【特集】FUTURA LABORATORIES × NIGOLD by CO:LABS Vol.3|GUCCIMAZEはFUTURAのグラフィックを学校の机に描いていた
NYを拠点に70年代からグラフィティを描き続けているレジェンドFUTURA LABORATORIESと、90年代から日本のストリートファッションを牽引してきたレジェンドNIGOLDによるコラボプロジェクトがCO:LABSでスタートした。
FNMNLではこの企画に関連して、両者の作品に触れてきたアーティストやデザイナーなど世代を超えた5人へのインタビューを敢行。第一弾のGORO、第二弾のJP THE WAVYに続き、第三弾では独特なシェイプのタイポグラフィや、鮮やかかつダークさの漂う色彩のグラフィック制作でNicki MinajやPost Malone、Fetty Wap、Flying Lotusなどにも作品を提供するGUCCIMAZEが登場。デザイナーならではの視点で両者の魅力について語ってもらった。
取材・構成 : 永嶋創太
撮影 : Cho Ongo
- 早速ですが、NIGOさんを最初に認識したのはいつ頃ですか?
GUCCIMAZE - 11歳とかそれぐらいの時に雑誌の「relax」でNIGOさんの特集がされていて…今日はそれを持ってきました。(雑誌を見せながら)これ古本とかじゃなくて、当時お小遣いで自分が買ったやつです(笑)。この表紙に描かれた動物のロゴはなんとなく知っていて。それがブランドのロゴだと知らなかったのですが、これを読んでNIGOさんのことも認識するようになり、どんどんとのめり込んで行った感じです。
- では、FUTURAは?
GUCCIMAZE - NIGOさんを入り口として、その周辺のシーンやカルチャーを知るようになってから、FUTURAのことも認識しました。それこそ自分がデザイナーになったルーツでもあるんですけど、最初はNIGOさんから入ってスケシン(SKATE THING)さんを好きになって。
- なるほど。
GUCCIMAZE - スケシンさんがたまたまFUTURAを東京で見掛けて話し掛けて仲良くなり、NIGOさんに会わせたという話もありますよね。後は、イギリスのDJであるJames Lavelleによる音楽プロジェクトUNKLEのグラフィックをFUTURAがやっているのを幼いながらに見て、カッコイイなと思っていて。そのグラフィックのエイリアンを真似して学校の机に描いてました(笑)。
- GUCCIMAZEさんはイギリスに幼少期に住まわれていたことがあるんですよね?その頃とかですか?
GUCCIMAZE - 小学校低学年の頃には既に帰ってきていて。この辺に興味を持ったのは小学生の終わりくらいです。
- かなり早いですね。「relax」をその歳で買っているのはすごい。
GUCCIMAZE - でも、その時はちゃんと「relax」を認識して買っていたというより、あの最近気になるロゴが特集されているっぽいな、というので買ってました。
- そこからNIGOさんのことも色々調べるようになっていった?
GUCCIMAZE - その頃は本当に雑誌しか知る由が無かったので。後は全部憶測で。たぶんこの人とこの人が繋がっていて、それから生まれたコラボなんじゃないかな…とか(笑)。
- では、NIGOさんの作る洋服も当時から買っていましたか?
GUCCIMAZE - 高校生の頃にお年玉握りしめて、KAWSとのコラボスニーカーを買ったりしていました。
- それらのどんな所に惹かれていたのですか?
GUCCIMAZE - もちろんアパレルそのものもカッコイイんですけど、パッケージとか、ポケットの裏地、ボタンのデザインとか、ちょっとしたディテールまですごい拘っていたじゃないですか。その頃にしてはかなり画期的だったんじゃないかと思います。どのアイテムがヤバいというより、いちいちヤバかった(笑)。物だけカッコよくて側が適当とかじゃなくて、細かいところにも妥協しない感じがイケてんなぁと。
- FUTURAに関しては何か思い出に残っているエピソードはありますか?
GUCCIMAZE - 知った当初はよく分かんないけど、とりあえずイケてるから真似して書いてみようみたいな(笑)。Futuraは僕よりちょっと上の世代の人が影響を受けていて、その影響を受けた人たちの影響を受けて僕が育ってきたので。元を辿ればやっぱりFUTURAがルーツになっていることがあるので、それで後から雑誌を買ったりして調べていました。後、STASHと一緒にやっていたブランドのRECONもよく着てました。だから、最初はアートとしてというより、服に落とし込まれたものとして彼のデザインはすごい好きでした。
- 同じデザイナーとして影響を受けた部分はありますか?
GUCCIMAZE - FUTURAは文字を描いた作品も元々やっていましたが、輪がたくさん描かれた作品とかアブストラクトな表現もしていて。グラフィティといえば文字でしょみたいな固定観念をぶっ壊した1人だと思うので。そういうスタンスは自分もすごい影響を受けています。とはいえ、彼のタグ(ライターのサイン)もすごいカッコよくて、それもよく真似して机に書いてました。誰にも理解はされなかったですけど(笑)。
- GUCCIMAZEさんはラフをいつも必ず手書きで描かれていたり、グラフィティのタグを想起させる作品も多いと感じます。FUTURAのスタイルと自分のスタイルにシンパシーを感じる部分もあったりしますか?
GUCCIMAZE - FUTURAは勢いで描いて偶発的に生まれる線とかも大事にしてそうだなと思っていて。後、スプレーを使っているのに細い線もすごい上手くて。大胆だけど、繊細。そういうところは自分もすごい意識してグラフィックを作っているので、勝手な親近感みたいなのはあります。自分の中でヤバいと思ってずっと見てきたライターは一握りなので。そういう少ない内の1人なので、無意識のうちにも影響はあると思います。見る人からしたら全然別物に見えると思うんですけど。
- なるほど。
GUCCIMAZE - 後、以前打ち合わせでとある会社に行ったら、個展の為に来日したFUTURAがいて。すごい気さくな人で、たまたま前を通りかかっただけの自分にも話しかけてくれて。咄嗟のこと過ぎて、「THEヘッズ」みたいになって、何を話せば良いか分からなくなってしまった(笑)。コレとかコレとか未だに持ってるよとかだけ伝えて。
- (笑)。自分もこういうことをやっているとかを伝える気にはならなかった?
GUCCIMAZE - いやぁ、もう無理でしたね(笑)。いざ、ああいう憧れの人が目の前にすると心臓バクバクになって。
- 今回はそんなFUTURAとNIGOさんによるコラボですが、実際にアイテムを手に取ってみていかがでしたか?
GUCCIMAZE - やっぱり背中のこれだけで、FUTURAって分かる時点で相当ヤバいですよね。後、刺繍でここまで大きいと迫力が出て良い。
- 昔から交流のある2人ですが、やっぱり似ているようで役割が全然違う感じがしますよね。
GUCCIMAZE - そうですね、FUTURAとNIGOさんって同じラインで語られることもあると思うんですけど、近いカルチャーにいるだけで立場は全然違うと思っていて。FUTURAは100%手を動かす人で、NIGOさんはブレインとなって上手に人を巻き込むディレクターであり、ビジネスマンだと思います。
- NIGOさんのそのブレインとしての頭の使い方で、すごいなと思う点はどんなところですか?
GUCCIMAZE - 絶妙なタイミングで絶妙なコラボとか、分かってんなぁみたいな。時代を読む能力がある。そういう人って死ぬまでそうなんだろうなと思います。世間の温度感とか、今みんながどういうものを欲しているのかとか、どうやったら先駆者になれるのかとかに目が利く。自分はやっぱり作り手で、そういう脳はどちらかといえば無いと思うので。そういう意味でもNIGOさんとFUTURAの関係はすごい良いなと思います。
- もしこの両者とそれぞれコラボレーションができるとしたら、何をしたいですか?
GUCCIMAZE - 何だろう…。NIGOさんだったら、今HUMAN MADEで落ち着いたデザインのイメージがあると思いますが、アクセサリーはインパクトのある物を多く作られていて。そこには昔自分が追っていたNIGOさんと今のNIGOさんのマインドが共存している気がするので、そこで何か面白いことをやってみたいです。後は、さっきのブレインの話じゃないですけど、一回パートナーになってみたい(笑)。自分じゃ想像のつかないアイディアとかが出てくる気しかしないですし。でも、リスペクトが過ぎて自分がイエスマンになっちゃいそう(笑)。
- (笑)。FUTURAはどうですか?
GUCCIMAZE - 自分もデジタルではなくアナログ上で、お互いのアートワークのコラボができたら面白そうですね。スプレー缶4色とか同じツール、同じキャンバスで。Futuraがちょっと書いたら自分が書いて、またFuturaが書き足して…みたいな。夢のまた夢ですけど、それができたら死んでも良いですね。
Info
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