【特集】Double ClapperzとMr.PUGが選ぶドリル20選

2010年代前半にシカゴで生まれ、Chief KeefやLil Durk、Lil Reese、故Fredo Santana、G HerboなどのラッパーとYoung Chopを中心としたプロデューサーにより大きな注目を集めたドリルミュージック。その攻撃的なリリックと、そのイメージを音で具現化したような荒々しく歪んだビートは、ストリートスタイルで撮影されたミュージックビデオと共に世界に衝撃を与えた。そのブームは一過性のものと思われたが、UKでもサウンド面ではグライムをアップデートさせ、シカゴから攻撃性を受け継いだUKドリルが2010年代中旬に勃興し、その波はNY・ブルックリンに逆輸入されPop Smokeを生み、そこからさらに世界各地(もちろん日本でも)や、USではジャージーと融合し高速化したジャージードリルといった更なるサブジャンルを生むまでに至った。

もちろんリリックやミュージックビデオでの暴力の助長など、ドリルが生み出す負の側面があるのは間違いないにせよ、サウンド的には最も先鋭的なジャンルであることは間違いない。今回、FNMNLではUKDとSintaからなるプロデューサーユニットDouble Clapperzと、MONJUのメンバーでもあるMr.PUGのフェイバリットなドリルチューン20選を紹介する。

Double Clapperzが選ぶ10曲

1. Grizzy X Mayhem #uptop X Stickz X M Dargg - "Pioneers"

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自分が初めてUKドリル独特のグライドした808を認識した曲。数年前グライムの次のUKラップミュージックを探していた時にYouTubeで見つけて、このノリをオレらなりにやってみようと即ralphに聞かせてEPの制作に着手したのを覚えています。

2. Dave x AJ Tracey - "Thiago Silva"

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UKラップ、グライムのスターラッパー2人による、まだUKドリルビートが開発される前のヒットチューン。オールドスクールグライムのクラシック"Pied Piper"を元ネタに、Grimeとはまた違ったドラムとグライドしたベースの打ち方が衝撃で、リリース当時DJでかけまくりました。

3. Pa Salieu - "Bang Out feat. Gazo (Kwes Darko Remix)"

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アフロビーツ、ダンスホールを下敷きに、音楽的にも面白い作品を連発する、Pa Salieu のドリルチューン。ビートはSlowthaiのプロデューサーとしてもお馴染みKwes Darko。Pa SalieuはUKラップシーンの中で一番のお気に入りアーティストです。

4. BackRoad Gee - "Under Attack"

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最近のDJで絶対かける曲。BackRoad Geeのフックの勢いもいいし、ビートも中毒性がある。

5. Tion Wayne - "Wow"

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2021年のUKドリルのモンスターヒットチューン。ビデオも最高。

6. Headie One x Fred again.. - "Charades"

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UKドリルキングことHeadie Oneと、現在イギリスを代表するプロデューサーの Fred again.とのコラボミックステープからの1曲。単にハードなラップミュージックとしてだけではなく、エレクトロニックミュージックとしてのドリルの新たな可能性を感じ、ミックステープ全体を通して聴くのもオススメ。

7. Knucks - "Home"

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ロンドンにおけるナイフ犯罪をテーマにしたドリルチューン。メロウなメロディーに、808ではなくダブのような太いサブベースが絡み合うビートも最高で、ダークでハードなビートに少し食傷気味だった時にYotuubeで見つけて、今でもお気に入りです。

8. Yaw Tog - "SORE feat. O`kenneth,City Boy, Reggie, Jay bahd"

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ドリルビートが世界中に広がる中で、ガーナで生まれたヒットチューン。何よりついつい口ずさんでしまうフックが最高。

9. melfete - "TESLA"

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最近僕が注目しているトルコのDrill。特にこのmelfeteはお気に入りです。ラップ自体がパーカッションのように聞こえ、ダンスミュージックとしても機能すると思います。melfeteはこの曲以外にもテクノのような四つ打ちなのにベースはDrillぽいといった面白い曲を量産しているので、他の曲も聴いてみて欲しいです。

10. IDPizzle - "Billie Jin (Dior Remix)"

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コンゴのアーティストIDPizzleによる、Pop Smoke - "Dior"のリミックス。アフリカ地域特有のメロディーとフロウがクセになります。なんなら原曲よりこっちの方が好きかもしれません。

Double Clapperz

プロフィール

UKDとSintaからなる、プロデューサーユニット。
2012年からグライム/ダブステップ/ダンスホールレゲエ等の音楽に影響を受け、硬くダークでコントラストに富んだテクスチャーとクリアでうねるようなベースミュージックを制作。自身が主宰すIce Wave Recordsから3枚の12インチEPをリリース。完売したカタログ1番は現在入手困難盤となっており、日本が誇るグライムプロデューサーとして自身を確立している。2016年にはBoiler Room Tokyoに出演しSkeptaと共演。2018年夏には、中国/イギリスなど3ヵ国6都市をめぐるツアーを行うなど海外で活動する一方、2019年からはラッパーralphのプロデュースにも携わる。

Mr.PUGの10曲

1. Pop Smoke - "Shake The Room feat. Quavo"

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ドリルにハマらせてくれた曲!アドリブの楽しみ方も教えてくれました。808meloのビートもシンプルでとてもカッコいいです。R.I.P Pop Smoke & Virgil Abloh...

2. Fivio Foreign - "13 Going On 30"

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今、USで一番メジャーな活躍をしているドリルのラッパー。この曲は少し遅めのBPMにFivioのラップと上ネタが相まって、とても壮大な曲に感じます。同時にPop Smokeに俺がトップになるよと宣言してるようにも聞こえます。

3. 22Gz - "Fallen Blixkys"

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22gzは今まで聴いたドリルの中で、一番ラップがタイトでドープなラッパーだと思います。選ぶビートは常に音数が少なくダークで、ストイックさを感じ、とてもカッコいいです!普段ドリルを聴かないタイトなラップ好きの人には是非聴いて欲しいラッパーの一人です。ghostyというプロデューサーとやる時は一生地獄にいる気分にさせてくれます…

4. Bizzy Banks - "Bandemic"

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Bizzy Banksもタイトでめちゃくちゃ勢いのあるラップをするアーティストです。一度聴いたらわかる切れ味のあるラップがカッコいいです!

今となってはドリルでの大ネタ使いはたくさんありますが、この当時は珍しくこの曲のサンプルでアガりました!本当は"swirv"という曲が一番好きでしたがMVが無いのでこちらで…

5. Smoove’L - "2022 FLO/Through The Storm"

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2020がとても好きでしたが、2022の中毒性がヤバすぎる…。基本的なラップとは別に、歌っぽいフロウであったり、オートチューンも使ったりするアーティストですが、常にビートがめっちゃドープだし、曲中スタイルが切り替わる瞬間はズルすぎる!!!"Bag Talk"って曲も怪しくて最高です!

6. Young M.A - "Successful"

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普通にカッコいい!Jim JonesやDave East達もですが、スタイルを維持しつつ、新しいトレンドを柔軟に取り入れることが出来るアーティストはとてもクールです!常にフレッシュでいることの大切さを再認識させられます。Young M.Aの「suck my dick」にあがります!

7. Eli Fross - "Menace feat. Fredo Bang"

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Great Johnのbeatはとても中毒性があります。怪しい音色や控えめなハイハット、滅多に弾かないベースライン、常に隙間があるのですが気付くとイントロの「Great John on the beat, by the way」のプロデューサータグで首を振る準備が完了しています。正直マニア向けだと思います…いやそんなことないか!?

8. Sheff G x Sleepy Hallow x Fresh G - “Panic Part 3"

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Eli Fross同様に普段はGreat johnらの音数の少ない怪しいビートでラップする事が多いのですが、ドリルにハマった初期にこの曲を聴いてとても興奮しました!まさにHARDCORE!!!pt4も怪しくて好きです。てか、これ聴いてアガらない人いるのですか?

9. Russ Millions - "Plugged In W/Fumez The Engineer"

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UKも!90sのダンスホールみたいなシンプルで無骨なビートの上で淡々とアプローチするスタイルが好きなら間違いなくハマるアーティストだと思います。一般的なUK独特のラップのアプローチとは違い、普段USのラップを聴いている人もすんなり耳に入ってくるわかりやすさがあると思います。gotchaのbeatのノリも最高です!shottaaaa!!!

10. Headie One x LUCIANO - "Cloud"

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Headie Oneはいつも堂々としてカッコいい!更にLUCIANOのこの声質に正確無比のリズム、何度も聴いてしまう…今っぽいUKドリルビートもとても聴きやすくアガります!!!MVと配信の構成が違うのも面白いです。

Mr.PUG

プロフィール

MONJU / DOGEAR RECORDS No.3。出身は” FAR EAST TOKYO” 江戸川区西葛西。団地育ちの理数系。とらえるレンジは広いが狙いはピンポイント。そのクールな印象の裏には大きなパッションを持っている。容易に捉えることの出来ないキャラクターがスピットするラップはPUREで独特の美しさを持っており、彼の近くの人はMr.PUGのラップをエモーショナルだと時に言う。自身の理論に基づき作られるそのHIP HOPは今日も時を刻んでいる。

さらに広がるドリルの世界

1. 22Gz - "Suburban"

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まだブルックリンドリルと名がつく前に、初めて紹介されていたのを見たのはViceのこの記事。まだシグネチャーのベースサウンドは登場していませんが、ドリルがまとう不穏な空気感は伝わってきて、なんだこれはと感じた記憶があります。すでにロンドンのAXL Beatsがプロデュースで貢献しているというのも面白い。

2. 2Rare & PGS - "SRI LANKA"

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Lil Durkをフィーチャーした"Qpid"もスマッシュヒットしているフィリーのラッパー2Rareによる大ネタ使いのキャッチーすぎる1曲。浮遊感のあるメロディックなラップも心地よい1曲。

3. AJ Tracey - "Seoul"

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ジャージードリルの軽やかさをキープしつつも、AJ Traceyらしく洗練させたキラーチューン。

4. Bandmanrill - "I Am Newark"

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ニュージャージー出身のBandmanRillは、ジャージーサイドの旗手。熱量と勢いで乗り切るラップが最高です。MVにたくさん人が映っている感じもバッチリ。

5. Ice Spice - "Munch"

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今年のバイラルヒットとなっている22歳のNYの新鋭Ice Spiceによる1曲。ビートに対してオンでもなく不思議なテンションのフロウが癖になる。

6. IShowSpeed - "Shake"

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YouTuber、TikTokerとして高い人気を誇るIShowSpeed。そのファニーなキャラクターも生かした楽曲もリリースしており、中でも"Shake"は様々なバージョンが作られるほどの大ヒットチューンとなった。

7. K$upreme - "mike jones"

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元々はLil Yachty等とともにSoundCloudシーンから登場したK$upremeによるドリルチューン。クラウディーな雰囲気が独特の味わい。

8. Lil Bibby - "You Ain't Gang" 

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ドリルの原型を生んだシカゴといえばChief KeefやLil Durkなどが思い浮かぶが、サウンドをアップデートさせたのはG HerboやLil Bibby。Lil Bibbyが裏方(故JUICE WRLDのマネージャーなど)に転身しなければ、今どんなラッパーになっていただろうか。この声は唯一無二。

9. SOS B4L - "Beeper"

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年末恒例のNozのベストラップリストで知った1曲。この曲をきっかけにジャージードリルというのがあるのを知ったはず。ドスの効いたラップに対してキャッチーなビートのバランス感が新鮮でした。

10. ゆるふわギャング - "E-CAN-Z"

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国内からも良質なドリルチューンは数多く生まれていますが、個人的にインパクトがあったのはゆるふわギャングのジャージーなこの曲。ラップ、トラックともに熱量最高です。

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