バイク事故を経たJay Rockが新作『Redemption』に込めたフッドへの想い

3枚目となるスタジオ・アルバム『Redemption』をドロップしたばかりのJay Rockが、6/19にPower 105.1のラジオ番組『The Breakfast Club』に出演した。同作は、Rockが初めてInterscope Recordsからリリースした作品でもあり、先日アルバム『DAYTONA』をリリースしたばかりのPusha TもInstagramで賛辞を送っている。

いつもの癖でニューヨークが寒いと思い込み、93℉(≒34℃)の暑さにもかかわらずネルシャツを着込んで現地入りしてしまったRockだが、終始にこやかな表情で、ホストのDJ EnvyやCharlamagne Tha Godからの質問に答えた。2年前のバイク事故は、彼にどんな変化をもたらしたのか? また、彼はそれをどうアルバムで表現しているのか? そして、そんな彼が目指す方向とは?

 

『Redemption』は自信作

Rockが『Redemption』をリリースした6/15は、Nasのアルバム『NASIR』のリリース日でもあり、翌日にはBeyoncéとJAY-Zの夫妻(The Carters)がアルバム『EVERYTHING IS LOVE』をサプライズ・リリースした。2018年を代表するような超大作2作とリリースのタイミングが重なってしまったものの、彼らに対し素直にシャウトアウトを送っている。

「偉大な人たちと一緒に並べていい気分だよ。俺はずっとNasのファンだったんだ。(同じタイミングでアルバムを出せるのは)美しいことだよ。」

また、ニューヨークで行われたリスニング・パーティーの一幕がきっかけで、JAY-Zがアルバム『Redemption』に参加するのでは?と一部のファンを期待させてしまったことについて、苦笑いしながら弁解している。

「俺がちょっとハイだったのもあるけど、絶対みんなが勘違いしたんだ。J. Coleが参加してる曲がアルバムにあるから、『ジェイが曲に参加してるぞ』って言ったんだけど、みんなHovだと誤解しちゃってさ(笑)。そのまま流すしかなかったよ。」

 

J. Coleにもシャウトアウトを送り、自身とCole、JAY-Z、Jay Electronicaで曲を作りたいとも話している。しかし、そこはラッパーのJay Rock。「今週出た中で一番気に入っているアルバムは?」というCharlamagneの質問には自身の作品を挙げ、仕上がりへの自信を隠そうとはしない。

「『Redemption』は2018年のベスト・アルバムだ。ディスリスペクトじゃないよ、誤解しないでくれ。俺の全てを注いだアルバムなんだ。」

建設的な批判なら大歓迎

自信たっぷりのJay Rockではあるが、自身の音楽についてのお世辞は好まず、建設的な批判であれば歓迎すると話す。今回のアルバム制作にあたっても、信頼する人々からのフィードバックに耳を傾けたことで、自身の恵まれた声を使って、これまでにない音楽作りに挑戦できたのだとか。

「俺の顔にブルシットが付いてたら、家から出る前に教えてくれ(俺が恥ずかしいことをしていたら、世に出る前に知らせてくれ)。お前が汚い靴にボロボロのTシャツを着てたら、俺は指摘するから。それを見過ごして外に出て笑われたら、俺はリアルな奴じゃないだろ。」

バイク事故を経て

2016年2月15日、地元で大きなバイク事故に遭ったJay Rock。大腿骨を折り、骨盤にヒビが入るという大怪我を負ったが、この経験により「完全にギアが変わった」と語る。『Redemption』収録の表題曲では、手術中に自身の葬式を見た様子が描かれているが、これはどういうことなのだろうか?

「そのことについて考えてたんだ。俺が死んだら、誰がサポートしに来てくれるだろうって。人が死ぬとみんな写真をSNSにアップするのを見るけど、俺だったら花をあげるなとか、ずっとそんなことを考えてた。でも結局のところ、俺はまったく違うポジティブなレベルに達して、よりよい人間になろうって思えたんだ。」

同曲には、生死をさまよった経験をきっかけに、過去に犯した過ちを悔い改め、よりよい人間として生きようという決意・メッセージが込められているそうだ。また、“Broke +-”で語られる悲観的な感情は、フッドで育つ人々が経験することを描写したものだという。

「貧しい精神状態にあると、いろんなネガティブな考えが浮かんでくる。フラストレーションが溜まって、次はどうすればいいんだって考える。フッドではそういう生活なんだ。」

Futureは天才

『Redemption』の先行シングルであり、2月にリリースされた映画『ブラックパンサー』のインスパイア盤『Black Panther: The Album』にも収録されている“King’s Dead”だが、当初Rockは同曲にFutureが参加することを知らなかったという。そのFutureのファルセットをCharlamagneが茶化すかたわらで、Rockは笑いながらも、最初に彼のフックを聴いた時の感想を以下のように語っている。

「最初に聴いた時、こいつは売れる、ヒットだって思ったよ。誰が何と言おうと関係ない。Futureにシャウトアウト! あいつは天才だ。」

彼の影響からか、今回は誰もが楽しめるような、キャッチーなフック作りを意識したことも明かしている。

Kendrick Lamarとの出会い

話はレーベルメイトのKendrick Lamarと出会った頃のことにまで及ぶ。TDE (Top Dawg Entertainment)と最初に契約したRockは、後日Kendrickが、現在同レーベルの共同社長の一人であるDave Freeと共にスタジオに来た時のことを振り返る。

「俺はリリックを書くのに苦労しているっていうのに、あいつは俺の名前を入れてフリースタイルでラップし始めたんだよ。俺はその時、Kendrickは特別だって分かったね。そんな奴は他に見たことがなかったから。」

仲間、そしてフッドへの想い

TDE最初のアーティストながら、前述のKendrickとScHoolboy Q、SZAがメジャー・レーベルから作品をリリースするのを見送ってきたJay Rock。彼らに対してネガティブな感情を抱いたことはなかったのだろうか?

「みんな俺のブラザーだ。俺らはみんな同じ犬小屋(TDE)で育ってきたんだ。敵意を抱いたりなんてしないよ。俺が成功したらみんな成功したって言えるし、あいつらが成功したら、俺もやったって思える。」

Rockのレーベルメイトたちへの想いが存分にうかがえる、熱い回答だ。さらに、今も地元のニッカーソン・ガーデンズ・プロジェクトによく戻るというRockは、その理由を問われると、次のように答えている。

「フッドが俺を育ててくれたんだ。そこで俺は全てを身につけた。そこにはまだ家族が住んでるし、機会があればいつでもそこに行って仲間と会うよ。そういうことなんだ。どれだけ稼いでもプロジェクトに戻るだろうな。」

そして、そんな地元の人々への想いを以下のように語った。

「ホーミーはみんな俺に、モチベートし続けてくれって言う。誰かが最近、俺に『自分をリーダーだと思う?』って訊いてきたんだけど、違うね。俺はコミュニティ・リーダーじゃなくてモチベーターでいたい。俺の影響で誰かがよりよいことをできたら、それは俺にとってドープなことなんだ。」

メジャー・デビューを果たした今も、こうしてRockは地元ニッカーソン・ガーデンズとの関わりを密にし、人々をモチベートし続けている。そして、その勢いは増すばかりだ。

生死をさまよった経験が自らの活動を加速させたと語るJay Rock。2年前のバイク事故は、ある意味では彼にとっての救済(Redemption)だったのかもしれない。

奧田翔(おくだ・しょう)
1989年3月2日宮城県仙台市出身。会社員。『Redemption』は個人的に上半期ベスト3に入る傑作!
https://twitter.com/vegashokuda

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