【インタビュー】Gokou Kuyt 『U DESERVE IT!』|変化を曲にして、心の余裕を広げていきたい

外への広がりも感じさせるメロディックなフロウと、自身の生活をテーマにした距離感の近いリリックが10~20代を中心に支持を集めるラッパーのGokou Kuyt。榛葉大介がデザイン、鈴木旬がイラストを手がけたキャッチーなジャケットが目を引く9月にリリースしたEP『U DESERVE IT!』は、SoundCloudなどのいわゆるネットのシーンから登場してきた彼の、これまでのキャリアを振り返りつつも、前に進むという決意が歌われた作品だと感じられた。

ではGokou Kuytはどのようにしてラップに出会い、2010年代後半のSoundCloudのシーンから注目を集めるようになっていたのだろうか。これまでの彼のキャリアを振り返りつつも、今、Gokou Kuytが何を考えているのかを聞くロングインタビューを行った。

取材・構成 : 和田哲郎

撮影 : 笹木晃

- コロナの期間中は中々動きづらい状況だったと思いますが、制作のモチベーションはいかがでしたか?

Gokou Kuyt - 一時期めちゃくちゃ下がってましたね。2020年の1月にLIQUIDROOMで開催された『TOKIO SHAMAN』でライブと制作に対してのモチベーションが上がったんですけど、コロナ禍になってライブも人数や歓声の制限などもかかってしまったじゃないですか。それまでに自分が培ってきたライブの盛り上げ方とかがすごい無駄になったって思っちゃって、どうやったらいいんだろうって悩んでしまって、ライブもだし、曲を作る時もライブで盛り上げたいとかライブでやりたいからという気持ちがあったりするから、曲の制作意欲もなくなってしまいましたね。でもやることもないから、機材はイジってる状態。でもその時はネガティブな気持ちが曲に出ちゃってた部分もありますね。

- 『TOKIO SHAMAN』でモチベーションが上がったのはなんでだったんですか?

Gokou Kuyt - 普段自分の曲を誰が聴いてくれてるかわからないし、実感がなかったんですけど、『TOKIO SHAMAN』で実感できたんですよね。ちゃんと求めてくれる人がいるのもわかったし、それで頑張ろうと思えたんです。以前もそういう感情を体験したことはあったんですけど、あの日はそれが爆発してた。あとしっかりその気持ちにライブで応えられた気がしたから、100%満足できて嬉しかった。

"Cindrella"がSNSで流行って再生回数が伸びても実感もなかったし、自分の中でどの曲がヒットするか想像がつかなくなったんですよね。"Cindrella"はEPの中で一番聴かれる曲じゃないと思ってた。

- 他のラッパーさんからもTikTokで流行るのは実感が湧きづらいというのは聞いたことがありますね。

Gokou Kuyt - TikTokに触れてなさすぎて、何が起こってるの?って感じなんですよね。急にストリーミングの再生回数が伸びて、どういうこと?と思ってたら、友達がTikTokでフォロワーの多いインフルエンサーに使われてるのを見つけてくれたんですけど、使ってくれている人のことも知らないし、正直わからない。

- そういった数字上でしかわからないことよりもKuytさんにとっては、実際の自分たちの現場である『TOKIO SHAMAN』で感じる熱量の方が大きかったんですね。

Gokou Kuyt - そちらの方が大きいと言えば大きかったですね。

- なるほど、今日はこれまであまり触れられてこなかった過去についても喋ってもらえたらと思っているのですが、今作がGokou Kuytというアーティストのキャラクターを紹介しているものになってるとも言えますよね。Kuytさんって自分のキャラクター性みたいなものを客観的に把握してると思ったんですよね。例えば"Type Beat & SoundCloud"とかも他のアーティストではこういったテーマは出てきづらいのかなと思いました。

Gokou Kuyt - ありがとうございます。

- タイプビートとSoundCloudはそれこそ活動を開始するきっかけになったものだと思いますが、そもそもラップに出会ったきっかけはG-DRAGONだったんですよね。それはいつ頃だったんですか?

Gokou Kuyt - 中1~中2くらいでK-POPにハマって、ラップとして聴くというよりはK-POPのラップ担当としてG-DRAGONを聴いたのが一番最初ですね。当時家でスカパーに入ってて、スペシャとか音楽チャンネルを観ていたらK-POPのライブとかをめっちゃ放送しててBIGBANGのライブを見て、かっこいいなぐらいにしか思ってなかったんですけど、TVとかでもBIGBANGを観るようになって段々好きになって、気づいたらめっちゃ好きになってた。時代的に流行ってたのもあるから、それをただ好きになっただけだと思うんですけど。小学校の時は流行ってる音楽が良いみたいな感覚で、特定のジャンル音楽やアーティストが好きという感覚はなかったので、本当にアーティストを好きだなと思ったのはそれが初めてでした。

- なんでBIGBANGにハマったんですかね?

Gokou Kuyt - ビジュアルはまだ洗練される前だったんですけど、本当に曲がいいなと思ったんですよね。それで好きになって調べてたら、G-DRAGONが曲作りをしている風景とかをドキュメンタリーとかで観て、めっちゃかっこいいなと。メンバーのディレクションもしていて、フロントマンでもあるしプロデューサーという面もあるのがすごいと思ったんですよね。それまではアイドルは大人がプロデュースして、それをパフォーマンスする人って感じで思ってたんですけど、自分たちでやりたいことをやって売れてるのすごいなって。

- そこから自分でやってみようとなるまではどういう過程があったんですか?

Gokou Kuyt - G-DRAGONがラップ担当だったから、ラップって色々あるんだなというのは知ってたんですけど、ヒップホップは聴いたことなくて。でもアイドルのラップ担当ですらめちゃかっこいいんだから、それ専門でやってる人はめっちゃかっこいいはずだと思って、またスカパーでKendrick LamarとかA$AP Rockyとかを観て、こういうのがアメリカのトップの人たちなんだとわかって、日本人はどんな感じなんだろと思って、スペシャでSALUの"THE GIRL ON A BOARD"を観てめっちゃハマったんですよね。その前にもYouTubeで日本語ラップって検索して出てきたANARCHYとかもかっこいいなとは思ったんですけど、リアルさが、自分にとっては遠いものだったから共感はできなかった。でもSALUとかの音楽は入り込めたし、普通に共感もできたんです。SALUの曲は当時10代の自分が抱くような若い奴のちょっとした悩みを、ちゃんと歌ってたんです。"In My Life"も将来のことを歌ってたりしたし。

- 当時学生のKuytさんはどんな感じだったんですか?

Gokou Kuyt - 小中の時はサッカーもしてたので、明るい方だったと思うんですけど、高校でスクールカーストで言うと3軍くらいになったんですよね。今思えば本当に良くないですけど、高校くらいで一軍がダサいなって感じに一歩引いて振る舞ってた。多分前に出るのができなかったから、そう言うことによって自分を保ってただけなんですけど、あんまり明るい感じではなかったです。

- でもそれくらいの時期に自分で音楽してみたいとは思ってたんですか?

Gokou Kuyt - 高1くらいの時にサイファーは行き始めてました。地元は千葉の野田なんですけど、隣の柏市で柏サイファーっていうのがあって、それにちょうど行き始めててラップには触れてたんです。でもサイファー行ってもフリースタイルはあんま楽しくないなと思って、どうやって曲を制作できるんだろうって思ってて。それで初めて自分でレコーディングをしたのも高2の時でしたね。サイファーはTwitterでサイファーbotっていうアカウントが色々な場所のサイファーの情報を発信してたんですよね。そこに柏サイファーの情報もあって、俺が行き始めたのはちょうど柏サイファーも出来立てで、初心者の人も多くて入り込めやすかったんですよね。ラップの始め方がわからないから行ったから、サイファーには馴染めなかったんですけど、初心者も多かったし制作方法とかを話したりするのは楽しかったですね。柏にWhite Woodっていう千葉だとフッドスターみたいなヒップホップのクルーがあって、そのリーダーのMr.Smileって人がサイファーに来て、制作方法をめっちゃ聞いて、機材をバイトして買ってやったのが一番最初のレコーディングでした。

- 実際自分で始めてどうだったんですか?

Gokou Kuyt - でも最初は曲を作っても何をすればいいんだろうという感じだったんですよね。その時までにヒップホップは色々聴いて始めたんです。自分で制作をスタートする頃にはネットラップにもハマってて、いわゆるニコラップなんですけど。自分がやってた2014年くらいはまだギリギリ盛り上がってる時で、今のタイプビートみたいにニコニコ動画で使用可能なビートをアップしている人がいて、いい感じのビートを探してラップ乗せてニコニコ動画にアップするって感じで始めて。あとはニコニコってマイクリレーって文化が強くて、1曲20人とかでマイクリレーをするんですよ。Twitterで繋がった人たちとかからアカペラを募って、主みたいな人がミックスしてアップするみたいな。その頃ちょうどSoundCloudもきていて、ニコニコじゃなくてSoundCloudにアップしようって考えてました。当時はBONESとかがSoundCloudにミックステープを大量にあげてて、かっこいいなと思ってたんです。そういうものを経て宅録に慣れていきましたね。

- ニコニコ動画でそういう文化があったのは全然知らなかったです。自分がSoundCloudに触れていた時期は2012~3年くらいとかで、そのころはあまり日本のラッパーでSoundCloudにアップしている人は多くなかったと思うんですが、KuytさんはどうやってSleet Mageさんとかと知り合ってコミュニティを形成していったんですか?

Gokou Kuyt - Sleet Mageは一番付き合いが古いアーティストで、最初のきっかけは覚えてないんです。多分2015年とかだと思うんですけど、間違いなく俺がSleet Mageの音楽を好きになってTwitterをフォローしたんだと思います。SoundCloudはリリースできるまでがめちゃくちゃ早いのが良かった。データさえあればなんでもいいわけで、あとSoundCloud経由でクラウドラップの流れがきていたから、それが単純にいけてるなって思ってたし、自分の音楽性にも合ってたんですよね。今は多くなったと思うんですけど、当時は使ってる日本のラッパーも多くなかったから人間関係を構築しやすかったんですよね。

- Sleet Mageさんに惹かれた理由は共通する部分が多かったからという感じでしょうか?

Gokou Kuyt - 共通というより自分が影響を受けた部分が大きかったですね。自分はSleet Mageをみて、クラウドラップのことを知ったし、色々な音楽を教えてもらったんです。Oliver FrancisとかDenzel Curryも教えてもらったし、D-Setoが前の名義で大量にミックステープを出していた時とか、とりあえずめちゃくちゃ早かったです。自分の土台になっているものはSleet Mageから学んだので先生って感じですね。

- 制作についてもですか?

Gokou Kuyt - かなりそうですね。ミックスやプラグインとかも当時はSkypeでめっちゃ教えてもらいましたね。Sleet Mageは北海道に住んでいたから2年間くらいは会わずにネットで話してました。アーティストとの繋がりもSleet Mageから広がった人は多いですね。

- それ以外でいうとwho28さんも印象的ですが。

Gokou Kuyt - なんだっけな、2017年くらいにNormcore Boyzが出るイベントに行ったら、アフロの奴がゆるふわギャングの"Fuckin' Car"のフロウでコカインについてずっと歌ってて、すごいふざけててイケてるなと思ってInstaをフォローしたら、もうフォローしてくれててそこから仲良くなって曲作りをするようになりましたね。

- その時はすでにライブ活動などはしていたんですか?

Gokou Kuyt - してましたね。釈迦さんの『TOKIO SHAMAN』の前身イベントでBATICAで開催された『Plastic Bob』に出てました。そのイベントは最初Nostyleで開催されてたんですけど、BATICAに移ったくらいから出始めました。Sleet Mageは釈迦さんと仲良かったんですけど、おれはずっと釈迦さんのファンで仲良くなりたいなと思ってたんです。NO STYLEのナイトイベントで釈迦さんがライブするから行きたいなと思ったんですけど、18歳だったんで「IDチェックとかありますか?」って聞いたら、「ないからおいでよ」って誘われて行って、話しかけたら自分の曲を聴いてくれてて。それは2chに曲をアップするせかちゃんくるーが、年末にラッパーとビートメイカーを募って2時間くらいのマイクリレーを作るんですよ。100人くらいのラッパーが参加しているんですけど、釈迦さんはそれを毎年チェックしていたみたいで、たまたま俺が参加した2015年のものも聴いてた。たまたま俺だけオートチューンを使ってていたから、覚えてくれてて。それでその日に仲良くなってAnatomiaとかフォレスト55とかと一緒にNostyleの裏の居酒屋に行きましたね。釈迦さんはまだ全然売れてないのに、超自信満々で「音楽で食っていきたいの?」って言われて、「食っていけたらいいけど、そんな甘くないんで就職しようかなと思ってます」って話したら、「いけるよ」って返されて。なんでこんなに自信あるんだろうと思ったんですけど、本当にいけると思ってる感じで、「本気でやりたいんだったら一緒にやろう」って言ってくれて、謎が多くて怖い人だと思ってたけど、こんな熱い人なんだと思って、その言葉を謎に信じてそこから気持ちを入れ替えてミックステープも出して、そしたら釈迦さんのイベントにも誘ってもらえるようになりましたね。

- じゃあ色々な人との出会いがあったことで、最初は趣味でやってたことから徐々に本気になっていったというか。

Gokou Kuyt - 音楽でご飯を食べれるわけがないと勝手に決めつけてましたね。それを釈迦さんとかに覆された。自分は釈迦さんの音楽が日本で一番かっこいいと思ってたから、確かにこの人が売れないのはおかしいと感じてたんですよね。だからその時売れてなくても言葉に説得力があったんです。釈迦さんは胡散臭さが一ミリもなくて、全部素直だから信じられる。あと自分では「すごい薄情者」とか言うんですけど、実は兄貴肌なんですよね。釈迦さんには「人に聴かせるならミックスはしっかりやれ」って言われて、そこからミックスについても考え方が変わりましたね。

- Kuytさんが自分で可能性に気づいたのはいつだったんでしょうか?

Gokou Kuyt - 『#teendreamtape』を出した時にMoment JoonがTwitterのDMで、「お前超やばいね」って英語でメッセージをくれて。Momentのことは超好きだったけど、Momentは自分の音楽に喰らわないだろうなって勝手に思ってたから、それはすごい自信になりましたね。釈迦さんがイベントに誘ってくれた時期で、Sleet Mageも普段はおれが教わってる側だったから、褒めてくれたりはしなかったけど、ミックステープは褒めてくれて自信にもなりましたね。かなり環境が変わったことでイケるかもってなったかもしれないですね。

- 今SoundCloudで聴ける一番古い音源もこのミックステープですよね。

Gokou Kuyt - このミックステープからは自分が何歳になっても聴かせられるくらいのものに、音質とかは悪い部分もあるけどそれも含めていいと思えるくらい気に入ってるやつだから残してる。スタイルも確立された部分はあったと思いますね。

- 自分が一番最初にKuytさんを知ったのは"Nap"がきっかけで、当時FNMNLでも取り上げたのを覚えてます。それでその後にBATICAで開催された『TOKIO SHAMAN』に行って、全くラップを聴かなそうにみえるお客さんがたくさんいたので衝撃を受けたんですよね。その後ミックステープを出してからのキャリアっていうのは今振り返って順調だったでしょうか?

Gokou Kuyt - 音楽へのモチベーションはずっと高かったんですけど、私生活との両立が難しくて順調とは言えなかったですね。2017~2018年に専門学校に通ってたんですけど学校に行くのが本当に嫌で、ずっと機材を触ってたかった。釈迦さんの絶対イケるよって言葉を悪い方に解釈して、学校なんて行く必要ないって言って、親に怒られたり。ギリギリで卒業はできたんですけど、音楽したいからフリーターになったんですけど、バイトもすぐ辞めたりして親も呆れちゃって、作業に使ってたノートパソコンを隠されたりという攻防をしつつなんとかEPを出したりしてたので、結構キツかったかもしれないですね。音楽での収入はなかったし。EPを出して少しは再生回数や収入を得られるってことを証明したかったんですけど、中々出せなくてもどかしかったですね。その時はバックDJをやってくれているHIGH-TONEがメンタルのケアをしてくれてましたね。HIGH-TONEはちょっとガサツだから、悩んでることとかもどうでも良くしてくれるんですよね。真剣に相談しても「いや、大丈夫っしょ」みたいに適当に返されるんですけど、それくらいがちょうど良くて落ちつけたんですよね。2019年にEPを出すまではSoundCloudで曲をちょくちょくあげてたんですけど、だいぶ暗いですね。でもなんだかんだあったけど『SHAWTY CALLIN'』をリリースできて良かったです。本当に自信があったので。中でも一番自信があったのはぼく脳さんとの"中野ブロードウェイ"でしたね。

- 中野ブロードウェイがテーマになるラップの曲が出るとはと思いましたね。

Gokou Kuyt - そうですよね。中野ブロードウェイには中野ロープウェイという雑貨屋さん目当てで行っていて、あとはまんだらけとかもあるからふらふらするだけで面白い。

- Kuytさんは趣味も多い感じがします。

Gokou Kuyt - そんなことないですよ。ただすごい熱しやすくて冷めやすいところはあるかもしれない。曲でも今ハマってるものを言うから、バレてるかもしれないです。音楽の趣味はあまり変わらないんですけど、他の部分は移り変わるのが多いかもしれないです。でもアウトドアのものは何一つとしてハマったことないので、基本インドアですね。あと悩みじゃないんですけど、高円寺に引っ越してきて生活してるから、曲の中でも高円寺ってワード出したりタイトルにしたりもするんですけど、高円寺を背負っていくみたいな気持ちは一切なくて、引っ越してもいいし、高円寺・中野を愛するラッパーみたいな見られ方をするのは荷が重い。これは声を大にして言いたいですね。

ただ描写としてわかりやすく伝えてるだけなんですよね。高円寺は大好きなんですけどね。EPのタイトルにしたのは自分でもやりすぎたと思いましたね。クセじゃないんですけど、自分の手に届く場所からしか発展させられないと言うか、壮大な歌詞を書ける人とかはめっちゃ羨ましくて、自分は体験したこととか観たものからしか曲を作れないから、そこは自分の課題だなと思いますね。

-自分の身近なことを歌ったものだと、今作の"曲ができない"は逆転の発想で作られてますよね。

Gokou Kuyt - コロナになって、人と遊んだりしないと自分は曲ができないんだなって思ったんですよね。そういう時に、絞り出して作った曲で、その時は「どうしよう、曲ができない」ってことしか考えられなかったから、とりあえずこの気持ちを残そうと思ったんです。それでこの曲は自分でトラックを作った方が面白いと思って。

- でもこういう曲を作ることに恥ずかしさはなかった?

Gokou Kuyt - 一切ないですね、というか他のラッパーがフリになって自分の存在意義が出ると思っていて、ラッパーの王道のスタイルとしてめちゃくちゃ曲を作ってリリースしまくるというのを自分はフリにしてるんですよね。"曲ができない"はそれがめっちゃ効いてると思いますね。だから自分しかできないテーマな気もするので、むしろありがたいですね。でもそうやって考えてることは多いかもしれないですね。他のラッパーはこうやってるから、自分ならこっちをやってみようとか。

- しかも狙ってるわけではなく自然にということですよね。

Gokou Kuyt - そうですね。

- "Type Beat & SoundCloud"もそういう曲と言えますよね。タイプビートは今では主流になっていますがKuytさんが使い始めていた時などはタイプビート批判的な論調もありました。

Gokou Kuyt - でもあまり気にしたことないですね。周りは当たり前のように使っていたから、自分もそこは自然に使っていただけなので。

- なるほど。あとこの曲はこれまでお世話になったタイプビートとSoundCloudへのお礼なのかなとも思いました。Gokou Kuytとしては次に進むための区切りというか。

Gokou Kuyt - そうですね、もちろんタイプビートもSoundCloudも使わなくなるということではないんですが、自分の今があるのはこれのおかげっていうのと、もう少し違うこともやりたいということを言いたかったんですよね。あんまり深い意味はないですけど(笑)

- 最後の"Clutch"でもそういった決意は感じました。

Gokou Kuyt - 決意に近いかもしれないですね。周りがどんどん売れていくからマジでやんないと、負けられないなというのは多少はあるんです。ただ何のためにやってるの?と言われるとすごい悩んじゃうというか、自分がどうなりたいっていうのはめっちゃ難しくて。楽しいっていうのが大前提だから、めちゃくちゃ売れるためにつまらないことを頑張ってやるくらいだったら、小規模でもいいから楽しくやりたいっていうのとやるからには多くの人に聴いてもらいたいっていうスレスレの葛藤があるんです。自分のモチベーションの原動力は本当にわからないですね。心の余裕をどんどん広げていきたいというのはあるんですよね。お金の面もそうですけど生活も年相応に変化していきたくて、その変化を曲にしていきたいなと思ってます。そんなに服とかを買うわけではないから今も満足はしているんですけど、やらないとなっていうのは考えてます。でも自分のモチベーションがなんなのかはマジでわからないですね。かっこいい曲を作る人はめっちゃかっこいいから、それになりたいし、ダサい曲は作りたくない。今はその楽しさとやらなきゃっていうのがいいバランスになっている。それって自由っていうことで、今は何を作ってもいいし、リリースについても強制されているわけじゃないから。

- そういう中で曲は結構できてきてるんですか?

Gokou Kuyt - まだ出そうと思える曲はできていなくて、最近友達とスタジオを作って制作してるんですけど。周りはめっちゃ勤勉で、すごい数のトラックを作っててそれをみてて刺激を受けますね。

- Kuytさん自身の表現の幅を広げたいという気持ちもあるんですか?

Gokou Kuyt - めちゃくちゃありますね。例えばハイパーポップって人によって解釈が全然違うから好きで、それにああいう音楽って、ある種煌びやかだけど何か一瞬の儚さみたいのも感じてそれが好きで、ああいうのを個人的な表現としてやりたいなと思っていて。でもハイパーポップは若すぎてビビってる気持ちもありますね。ここに踏み込んでいいのかなっていう。やるとしたら一緒に若い世代のアーティストとやりたいなと思ってます。

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Gokou Kuyt
New EP『U DESERVE IT!』
https://gokoukuyt.lnk.to/UDI

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All Lyrics by Gokou Kuyt

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Illust : Shun Suzuki

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