【ライブレポート】Yo-Sea @ WWW X | 全てに愛が溢れるような一夜

沖縄・北谷出身のシンガーソングライター、Yo-Seaが自身初となるワンマンライブを2024年3月1日に渋谷WWWXで開催した。昨年8月には待望の1stアルバム『Sea of Love』をリリースし、国内最大級のヒップホップフェスティバル『POP YOURS』には2年連続の出演が決定するなど、今最もフレッシュで勢いのあるアーティストのひとりだ。

金曜夜の渋谷の喧騒を通り抜けて会場に向かうと、この日を待ちわびた若いオーディエンスが行列をなしていた。即完した本公演には予想を大きく上回る応募があったとSNSでアナウンスされていた通り、フロアは超満員だ。今回幸運にも当選した人々の熱気は、会場にはとても収まりきっていない。

予定の時間が10分ほど過ぎてから客電が落ち、熱気の渦を加速させるようなギターソロの生演奏を経て"Without you"のピアノイントロが流れると、フロアから爆発的な歓声が起こる。サングラスをかけたYo-Seaが登場して歌い始めると、さっそく大合唱だ。その声量の大きさと、登場の瞬間を収めようと掲げられていた多数のスマホの画面が、その場のヘッズの多さを物語る。シンガーでありながらラッパーとしての顔も持つYo-Seaならではの光景だ。

photo by Tairiku Kawamura

続いて哀愁のあるギターのイントロが特徴的な"Actor"を、両手でマイクを掴みながら熱唱し、そのままメロウでセクシーな"Night Ship"に流れ込む。最初から最後までオーディエンスも大熱唱で、その熱気はずっと飽和状態だ。MCでは「昔の曲から最近リリースした曲までやる」と宣言。ラップと歌が境目なく溶け合った"Coconuts"では、ステージ両脇の草木と背後の深紅のカーテンがゴージャスで親密な雰囲気を演出していた。

photo by Tairiku Kawamura

この日1人目のゲストとして迎えたGottzとの楽曲"Neon Step"では、Yo-Seaがフライングして歌い始め、「まだでした」と謝るお茶目な場面もあった。Gottzがいるなら…というオーディエンスの期待に応えるように"Body & Soul"を演奏。さらに"Inori"ではC.O.S.A.が登場し、ヴァースで大合唱が起きるほどの盛り上がりを見せた。客演ありのバンドセットでのパフォーマンスという、どちらも滅多に見ることができないスペシャルなセットに大興奮だ。

Gottz photo by Ryota Hashimoto
C.O.S.A. photo by Tairiku Kawamura

リリース時のインタビューでバンドセットでのライブへの意欲を見せていたように、この日はギター、ベース、ドラム、キーボード、コーラス(2名)という編成の全編生演奏でのパフォーマンスだった。プロデューサーと密に連携しながら制作したという音源が、生演奏特有のゆらぎを与えられながら再構築されていく。音源のビートを大音量で浴びる良さもかけがえのないものだが、この日のバンドセットには確かな説得力があり、観客が求めるものと本人が表現したいものが高度に一致した素晴らしいものだった。例えば、夜のドライブのような雰囲気の"Tokyo"の中盤での楽曲に推進力を与える3連ベースには、きっとその場の誰もが驚いたに違いない。大人気曲の"Moonlight"では、Yo-Seaが幼少期から生活の中で慣れ親しんできたという山下達郎や松任谷由実、サザンオールスターズといった音楽のエッセンスがバンドの生演奏によってさらに輝いていた。沖縄の海を思わせる青い照明をミラーボールが反射する中、人々が自由に身体を揺らし、ステージとフロアが協奏して和やかな空間を作り上げる。そこには熱狂もありつつ、終始穏やかなムードが漂っていた。それはYo-Sea自身と楽曲のマイナスイオンをまとったような雰囲気があってこそなのだ。

Photo by Tairiku Kawamura

"Moonlight"というひとつのクライマックスを迎えると、Yo-Seaはステージから消え、『Sea of Love』の冒頭を飾る"Intro"の波音で空気を浄化する。それから3分ほど過ぎた頃、黒い衣装からピンクのシャツに衣装チェンジして現れ、"Pretenders"でSTUTSとC.O.S.A.をステージに招き入れる。STUTSはこの曲のビートをC.O.S.A.に送ったところ1時間後にヴァースを送り返してきたという制作時の裏話も披露。続けてSTUTSプロデュースの流麗な"Flower"で至福のひとときを過ごす。"Me & You"はChaki Zuluのトロピカルなビートと、随所で沖縄民謡とゴスペルの融合を感じさせる独自のフロウが極上だ。

STUTS photo by Ryota Hashimoto

チルなラップ調の"Deep in"でメロウなムードを保ちつつ、"Sunset"でIOが登場すると、フロアはこの日一番の大絶叫に包まれる。本日3曲目の登場となるGottzも絶好調だ。自身も沖縄でKANDYTOWNのライブを観ていたヘッズだったと語るYo-Seaが、ワンマンのステージに憧れの2人と共に立つ姿をオーディエンスに見せたのは感慨深い。そしてまさかの「あっという間に最後の曲です」と言って"Nana"をプレイ。 ここまでわずか60分ほどで、当然この日のアツいオーディエンスは黙っちゃいない。

photo by Ryota Hashimoto
IO & Gottz photo by Tairiku Kawamura

「アンコール!」というコールや拍手が送られ、バンドメンバーが現れ、遅れてハットを被ったYo-Seaが小走りで登場。アンコールされたのは初めてだと語り、この日が初のワンマンという特別な場であることを思い起こさせる。「実はもう一人ゲストがいる」と明かされると、沖縄のR&Bシンガー/ラッパー、3Houseが"Dejavu"で登場し、フロアは本日何度目かの大絶叫。最後は同郷のアーティストを呼ぶというのも粋な演出だ。オーディエンスの熱量満点の反応の良さにたじろぎながら、東京、大阪での『Billboard Live Tour 2024』の開催を発表。確かに生演奏をじっくり堪能するには最高の会場である。

3House photo by Kaiki Yamanaka

photo by Ryota Hashimoto

そして最後の最後は"Someday"でしっとりと着陸した。この日のパフォーマンスを踏まえると、「全てに愛が溢れるように」という歌詞には一点の曇りもなかったのだと伝わってくる。Yo-Seaは沖縄から強い決意で上京し、着実に結果を残してファンベースを築いてきた。そんな彼が初のワンマンライブの最後に故郷の沖縄への想いを綴った歌を披露したことに思いを馳せながら、この短くも美しい時間を言祝ぎたい。(取材・文 : 最込舜一)

photo by Tairiku Kawamura

Info

【ビルボード公演概要】
Yo-Sea Billboard Live Tour 2024
[ビルボードライブ大阪] (1日2回公演)
■2024/06/21(金)
1stステージ 開場17:00 開演18:00
2ndステージ 開場20:00 開演21:00
[ビルボードライブ東京] (1日2回公演)
■2024/06/23(日)
1stステージ 開場16:00 開演17:00
2ndステージ 開場19:00 開演20:00
チケット情報:
・サービスエリア¥6,500
・カジュアルエリア¥6,500(1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
※別途指定料が必要な席種がございます。
AOTL抽選先行
・イープラス: https://eplus.jp/yo-sea-bbl/
・受付期間:2024/03/02(土)10:00~2024/03/10(日)23:59
*公演のご予約はビルボードライブWEBサイトおよびプレイガイド(e+・ぴあ)にて行います。ビルボードライブ予約センターでの電話受付はございませんので予めご了承ください。なお、ビルボードライブWEBサイトからのご予約は無料のゲスト登録が必要となります。
ビルボードライブWEBサイト: http://www.billboard-live.com/
公演に関するお問い合わせ:
ビルボードライブ東京 03-3405-1133
〒107-0052東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F

ビルボードライブ大阪 06-6342-7722
〒530-0001大阪府大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2

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