【インタビュー】Siero │ 俺、もう全部やる気なんすよ

昨今のラップシーンで、「アングラ」という呼称をよく見るようになった(※)。ジャンルでいえば、rageにはじまり、pluggやpluggnb、new jazz、glo、jerkなどなど有象無象のビート様式の集合体としか言えないが、そこに共通すると思われるのは、デジタル世界のエッジを踏破せんとするオタク的態度、また地上に蔓延するハイファイな既製品を拒まんとする皮肉的態度である。 伝統的な意味での「アングラ」といえば、王道に対する邪道、有名に対する無名、ようするに、わかる人しかわからない玄人好みの芸術領域なのだといえよう。その意味で、現代のアングラシーンのギシギシ歪んで耳の痛い808のテクスチャは理解されうるし、弾きっぱなしのブラス音源のチープさも諧謔として楽しめる。 ところが、国内でもにわかに形成されてきたアングラシーンの一角といえようSieroに話を聞けば、とにかくメインストリームのステージで光を浴びたい、そんな成り上がりの夢を恥ずかしげもなく語りだす。彼にとって「アングラ」は邪道ではなく、単に王道へのステップだ。どうやら、フラットに引き伸ばされた世界においても、かつてインターネットの無い時代に叫ばれた〈comin’ straight from the underground〉というような垂直方向の物語は有効らしい。 事務所に飾られたPOP YOURS特製ジャケットを見ては「俺もここに名前縫われて〜」と衒いのないSieroであるが、ラッパーとしての彼の魅力といえば、華やかな未来を描く情熱と、その同じ夜に枕を濡らすセンチメンタルとが同居したところにあるだろう。あるいは、その嘘の吐けなさにあるだろう。きっとその言葉が、夜の闇や地下の闇を貫いていくと信じて、Sieroは多弁に語る。 ※この呼称については議論があろうが、限定的には、USを中心とした2020年代のSoundCloudラップの潮流として認められる。USのシーンについては、プレイリスト「UNDERGROUND RAP 2025」や、instagramのゴシップメディア「Hyperpop Daily」などが参考になるだろう。

【インタビュー】PRIMAL『Nostalgie』 | ラップは自己主張

PRIMALは、00年代の国内のインディ・ラップの興隆を象徴するグループ、MSCのオリジナル・メンバーだ。私はかつてPRIMALのラップについてこう記した。「いくつもの問いがあふれ出しては、彷徨っている。そのことばの放浪が、PRIMALのフロウの核心ではないかと思う。(中略)脳内で延々とループする矛盾と逡巡が、オン・ビートとオフ・ビートの狭間でグルーヴを生み出し、独特のリズムを前進させる。目的地を定めないがゆえのリズムのダイナミズムがある」。 1978年生まれのラッパーの14曲入りのサード・アルバム『Nostalgie』を聴いてもその感想は変わらない。声音やフロウのキレには驚くほど衰えがない。そして、労働者、家庭人、ラッパーという複数の自己のあいだで生じる葛藤や懊悩を豊富な語彙力を駆使していろんな角度からユーモラスにラップする。リリックもライミングも相変わらず支離滅裂で面白く、若いころにハードコアで鳴らしたラッパーの成熟のあり方としてあまりにも特異で、それが本作の最大の魅力だ。 彼は、2007年に『眠る男』、2013年に『Proletariat』という2枚のソロ・アルバムを発表、『Nostalgie』はじつに12年ぶりのアルバムとなる。2016年に東京から移住した釧路/札幌で制作された。札幌のヒップホップ・グループ、Mic Jack Production(以下、MJP)のビートメイカー、DOGG a.k.a. DJ PERROやHalt.、あるいはMichita、ながさきたけし、荒井優作らがビートを提供、YAS I AM、MAD KOH、RUMI、漢 a.k.a. GAMI、BES、SAWといったラッパーが客演で参加している。カヴァーアートは、MSCのメンバーで、グラフィティ・ライターのTaboo1が手掛けた。 このインタヴューは、PRIMALと、彼の盟友、漢の対談動画の収録直後に、ふたりと仲間が青春時代を過ごした東京・高田馬場の居酒屋でおこなわれた。PRIMALはいま何を考えているのだろうか。

【インタビュー】SEEDA『親子星』| お金にしがみつかず輝く

日本のヒップホップ/ラップ・ミュージックでは近年も充実したアルバムの発表が続いているが、一方、リスナーが世代で二分化される傾向も感じる。

【インタビュー】Mndsgn | 音楽はただ生きてることの副産物

LAのビートシーンを代表するアーティスト、Mndsgn(マインドデザイン)

【インタビュー】Joe Cupertino 『DE:』 | 再生と破壊を深掘りした

自身の出身地であるカルフォルニア州クパチーノを通名に冠するバイリンガルアーティスト、Joe Cupertino。2020年から作品発表を続け、これまで3枚のアルバムをリリース。そのいずれもで高い技術力とオルタナティブ性を発揮した気鋭が、4作目となる最新作『DE:』を発表した。前作『RE:』と連なった2部作の後編となる本作は、アグレッシブなサウンドと切っ先を磨きあげたラップにより、さらなる境地に進まんとするJoe Cupertinoの現在地を高らかに示した。充実の作品を装填し、6月6日(金)、代官山ORD.にてリリースパーティー『DE:CIDE TODAY RE:GRET TOMORROW』を敢行する彼に話を訊いた。

【Interview】Knxwledge | ストリートファイターのスコアを手がけたい

LA発のレーベルStones Throwに所属しているビートメイカーのKnxwledge。

【インタビュー】sysmo │ さようならカラオケ!

2024年5月にデビューシングル"FIRST LOOK”をリリースしたsysmo。昨年8月にはSpotify O-EASTでの「dokokoko」に、11月には渋谷WWWでのレイヴパーティ「NEO GRAND」に出演するなど、デビュー間もなくシーンの注目を集めているエレクトロポップ・ユニットだ。

【インタビュー】KREVA『Project K』| やればやれる

2024年にソロ・デビュー20周年を迎え、自身名義の作品のみならずヒップホップ内外のコラボレーションやプロデュース・ワークも精力的にこなしてきたKREVA。

【インタビュー】Aru-2 & 写楽 『Sakurazaka』| 世界がどう変わるか

2024年、ビートメーカー/プロデューサーのAru-2とラッパーの写楽がタッグを組んでアルバムを作った。Kid FresinoやJJJ、NF Zessho、Daichi Yamamotoなど様々なアーティストの楽曲をプロデュースするAru-2と、MCバトルシーンで名を馳せた写楽は、一見遠いところで活動しているように感じられるかもしれない。しかし二人が並んで座って話しているだけで共作をリリースしたことを納得してしまうほど、柔らかく温かい雰囲気がどこか似ていて心地よさを感じた。今回はそんな二人の出会いや、CDに続いてLPもリリースされたアルバム『Sakurazaka』の制作秘話を聞いた。

【インタビュー】KM 『Ftheworld』| 自分自身を拡げる

プロデューサー/DJのKMによる通算3枚目となるニューアルバム『Ftheworld』。Campanella、ermhoi、Daichi Yamamoto、Skaai、Lil’Leise But Gold、LEX、Ryugo Ishidaらのゲスト陣を迎えつつ、全13曲中の4曲で自身がボーカルを務め、インスト楽曲でも強い印象を残す本作で、なぜ彼は取り巻く環境に対してファックと叫ばざるをえなかったのだろうか

【ライブレポート】aimi First One Man Show | R&Bの魅力を全身で伝えた初ワンマン

プレイヤーがこれだけ増える中で、R&Bを自認しているアーティストの単独公演って意外に少ないんですよ。

【インタビュー】ACE COOL 『明暗』| 日本語ラップ、哲学、電子音楽

ラッパーのACE COOLが2024年5月に発表した全12曲のセカンド『明暗』を聴いた者は、好むと好まざるとにかかわらず、1枚を通したその作品の完成度の高さを認めざるを得ないはずだ。

【インタビュー】Bonbero 『For A Reason』| 常に自分を更新したい

Bonberoが昨年11月にリリースした待望の1stアルバム『For A Reason』は1stアルバムらしく、これまでの軌跡に沿った内容となっている。

【ライブレポート】tofubeats Live at Zepp Haneda 2025

昨年10月の大阪公演を皮切りに札幌、東京、沖縄、名古屋と開催された5年ぶりとなる全国ツアー『tofubeats JAPAN TOUR 2024』を大成功に収め、2024年を見事に走り切った音楽プロデューサー/DJのtofubeats。2025年の幕開けはZepp Hanedaでのワンマンライブとなった。自身最大規模での単独公演となる本ライブは2階立ち見席まで含めソールドアウト。ライブ当日の1/31(金)、開場前から最寄り駅の天空橋および会場付近には多くの観客が詰めかけている。

【インタビュー】5Leaf 『bud』| もっと自分のかっこいいを届けたい

広島出身のラッパー・5Leafが、1stアルバム『bud』をリリースした。
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