TREKKIE TRAX×Double Clapperz Pt.2 ー東京と海外、そして彼らの展望する音楽シーンの未来とは

FEATURED  2016.07.14  FNMNL編集部

東京は渋谷を拠点に国内外で活躍する音楽レーベルTREKKIE TRAX(トレッキー・トラックス)主宰の一人であるSeimei、そして日本の新世代グライムシーンを代表するプロデューサーユニットDouble Clapperz(ダブル・クラッパーズ)よりSinta、海外経験豊富な2人を中心に、同じくTREKKIE TRAXのAndrewとFNMNL取材クルーも交えての座談会pt.2

TREKKIE TRAX×Double Clapperz Pt.1

TREKKIE TRAX×Double Clapperz Pt.3

TREKKIE TRAX×Double Clapperz Pt.4

-  続いて、海外と日本のオーディエンスの違いについて聞かせてください。日本のクラブに来てるお客さんって、日本人のヒット曲やバズっている曲がかかっても、特に大箱では反応が薄くて知らない人が多いなって印象を受けます。「Major Lazer最高!」って人はいるけどMasayoshi Iimoriくんは知らないみたいな。日本の曲が日本のクラブに来てるお客さんに届いてないなって感じることが多い。そこらへんについてはどうかな?アメリカでは地元のトラックメイカーの曲とかちゃんと根付いてたりするの?

Seimei - 僕がいたサンフランシスコ(以下SF)だとGiraffageってアーティストがいて、彼はSFでパーティーに出ると連日出演だったとしても必ずソールドアウトしていましたね。完全ローカルスター状態。ただ単にFool's GoldやMad Decentっていう有名レーベルからリリースしてたり、そのパーティーにでてるアーティストっていうステータス部分の力だけじゃなくて、オーディエンスももっとピュアに楽しんでる気がする。有名なパーティーに出ているからすごいんじゃなくって、その人自身の内容がいいからその人の出演するパーティーに行くっていう。

-  東京のオーディエンスについてはどう思う?小箱はローカル感とか根付きとかあったりもするから箱によるけど、中箱以上はどうなのかなって。TREKKIEは最近渋谷のメジャーなクラブ、Camelotで出演していたよね?

Andrew - 日本人の楽曲だとbanvoxのことはみんな知っていて、盛り上がっていましたね。ローカルスターっていうよりも、テレビやCMとかのメジャーな場の露出が多いから。日本でのMajor Lazer人気も同じで、みんなのチェックするものの中に入ってるからっていうのがあると思う。だから、日本人には特別日本人だからひいきするっていうのは少ないような気がする。アメリカは自分の国のアーティストをピックアップする傾向が明らかにあるけど...

Seimei - 逆にそれっていい傾向かもしれないよ、少ないからこそやりようによってはbanvoxやMasayoshiがローカルスターを確立するチャンスになるんじゃない?

Andrew - まあ確かに。banvoxとか渋谷の画面一面に出たりCMに楽曲が器用されたり、露出の積み重ねが出来上がってて、それは日本もアメリカと変わらないしね。あと、日本ではメジャーな音楽を聞く人たちがクラブと縁遠いということだったり、そもそもクラブに行く人の絶対数が少ないというのも関係すると思う。でもオーディエンスに対してどうしたらいいとかどうなった方がいいってことに関しては仕方ない気がするし…

それよりも考えるべきなのは、仕掛け人側であるクラブが、いいアーティストを見つけてピックアップするというよりもタレント的レジデントDJを作っていくパターンが多い事なのかなと。実際そういったクラブのDJの方達と僕たちのようなインディーのアーティストのやってる事の違いは大きいと思うんだけど、やっぱりトラックを作って評価されてるアーティストがメジャーなクラブにどんどん進出して欲しいと思うしね。自分たち自身が勝手にそういうクラブに対して、遠い存在って思ってしまってる部分もあると思うけど。

Seimei - 僕ら目線だと壁があるから箱に近寄れないとかって思っちゃうけど、つまり自分たちアーティスト側の営業力も足りないってことだし、もっと歩み寄っていかなきゃいけないのかも。だからTREKKIEではなるべく営業をかけて、MasayoshiをVisionにブッキングして、僕らはCamelotでやってみたいな動き大事だと思う。ただ、Double ClapperzがいきなりそういうメジャーなクラブでDJしたらそれはそれでビックリするけどね(笑)

Sinta - そうだよね(笑) どの箱でやるかっていうのが個人のアティチュードすらも決めてくる時代みたいなとこがあるし。昔からそうかもしれないですけど、特に最近は大箱に出るってことの意味がどんどん変わってきている気がしていて、大きい舞台にでるからいいってわけでもなくて、インターネット上の見え方も重要になってきたし、下手するとダサく見えちゃうっていうか。ローカルの文脈が切れたところに出ると、それっておもしろくない、みたいな見方が出てくるんだよね。例えば渋谷をレペゼンしているTREKKIEが渋谷のいろいろなクラブに出たり、キャメロットみたいなメジャーな箱に出たりするのは面白いってなるけど、脈略もなくagehaのメインにいきなり出ますみたいのってストーリーがそこに入ってないと、そこまでの道のりに納得力がなくてクラブきてるお客さんからの評価もなかなか得られにくいんじゃないかなって。メジャースターじゃない場合はそういうことも考えないとなって思う。

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Andrew - あとは、そういうホップステップジャンプ的なタイミングの時に、曲のリリースとか何かキャリアパス的な活動が一緒に入ってこないアーティストを見ると違和感を感じてしまいますね。

Sinta - ステージの大きさが変わるとともに、何かポイントとなるものを残していけると健全だよね。

Seimei - それがないから、夢がないから、日本人ってトラック作らないし作れる人が少ないんじゃないかな。多分banvoxみたいなアーティストを見てたら、トラック作りたくなると思うんですよね、10代の子。「あ、俺もメインフロアでDJしてみたい」、「じゃあ何すればいいか」つって、「あ、曲作ろう」ってなるんですよ。だから、そういう10代の若い子たちは本当にたくさん曲を作って、それ全部TREKKIE TRAXに送ってくれたら超いいと思う(笑)

-  ストーリー性が大事と言っていたけど、SintaくんDouble Clapperzとしてはどういうストーリーを思い描いているの?

Sinta - 今よりも大きいステージに向っていくには、まずそれなりの代表曲も必要だと思っています。だからこの前レコードをリリースすることにしたのは、SoundCloudやYouTubeで自分たちの曲がイギリスを中心に評価されたので、それに対するポイントをちゃんと作ろうと思ったんです。そしてこのステップの後に出るパーティについて、これまで以上に真面目に考えていきたいです。作品を作る、作品が評価される、評価された結果バズが生まれる、それを手がかりに次へのステップアップを試みるといった着実な積み重ねを大事にしたいですね。

- Double Clapperzの場合は、海外のラジオ番組で取り上げられて話題になったこともあるから、東京よりもロンドンの方が可能性があるかもしれないわけじゃない?そういうことは考えたりしてる?

Sinta - 考えないことはないんですけど...

Seimei - 逆輸入パターンだね。Double Clapperzはローカルの日本にはいるけど、今実際にそういう感じじゃない?

Sinta - 確かにその感じはあるっちゃあるんですけど。どうして自分たちが評価されてるんだろうっていうのを冷静に分析した時には、日本にいるってことが面白がられてる気もしていて。そこでロンドンに行ってしまうと、そこのコンテクストがあまりにもストレートすぎて、面白くないんじゃないかなって。ロンドンでグライムやってるなんて有象無象死ぬほどいるし、受ける影響やシーンの大きさでキャリアは描きやすくなるけど、じゃあ面白いかどうかっていうと違ったりとか...(笑)

Seimei - 向こうに行っちゃうと日本人だからってレッテル貼りがあった上での楽曲評価になっちゃうから、それがちょっとねって話も前Sintaとしたよね。

- 例えば「日本でグライムをやってる面白さを評価されています→ロンドンに行きました→周りみんなグライムやってます→その中で評価されました」ってなると一定は超えてるから評価につながって差はつくんじゃないかな?

Sinta - それもあるとは思うんですけど、まず日本でグライムやってるから評価されてるってわけでもないと思うんですよね。僕らは関係なく、普通にラジオにかかった曲とかミックスに入ってる曲がいいから、それが単純にプレイされたっていう話であって。Boiler Roomだと動画だしプレイヤーがどこの誰かっていうコンテクストも入ってくると思うんですけど、それだけじゃないところもあって。何ですかね、日本人であることはもう外せないので、なんか使うしかないなみたいには思います。自分が影響受けてきたものをちゃんと音楽とかの行動に反映させたい、そうした方がきっとユニークでもっと面白いし...まあリアルな理由としてロンドンは物価が高いってのも大きくあるんですけどね(笑)TREKKIEもそういうの近くない?

Seimei - TREKKIEはもうめちゃめちゃ利用してるからね、日本人性を。ただ、やりすぎちゃうとクールじゃなくてイケてないけど(笑) 「weeb(ウィーブ)」っていわゆる日本オタク、日本のものならなんでも好きみたいな人たちが世界中にいっぱいいて、日本はコンテンツとして今最強になってると思うんだけど、それだけ利用しちゃうとかっこよくないし、ただの消費になっちゃうよねとは思う。だから、それに対してうまくバランスとろうって思って動いてる。TREKKIEのSNSアカウントのアイコンとか思いっきり渋谷のアイコンである109とか使っているんだけど、それって日本好きへのアプローチと共に、自分たちの日本性を僕ら流に発信してるってことの表れでもあるんだよね。外から日本ってこういう感じなんでしょって思われる前に僕らから発信していけば、ステレオタイプを阻止できるかなって理由もあって。

Sinta - これって、すべてをエキゾティックな物として消費するっていう意味の「exoticizations(異国情緒化)」って言葉を最近知って、それに近いと思います。特に西洋のメディアで顕著にあると思っていて、オリエンタリズムもなんですけど、これって結局はアーティストを不自由にするなって。日本っぽい音色を使っていると期待されていたり、ゲームやアニメ音楽を吸収してグライムを作ってるんでしょ、とか実際海外メディアからのインタビューで聞かれたりしているんですよ。これは否定をする前に実は勝負が決まっているというか、問いを立てられた時点で相手の強さが証明されてしまってるみたいな。相手はもうその体で理解して質問してきているってことなので、否定してもきちんと受け入れられないんですよね。だから、こっち側からはそれが起こる前にそもそもその問いをさせない、そうじゃなくてDouble Clapperzってこうだよねってさせないとダメだなって思ってます。ステレオタイプを当てはめたピックアップの仕方って面白くないなって思いますね。

- そしたら、日本人性は思い切って捨てちゃった方がいいんじゃないの?今のダンスミュージックシーンってすごいグローバルになっていると思っていて、実際僕が見るメディアでは誰がどこ出身の何人とか、接頭語でつかなくなってきてるなって。

Sinta - アメリカのメディアは、人種をメインで取り上げないで音楽を説明しようとか解釈しようという傾向が強いんだけど、逆にイギリスを中心としたヨーロッパのメディアは支配的な面がまだある気がする。

Seimei - THUMPのKOHHのスペルを”konh”って間違えた記事とかもろにそうだと思う。

Andrew - さらにその記事、KOHHがグライムのイベント出てたから単純にグライムMCでしょって認識で書かれてたよね。

Sinta - それがつまり、メディア側が信憑性よりも自分たちのカテゴリーにはめてるいるなってアーティストとして感じるんですよ。

Seimei - その記事って要は、ダブクラのこととか全部無視してKOHHのことをグライムMCって言ってるってことは、見てないじゃないですか中身を。それは本質の中身には興味ないってことですから。KOHHがやってるから面白いってだけでぱっと見てぱっと書いてるだけにしか思えないよね。

Sinta - そう、そのことについて考えてたら、彼らが大事なのは結局Noiseyで特集したKOHHのドキュメンタリーを取り上げたい。つまりメディアの本質としてリンクビルディングがジャーナリズムより優先をしているんじゃないかってことに行き着いたんですよね。ちょっと専門的ですけど、メディアを立ち上げた時には観覧数稼がないといけないんだけど、それを自分たちメディアの中のサイトで回覧させるように作っているんじゃないかなって。そこまでの意図があるのかは確かじゃないですけど。

Seimei - 単純にライターが忙しかったってのもあるかもね(笑)でもよくないよね、他のアーティストや中身には興味ないって言ってるようにしか思えない内容だもんね。

- そしたらプレイヤーとして海外のメディアにどういう風に書かれたい?

Sinta - 以前、The Astnal PlaneっていうLAの音楽ブログがDouble Clapperzをインタビューしてくれたんですけど、たくさん質問を用意して深い内容まで掘り下げて問いを出してくれて、決めつけとか何もなくて誠実な態度で話してくれたんですよね。実際に上がった記事も同様で、だからそういったのがいいと思いました。(Astnal Planeでの掲載記事はこちら

- いわゆるオリエンタリズムや、エキゾティック的に消費されるというのは、武器のもなるし、不自由にもされるしってことなんだね。

Seimei - それのバランスをとるのは非常に難しくて危ういとこではありますよね。アメリカでも、そういったことが友達のアジア系アーティスト、GiraffageやMark Redit(fka  Spazzkid)との会話でよく議題に上がったりして、それで僕も同じくよく考えるようになった。でも、TREKKIEが渋谷をレペゼンしてることに関しては、国内のメディアに対しても同じことだし、オリエンタリズム的なものへのアプローチが全くないわけではないけど、そのためだけではないのは確かだね。

Sinta - 日本で出たリリースって、基本的に音だけで後は自由に書いてくださいってことが多いですけど、オリエンタリズムの状況を考えると、アーティスト側から書いたプレスリリースの強さみたいなものが絶対あるから、それを利用して発信側を自分たちの手でちゃんとコントロールしないとですね

Seimei - こう話していて気づいたけど、今ってめっちゃいい時代だよね。つい5年前までとかって、BBC RadioやRinse FMとかで日本人の曲がかかって大騒ぎしてたじゃん。でも最近はピックアップされることが増えてきて、逆にピックアップのされ方に対して文句を言う人が多い時代になってる。これって成長を意味するからすごくいいことだと思うんだよね。ダンスミュージックがグローバル化してるってのも一因ではあるだろうけど、今自分でグチってて嬉しくなっちゃった(笑)

- 話に上がったTHUMPとか、あとはDAZED&CONFUSEDなんかのメディアって定期的にK-POP特集をしてるんだけど、K-POPに対してはオリエンタリズム的消費はあまり見えない気がするんだけど、どうなんだろう。例えば、LAにDEANってシンガーがいるけど、彼とかは別に韓国系だから売れてるって感じはしないよね。

Seimei - Keith Apeが今アメリカに移住したじゃないですか、LAに関してになっちゃいますけど、韓国人やアジア人がめちゃくちゃ多いんですよ。だからそこでファンベースが十分に出来上がって回るっていうのもあると思います。あと、K-POPは音楽的にアメリカを消費ターゲットとして向けてやってるって印象がありますね。実際アメリカに住む友達に「J-POPはK-POPみたいな消費的な音楽をやらないから好き」って言われるんですよ。だからそういう風に見られているのは確かだと思うんです。「お前ら英語で歌わないじゃん」って(笑)あと、日本のネットレーベルに対してもそう。「TREKKIEすごい好きなのは、海外のシーンに媚びてこないじゃん。好きなことやってるじゃん。」って言われます。TREKKIEは東京では媚びてる方ではあるんだけど、外からはそう見られてるみたいで、媚びと自分たちのオリジナルの間でいい感じにバランスとれてるんだなって感じてます。

- Double Clapperzは、東京とロンドンどっちのベースミュージックのシーンに向けてやってるって感覚が強いの?

Sinta - どちらかと言ったらロンドンのシーンに向かってると思いますね。海外と比べたら日本では面白いねってスポットライトを当ててくれるメディアもなかなか少ないし。媚びてるってわけではないですけど、スピーカーとか音楽の作り方とか海外基準でやっているってことですね。それから、今はベースミュージックってシーンが日本でも盛り上がっている状態なので、サウンドシステムのセッティングが近かったりUKの音楽が好きな人が多かったり、海外の基準に従っていてもバランスを保てて両方にリーチできているからってのもあります。どっちに向かってるっていうよりも、ルールはUKマナーに則ってるってことですね。

Seimei - TREKKIEも同じ感じかもしれない。どっちにもアプローチはするけど、海外の有名なDiploやNina Las VegasとかトップDJにプロモを送ってサポートしてもらうっていうのは海外のルールだし、TREKKIEはそのマナーをやってる。それやってるレーベルって東京にあまりないと思うから、「なんか違うね」って言われるんだと思う。あと、このアメリカとヨーロッパの西洋のルールを誰が確立したかっていうと、やっぱ大多数の白人が決めてるものであって、僕らが西洋のルールでやっていく上では白人に媚びなきゃいけない、みたいなジレンマが同時にあって、それが結局今まで話してきたオリエンタリズムどうこうになっていくんだよね。現場というよりも、メディア的に。どこにバランスを置くかってことがキーだよね。

僕は間にいて、本質的には日本のかっこいい音楽を軸にしながら、双方の様子を見ながら取り上げられ方を考えて操作していきたい。去年は、戦略的にTREKKIEではFUTURE BASS、いわゆるアニメっぽい感じの曲をアメリカで引っかかるために出しまくって実際バズったんだけど、今年に入ってからは逆にHIP HOPカルチャーのアメリカで受けるのか?!っていう感じのレイヴサンプル入れまくりのトラックをあえて出したりしてて、それで今中和してるところ。でも、それに対して去年のTREKKIEのJ-POP/アニメカルチャーっぽい音楽を聴いて知ってくれた若いアメリカ人の子とかが「これがレイヴっていうんだ~」ってついてきてくれてたりもするから。今は、バズを作るってよりも僕らが興味があるものを小出ししていく時期にしてる。この後、夏にはまたFUTURE BASSっぽいのを出す計画をしていて、そこでまたバズを生みたいなって思ってるね。

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