【ライブレポート】LANA ARENA TOUR 2025 | LIKE A FLOWER

今年に入ってから初のZEPPツアーを完走し、4月には初めての日本武道館での公演を成功させた。そしてさらに、10月5日、LANAは横浜アリーナのステージへと駆け上った。開場まもなくして、横浜アリーナの外周はLANAのテーマカラーであるピンク色に染まった。グッズを買い求める列は何重にも増え、ホールへの扉の前には早くも人が押し寄せる。チケットは即完の争奪戦。幸運を掴み取り会場に集った女の子たちは、みんなバチバチのアウトフィットやヘアメイク、そしてネイルで着飾り、みんなが”らなち”に会える瞬間を待ち望んでいた。

ぞくぞくするようなイントロのあとにステージの奈落がせり上がり、令和が誇るストリート・プリンセス、LANAが登場する。adidas Originalsのアイテムをリメイクしたフリフリのコルセット風の衣装、胸元を飾るブリンブリン、キラキラにデコられたピンク色のマイクを持ち、堂々と一人でステージに立つLANAの風格といったら!ライブは最新EPの冒頭を飾る"華"で幕開け。背後のスクリーンにはピンクの神殿が映し出され、荘厳さとキュートさを掛け合わせたような雰囲気を演出する。続いて扇動的なバンドアレンジが派手に響く"BASH BASH"、”LANAの好きな香水、なーんだ?”と問いかけながら歌う"No.5"と、一気にアリーナを盛り上げる。

初期のシングル"Get It"を経て、ひと呼吸置いた後、"Bad Bitch 美学"のヴァースの途中をアカペラで歌い上げる。背景の映像は真っ赤な炎へと変わり、リリック内の”What’s my name?ーLANANA”のところでは会場全体が大合唱!間髪入れずに"NARANAI"へと移り、フックではダンサーらとともにコレオグラフィーを披露した。初盤から目まぐるしく光り輝くLANAの世界。”みんな歌ってくれる?”と"Pull Up"を歌いながら、会場中央に据えられた花道へ。"24/7 YOU…"で少しスロウダウンする頃には客席との距離はさらに縮まり、まるでオーディエンスとコミュニケーションを取るように微笑みながら歌うLANA。早くも、熟したような熱気が会場を包む。スポットライトに照らされながら"For bbys"、"Hate Me"を歌った後、”LANAからの愛、伝わってる?次歌う曲は携帯の撮影をナシにします!みんな好きに生きて、最高のマイライフにするぞー!”と呼びかけ"MY LIFE"でさらに熱狂度を上げていった。

LANAは一度ステージから降り、花道にはDJブースが登場DJ HIJIRI-Xによる指揮のもと、実姉のLiLiも参加するダンサーたちのショウケース・タイムを経て、真っ赤なスタジャンの衣装にチェンジしたLANAが再び登場。"Makuhari"のリリックは、もちろん”幕張”の部分を”横アリ”に言い換えて歌い、"Ain’t Money Only"、"花・魁"、"WE WANT!!!"、"Huh?"を次々とメドレー的に歌う。

SNS上でも人気を博した"Summer Ride"から"Miss Luxury"へと繋ぎ、ステージには渋谷の人気スポットでもあるMADAM WOOのダンサーらも登場。夏を惜しむようなベイサイド・ヴァイブが漂った。そして、"明るい部屋"の一節を歌った後に“今日は家族について話したい”と切り出したLANA。“何事もなくライブを迎えることができたけど、これは当たり前のことじゃなくてすごくスペシャルなこと。お母さんは私たちきょうだい3人を、1人で育ててくれた。当時は工場でエンジンを作る仕事をしていて、お給料は15万円だったんだって。本当に尊敬するし、いろんなことを家族で経験して、何回も乗り越えて、こういう歌を気持ちよく歌えるところまで来た。いつも何かあれば、家族が駆けつけてくれる。今日、出番前に机を見たらさっきまで一緒にいたお母さんからのお手紙が置かれていたの。上を目指して諦めずにいたら、やっとここまで来ることができました。だから、みんなも絶対に諦めないで。そして今、お母さんやお父さんがいるんだったら、自分のことを恥ずかしいなんて思わなくていい”。と、最愛の母親に向けてのメッセージを送った後に”月日が流れ今は明るい部屋に”とアカペラで歌い、改めて"明るい部屋"を歌いきった。LANAの温かい気持ちが会場を埋め尽くしたまま、会場は暗転。本人不在の会場に、何かを期待させるような照明とビートが流れる。

マグマが溢れるような映像と共に再びダンサーらがステージに上がる。高揚感がMAXに達した頃、黒いガウンと鎖をまとったLANAが現れ、緊迫感を強調するように"Stronger"へ。ガウンを脱ぎ捨てて"直線"へ。フラストレーションや葛藤をあらわにし、”ごちゃごちゃうるせえんだよ、ばーか”と会心の一撃を添える。スタンドマイクを使ってに歌い込む"Almost 20"や"ティファニーで朝食を"、客席と目線を合わせるように座り込んで歌う"All My Pain"と、彼女のハートに触れるかのような、感傷的なムードに。スポットライトに照らされて"It’s okay"を歌った後に、"HERE"を歌う。”もっと声を聴かせて ねぇみんな愛してるって言って?”と切実に歌うLANA。ステージにはスモークが焚かれ、客席はスマホのライトで埋まる。彼女の思いや覚悟、平坦ではなかったこれまでの軌跡を見事に体現したモーメントであった。

再度、暗転した会場のスクリーンにはあざやかな花に囲まれたベッドとミューズのようなLANAの姿が。いよいよクライマックスに向けたパートが始まる。花びらが敷き詰められた花道に横たわりながら"Like a Flower"を歌う。衣装は白いセットアップに替わっており、これからスタートするまっさらな未来を予感させるかのようだ。「Still Young More Rich」、そして現在のLANAの代名詞的な"Street Princess"の時には巨大なバルーンが!"99"のイントロで“みんなで歌おうね!”と呼びかけ、オーディエンスも120%のパワーでそれに応える。

「ありがとー!ほんとに楽しかった!バイバーイ」と、退場していくプリンセス・ラナ。しかし、もちろんこれだけでは終わらない。客席から即、アンコールを求める歓声が。そして、大きなスクリーンには客席のファンたちが映し出され(LANAルックにキメたギャルたち、キスするカップル、気合いを入れたボーイズたちがランダムにフィーチャーされていて最高だった!)、アンコールに向かって最後の興奮度をますます高めていく。そしてスクリーンにはアンコールに応えるべく、鏡の前でオリジナルのディレクターズチェアに座ったLANAの後ろ姿が映し出される。楽屋からステージに移動する彼女の姿がそのままスクリーンに現れ、流れたのは"TURN IT UP"のイントロ。

”もう一回!”のセリフと共に、"Summer Ride"を再度パフォームすると、本日の唯一のゲストである¥ellow Bucksが登場。二人揃っての貴重なパフォーマンスが実現した。”ヴァイブス、チェックしてもいいですかー?”と呼びかけて、最後の大トリ楽曲である"L7 Blues"を思いっきりキックした。アリーナのステージを見事乗りこなしたLANAは、堂々とした表情。銀テープと無数のスパンコール、そして叫ぶようなオーディエンスの歓声に見送られてステージを去るLANA。ステージの上に立つ手の届かないディーヴァの貫禄もあると同時に、どこまでもファンに寄り添う”近さ”も感じるパフォーマンスだった。デビューから3年目。これから、プリンセスはどんな規格外の物語を見せてくれるのか。早くも次のプロジェクトが楽しみになる期待と希望に満ちたフレッシュなステージだった。(取材・文 : 渡辺志保 撮影 : 横山マサト)

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