【インタビュー】SHO-SENSEI!! 『SCRAP』 | ヒップホップと歌のあいだで

日本における新しいヒップホップの形を追求するSHO-SENSEI!!が新作EP『SCRAP』をリリースした。2023年のSHO-SENSEI!!は"道路工事"をはじめ“ナントカ流星群”など自身の影響を受けた様々な音楽をクロスオーバーするような楽曲をリリースしてきた。 一方、今回の『SCRAP』はよりヒップホップにシフトした内容となっている。SHO-SENSEI!!がどんな意図で本作を制作したのか、深く聞いた。

取材・構成 : 宮崎敬太

撮影 : 横山純

ライブでやりたいと思う曲を作った

- "SCRAP"は“ナントカ流星群”、“道路工事”、“だから一枚だけ盗んだ”など2023年にリリースされた楽曲群の中ではヒップホップの要素が強くなっていると感じました。

SHO-SENSEI!! - 自分が好きなヒップホップとSHO-SENSEI!!としての音楽をミックスさせたいというアイデアはずっと念頭にあったんです。実際に制作したいと思った直接的なきっかけは7月にやらせてもらったツアー(「SHO-SENSEI!! LIVE TOUR 2023」)ですね。僕はいわゆるトラップのライブをしたいんです。でもSHO-SENSEI!!にはそういう感じで乗れる曲が少ないなと思って。それでこういう作品を作りました。

- noteに投稿された「Oil、SCRAP」に書かれていた喉の病気も関係していますか?

SHO-SENSEI!! - あれは“Oil”という曲単体に言及したものですね。今回のEPは“Oil”を作った時の雰囲気やムードを拡大した作品なんです。個人的にも大好きな曲で。

- EPのトレーラーを2種類制作したのはなぜですか?

SHO-SENSEI!! - 1個はEPのコンセプトを伝えるもの、もう1個はSHO-SENSEI!!というプロジェクトを運営している僕自身とその周りの友達を見せたかったんです。

- 飛行機を直しているほうは病から回復しているSHO-SENSEI!!をビジュアライズしたものというのはわかりましたが、仲間との小旅行バージョンを制作した意図をもう少し詳しく教えてください。

SHO-SENSEI!! - それはSHO-SENSEI!!というキャラクターを作り込みすぎて、のめり込んでしまうのはあまり良くないと思ってるからです。僕の名前はしょうたろうと言うんですが、普通の人間としてのしょうたろうの面もあるってことも見せていきたいと思ってあのバーションも作りました。

- EPの個々の楽曲について伺います。“Years&Years”からはものすごい焦燥を感じました。これは喉の病気が関係していますか?

SHO-SENSEI!! - この曲だけ昔の曲なんです。2年半ぐらい前かな? ……もっと前かも。具体的なことは覚えてないけど、“望遠鏡”(『THE TELESCOPE』)より前からある曲。というのも、“望遠鏡”の出だしにある「2年後」という歌詞は、この“Years&Years”からピックアップしてるんですよ。みんなからすると“望遠鏡”の歌詞が“Years&Years”に出てきてると思うかもだけど実は逆なんです(笑)。

- えーっ!?

SHO-SENSEI!! - 未発表曲がめちゃくちゃあるので、こういうことが当たり前に起こるんですよね。この曲は大阪でライブして新大阪から東京に帰ってきた日に作りました。すごく鮮明に覚えてて、リアルだしコンセプトにも合うと思ったので、今作に収録しました。

“Oil”は“ナントカ流星群”の続きでもある

- EPの中核をなす“Oil”について教えてください。

SHO-SENSEI!! - この曲は喉の病気がわかった時に書きました。すごく喉が痛くなって病院に行ったら、先生に原因として考えられるのは3つって言われたんです。コロナの後遺症、もう一個はアレルギー、最後はストレス。そのうちの1つかもしれないし2つかもしれないし、全部かもしれない、と。3ヶ月は安静にしてくださいと言われたけど、原因がはっきりしないことに僕はすごく焦りました。

- noteの投稿にもありましたね。

SHO-SENSEI!! - はい。ちょうど自分的にいろいろやろうと思ってたタイミングでしたから。本当は歌っちゃいけないけど、ダメと言われるとやりたくなる性分で、当時の気持ちや雰囲気をこの曲に吐き出した感じですね。最初はフリースタイルでラップして、リリックはあとから綺麗に書き直しました。

- トラックは?

SHO-SENSEI!! - ビートがなかったからYouTubeで「SHO-SENSEI!! ビート」で検索して出てきたタイプビートで作ってあとから差し替えました。その段階ではむっちゃ長いフリースタイルだったんです。10pmにビートを作ってもらった段階で、フリースタイルから要素を摘んでパズルのように組み立てました。

- それは録ったラップをデータ上でエディットしたんですか?

SHO-SENSEI!! - いやフリースタイルを全部書き起こして、自分であれこれ組み替えました。メロディーは最初のままです。

- トレイラーの飛行機を直す整備士のイメージはどんなタイミングで浮かんだんですか?

SHO-SENSEI!! - 僕はリリックを書く時ビジュアルをイメージしてることが多いんです。歌詞にする時は聴いてる人や歌詞を見た人がそのイメージをしっかり想像できるように書くようにしてるんですね。この曲はいろんな状況が重なっている時に書いたので連想が行き来って、飛行機を直している整備士が浮かんできたという。

- 飛行機は夢に向かって飛んでいくSHO-SENSEI!!で、整備士はがんばって喉を直している当時の状況、Oilは情熱のメタファーですよね。では「君」が出てくるのはなぜですか?

SHO-SENSEI!! - それはこの曲が“ナントカ流星群”の続きでもあるからです。だって大切な人とのお別れを1曲で終わらせることなんてできないじゃないですか。そんなんじゃ全然言い足りない。アルバム5枚はいけるっすね。

自分の言葉は自由に使っていいと思ってる

- 続く“エレキ”ですが、このタイトルにはどんな意味が込められているんですか?

SHO-SENSEI!! - これは自分の(Instagramの)ストーリーズで言ったことあるんですけど、体の器官として歩くのが足で、息するのが肺だったとしたら、音楽を作る部分をエレキと勝手に呼んでいて。この曲はアコギを弾いている時に最初の「Shout out to my エレキ」ってラインが最初に出てきて、あとはフリースタイルですね。そこから“Oil”の時にみたいに要素を抽出して綺麗なリリックにしました。

- “エレキ”というワードはシンプルだけどいろいろ想像を駆り立てられるかっこいい表現だと思いました。

SHO-SENSEI!! - ありがとうございます。この曲は20分くらいでできました。今回のEPはできた順番に収録されてます。この感じの曲があと2つくらいあって、こういうのの作り方に慣れてたんだと思う。出だしの歌詞が別の曲でサビになってたりする曲が今後どこかのタイミングで発表されるはず。この時期の自分の積み重ねがこの1曲に出た感じですね。

- 「痛み止めであんま痛くない」というリリックもこの時期のリアルですね。

SHO-SENSEI!! - あ、そう。ずっとナロンエース飲んでました(笑)。だからこの時期に書いた曲には痛み止めがよく出てきます。

- フリースタイルで歌詞を作ってるとおっしゃってましたが、「油で汚れた手」というラインは“Oil”に通じる部分があって、かなりコンセプトを意識されてたのかなとも思いました。

SHO-SENSEI!! - 逆に言うと、ここで「油で汚れた手」と言ったからコンセプトになったとこもあるんですよ。“Oil”があったから、僕が“Oil”に影響を受けて「油で汚れた手」と言っちゃったっていう。結果的にそれが全体のコンセプトになっていった。僕の曲には同じ歌詞がたくさん出てくるので。

- 同じ言葉を変えようとは思わない?

SHO-SENSEI!! - ま、別に思わない。そんなに悪いことだと思ってないし。同じ言葉でもその前後によって意味が変わったりとかするし。 僕は……なんて言うんだろう。自分の言葉なんで、自由に使っていいと思ってる。

- SHO-SENSEI!!さんのスタンスはマジでラッパーですね。最高です。

SHO-SENSEI!! - たまに「同じやん」って言われるんですけど、僕からすると「何を言ってんの」みたいな感覚ですね。

しょうたろうが見え隠れしてる

 

- "Map"はツアーで日本中を回るSHO-SENSEI!!の歌とも取れるし、愛や別れの歌とも取れると思いました。

SHO-SENSEI!! - この曲に関しては愛や別れというよりは「稼ぐまた来週」というラインに集約されているかな。あと「もうすぐ痛み止めも切れるけど」の「けど」です。

- 最初にSHO-SENSEI!!としょうたろうの話が出ましたが、この曲ではしょうたろうの気持ちが出ているんでしょうか?

SHO-SENSEI!! - うーん、それは難しい質問ですね。(「もうすぐ痛み止めも切れる」という歌詞)まではしょうたろうが見え隠れしてる。「けど」「稼ぐまた来週」でSHO-SENSEI!!に戻るっていう。

- 個人的に“ミシン”がすごく好きでした。

SHO-SENSEI!! - これは10pmにキーとBPMを指定してめちゃいろんなパターンをギターで弾いてもらって、その中から一番良かったフレーズで作りました。このキーとBPMが僕にとって一番歌いやすいんです。EPの中にそういう曲を入れたくて。自分の中ではやり尽くした感があったんですけど、ひとつのゴールと言える曲を全力で作ってみようと思って。

- トラックには逆回転の音が入ってますね。かなりイメージが違う曲というか。

SHO-SENSEI!! - 逆回転の音はストリングスです。ガワというか、曲を構成する要素は違うんですが、骨格で言えば“望遠鏡”や“Hundred Thousand”と同じなんです。

- それは面白いですね。

SHO-SENSEI!! - うわものは全部違うけど、キーとBPMは同じっていう。自分的にこういうムードが好きなので、そこで振り幅を作りたかった感じです。

EPに収録された“Pilot”は82テイク目

- そして“Miles Away”と“Pilot”ですね。

SHO-SENSEI!! - “Miles Away”は“Pilot”に向けた内容で、状況を俯瞰して眺めてるようなリリックにしました。機械をいじってる雰囲気を出したくてヴォーカルはピッチを変えてます。“Pilot”の制作は本当に大変でした。何回も何回も調整して。

- 調整というのは音圧や歌詞の一部を変えたりということですか?

SHO-SENSEI!! - そういう微調整もありますけど、5〜6回はガラッと曲のイメージを変えてます。それで、82テイク目がEPに収録されたヴァージョンなんです。

- えっ!?

SHO-SENSEI!! - テンピー(10pm)も相当大変だったと思う。でも妥協できない性格なので。“Pilot”だけ1ヶ月くらい作業してました。ただやってる時はそんなに苦に感じなかったです。後から振り返るともうやりたくないなって感じ(笑)。最初はトラップっぽい感じだったんだけど、普通に曲として気に入らなくて。メロウになったり、シンガロングになったり、もう1回トラップにしたり。あらゆる方向性を試したと思う。で、一回いい感じの落としどころを見つけたけど、EPのカラーに合わなかったので泣く泣くボツにして。

- でもそんなにトラックのカラーが変わったということはヴォーカルも変えたりしたんですか?

SHO-SENSEI!! - もちろん!優しく歌ったり、強く歌ったり、フロウを変えたり、歌詞を変えたり。デモとして書き出した数が82なので、試したアイデアだけで言ったらもっとあります。

- そんなに直すと逆に落としどころを見つけるのが難しくなるような気がします。

SHO-SENSEI!! - ですよね。でも僕の中ではこいつ(“Pilot”)にやってもらいたいことがたくさんあったんですよ。まずEPを背負ってほしかった。あとフィナーレ感も出したかった。で、トラップ的な要素もほしい。キャッチーさも出したかった。さらに作ってるうちにみんな聴けるライトな雰囲気も入れたくなって。なんかハードルが上がりまくりましたね(笑)。やればやるほど、ちょっとずつゴールがわかってきた感じでした。

- 試行錯誤の後にたどり着いたわけですね。インタビュー段階ですでにツアーもスタートしていますが、お客さんの反応はどんな感じですか?

SHO-SENSEI!! - 今回のツアーは初日とかはEPが出た3日後とかだったんで、みんな一生懸命に理解してくれようとしてる感じでしたね。そもそも僕がこのEPに託したものが多すぎる問題もあるんですよ(笑)。

- 以前のインタビューでも自分にとって理想とするライブの形があると話されてましたが、それを言語化すると?

SHO-SENSEI!! - SHO-SENSEI!!の曲でUSのトラップのライブみたいな感じで飛び跳ねたり、ダイブしたりしてほしい。自分の音楽がそういう感じじゃないことはわかってます。いわゆるトラップが好きなお客さんを集めて、トラップのノリをやってもらうんじゃなくて、SHO-SENSEI!!の音楽でトラップみたいなノリを作りたい。新しいポップの形を提案していきたい。

- それはTravis Scottのライブみたいな乗り方という感じですか?

SHO-SENSEI!! - それで言ったらマジでTravisと尾崎の間ぐらいが理想。Travisだけでも、尾崎だけでも違う。混ざっててほしい。Travisぐらい跳ねつつ、尾崎くらい聴ける感じ。なので聴きつつ、跳ねててくれると安心してライブできるっていう(笑)。

Info

【EP「SCRAP」配信リンク】

lnk.to/A6INDG

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