FNMNL編集部が選ぶ1月のベスト6リリース
早いもので、もう2017年最初の1ヶ月が過ぎた。1月から様々な音楽ニュースが飛び交ったが、今月のビッグトピックといえばMigosのアルバム『CULTURE』のリリースだろうか。様々な要因があったとはいえ、このアトランタの特異なラップトリオのアルバムがこれほどまでに待望されるとは、にわかには信じがたい。日本にいるからわからないだけかもしれないが、知人と何度「Migosが売れてるのって、信じられないよね」という会話をしたかわからない。
そんなMigosなど、 1月にリリースされた作品からFNMNL編集部のオススメするリリースを紹介する。
1. Migos - 『CULTURE』
Migosの快進撃はTwitterで"Bad and Boujee"内のリリック「Rain Drop, Drop Top」のバズから始まった。そして初のビルボードチャート1位の奪取、ゴールデングローブ賞でのChildish Gambinoの後押し、初のTVショー出演、映画『レヴェナント』風の"T-Shirt"のミュージックビデオのヒットと、多くのポジティブな要因が重なったおかげで、アルバム『CULTURE』は万全の状態でリリースされることになった。
大きな期待を背負ってリリースされた作品が、実は...というケースはたくさん見聞きしてきたが『CULTURE』は、Migosが育ってきたカルチャーを最先端なプロダクションとともに、伝えてくれる文句無しの作品だった。先行公開の2曲を始め、Murda Beatzの手によるダンスミュージックとも共鳴するオルタナティブなプロダクションが光る、"Get Right Witcha"やコカインとストリップクラブについて語られる"All Ass"、盟友2Chainzのラップも冴える"Deadz"など、単調なテーマをアドリブのバリエーションなどで、これだけ楽しく聴かせてくれるアルバムもそうないだろう。
2. Kehlani - 『SweetSexySavage』
昨年春の衝撃的な自殺未遂のニュースのあとにKehlaniが、ここまで見事なカムバックを果たすことを予想した人は、どれくらいいただろうか?
夭逝のシンガーAaliyahをサンプリングし、自殺未遂を振り切るような歌詞になっている"Personal"やAkonの大ヒットを用い、キャッチーに仕上げた"Undercover"、New Editionを使用した"In My Feelings"など、多様な年代の楽曲を、決して古臭くしない形でサンプリングしながら、R&Bの系譜を更新しようとした意欲作になった。タイトルもTLCの名作『CrasySexyCool』からの引用だ。
3. Matt Martians - 『The Drum Chord Theory』
The Internetは昨年のアルバム『Ego Death』をリリースしてから、よりいい形でバンドにカムバックするために、それぞれのメンバーがソロアルバムをリリースすることをアナウンスしていた。その中でいち早くリリースしたのがMatt Martiansだ。(Sydもその直後にアルバム『Fin』をリリース)
全体的にはオーガニックでソウルフルでスムースだけれども、どこかケミカルに歪んでいる、このアルバムは、Matt Martiansがアシッドの摂取を始めたときからアイディアとして浮かんでいたサウンドを具現化したものだという。バンドメンバーのSteve LacyやSyd、そしてOdd FutureのTyler, The Creatorのサポートを得て出来上がった今作は確かにThe Internetの中から生まれたサウンドといえると同時に、Matt Martiansというアーティストのサイケデリックなテイストもしっかりと伝えてくれる。
4. G.RINA - 『LIVE & LEARN』
前作から引き続き80'sブギー・ディスコを基調にしつつも、その中にモダンなヒップホップやR&Bのエッセンスを融合させるなど、彩りも鮮やかになったG.RINAの最新作。今作では自身をよりプロデューサー的な立ち位置で捉え、個性豊かなゲスト陣を配している。「大人になって幅広い層に届ける作品を作りたいと考えるようになった」と本人が語るとおりのポップさを持ちつつ、しっかりとアーティストシップを発揮した内容に。
5. Tory Lanez - 『Chixtape 4』
Kehlaniのアルバムもサンプリングや歌詞の引用を多く行っている作品だったが、カナダのシンガーTory Lanezが新年早々にリリースした今作はほぼ全編にわたり2000年代のR&Bからのサンプリングとなっている。さすがに露骨すぎると思うリスナーもいるかもしれないが、彼は出世作"Say It"や昨年の大ヒット"Luv"まで、ずっと同じマナーを貫き通している。このキャッチーすぎる作品はその集大成だということで、ぜひ聴いてみてほしい。
6. Chief Keef - 『Two Zero One Seven』
2016年は活動が止まっていた、Chief Keefが新年早々リリースしたミックステープ『Two Zero One Seven』。シカゴからLAに移住したあとのChief Keefはいわゆるドリル的なサウンドからはもちろん、トラップからも離れ独特の怪しい揺れ感のあるトラックを自作し、そこに酩酊感のあるフロウが乗るという、独自のモードを全開にしている。今作はLex LugerやYoung Chopなども参加しているが、我が道をいくスタンスは変わらずだ。本格的に活動を再開した途端に旧知のトラックメーカーへの暴力事件で逮捕されてしまったのは余計だった。