Seiho Interviewed by okadada | 『着いたけど、どこいる?』

近年はおでん屋「そのとうり」、和菓子屋「かんたんなゆめ」のプロデュースなど、音楽だけでなく活動の幅を広げているSeihoが3年ぶりの単独公演を5/14(土)に渋谷 Spotify O-EASTで開催する。

場所非公開で開催された2019年の『靉靆』をはじめコンセプチュアルなパフォーマンスを行なってきたSeiho。今回も『着いたけど、どこいる?』という意味深なタイトルがつけられている。このタイトルが意味するものとはなんだろうか、またSeihoに起こった心境の変化について、『着いたけど、どこいる?』にもpharakamiとのユニットTerror Fingersとしても出演するDJのokadadaが話を訊く。

取材 : okadada

撮影 : 岩澤高雄

構成 : 和田哲郎

取材協力 : 高根大樹

Seiho - 岡田さんが色々聞いてくれるんですか?

okadada - そのために呼ばれてるんやから。

Seiho - 包み隠さずなんでも聞いてください

okadada - どっから聞くんかなこれ。まず、なんでこのタイミングだったの?

Seiho - 『靉靆』が2019年の3月だったかな。1年後に東京オリンピックやから、MIKIKOさんもRhizomatiksもオリンピックに関わってるから。そのタイミングぐらいしか多分このメンバーで集まれへんってなって、やっちゃおうって。場所非公開で。またオリンピックが終わったらやろうと思ってたんだけど、海外でできるようにコンテナに載せられるセットとかも考えてたんだけど、それがコロナになってオリンピックも延期になるし、それどころじゃないってなった。

okadada - それで今このタイミングでまたワンマンっていうのは?

Seiho - かっこよく言えばいっぱいあるけど、かっこよくないパターンで言うと、O-EASTにLEDのスクリーンができたから、やらないかってダイキさんに誘われて。

ダイキ - 元々はSeihoくん含めた3マンで全員オーディオビジュアルセットをやる企画を考えていて。でもそれが何回かスケジュールが飛んだり、LED設置のスケジュールも遅れたりして。ただSeihoくんとは何かやりたいねって言ってたから、ワンマンはどうでしょうって形になった。

Seiho - かっこよく言ったら、コロナになる前の2018年くらいから自分の中で作りたいものと、パフォーマンスでやることの乖離がすごかったんですよ。

okadada - 乖離ってどういう乖離?

Seiho - 作りたいものは、よりシリアスになっていって、やってることは、より結合していくような音楽になってる。

okadada - その結合は何と何の?

Seiho - 場所と人、自分とお客さんが結合していくようなもの。

okadada - どっちかってコミュニケーションぽいものってことね

Seiho - シリアスなものは、その逆で断絶したり、孤立していくものがすごい作りたいのに、でも何かパーティに行くと、なんかこう、より結合させていかなきゃいけないって思う時期だった。これが分かれていったんですよ。『靉靆』は究極的に断絶の話。あれでやりたかったことっていうのは、場所も内容も非公開だし、最初の段階では日時まで非公開でチケット売ってたから。内容も見た人しかわかんないすけど、結局どの位置で見るかによって、体験する内容ってだいぶ変わっちゃう。でも、その体験が変わるってことが明確になるセットの構成なんですよ。だからもうその場所にいる時点で、物語の10分の1ぐらいしか認知できないんやっていうことを掲示したかった。でもどの場所にいてもそうで、みんな10分の1しかわからない。僕らは全体を把握したいっていう気持ちと、今自分はここにいるってことを、どうやって1個の音楽で成立させられるかっていうのをすごいやりたくて。参照したのは口ロロさんがやってたライブで、Avec Avecがそのライブの話をよくしてて。携帯とかカメラをお客さんが持たされてるんですよ。その映像がVJでお客さんの目線として投影される。企画自体は、みんなでテックを使って一つになろうっていう。それが映像配信もされていて、みんなが見てる映像がいっぱい流れていって、みんなが一つになってるなっていう演出なんけど。見てるこっちからしたら、逆にバラバラになってるというのが面白くて。みんなが一つになれてないってことがあらわになっている。

okadada - 『ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国』で、同じ感覚を覚えた。人によってこんな違うんやってのがおもろいなって。

Seiho - 1つになろうとしてバラバラだってことだけが分かる感じ。2018~2019年ごろにライブをやっているときに、なんでこんなにみんな一体感が好きなんだろって思って。

okadada - それは人の欲望やから仕方ないやろ。

Seiho - 自分が今観ている景色は自分しか認識できてないし、感動もできてないっていうことも錯覚やし、一体感も錯覚なんだけど、じゃあどうすれば振り切るかみたいなことを考えてた。

okadada - もっと別の、アッと思わせるような、一体感を超えるような体験ってこと?

Seiho - そう。男子トイレと女子トイレでメッセージが違ったりとか、パッと置かれてるゴミが実はメッセージだったりとか。それを見つける人もいたり、お客さんの中でMob的に解説をしてる人もいるけど、その解説を聞けるのは一部の人だったりして、みんなが断片的に自分しか気づいてないと思わせられるライブだった。

okadada - めっちゃナラティブな内容やね。それで今回は?

Seiho - 『靉靆』もだけど、2015年のアルバム『Collapse』は、2020年に人と人が出逢えなくなる世界をどう想像するかというコンセプトだった。そしたらマジで2020年にそういう世界がきちゃった。帯にも「2020年 誰もいない花鳥風月への予行演習」って書いてて、めっちゃコロナの予行演習みたいなことを俺はやりたかったんだって思って。それがあって、でも実際人と本当に会わへんかったら、俺が思ってた世界より、全然違う、めっちゃディストピアなんやなって。より一体感を求める世界だったなって。

okadada - それはショックやったん?

Seiho - いや、まあこんなもんかって感じ。コミュニケーションを取らない喜びとか断絶する喜び、あとは選民意識的なものを考えてたけど、実際にそういう状況になったら、めっちゃハートフルやなって思った。ふふふふ。というかみんなより人の目を気にするようになるんやなって。だから自分のやりたいことを積極的に発言したりすると、すごい異常な扱いをされるというか、こういうことなんやって思った。それでもう一回考えを改めないとなってなった。それが2021年くらい。

okadada - それが反映されてるってこと?

Seiho - 今回は未来に向けてというよりこのコロナの期間を総括したいって感じ。だから俺は2020年からのことをここで終わらせたい。終わらせるっていうか、一回記録しておくみたいな。だから日記とかがテーマになってたんだけど、日記とか記録が前に出過ぎると過去に固執するイメージになるけど、そうじゃなくて僕たちが、目的地に向かって歩いてるということを記録したい感じ。これまでの道のりが重要なんじゃなくて、目的地まできたよっていうのが重要。タイトルにも関わってるところだけど。それをライブでやりたい。

okadada - なるほど。具体的にはどうやってやるん?

Seiho - 知らん。

一同 - ははははは(笑)

okadada - 理念は分かったよ。でもどうやってやるんやってことやん。

Seiho - 昔はナラティブなものだったり、ハイブロウなものが多かったけど、今回は身体性みたいなところかな。この2年間それについて考えてることが多くて。目鼻口とか体のインプットのセンサーが気持ちいい状態ってあるじゃないですか。そういう状態とあとずっと僕がテーマにしている「自由とは何か」みたいなところで、自由であるためにはルールが必要で、ルールを反復している中でも自由を感じる瞬間があって。なんで反復が大事かというと、反復してると反復してることを忘れられる。そこでランダムな要素が入ってくるときに、その反復を半分は意識して、半分は意識してないときに、僕の中で全部のセンサーが敏感になって動いてる感覚になる。

okadada - 簡単に言うと運転してるときに考え事しやすいみたいな事や。適度に打ち込む作業はあるけど集中しすぎてないくらいが一番考え事に集中できるっていう。

Seiho - そうそう。波を見ている時とかに、脳のセンサーとかがそれをどう処理しようかってめっちゃがんばるから、すごい気持ちいい。完全に規則的なものだとそれは感じられなくて、不規則なものでもなくて、ある程度の規則性があるランダムなものをライブでやろうって。

okadada - 4つ打ちをやろうとも言ってたよな。

Seiho - 4つ打ちにどうしないかって問題もある。

okadada - 4つ打ちは反復で身体性を出すの簡単やもんな。

Seiho - やっぱ4つ打ち横丁で酔いどれない。

okadada - なんなんその言い方(笑)

Seiho - 師匠の阿木譲が4つ打ちやってると、「4つ打ち横丁で飲んでる場合ちゃうぞ」って言ってて。

okadada - いやー耳が痛い。俺は横丁で酔いどれがちやから。でもそれが何かを生みつつも、そこに安住しきってしまうと良くないっていうその危険性も分かるよ。

Seiho - 4つ打ちにしちゃえばたくさんの人を酔わせることはできるけど。

okadada - まあ4つ打ちも入りは簡単やけど、上にいくにはさらにあるけどな。

Seiho - ポリリズム的なものとかキックが4つ入ってないのにグルーヴを感じられる時とか、BPM160なのに3連符で4つ打ちに聞こえるものとか、そういうものに最近は興味があって。あとChris Daveのライブにいった時にも思ったけど、複雑なことをしてそうなんだけど実はメトロノームとはバッチリ合うようになってたり、規則性の中にあるけど自由に聴こえるものってある。矢野(顕子)さんのピアノとかも、めっちゃよれてどうなってるのあのリズム感ってなるけど、レコーディングしてトラック乗せたら、ここが三連の裏になってるとか気付けて、しっかり自分の中にメトロノームがインストールされてる感じにできてる。

okadada - それ昔Metomeのライブ見た時とかもそうで、家で聞いてたらすごい変でリズムの取りにくい曲だな、と思っててライブで見たら本人はずっとBPM180くらいの間隔で体を動かしながらライブやってて、本来そこにあるはずの音を本人の感覚で消してるから他人から聞いたらリズムが取れないって思われてるっていう。

Seiho - そういう感覚をみんなにもインストールしてもらうために一回、4つ打ち横丁に寄ってもらうのは大事。

okadada - それは一見したら一体感に向かってるってこと?

Seiho - 今回はそういう風に見せたい。

okadada - あんまわからんな。

Seiho - 今日で2週間前で意味わからんすけど、何も曲ができてない(笑)

okadada - すごいな。

Seiho - ライブ用に20曲くらいバーっと作ってるけど、バラバラすぎてどうまとめようかなって感じ。あとこの2年くらいDJセットを色々やって、DJの人たちがこういうことを考えてたのかっていうのが分かって。

okadada - 例えば?

Seiho - 空気を変えないってこと。グルーヴをキープっていうニュアンスなんですけど、

話が展開すればするほど、長く感じるみたいな感じ。退屈なんだけど、何かを期待させるような時間を続けるのがめっちゃ大事なんだなって。

okadada - それは俺のテーマですね。時間の圧縮と拡張。マジでそれしかないかなとすら思うときある。

Seiho - そういうのを考えてて、ライブでもいきなりピークに来ても勢いで走り切ってたんだけど、違うなって。まずはテンションになれさせた方が、もう一段階ギアを入れられるなって結構考えるようになった。

okadada -年取ったってこともある?

Seiho - それもあるね。

okadada 俺も、30超えてから意識的にそれをやるようになった。その前は俺も勢いでやってた。もうちょっと、キープすることをやらないと、やってることが面白く無くなってしまうとはそれくらいの時に思ったね。ライブでそれをやるのは難しいと思うけどな。

Seiho - そうなんよ。もう1回改めて電子音楽家のライブって何って、めっちゃ考えた。ゲストを入れるのはちゃうし、楽器やるのも違うし、そういうことじゃなく、電子音楽家として1人でどうやったら作れるかを真面目に考えた。

okadada -志高いですね。普通シンガー入れるとかになると思うんだけど。ビジュアルの相談とかしてないの?

Seiho - リキッドのカウントダウンとかもやってくれたCekaiの安田さんに相談してて、身体と反復がテーマというのでアイディア出ししてる。

okadada - ライブの時間は?

Seiho - 90分で考えてる。

okadada - 変わりそうなの?

Seiho - わかんないです。

okadada - はははは。開催の2週間前とは思われへん。『着いたけど、どこいる?』ってタイトルは何?

Seiho - めっちゃ良いタイトル。タイトル史上一番。

okadada - そうかなあ。

Seiho - タイトルの話をすると、『靉靆』とかを考えてくれてる高校の同級生がいて、ずっとLINEしてて、大量にタイトル案があったんですよ。200個くらい。『帰路』とか、無意識のうちにやってるルーティンとかがテーマになってて。

okadada -それって「癖」っていう言い方とかじゃないの。

Seiho - 習慣とか、まあ癖にも近いかな。無意識にやってるからこそ、ズレた時にめちゃくちゃ意識してしまうこと。

okadada - 昔のSeihoなら癖なのかなって思った。生理的なものに興味があるイメージだったから。

Seiho - 今はそっちより意識的なものだったり、どこかのタイミングで自らインストールしていることにフォーカスしてる。

okadada - 常識ってこと?

Seiho - そう、常識に近い。癖はナチュラルにできてるじゃないですか。でも今回は自由になるために意識的にインストールしたもの。例えば自転車に乗ることとか。自転車に乗るためには練習が必要だけど、乗れた瞬間にはもう自転車に乗るっていう感覚も無く乗ってるじゃないですか。練習とか訓練を反復するから自由になれるもの、そっちに近いかな。そういうライブなんだけど、それをお客さんを巻き込んでやるんだけど、クリエイターとしてそれでどうなんとも思うんですけど、僕が考えたいからやるだけなんですよね。岡田さんと喋ってるのも気持ちを伝えたいためということではなくて、僕が考えるために喋ってるだけで。僕が僕のことを理解するためにライブもDJもやってる感じ。

okadada - 他人というのも自己像の中で完結しちゃってるって話。

Seiho - 昔やったら鏡的なものでナルシティズム的に考えてたんですけど、明らかに対象があって、その対象に向けて行動することがナルティシズムに繋がってるってことが30代になって分かった。これは恋愛して子供ができたりすることで経験することなんだろうけど、それが音楽でようやく分かってきた。

一同 - ははははは(笑)

Seiho - 対象を愛でることがナルティシズムにつながることがやっと分かった。鏡でもないし日記でもないことに気づけたのが僕にとっては大きかった。昔だったらそのまま表現してた。日記も鏡も明らかに自分を映し出してるけど、そうじゃなくて対話が日記と同じことになってきてる。人に誕生日のプレゼント買うことも、ナルティシズムの中にある感じ。これは変わったなって思う。

okadada - どっちかっていうと俺の感覚に近いかも。DJの人は他人といることを前提にしないといけない部分はあるしね。

Seiho - 阿木さんの4つ打ち横丁の話もナルティシズムの話と繋がっていくものだしね。

okadada - そういう意識があるんや。

Seiho - 意識というか、遺伝子も前の遺伝子を継承してるじゃないですか。僕らはだから前のものから逃げれないベースがある。でも、そこから次に受け渡すときは改良して渡すことができる。改悪になることもあるけど、何かを変えられるのが自分の可能性もある。反復もそうだけど、繰り返すことはできるけど、でも昨日より良い反復をしようって思うのが大事で。そしたらいつの間にかそれすら意識しない自由な身になってるなと。自分の場合は阿木さんの話とかがインストールされちゃってるなって気づいて、じゃあ自分はどこを直そうってめっちゃ考えてる。

okadada - それはめっちゃ年取ったな。上の先輩や先祖からとにかく学ぶ段階から、先輩これ違くないですかっていうのが言えるようになってきてるっていう。それは、そもそも一回知識なり技術なり歴史なりを継承、インストールしないとそもそも変化は起こせないっていうことで、ある程度インストールできたかなって実感があるから「直そう」言えるようになったのかも。

Seiho - 小学校のある時まで可愛く育てられたんで、自分を特別な人間だと思ってたんですよね。すごいセンスがあって、神童って自覚もあったんですよ。でも小学校でちょっとしたら同じような奴らめっちゃおるやんって気づいて。俺より賢い子も全然おるし、特別じゃないんだって自覚して。でも中学くらいで、あれこの部分に関しては特別だなって気づいて、高校生はそれを伸ばそうとして。でも大人になったら自分が嫌に思ってたコンプレックスだったりが、本当に自分にとって特別なことだったと気づいて。だからそれをどう愛するかってことになっていって。でもそれが30代になると他者にそれが現れてくる。20代くらいまでは自分の中の記憶が全部自分のものやったんすよ。けど30代になると、自分だけじゃなくて個別の関係自体が思い出になってるんやって気づいて。その関係性の中で相手に対してどう思ったとか、相手から影響を受けたことをどう自分が愛でれるかってことになった。

okadada - で、それが『着いたけど、どこいる?』になったんや。

Seiho - はははは。そうなりましたね。

okadada - もっかい聞くけど、なんでこのタイトルなん?

一同 - ははははは(笑)

Seiho - 一番ピンときたんですよね。ここ半年くらい編み物にハマってて。でも編み物はしたことがないんだけど、編み物自体にハマってる。編み物って瞑想とかスピリチュアルが好きな人も好きみたいで、さっき言ったみたいに作業してるからこそ集中できるみたいな環境になる。

okadada - さっきの車の話と一緒だ。無心になれる。

Seiho - 無心になれるけど、めっちゃ頭は使うんですよね。段数があって、マス目で把握して編み方を変えなきゃいけないから、規則性はありつつも覚えることがめちゃ多い。

okadada - ドット絵とかピクロスみたいな感じやね。

Seiho - 慣れてきたら無心でできるんやけど、体に入れるのも大変だし、頭も使う。しかも集中しすぎると編み方がキツくなるから、適度に抜かなきゃいけない。だからぼーっとしながら意識するのが編み物の面白さ。それが面白いと思って、歴史とかを調べてて井戸端会議の時に編み物があったら面と向かって話せないことも話せるみたいな。それはなんとなく分かるなって思ったり。クラブで音楽流れてるから喋れたり、端っこに1人でボーッと立ってるのとも近い。そういうの含めて良いなと思って。で、その話とさっきの意識する、意識しないみたいなことと、目的地が目的じゃなくて、目的地に行くことが目的であることとかを合わせて、『着いたけど、どこいる?』。

okadada - 今回のライブを着いた場所にしたいんや。

Seiho - そう。プラスギャルSeiho的に言うと、女子高生だった時の僕がいるんですけど、その意見によれば「着いたけど、どこいる?」ってLINEが一番爆上がりする。会えてないけど、もういることに上がるみたいな。

okadada - 期待感が持てる良いワードなんやな。

Seiho - 明日会えるはまだ遠いし、実際会ったらそれはもう違う。「着いたけど、どこいる?」はめっちゃソワソワする状態。

okadada - 『靉靆』はめっちゃ作り込んだ感じで、作品然としてるのに対して、今回はもう少し身近なものに寄ってるのが今のSeihoのモードってこと。

Seiho - 対話ですね。それについてめっちゃ考えてました。

okadada - なんとなく把握できたな。あとワンマンと言いつつ、俺もPharakamiとのTerror Fingersで出るし、Otagiriさんも出るやん。この人選になったのはなんでなんすか?

Seiho - Otagiriさんを思いついた時の俺とダイキさんのテンションの上がり方はすごかった。言われてすぐピンときた。でも僕がどこにも属してないから、2人の組み合わせになった途端にイメージが固定されちゃう。

okadada -  Seiho & Otagiri だけならシリアスな感じになるよな。

Seiho - そう。だからクソ馬鹿な感じを入れたくてTerror Fingers。

一同 - ははははは(笑)

okadada - それで白羽の矢が立ったんや。

Seiho - そのタイミングでPharakamiから岡田さんと曲を作っている風景の謎の動画も送られてきたし。

okadada - 俺んち来て遊びでめっちゃバカみたいなやつを1日で3曲作った。

Seiho - バカおったなと思って入れてもらった。イメージを散らしたいのと、ライブ自体を尻上がりになっていく感じで考えてなくて、デイのイベントだけど頭からパーティーっぽいニュアンスでやりたかった。

okadada - さっきDJから学んだと言いつつ、クラブっぽいじわじわ上がってく感じにはせえへんのや。それはパフォーマンスやから?

Seiho - そういう上がり方になるのは時間と酒が必要。それよりはいきなり異質な空気にする方がイメージに近かった。ディズニーランドに行ったときに、ゆっくりしちゃうというよりも、いきなりあの世界に入り込むからスイッチが切り替わる感じ。

okadada - 俺も話聞いてて遊園地みたいなんを想像してた。そうするしかないもんな。

Seiho - 深夜まで長尺であってお酒を飲みながらコミュニケーションを取れたら違うんだけど、ショーとして考えたらある程度最初のリアリティラインをガーッと下げてスタートしないと走りづらいなって思った。

okadada - 映像もそういう感じで考えてるの?

Seiho - 結構そういう感じで考えてる。でもO-EASTで他のライブも観たんだけど、LEDビジョンの力がめっちゃ強いんですよ。だから、どこまで出さないか、レーザーだけでみせるところとかをどうするか考えている。ビジョンの全力を出した瞬間に全員の足が止まってしまうと思う。その使い方は色々考えてますね。でも全面に配置されてるから自由はあって、小さくも出せるし、照明的にも使えるから、そこはやりようかな。

okadada - 概ね聞くことは聞けたかな。

Seiho - なんか他に話したいことあるかな。今、何するかわからん感じだと思うんですよ。『靉靆』とかでもそういうイメージあるだろうけど、今回はよりパーティーっぽい感じになると思う。それこそ『Abstrakt Sex』のリリパとかを思い返していた。

okadada - その感じをライブでやるんやな。

Seiho - みんなで集まってパーティーを作る感じを、1人でやれるようになるみたいなことの訓練なんかな。

okadada - ショーとして完成させるみたいなものでもないんや。

Seiho - そう。これを一回やっちゃえば、もっとショーとか映画っぽいこともできるなって。Otagiriさん入れたのもそういう要素かな。演劇的な要素をかますことで、対話できるってことあるじゃないですか。直接的なパフォーマンスだとお客さんも恥ずかしがっちゃうけど、一個フィクション要素があることで素直に観れる。だから、ここでやることで、次にもっとシリアスな方向に入っていけるかなと思ってる。終わりの始まり。

okadada - Seihoはそれを作品でやってきてたから、これをライブでやるんやとは繰り返しだけど思うな。こういう時にこそ作品を作るタイプやったやん。

Seiho - ワンマン前にEP出そうと思ってて、20曲くらいはあるんですけど、まじでまとまりがない。作品で出すと誰もわからないものになっちゃう。僕の思い出でしかなくて。それを丁寧に説明するにはもうライブしか無理で。対話という形式を取るしか説明できなくなっちゃった。

okadada - それは結構すごい話やな。

Seiho - しっかり受け取ってもらうには個別に説明していくしかないから。

okadada - 色々大きく変化を感じる話ですね。自分はずっとDJでできる事みたいなのを考えるのが性格にある程度合ってて、だから楽曲のまとまりみたいなのはなくて極端に趣味みたいになってしまうけど。DJは作品とかでモノとして堆積はせえへんけど、対話を通じて誰かの記憶にはなっているかなと思って。tofuとかSeihoは作品としてちゃんと作って語るタイプだと思ってた。だからSeihoが今そのニュアンスを表現するのに作品じゃ無理って言ってるのは..

Seiho - でもこれは録音芸術的なものの価値と復元できるライブが同じになってきてるってこと。体験として復元できるなら、それは同じなんじゃないかって。対話なんだけど、誰と話しても同じ話になるんですよ。ライブも同じで体験型の作品になってるだけ。だからDJしてる時の感覚とは大きく違うかな。だから電子音楽家としてライブをどうするかみたいなところを含めて、真面目に考えなきゃいけない。家で1人で曲を作ってる時に小箱で鳴らした時の良さのイメージでしか曲を作れなくなっちゃうんですよ。やっぱりフェスに出たりすると、大規模をどう踊らせるかみたいなところがあるじゃないですか。ミュージシャンとしては小さいところでやるのも大きいところでやるのも大事なんですよ。どっちが良いってわけじゃないんだけど、作品の幅がだいぶ変わってくる。だから1年に1回はこういう規模で1人でやりたい。ある程度のタイミングで結合して解散させるのが大事で、この期間だけは集まろう、それで1軒家を建てる。でもそれが続くと搾取も存在するし、明らかに不利な奴が生まれてしまうから、目的を達成した瞬間に解散するのがいい。結合と解散の流れを意識してやるようになっていったかな。昔はもっと1人で走ることが大事だった。

okadada - Seihoはずっとそれを言ってるよな。

Seiho - 走るイメージなんですよね。活動を辞めた人たちが自分と一緒にやったことをずっと自慢できるように走ってる感じ。日和る時もあるじゃないですか。でも辞めた人たちが嫌な気持ちするだろうなってこととかは断る感じ。

okadada - やっぱりtofuと似たこと言うね。俺はどうみても走ってはいないから。

Seiho - 走ってるけど自走してるイメージはなくなったかな。自走してる車と相乗りする車に分かれてる感じ。渋谷まで自走してそこからはチャリに乗り換えるとか。

okadada - その都度その都度やり方を変わっても良いと思えるようになったってことね。

Seiho - ステークホルダーをどう持つか観たいな話でもあるし。協力関係を結んだらここまでは一緒に走れるけど、それを続けるのが目的になると搾取が発生しちゃうから、ここまで一緒にやるって決める。

okadada - 俺らは明確な組織を持たずにきたから、こうなったんかな。集まったその都度解散を繰り返したいよな。偶発的な集団が一番いいと思ってるところあるかも。そういう意味でクラブのパーティーとかは全部一回性の集団ですからね。

Seiho - でも難しいのはそうなるとアノニマスじゃんっていう。特殊能力を持った人たちの集まりがサッと集まるみたいなのが良いんですよね。

okadada - マルチネはそれが心地よかったかな。tomadに集合をかけられたら集まる感じで別に明確なチームじゃなかったし。なんか言い忘れたことある?

Seiho - マジで来て欲しい。

okadada - どうする誰も来なかったら。客15人。

Seiho - めっちゃ面白い。

okadada - 一生の思い出になるな。

Info

Seiho 単独公演
「着いたけど、どこいる?」
powered by Spotify O-EAST

2022.0.5.14(土) at Spotify O-EAST

OPEN  : 18:00
START : 19:00
CHARGE : ADV : 4,000YEN(+1D) / DOOR 4,500YEN(+1D)

LIVE:
Seiho

Opening LIVE:
Otagiri w/ DJ MAYAKU 

Opening DJ:
Terror Fingers (okadada & Pharakami Sanders) 

VJ:
Takahiro Yasuda / CEKAI 

【チケット発売中!】
4/16(土)10:00 - 5/13(金)23:59
URL:https://w.pia.jp/t/seiho-t/ 

Seiho 2022 単独公演
着いたけど、どこいる?
AFTER PARTY

5.14 Sat at 東間屋

Door 21:00
Music Charge 1,500yen / 1drink

Spotify O-EASTで開催される、
Seiho 単独公演 「着いたけど、どこいる?」の
チケット半券をご持参された方は¥1,000にてご入場いただけます。

Admission is ¥1,000 for those with a ticket stub from Seiho's solo show at Spotify O-EAST.

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