【インタビュー】Tete 『茈』| 紫の道の上で

長崎出身で現在は家族と共に沖縄で生活するTeteは、今年3枚の作品を連続でリリースした。2月にリリースした1stアルバム『Purple Way』、5月には5曲入りのEP『to Subaru』、そして9月の2ndアルバム『茈』(読み: ムラサキ)。3作品ともそれぞれサウンドのスタイルには変化はあるが、どの作品もUSと日本のラップそれぞれの影響が感じられるフロウやムード、そして日本的な情緒と共にどこか乾いた空気を感じる風景描写は共通しており、Teteの世界観が既に確立している。

今回は沖縄に住むTeteとリモートインタビューを行い、音楽制作を始めたきっかけから今作についてまで幅広く話を聞くことができた。

取材・構成 : 和田哲郎

Tete - 本格的に作詞するようになったのは18、19ぐらいですね。

Tete - 『フリースタイルダンジョン』とか『高校生ラップ選手権』世代だったので。遊びで友達とかとやってましたね。

Tete - いや。ヒップホップ自体は小学生ぐらいから好きで。

Tete - 一応、大きいきっかけが二つあって。一つが、10歳上に姉がいて、兄貴もいるんですけど、姉のほうが大学でダンスサークルに、入ってて。小4くらいの時に姉が実家に帰省したときに、姉がイヤホン付けて、ウォークマンか何かで音楽聞きながら散歩してて。僕の地元は本当に田舎なんで、そういう人すら当時はマジでいなくて姉は目立ってたんですね。「おまえの姉ちゃんや」みたいな感じで友達に言われたり。そのイヤホン付けて歩いてるたたずまいというか格好がかっこよくて、家で「あれ、何聴いてたの?」って聞いたら、「今、ダンスチームやってて、ヒップホップ聴いてた」って言われて。曲までは覚えてないんですけど、姉が聴いてたヒップホップを、車で流してもらいましたね。一番最初はそれでした。

もう一つは、自分の5個上ぐらいの地元の先輩がいて。中学生ときに、僕の友達のお兄ちゃんがその先輩と同級生で。多分、その先輩も覚えてらっしゃるか分からないんですけど、一度だけその先輩のおうちに遊びに行かせてもらった時に、マジで衝撃過ぎて覚えてるんですけど。お家の隣に玄関がないプレハブみたいなのがあって、そこが先輩の部屋で。壁の周りとかに、自分でグラフィティでめっちゃ描いてて。窓から入ったら爆音でヒップホップが流れてて部屋中にNBAの選手とかギャングのポスターがあって、かっけえみたいな。自分もそういう、見た目とかファッションから入った部分はあるかもしんないっすね。この先輩、かっけえってなったのがきっかけで、ヒップホップをもっと知りたいなと思いましたね。

Tete - 別名義も何もなくて。曲作りはずっとしてて、最初は配信リリースのやり方が分からなかったのが一番でかくて。あとRiver Side Hollywoodっていうクルーをやってるんですけど。グループの前の名義で1回出してて。そろそろ配信も中止してると思うんですけど、 2021年〜2022年くらいの時ですね。クルーの仲間は、福岡の理容師や美容師の専門学校で知り合った友達です。専門学校のときはちょくちょくライブもしていて、専門学校を卒業後、みんなバラバラになって、僕は1年間ぐらい就職で東京に行ったんですよ。それで東京で沖縄出身の妻と結婚して、家族ができて仕事をやめて沖縄に戻ってきたんです。その1、2年がクルーとしては空白で。解散しようっていう動きも別になかったし、各々で曲は作り続けててたんですけど。そんな中でメンバーのRH JayDeeってやつが、アルバムを作らないかって話を持ってきてくれて。そこから出し方を調べ始めた感じです。

Tete - めっちゃいて、10人ぐらい。でも、音楽をやってるのは6人だけですね。ビートメイカー1人と、5人はラッパー兼ビートメイクもする。

Tete - ヒップホップ好きは最初はそんないなかったんですよ。でも、各々が結構面白くて。僕も中高ずっとヒップホップを聞いてて、日本のもUSのも全部聞いてたんですけど、当時は同じぐらい熱量を持ってるやつが周りにいなくて。日本語ラップとかバトルにはめっちゃ詳しいやつ、USのこの地域だけは詳しいやついるみたいな。自分と同じ感じのやつがあんまいなかった。専門行ってクルーのメンバーと出会って、クルーのメンバーもそんなにヒップホップは知らないけど、でも逆に俺が知らないようなロックとかソウルにめっちゃ詳しいやつがいたり、映画、ファッションに詳しいやつがいる。ジャンルは違うけど、好きなものに対する熱量で同じぐらい熱いなって思って。仲良くなっていったって感じですかね。

Tete - C.O.S.A.さんは昔から大好きで影響を受けた人ですね。インタビューを受ける上で自分のプレイリストを見たんですけど、ちょっと曲数も多過ぎて。一番最初に買ったCDはAK(-69)さんとB‐NINJAHさんがまだやってる頃のアルバムを買って。いわゆる、日本のウエストコーストをやっていた時期。なので前提としてかっこつけることを学んだのは多分AKさんからだと思ってて。歌詞は結構難しいですね。トップどころをいうと、それこそC.O.S.A.さんとかJJJさん、あと、A-Thugさんとか。自分はきれいな感じよりも、ちょっと汚い感じ、暗い感じ、黒い感じとか、いわゆるストリート的なヒップホップの曲が好きだったので、それを感じる人に影響は受けたかもしんないっす。

Tete - 間違いないですね。さっきもお話したんですけど田舎の出身なんで。それこそ環境は全然違いますけど、ジャクソンビルもそんな都会ではないですよね。でも、自身の地元を掲げてるの、かっこいいなって思うし、それを感じる歌詞が好きですね。

Tete - 皆さんが想像する10倍ぐらい田舎で。自分の地域でいうとコンビニが1店舗しかなくて、人よりイノシシの数が多いってよく言われてますね。いい所は、海がとても魅力的で、沖縄とかに比べるとめちゃくちゃきれいなわけじゃないんですけど、潮の流れがすごい速くて魚はとっても美味しいんですよ。海の街って感じですかね。

Tete - 部活はサッカーを。中学校はほとんど僕らはやってなかったんですけど、高校は結構、真面目にやってましたね。後はなにして遊んでたかな。田舎だからマジでやることが本当になくて、とりあえず夜は自分の住んでた場所は中心街だったので、友達が夜に自分の地域にばーって遊びに来て、だらだらしゃべってたりっていう感じっすかね。

Tete - スタートは『Purple Way』が一番早かったんですけど。それこそさっきも話させてもらったRH JayDeeが「アルバム、作ろう」って言い出してから速攻、作り出したっす。2021年とか22年ぐらいのときですね。

Tete - 2021年は東京かな。でも、作り出したのは沖縄に行ってからですね。

Tete - どうなんですかね。沖縄に友達がほとんどいないんで、夜どっかに行くとかはめったにないんですけど。でも、環境はめっちゃいいと思うんですよね、沖縄の独特な海がすごいきれいなんだけど、そのきれいな海が見える街が風俗街みたいな、ちょっとゲットーぽいところもあるんで面白いっすね。確かに影響は受けてると思います。

Tete - 『Purple Way』と、この間出した『茈』は構想が先にあって作りましたね。『to Subaru』は、『Purple Way』を出して、すぐ制作してリリースしたんですよ。あれは構想を練ってというより、そのときの自分のリアルというか、現在地点をばーって書きたくて。ビートも作る時間がなくて、全部タイプビートで作りましたね。

Tete - 『茈』はそうですね、全部。

Tete - 間違いないです。あれはだいぶでかい。楽器は全く弾けないんで、めちゃくちゃ助かりますね。

Tete - 楽しさのベクトルっつうかジャンルが違うかもしれないですね。ビート作りは、僕的には組み立ていく感じが、ゲームしてる感覚と近いんですよね。仲間ともよく話すんですけど、ビートは引き算が大事だと思ってて。シンプルで聞きやすくてインパクトあるのが、絶対一番いい。また変わるかもしれないですけど、今は引き算のビートがいいと思ってます。Spliceからネタを拾って、組み合わせたらどうなるんだろうみたいな感じでやってるんで、ゲームセンターみたいでその楽しさはあるっすね。歌詞は、楽しいときもあるけど、楽しくないときに書くやつが良い場合が多くて。歌詞に関しては、楽しいというよりマジ修行みたいな感じでずっと書いてますね。

Tete - 僕の作詞のこだわりでもあるんですけど、心情を書かないようにしてるんですよ。むかつくとか悲しいとかを直接書かないようにしてて。代わりに自分が見た景色で伝えたくて。受け取り方はどう取ってもらってもいいんですけどね。シチュエーションでいうと車を運転するのも、めっちゃ好きで。沖縄いいなって思う点の一つなんですけど、どこ行っても景色がすごいきれいだし。車を走らせながら、プレイリストを流してるんですけど、ばーって思い浮かんだやつとか思い出したことを、コンビニの駐車場に止めて一気に1バース分だけ書く感じでやってました。家だと固まっちゃうんですよね。景色が変わんないから思い出せないとか。思いつきはして、あのことを言いたいんだけど、何だったっけって出てこなかったりする。車だったら、その思い出したかった記憶と、全く違う記憶がいきなりばって出てくるときが、たまにあるんで。車じゃなくても外出した時に歌詞は思いつくことは多いですね。

Tete - 一応、僕的には一つにつながってて。全曲に一貫して言えるのは僕が見たことっていうか、ストーリーとしては1本。特に"汐騒"に関しては地元のことを歌ってるんで、それこそ中学生とか高校生のときのことを書いたつもりですね。

Tete - 歌詞の引き算として接続詞を省いてて。全部説明しちゃうと、他の歌で使えない気がするんですよね。例えば、恋愛ドラマで、彼女役は出演してるけど、彼氏役は出さないみたいなことを僕はしたくて。「おもちゃグロック みてぇな坊主お前 俺の地元来たらお前 アナルタバスコ 俺とダチはテトラの外側の荒れた高潮」は、説明しちゃうと、ファッションサグみたいな人って正直、もう会わなくてもMVとかみたら分かるっつうか。僕も全然、サグとか何でもないんですけど、でも、こいつはファッション野郎やなみたいな思うことが多々あって。ラッパー以外の方でも。「アナルタバスコ」は、僕らの地元でいう罰ゲーム的なもので。「俺とダチはテトラの外側の荒れた高潮」で。そのファッション野郎が波止場の内側で、波が立ってない所で粋がってるかもしれないけど、俺たちは荒い波の街から来たんだぜみたいな感じですね。

Tete - 影響は受けてるとは思うんですけど、これってのが特になくて。そもそも映画とかも結構好きで、初期はMVも自分で撮っちゃったりしてたんですけど。でもそれより、どっかで自分の音楽スタイルを差別化しないと、マジで本当に何もないまま俺ら終わっちゃうなって思って。スタイルとして探したってほどじゃないんですけど。でも書いてるうちに、俺は情景描写が好きだし得意なのかなって思ったタイミングがあって。それは曲を作りまくったおかげってのもあるかもしれないですね。

Tete - 分かんないっすね。自分の今の携帯とかパソコンに入ってるやつだけでも多分、200か300ぐらいはあるんですけど。ソロの曲だけじゃなくて仲間と作った曲とか含めてですが、それぐらいは多分作ってると思います。

Tete - 客観的に、そういう人がいないんじゃないかって思い始めて。本当に描写が上手でリリシストの人もいっぱいいるけど、こういうやり方してる人はいないなって。ディグも続けてきたおかげでもあるかもしれないですね。何が影響してるって言われたら難しいっすけど、でも多分、ずっとやってきたから見つけれたのかもしれないっす。全然、まだまだですけど。

Tete - めっちゃ好きです。

Tete - 間違いないかもしれないっす。北野武の映画はちっちゃい頃から、おやじがめっちゃ好きだったんで見てましたね。

Tete - 『BROTHER』ですね。内容はめちゃくちゃ覚えてるわけじゃないけど、すごく印象的なんですよね。「何や、これ?」と思った記憶があります。

Tete - 僕、基本的に歌詞とフロウを同時進行じゃないとできなくて。ビートを聞きながら、フロウと歌詞を同時に考えるスタイルなんですけど。宇宙語とか、5lackが歌詞を書かないスタイルをやってるから、めっちゃ試したんですけど全然できなくて。もう背伸びしないで自分のやり方を地道にやろうって、時間をかけるようにはしてますね。でも、言っても1日とか2日ぐらいではできると思います。そんな何日もは、かからないっすね。

Tete - そうですね。1年前に地元帰ったときに書いた歌で。地元のことが多いですね。

Tete - 僕はちょっとひねくれてるところがあるので、狙ってやっちゃってるかもしんないっす。変な感じで乗せたいなって思って。

Tete - この歌はビートのサンプルがあって、さっきゲームの話とかもしたっすけど、普段はテレビゲームは全くしないんですけどサンプリングソースを探したくて、YouTubeで全然したこともないゲームのサウンドトラックとか、めっちゃディグってたんですよ。それで出てきた曲で。曲名の"ico"を付けた理由が、この作者だったかゲーム名だったかはちょっと忘れちゃったんっすけどどっちかの名前なんですよね。ビートはめっちゃ爽やかな感じだけど、ギャップも好きだから、こういうビートでいきなりガッて乗せる。Meek Millのアルバムの1曲目とかこういうの多くて、それが好きだったから乗せ方はあえてやりましたね。

Tete - "梯子"、使ってたかな。"梯子"は使ってないですね。

Tete - 確かにLEXさんもやってますね。これもまた、さっきのやったこともないゲームのサウンドトラックからサンプリングしていて。Chief Keefとかの初期のシカゴドリルをちょっと日本っぽくやりたいなって思って、サントラの作者も日本人のやつ、選んでやったんですけど。ラップはWestside Gunnのパクリじゃんみたいな感じで言われるかもなってぐらい、めっちゃくちゃ意識しましたね。ちょっと高い声で、後ろでアドリブがうるせえみたいな。

Tete - 前、FNMNLで記事にしてもらったやつでも軽く言ってるんですけど、自分のスタイルとして掲げてて。『湘南爆走族』っていう全然世代じゃないんですけど、おやじの影響で見てたヤンキー漫画があって。『湘南爆走族』のサブタイトル的なやつで、「PURPLE HIGHWAY OF ANGELS」みたいなのが書いてて、多分、『暴走天使』的なあれだと思うんっすけど。主人公の江口(洋助)がせりふで、僕のビートタグにもしてるんですけど、「明けはじめの道路は紫色なんだよ」って。それを自分がマンガで見たときに、めっちゃ分かるみたいな思って。

これ本当、後から気付いた感じなんですけど、俺の曲って江口が言うパープルウェイの時間帯にめっちゃ合うなって思ったんですよ。昼間とか真夜中じゃない朝方とか夕方。昼と夜の間の紫の時間って、僕は結構エモくなっちゃうんです。何かいろいろ思い出したり、もう何も考えずぼーっとしたりとか。何かその紫の時間帯を埋めるような曲を今作っていけてるなってアルバムとか出す全然前ぐらいに思ってたので。今年3枚出してて、この3枚のうち、特にこの『茈』は絶対に誰かしらの目には留まると思ってたので、このスタイルを全面的に出していこうって思いましたね。

Tete - 本当にそれこそ『湘爆』を見て、確かにめっちゃきれいかもってなって。意識的にその時間帯に起きてたり外に出たら、空を見たり海を見に行ったりするようになったって感じですかね。

Tete - そうですね。塩梅が難しくて。さっきも言ったんですけど僕は全然、サグな人間でもないし、自分自身はずっと中途半端なとこにいたので。でも、なめられたくないっていうか、もうポップな音楽は作ってないし作りたいとも別に思わないので。正直"汐騒"と"ico"はヒップホップがめっちゃ好きな人じゃなくても聞きやすいのかなと思ってたので、この"梯子"と"灯り"でぐっと締めようかなと思いましたね。歌詞もビートも、俺はヒップホップだよっていうのを教えたいなと思って。

Tete - アルバムで流れを作るの、好きなんですよね、考えながら。こう伝わればいいなみたいな感じで。

Tete - 全然そんなことないですね。それも、もちろん大好きですけど、ずっと何か自分のビッチな自慢してる曲とか、そういうのも全然好きです、普通に。それもヒップホップだなって思いますし、僕はやらないっすけど。

Tete - そういえば関係ない話なんですけど、全然知らない方からDM来てて。Hilcrhymeの"ドラマ"っていう曲がこの"ベンツ"とめちゃくちゃ似てるけど、これ、パクリじゃねえのかみたいな感じで言われたんですよ。まず、その曲、知らねえしみたいな。おまえ誰だよ?ってなって。僕はSpliceを使ってて、"ドラマ"って曲は聞いたことないけど、作曲してる人が、同じSpliceのネタを使ってたらかぶる可能性はあると思うっていうのを伝えた後に聴いてみたんですよ。確かに全く同じネタを使ってて。作ってない人はびっくりするかもなって思いました。

Tete - 面倒いっちゃ面倒っすよね、仕方ないっすけど。それこそ、"ベンツ"とかはこのネタが、さっき和田さんもおっしゃったようにそれこそポップ目なビートでも使えそうなものだったので。この曲は、僕の先輩が亡くなったときのことだったり、沖縄で見た衝撃的なことだったりを書いてるんですけど。だから、そこのまたギャップというか、このビートでこの歌詞っていうのをこだわったところですかね、"ベンツ"は。

Tete - 実際は見たことないけど、走馬灯を意識したんです。2年前ぐらいの3月に作って。さっき話した先輩が亡くなったのも3月だったんですよ、その何年か前の。僕が18のときの3月に亡くなってしまったので、それを機に、この人のことはいつか絶対、歌詞に書きたいなっていうふうに思ってましたね。すごい優しくて大好きな先輩だったので。この"ベンツ"のビートのネタを見つけたときに、明るい印象もあるけど、それこそ車でばーって、自分の人生をぶわーって走っていくような風景が見えて。何か走馬灯っぽい曲を作ってみようかなって思ったのはあります。

Tete - 僕、(マンチェスター・)シティがすごい好きなんです。ここ、本当は違う歌詞だったんですけど。22-23シーズンでチャンピオンズリーグ取ったので、これは人生で忘れないだろうって思って書きましたね。渋かったっすね、ロドリ。

Tete - めっちゃその曲大好きですね。でも、無意識でやってるかもしれないですね。本当"1AM in Asahikawa"、めっちゃ聞いてて、やっぱり歌詞の達人だなって思いますね。北海道も行ったこともないけど、すげえ風景が見えてきて。お手本として参考にさせてもらってる部分は、間違いなくありますね。

Tete - まず、雨の音とかも若干聞こえるようなウェットなピアノのネタを見つけて。キックとかスネアもいろいろ合わせたんですけど、極論ですけど、この時が一番引き算にとりつかれてて。ビート、ごちゃごちゃしてたら駄目だっていうのが、頭の中にあって、これ1本でも行けるなって思って。最初にドラムスとかもない状態で1回、ばーって全部書いて。

自分はビートを聞きながらフロウとリリックを同時に作っていくので。「カモメの群れ」の後に、このサビがばって浮かんできて、ここでドラムスが欲しいなって感じで組み立てていきましたね。この曲は本当、ビート作りも平行でやった感じですね。

Tete - 間違いないっすね。

Tete - この先輩がさっき話をした、部屋がすげえかっこいい先輩っすね。

Tete - 『茈』の中で”滑走路”が一番最初にできて。これはマジでまっすぐ書いたって感じですね、特に凝らずに。こういうアルバムを作りたいっていう1曲って感じです。

Tete - "トンボ"、僕は一番気に入ってて。本当、聞いてくれる人がどう受け取るかなみたいな。セオリーどおりだったら 、"滑走路"で締めたほうが絶対気持ちいいんですけど。"トンボ"が、僕がいろいろ重なって病んじゃったときに作った曲でちょっと暗い内容だけど、USのいわゆる「Pain」じゃなくて、日本っぽいペインでやりてえなみたいに思って作りましたね。

Tete - うれしいです。まだ全く成功もしてないし、何なら何も始まってないんで偉そうなこと、言えないんですけど。さっき和田さんがおっしゃったように、そのまんまのフロウとか表現を日本語訳したやつだけを載せても、残ってる人たちとか本当の意味で評価されてる人たちって、自分なりの解釈ができてる人だと思ってて。

その人にしか書けないことってよく言うじゃないですか。多分、それは当たり前で。しかも、簡単にいうと、すげえハードな人生だった人とかは、言っちゃえばフロウとか関係なく歌詞がやば過ぎるから、一発で持って行かれちゃう。でも、自分はそうじゃなかったので。別に裕福ではないですけど普通に育ってきて。ずっと不良に憧れたけど不良になれなかった中途半端なやつだったので、何か自分にできる、俺にしか書けないものを考えて、表現方法だったり解釈の仕方を、かぶらないというか、やってる人がいないだろうなっていう思いでやってきましたね。

Tete - 僕はなれなかったっす。ずっと、しょうもない。悪いことするにも、別に美化するとか正しいとは全く思ってないっすけど、でも、本当に悪いことするときって絶対気合も根性もいるし、もう仲間どうのこうのじゃないと思うんっすよ。周りにそういう人もいたし。でも、自分はそこが根性がなくて、気合もなくて踏み込めなくて、ずっと。でも、真面目にはできなくてみたいな感じでしたね。本当に中途半端でしたね。

Tete - それがでかかったです。

Tete - そうかもしんないっす。熱中するものがマジでなくて。僕ら世代は暴走族はいなかったんですけど、先輩にはバイク乗ってる人とかもいて。バイク乗りってやばいじゃないですか。バイクに、こう、熱狂しちゃうじゃないですか。それ、いいなって思ってたんですけど。僕もバイクも車も好きだけど、先輩方に比べると知識もないし、お金もなかったし。部活も別にだし、勉強もできないし。何か熱くなれるものを、探してたつもりもないですけど。でも、気付いたら音楽がいいかもなって感じになっていったんです。本当にディグが全てだなって思っていて、なるべく新譜が出たら聴くし、知ってるアーティストの知らないアルバムとかを見つけたら絶対聴くようにしてます。

Tete - 自分がなりたいアーティスト像は、さっきも話したけどYoungBoy Never Broke AgainとかNBAクルーのラッパーみたいに、またこいつら曲出してんじゃんみたいな感じになりたいんですよ。常に最新の曲が自分のトップソングを更新していくアーティストになりたくて。なんで、本当に曲作りをずっとやりたいですね、僕は。アパレルとかグッズとか、楽曲と付随するビジネス的な面も今はめっちゃ大事だとは思うんですけど。まだ確定ではないですが、年末にも1、2枚ぐらい出そうかなって思って。すごいね、めっちゃ作ってるなって言われるんですけど。一回バズってから、こいつはかっこいいかかっこよくないかみたいなのが選別される時代だと僕は解釈してて。でも、自分はそこのレースには行く気は、あんまりなくて。ビジネス的な側面も考えてはいるっすけど、それ以上に一番最初からかっこいいで入れば、ずっとかっこいいアーティストとして聞いてもらえると思ってて。

だから、かっこいい曲だけを作り続ければ多分、こうやってインタビューしていただいたりとか、そういうことが絶対起きるっていうのは分かってたので、これを続けていきたいっすね。一番シンプルですけど、僕も仲間もめちゃめちゃ曲を今作ってて、それでかっこよければ多分、時間の問題だと思ってるんで。そういう感じですかね。

Tete - 憧れてる男が何名かいるんですけど。何回も言ってる『湘爆』の江口洋助だったり。これも親父の影響だったりするんですが、高倉健がめっちゃ好きで。高倉健が生前最後に撮った映画『あなたへ』って作品が、これ、僕の地元で撮ってるんですよ。それが結構、僕の中ででかくて。直接撮影風景を見たわけじゃないんですけど。高倉健の腰、低いけど、ぎらついてる感じとかめっちゃ優しい感じを高倉健から感じて、めちゃくちゃかっこいいなって思ってるんで。人間的には、ああいう優しくてかっこいいおやじになりたいなって思います。謙虚でいきたいです。

Tete - ちょっとでか過ぎる存在ですね。マジな話で本当にこの子たちが今生まれてきてくれてなかったら多分、音楽活動もちゃんと頑張れてたか分かんないぐらいですね。嫁からは「あんたは多分、何があっても音楽は辞めないでしょ」って言われるんですけど。正直あんまそういう想像できないんですけど、先のこととか、もしこういうことがあったらとかはないけど。でも、今は娘たちがいることで、本当にめっちゃ頑張れますね。

今はやってないし、ちょっと苦労自慢みたいであれなんですけど、前は金がなさすぎて朝8時から夕方6時まで働いて。一回帰宅して飯食って、8時から夜中の2時まで清掃のバイト行ってとかしてたんすよ。でも、ぶっちゃけ全然きつくなくて。帰ってきたら娘が、『to Subaru』って曲でも言ってるんですけど、むくって起きて、『抱っこして』みたいな感じで言われたり。これ、言われるならマジで余裕だな人生、マジできついこと何もないなみたいに思うことが本当に多くて。今もそうなんですけど、仕事で疲れたりとか音楽的なとこでうまくいかなかったりとか、そういうのとかでも、娘が僕の歌、口ずさんだり、僕と仲間の歌で踊ったりとかしてるのを見ると、絶対俺ら、大丈夫だなって思います。

Tete - ちょっと恥ずかしいっすけど。

Info

Tete 2nd Album「茈」

https://linkco.re/6qV9ThDE?lang=ja

トラックリスト

1.茈(ムラサキ)

2.汐騒(シオサイ)

3.ico(イコ)

4.梯子(ハシゴ)

5.灯り(アカリ)

6.ベンツ

7.滑走路(カッソウロ)

8.トンボ

RELATED

【インタビュー】Minchanbaby | 活動終了について

Minchanbabyがラッパー活動を終了した。突如SNSで発表されたその情報は驚きをもって迎えられたが、それもそのはず、近年も彼は精力的にリリースを続けていたからだ。詳細も分からないまま活動終了となってから数か月が経ったある日、突然「誰か最後に活動を振り返ってインタビューしてくれるライターさんや...

【インタビュー】Keep in Touch | R&B / ダンスミュージックにフォーカスした新しい才能を

ダンス・クラブミュージック、R&Bにフォーカスをあてたプロジェクト『Keep In Touch』をソニー・ミュージックレーベルズ/EPIC Records Japanがスタートさせた。

【インタビュー】Koshy | 日本の音楽シーンに合わせようって気持ちがなかった

国内のヒップホップシーンにおいて2024年最大のバイラルヒットとなっている千葉雄喜の"チーム友達"、そしてその千葉雄喜も参加したMegan Thee Stallionの"MAMUSHI、さらにWatsonの1stアルバム『Soul Quake』やNENEの2ndソロアルバム『激アツ』。その全てのプロデュースを手がけているのがKoshyだ。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。