LAMAR & BLACK HIPPY”の文字が躍った。Ab-SoulやScHoolboy Qはこれに不快感を露わにし、特にSoulは「もし“Kendrick LamarとBlack Hippy”なんて言われ続けるなら、俺はグループを抜けるぜ」とまでツイートした。

KendrickもBlack Hippyの一人にすぎず、Soulが怒るのも無理はない。が、その一方でJay Rockは以下のように見解を示した。

個人的には気分を害されたりしなかったよ。結局のところ、Kendrickだけ名前が出てたとしても、QとBlack Hippyだとしても、Ab-SoulとBlack Hippyだとしても、俺らは同じグループであり、俺らであることに変わりはないからな。

TDEに最も長く在籍しているRockは、Black Hippyのチーム感を誰よりも大切にしているように思える。その証左とでもいうべきか、これまでにリリースしたアルバムすべてにBlack Hippyのポッセカットを収録しているのは、四人の中でJay Rockただ一人である。

4人で思い思いにラップしているMVが楽しげで微笑ましい“Say Wassup”。プロデューサーは前述の“Fly on the Wall”も手掛けたDAE ONE。

とにかく4人のフロウが特徴的な“Vice City”は、ここ最近でTDE作品にクレジットされることが増えてきた印象のあるCardoプロデュース。

Black Hippyのアルバムが当分実現しそうにない今、4人のコラボが楽しめることを最も期待できるのは、やはりJay Rockのアルバムにおいてであろう。さらに、Isaiah Rashad, SZA, Lance Skiiiwalker, SiRといったTDEのアーティストを全員フィーチャーしているのも、やはりRockの『90059』だけである。昔からのTDEフォロワーも、『DAMN.』や『Ctrl』を気に入った新しいファンも、Jay Rockの新作は要チェックだ。

奧田翔(おくだ・しょう)

1989年3月2日宮城県仙台市出身。会社員。先月泊まったAirbnbのホストの娘がJay Rockのホーミーだった。

https://twitter.com/vegashokuda

http://ameblo.jp/vegashokuda/

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