寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.1

昨年オランダのRush Hourからリリースされたアルバム『Sounds from the Far East』をきっかけに世界的な再評価が起こっている、日本のハウスミュージックシーンのパイオニア、寺田創一。昨年おこなったインタビューでハウスの時期を甘い季節と述べていた彼に、その季節が再来している今の活動や世界各国でおこなっている公演などについて聞いた。こちらはPt.1

写真 : 横山純 取材/構成 : 和田哲郎

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.2

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.3

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.4

- 前回寺田さんにインタビューをさせていただいたのが去年の4月とかで、その時寺田さんは自分の昔の音楽がいろんなところから反応があるのが不思議だとおっしゃってましたけど、1年経っていろんな国に行ったりしてるわけですが、そのことに対してはいかがですか?

寺田創一 - それを不思議に思う気持ちは今でもあるんだけど、すごくラッキーだなと感じています。曲の発表から25年後だから余計よかったのかもと思うし、それを今現在オッサンになった人がやってるってのがいいのかな?新人なんだけど25年前の曲だから当人はオッサンになってるってところが自分にはいい具合に作用してるから、ありがたいね。

- ブラジルやジョージア(旧グルジア)なども回られてますよね

寺田創一 - ジョージアの前がエストニアでその前がスペインのマドリッドだったんです。マドリッドまでは無事に終えたんですよ。マドリッドからエストニアに行く時にパリで乗り換えだったんですけど、マドリッドからパリに行く便が1時間くらい遅れちゃったの。でも同じ航空会社だから、電車の終電みたいに接続待ちとかがあるんじゃないかって甘い考えを持っていたら、そういうのは一切なくて飛行機はあっというまに離陸しちゃっていて、結局エストニアには行けずにキャンセルになっちゃった。でも自分は預けた荷物に楽器が入ってるから、とにかくそれを受け取らないとまずいので12時間後くらいに代替機でエストニアに行ったら、自分の荷物は無い。その時点で荷物紛失の届けを出しました。

その荷物が無いと演奏が出来ないんですが、次にジョージアに移動しなきゃいけなくてそっちに荷物が転送されていることを期待してたんだけど、着いてなくてジョージアでの公演もできなかった。それでもジョージアの人たちがめちゃくちゃ親切で、何もできなかったにも関わらず、ごちそうしてくれたり、ジョージアで初めてできたっていうレコードショップに招待してくれていろんな人と話ができたりとか、観光スポット連れていってくれたりとか、自分は何もプレイできていないのにそういうおもてなしを受けることが最初辛かったんですけど、でもそれを忘れるくらい親切でした。

それで多分エストニアは9月、ジョージアは今年の12月にもう一度行きます。飛行機に乗れなくてパフォーマンスできないというのも、あと預けた荷物がなくなるというのも初めてでした。荷物は結局パリで止まっていたみたいで、日本に帰る日にジョージアに届いた。日本ではそういう手続きとか、気の利かせ方が世界基準からは比較にならないほど良いんだなっていう事が感じられました。

パリで無理にでも荷物を受け取るべきだったんだけど、航空会社の人がコンピュータ管理された我々のシステムは完璧だからって言うから、それを信じるしかなかったんだけど全然出来てない。なにが我々のシステムだと思ったけど(笑)それくらいが普通なんだなと実感しました。ブラジルのサンパウロではサウンドチェックの時にほんの30秒くらいだけど、Azymuthとセッションできたのが夢のようで楽しかったです。

寺田創一

- エストニアやジョージアのクラブミュージックのシーンはどういう感じだったんでしょうか?

寺田創一 - エストニアは空港に1時間位しかいなかったからわからないけど、ジョージアは独立した後、ロシア寄りの地域と西欧寄りの地域があって、西欧寄りの地域はジョージアっていうらしいんだけど、着いたときに楽器の入った荷物が無いっていうのがあまりにもショックでクラブにも行けませんでした。それはお客さんを前にしたら自分でも考えられないとんでもないことをしちゃうんじゃないか、楽器がなくても変なことをしちゃうっていう予感があって、それは止めろって自制したんです。

クラブに行ったら最後、自分が抑えきれずに変なことを始めるかもしれないし、そしたら寺田創一のライブパフォーマンスはこういう変なものかと思われたらマズイよって思う自分が両方いて、到着した夜にはクラブには行かずにホテルでエージェントとやりとりしたあと爆睡。

だからジョージアのクラブにも行かなかったから様子はわからないです。でも初めてできたレコード屋はとてもオシャレで小さいけど雰囲気のあるお店でした。どういう品揃えかは自分にはわからなかったけど、Rush Hourのタイトルとかも並んでいたんですよね。ジョージアでは交通事故で亡くなったDJを追悼するフェスが年々巨大化していて、今年の夏はJeff Millsを呼ぶって言ってました。ティビリシの街を見下ろせる巨大な丘の上で毎年フェスをやるらしいです。

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.2

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.3

寺田創一インタビュー - 甘い季節の再来 -Pt.4

寺田創一

 

RELATED

【インタビュー】5lack 『report』| やるべき事は自分で決める

5lackが今月6曲入りの新作『report』をリリースした。

【インタビュー】BES 『WILL OF STEEL』| 初期衝動を忘れずに

SCARSやSWANKY SWIPEのメンバーとしても知られ、常にアクティヴにヒップホップと向き合い、コンスタントに作品をリリースしてきたレジェンドラッパー、BES。

【インタビュー】CreativeDrugStore 『Wisteria』| 11年目の前哨戦

BIM、in-d、VaVa、JUBEEのMC4名、そしてDJ/プロデューサーのdoooo、ビデオディレクターのHeiyuuからなるクルー、CreativeDrugStore(以下、CDS)による、結成11周年にして初となる1stアルバム『Wisteria』がついに発表された。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。