「5人最後のBIGBANG?」 激しいチケット争奪の起きたFINAL CONCERT、そして彼らの「歌の力」について

BIGBANGはK-POPに詳しくない人でも、K-POPといえばBIGBANGとなるほど、誰もがパッと思いつくアーティストではないだろうか。まさにK-POPの絶対王者的存在だ。

韓国のみならず、BIGBANGは世界的に活躍しているアーティストであり、日本でも昨年行った【BIGBANG10 THE CONCERT : 0.TO.10 -THE FINAL-】では2016年11月~12月にかけ全4都市16公演で78万1,500人を動員。まさにスーパースターだ。

しかし、韓国ではどんなスーパースターであっても国民の一人として兵役に行く義務があり(平均2年程)、当然その間芸能活動をすることは出来ない。

【BIGBANG10 THE CONCERT : 0.TO.10 -THE FINAL-】はメンバーのT.O.Pが兵役前最後のコンサートということで、「5人最後のBIGBANG」を見ようと誰もがチケットを求め、チケットは韓国、日本、その他の国でも即時ソールドアウトしたコンサートだ。

私は韓国在住だが、チケットの発売翌日には挨拶のように行く先々で「BIGBANGのチケットどうだった?」と聞かれた。

それは私がK-POPファンを公言しているからという訳でもなく、友人達が元々熱心なBIGBANGファンだったという訳でもなく、ごく当たり前に一般的な人達もが「見なくてはいけない公演。誰もがチケットを求めている。」と考えているからだった。

まるで大ヒットドラマの放送翌日の学校が、その話で持ちきりだった時のように。当たり前に誰もが彼らの活動を日常的に目にしていて、当たり前に熱狂させているそのパワーはこっちに来てより実感した。

正直、今回BIGBANGについて書こうと思った時、あまりに切り口が多いので悩んだ。個人的には私がK-POPにハマったきっかけでもあったし、日本でK-POPブームを巻き起こした立役者でもある。

 

日本では一般的にBIGBANGといえば「ガラガラGO!!」のイメージが強いだろうか?(久々に見たらめちゃくちゃ懐かしい...。)
熱心なK-POPファンでない方は、現在のK-POPのイメージもこういう奇抜なファッションや電子音、ネオンの光るミュージックビデオで定着してる方も多いように思う。それだけこの時のBIGBANGのイメージ=K-POPのイメージとして残るほど強烈な印象があったからではないだろうか。

もちろんファッションアイコンとしてもその名前はあまりにも知れ渡っていて、奇抜なヘアスタイルもハイカットのスニーカーやスキニーのパンツスタイルも着用したブランドも全て、後輩アイドルから一般の人達にまで浸透したブームを作ってきた。

BIGBANG

また、自己プロデュース型のアイドルグループというフォーマットも作り、彼らの後では音楽やダンスを自ら制作する事は、K-POPアイドルの常識にすらなってきている。

音楽のスタイルから、ファッション、私生活まで多くの話題を振りまき、メンバーだけでなくダンサーやヘアメイク、スタイリスト、彼らに関わる人達も常に注目を浴びていた。音楽だけではなく彼らの半径にあるものは全て話題になっていた。まさに台風の目のような存在だった。

G-DRAGONの「ONE OF A KIND」にはこんな歌詞もある。

난 다르니까 그게 나니까
俺は違うから それが俺だから
뭐만했다하면 난리나니까
何をしたって大騒ぎ
유행을 만드니까 다 바꾸니까 그니까 이 실력이 어디갑니까
流行を作るから 全て変えるから だから この才能は何処へ行くんだ

날 따라해요 날 따라해요 다 따라해요 다 따라해요
俺を真似しな 俺を真似しな 全部真似しな 全部真似しな
(一部抜粋)

彼らは、言葉通り"ONE OF A KIND"な存在であった。その多くの功績をどの部分から切り取ってもきっと立派な記事を作ることができるだろう。

しかし、今回はシンプルに「5人の歌の力がすごい」ということを書こう。

前述の通り、BIGBANGのラストコンサートはファンも、そうでない人もチケットを求めた。それは何故か?

 

日本でも大流行した「FANTASTIC BABY」と言う楽曲がある。
BIGBANGのコンサートでも定番にもなっている曲だが、コンサートでの「FANTASTIC BABY」はもう”FANTASTIC BABY”という1つのアトラクションっていう感じだ。もうイントロが始まっただけで熱狂する。待ってました!とばかりに会場の誰もが立ち上がってジャンプして、叫ぶ。

コンサートに何回も行ってる人だけではなくて、初めて行く人や無理矢理一緒に来てもらったあまりBIGBANGを知らないような友人や恋人も絶対に盛り上がる。それは本当にすごいことで、どんなコンサートに行っても盛り上がっている熱心なファンと、恥じらいもありじっと見ていたいタイプの人がいるものだと思うが、本当に自然と全員が立ち上がって叫びたくなるような雰囲気になるのだ。コンサートでじっと見ていることや座って見ていることが決して悪いことではなく、「FANTASTIC BABY」は自然と誰もが踊りだしたくなるような体が浮き立つ感覚になる。

よくコンサートのレポートなどで、「会場のボルテージを上げる」と言う表現があるが、それを目の当たりにできる、ボルテージが確実に一段階も二段階も上がった瞬間を実感することができるのだ。

Big Bang

​私はモニターの映像すら見えない席でのBIGBANGのコンサートに行ったことがあるが、始まる前今日は何も見えないね...とがっかりしてた友人も、帰る頃には「ブーン!」(「FANTASTIC BABY」のコールレスポンス部分)って絶叫しすぎて声出ないわ...って払いものが落ちたような笑顔で帰った。(ちなみにその日は私も友人も飛び跳ねすぎにより首がむち打ちのような状態になった。)それだけ、音楽と会場の雰囲気だけで十分に楽しめる。

 

それは「BANG BANG BANG」や他の楽曲でも、もちろん同様。ライブ感のある合いの手やフリースタイルのパフォーマンスが何度も見ているファンも楽しませてくれるのだと思う。

BIGBANG

この曲は去年韓国で大規模なデモが行われた時に若者たちで集結した団体がデモ行進の時に使ってた事が、個人的に印象的で衝撃だった。目的はどうであれ、若者のパワーや盛り上がりを象徴しているようだった。コンサートの話とは少しズレるようだが、それくらいBIGBANGの曲には熱狂を促すような力があるとその時ひしひしと感じたのだった。

さらに、BIGABANGにはここまで書いたような派手なパフォーマンスだけではなく、日常的に何度聴いても飽きないようなメロウな楽曲も多い。

 

 

コンサートでも本当に沢山聞く機会のある楽曲だが、この2曲は本当に何回聞いても飽きがこない。音楽スタイル的にはヒップホップの印象が強いが、バラード曲も本当に素晴らしく、一言一言噛みしめるような歌い方が胸にグッとくる。高い歌唱力があるからこそ、楽曲の幅も広いのだと思う。

 

さらに言えば、「アイドル」も上手い。果たしてアイドルと定義することが許されることなのか分からないが、アイドル的な動作があまりにも上手いと思う。

 

もしかしたらアイドル的な動作というのはかっこいいパフォーマンスより難しいのではないだろうか。かっこいいパフォーマンスとアイドル的な動作を両立できたグループというのはそうそういないように思う。
よくBIGBANGのようにかっこいいグループになりたいという後輩アイドルのインタビューを目にするが、BIGBANG先輩の偉大なところはかっこいいパフォーマンスだけでなくて、可愛いや面白いも上手に熟すところだよ!っと伝えに行きたいのだった。

 

そう思うと本当にこのグループは多種多様なエンターテイメント性を持っている。かっこいいとか可愛いとか面白いとか悲しいとか楽しいとか、とにかく人のいろんな感情を引き出す力を持っている。例えば、それがその内のどれか1つに偏っていてもきっと成功は出来るのだと思うが、それらを全て持っていたから10年という長い時間活躍し続けたのだと思う。

 

それはもちろんメンバーの個々の個性や役割においても同じで、全く違った個性の5人だったからこそこれほど多くの引き出しを持っていたのだと思う。それぞれ確かな実力を持っているから、すでにソロ活動でも充分に活躍しているし、これからもソロで活動することは可能だろう。

そう分かっていても、5人揃った姿がこんなにも惜しいのは何故だろうか。
それはきっとコンサートに行ったことのある人なら分かるのだろう。ドキドキしてるうちにワーッと高まってあっという間に終わるジェットコースターのようなコンサート。笑ったり泣いたり叫んだり色んな気持ちを巻き起こす人達だった。

BIGBANG

次ページ : BIGABANGの残した10年間

RELATED

【特集】FUTURA LABORATORIES × NIGOLD by CO:LABS Vol.5|須田アンナが語る自己表現としてのファッションとNIGO

NYを拠点に70年代からグラフィティを描き続けているレジェンドFUTURA LABORATORIESと、90年代から日本のストリートファッションを牽引してきたレジェンドNIGOLDによるコラボプロジェクトがCO:LABSでスタートした。

【特集】FUTURA LABORATORIES × NIGOLD by CO:LABS Vol.4|Boseが語る2人の魅力

NYを拠点に70年代からグラフィティを描き続けているレジェンドFUTURA LABORATORIESと、90年代から日本のストリートファッションを牽引してきたレジェンドNIGOLDによるコラボプロジェクトがCO:LABSでスタートした。

【特集】FUTURA LABORATORIES × NIGOLD by CO:LABS Vol.3|GUCCIMAZEはFUTURAのグラフィックを学校の机に描いていた

NYを拠点に70年代からグラフィティを描き続けているレジェンドFUTURA LABORATORIESと、90年代から日本のストリートファッションを牽引してきたレジェンドNIGOLDによるコラボプロジェクトがCO:LABSでスタートした。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。