【インタビュー】JUMADIBA|その眼光が見据えるもの

6月に1stミックステープ『Kusabi』をリリースしたJUMADIBA。サッカーのチャントをサンプリングした“Spike!”を筆頭に、リリカルかつユニークな楽曲の数々がコンパイルされた同作は、シーンや世代を問わず幅広いリスナーの間で話題となった。同時に彼自身もまた、ヒップホップやロック、ダンスミュージックが渾然一体となった同世代のアーティストやDJとリンクアップしながら、今や一つの台風の目とも言える役割を担いつつある。

例えば7月7日、幡ヶ谷Forestlimitにて毎週水曜日に開催されるレギュラーイベント『K/A/T/O MASSACRE』とコラボし、4ngelkidz、1-DRINK、Double Clapperz、Psychoheads、RAMZA、ykahを招いて開催されたリリースパーティ『K/U/S/A/B/I MASSACRE』。そこでのJUMADIBAのギグは配信の画面越しに観ていた筆者を圧倒するほどのものであり、それは彼を中心に巻き起こりつつある大きな変化を可視化したものであるかのように思えた。

このインタビューは、そんな彼の眼差しが見据えるビジョンを紐解くべく話を訊いたものである。ここで語られている言葉たちは、彼の楽曲やパフォーマンスから感じられる未来の予感を確かに裏付けるはずだ。

取材・構成:山本輝洋

撮影:笹木晃

- 『Kusabi』のリリースからちょうど二ヶ月が経とうとしていますが、その後の反応を振り返ってみていかがですか?

JUMADIBA - 今までで一番自分らしい作品を出せたと思っています。今はリアクションが直接ある場所が少ないから肌感では分からないけど、SNSの中とか、そういうところでは良い反応を貰えて。それは素直に嬉しいなって感じですね。

 - 『Kusabi』のリリースや“Spike!”のMVが出たタイミングで、より幅広いリスナーの方からJUMADIBAさんのお名前が出ることも多くなったと思います。それが一個目に見える形で結実したのが『K/U/S/A/B/I MASSACRE』だと思いますが、あんなにお客さんが来るっていう予想は事前にしていましたか?

JUMADIBA - いや、全然。どれくらい来るとかあんまり分からなくて、数字が見えていなくて。でも出てくれた人は自分でカトーさんと話し合いながらキュレーションして、自分が好きでカッコいいと思う人を呼べたんです。だから絶対に良いパーティになるだろうなっていう想像はしてて。お客さんも結構入って、それはシンプルに驚いたし、反応も凄く良かったから嬉しかったですね。『K/U/S/A/B/I MASSACRE』は肌感で感じられなかったものを、ああいう場所で生で感じて、コミュニケーション出来たのが凄く良かったですね。

 - このインタビューをしたいと強く思った大きなきっかけが『K/U/S/A/B/I MASSACRE』でした『Ether』の時のMare Internoさんとの“DAWN”のパフォーマンスでも感じたんですが、想像以上のスピードで、大きな動きを起こしつつあることを改めて実感させられました。『K/U/S/A/B/I MASSACRE』のブッキングではRamzaさんや1-DRINKさん、Double Clapperzのような方々もいればPsychoheadsのようなロックバンドもいる辺りにJUMADIBAさんのバックグラウンドが反映されているなと思ったんですが、そもそも音楽が好きになったきっかけはロックだったんですよね?

JUMADIBA - そうですね。ずっとBeatlesが好きで、それからロックが好きになって。物心ついたぐらいから家にあるCDを聴いてて、Beatles聴いて......文脈とか関係無く聴いてたから、小学生の時は家にあるCDを掻い摘んで聴いてた。だから結構衝動的な聴き方をしてたから、今でもロックのちゃんとした文脈とかは全然知らないけど、根っこの部分はBeatlesとOasisですね。その二つは、具体的に「ここに影響を受けた」って言葉には表せないけど、絶対にどこかで影響されてるっていうのは自分で作ってても思う。「ロック」って言っちゃうとちょっと違うかもしれないけど、その二つは大きいですね。

 - JUMADIBAさんはOasisをよくフェイバリットに挙げていますが、やっぱりOasisの存在は大きかった?

JUMADIBA - そうですね、やっぱりサッカーっていうのが。自分ずっとサッカー好きだったし、やってたこともあったから。小学生の時も、「めっちゃサッカー応援して音楽やってる人」っていう要素だけで持っていかれたというか。特にギャラガー兄弟はライフスタイル感みたいなのが全面に出てるから、そこに魅了されたし。Oasisはめっちゃ大きいかな。

 - マンチェスターシティをサポートするようになったのもOasisがきっかけ?

JUMADIBA - そうですね。好きなチームが欲しくて、あの二人が応援してるし、応援しないわけにはいかないなって(笑)。

 - ちなみに、ギャラガー兄弟の兄と弟だとどっちが好きですか?

JUMADIBA - めっちゃむずいね。性格とかが似てるなと思うのはお兄ちゃん(ノエル)の方だけど、でもリアムの方も好きかな。自分と違うから好きというか。選べないですね(笑)。二人揃ってめっちゃ好き。

 - そこからヒップホップに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか?

JUMADIBA - 割となんでも聴いてて。日本のものも聴いてたし、流行ってるものも。家の中にあるCDを引っ張って聴いてて、Oasisの後はRadiohead、björk、宇多田ヒカルとかを聴いてました。ヒップホップは、中学生の時にBlack Eyed Peasを聴いて。それまでもKanye Westとかは聴いてたんだけど、「あんまり分かんないな......」って感じで。でもBlack Eyed Peasは、「うわ、これめっちゃ聴けんな」みたいな。しかも、なんか楽しい。

 - メロディがハッキリしてる曲も多いですからね。

JUMADIBA - そうそう。「ラップってこういう面白さなんだ」みたいなのが分かって、そこからwill.i.amとかから辿って、TSUTAYAのヒップホップコーナーみたいなところからDr. Dreとかを借りて聴き始めたのが大きかったですね。そこからヒップホップを聴き出しました。

 - そこからご自身でもラップしようと思うに至るまでの経緯も伺いたいのですが、ラップを始めたのはいつ頃ですか?

JUMADIBA - 2019年ですね。元々音楽やるとか全然考えてなくて。だけど学校で映像を学んでて、「ちょっと違うな」みたいなことは思ったんです。そんなに、映像だけやりたいような感じではなくて。大学生だったからめっちゃ時間あって。やっぱ、多分暇だったのかな。それでMare Internoと二人で、タイプビート使ってiPhoneにRecしてみようと思って。そこからラップし始めた感じですね。

 - ルーツとしてはロックがあって、ヒップホップももちろん好きだったとは思うんですが、そこでラップを選択した理由などはあったんでしょうか?

JUMADIBA - バンドは、絶対出来ないだろうなって(笑)。複数人であれだけ調和させながらやるのは、バンドやってる先人たちを見ても難しそうだなと。ヒップホップは始めやすかった。DAWとか、iPhoneがあればそれでも出来るし。あとは、ロックは文脈として断片的に聴いてたけど、ヒップホップは文脈を辿って聴いてたから、結局はヒップホップの方が好きになったんです。のめり込み方が違うというか。ルーツはロックにあるかもしれないけど、結局好きなのはラップミュージックで。だからラップしてみたいなと思ったし、言葉を扱うから、(自分の内面を)そのまま出せるかなって。その時は真似っこで始めたけど、今となってはそう思うかな。

 - JUMADIBAさんのリリックって凄く特徴があるなと思っていて。街やご自身が見ている景色と、内面的な部分が散文的に交差する感じというか......文学的でもあると同時に凄くヒップホップ的でもあって、そこが凄く面白いと思うんですが、普段のリリックの書き方はどんな感じなんでしょうか?

JUMADIBA - 最初の頃は音とか関係無く、散歩したりして言いたいことをアカペラでリズムつけながらiPhoneのメモに書きまくってました。でも最近は普段書いたりせずに、自分でトラックを作ってから降りてくるというか。フリースタイルに近い感じで作っていく感じですね。

 - 録りながら書いていく感じなんですね。

JUMADIBA - そうですね、そういう感じです。

 - 言葉の部分に関しても凄く意識的だと思うんですが、言葉の使い方が好きなアーティストなどはいますか?

JUMADIBA - Febbさんかな。Fla$hbackSもそうだし、ソロの作品もそうだけど、カッコよかった。自分は英語全然喋れないから訳しながらじゃないと分からないけど、日本語で聴いてスッと入ってくるものとして、Febbさんのリリックは凄く衝撃でした。

 - なるほど。JUMADIBAさんのリリックにお話を戻すと、アジア的なエッセンスを感じるところが印象的で。「黄色い肌」みたいなワードだったり、「半跏思惟像」といった言葉が出てくるところもそうだし、物の捉え方みたいなところに東洋的なものも感じるというか。そういった思想にも以前から興味はあったんでしょうか?

JUMADIBA - 寺とか神社とか、日本独特のここにしかないようなものをずっと感じているから、仏教が好きとかそういうのがあるわけではないけど、そういう雰囲気をまとえるのは自分らしいところなのかな。自分はそういうのをちょっとまとってるな、みたいなことは感じていて。断片的だけど、そういうエッセンスが入るのはそういうところからかもしれないですね。

 - トレードマークのヘアスタイルや、「JUMADIBA」という名前の響きにもエキゾチックなものがあるように思います。名義の由来はどんなものだったんでしょうか?

JUMADIBA - 「JUMADIBA」は、ネルソンマンデラの敬称が「MADIBA」で。それと、自分の本名に「JU」っていう音が入るから、それを繋げて「JUMADIBA」。でも、言われてみればアジアっぽさも無くはないですね。「JU」がやっぱりアジアっぽいのかな。

 - なるほど。「半跏思惟像」の他にも、例えば「ピカソ」だったり「maya maxx」だったり、アートについての固有名詞がリリックに多く出てきますよね。そうしたアートからもインスピレーションを受けることが多いですか?

JUMADIBA - そうですね。めっちゃ詳しいわけじゃないけど、美術館とかに行くのも好きだし、言葉にならないものでコミュニケーションを取れるものが良いなと思っていて。あまり具体的に、「なんでリリックに入ってくるか」みたいなことは言えないんですけど。

 - もちろんフリースタイル的に録っていることもあって、何か明確な意図があって入っているものは少ないですよね。とはいえ出てきているものでもある点が面白いですが。

JUMADIBA - ちょっと話は変わるんですけど、自分は文章として書くのがちょっと苦手で。接続詞をつけて長い文章をまとめるのが苦手だから、断片的に言葉が出てきちゃうんですよね。それを無理矢理繋げているから、その辺が独特なのかもしれないですね。

 - 断片的なものが次々現れてくる中に一つ統一された色があって、そこにリリシズムが現れていると思います。他にもリリックには「変化」だったり「時代の趨勢」とも言うべき時勢のあり方があると感じていて、その「変化」はご自身の周囲や内面を含んだものだと思うんですが、活動を始めてから『Kusabi』のリリースに至るまで、ご自身の中で一番変わったと思う部分はどこですか?

JUMADIBA - なんだろうな......結構変わってるんだけど。自分をかたどれるようになれてきたかな。始める前は自分っていうものがボンヤリしてたんだけど、今は自分を捉えられるようになった。

 - 輪郭がハッキリしてきたというか。

JUMADIBA - はい。自分を捉えられてるかどうかは関係無いかもしれないけど、正直にやることが大事だと思ってるし、ヒップホップのカッコよさってそういうところにあると思うから。どれだけ自分に正直にいられるか。それに気づけたのは、音楽を始めたからですね。それまでは同調しちゃったり、日本人特有っていうのは言い過ぎかもしれないけど、そういう孤独感みたいなものを上手く整理出来ていなかった。でも音楽を作っていくことで、自分から出る言葉を一旦外から見つめられるから。まだちゃんとハッキリしてる訳じゃないけど、段々自分っていうものが分かってきたのは変化ですね。

 - なるほど。「孤独感」という言葉が出てきましたが、リリックの中にも人を信用しきれない感覚や「疑い」みたいなものが表れているし、それはご自身に対しても向けられているものでもあると思うんですが、『Kusabi』の中では最後の“1mistake”でそれが昇華されて救いに繋がっているような印象を受けました。これまでは人や自分を信用出来ないところもあったんでしょうか?

JUMADIBA - 自分が小さい時、人と違うことをすることに凄く勇気が必要だったんですよね。正直に行ったら絶対はみ出ちゃうけど、それが怖いっていう気持ちがあって。だから、無意識のうちに同調しちゃうっていうことが勝手に根付いてた。それをずっと感じていたから、つい最近まで、それこそ『Kusabi』を作る前ぐらいまでは、どこかそういう気持ちに持っていかれちゃう部分があって。

 - なるほど。そこで音楽を始めて『Kusabi』という作品に繋がったことで、それが昇華された部分もあった?

JUMADIBA - そうですね。でも『Kusabi』自体はそんなにまとまったコンセプチュアルな作品じゃなくて。ミックステープだし、断片的なものの集合っていう感じで。だから(自分の内面が)一個一個の曲に散りばめられてる気がします。

 - 『K/U/S/A/B/I MASSACRE』もそうだと思いますし、最近のJUMADIBAさんの活動を通して見ていても、例えばSATOHやHEAVEN、tamanaramen、PICNIC YOUやPrius Missileなど、同世代のアーティストたちと有機的な繋がりが出来ていると思うんですが、他のアーティストの方々との交流が強固なものになってきたのも最近のことでしょうか?

JUMADIBA - 本当に最近ですね。それこそ『Kusabi』出してからかな。今挙がったみんなはトラックから自分たちで作っていたり、表現の手段として音楽を選んでいる感じに勝手に共鳴している部分があって。それで、今まではあまり人と作ってなかったけど、段々人と作る楽しさが分かってきて。ずっと一人で作ってるのもキツいから、同世代のアーティストが近くにいるのが嬉しいですね。

 - これは明確に基準などがあるわけではないと思いますが、JUMADIBAさんと繋がるアーティストやDJだったり、ご自身が好きになる人に共通する部分はどんなところでしょうか?

JUMADIBA - ピュアに作品を作っている感じがする人が好きなんだと思います。音楽的に好き嫌いはあるけど。DJにしてもその場の空気関係なしに自分のやりたいことバチンとやってる人が好きです。良い意味で空気読めないみたいな。DJの人には怒られるかもしれないけど。 アーティストだとtamanaramenの2人とか。いつどこに居ても「tamanaramen」でしかない感じがする。あと、Le Makeupも、音と言葉「Le Makeup」節が常に存在してて好きです。

 - JUMADIBAさんはトラックメイクもされていて、『Kusabi』にもご自身がトラックを手がけた楽曲が半分以上を占めていますよね。トラックメイクを始めたのはいつ頃からですか?

JUMADIBA - コロナ始まって以降にちゃんと作り始めました。それまでのただタイプビートにラップを乗せる作業から大きく変わりましたね。自分でトラック作り始めたのはめっちゃ大きなことだったと思います。「これが自分で作るっていうことなんだ」っていう。トラックを作り始めたことも、自分が正直になれた大きな理由だと思います。自分の色が音にも出てくるなと思って。だから、本当に楽しくなったのはトラックを作り始めてからですね。

 - しかも、自分の表現に対する理解も深まりますよね。

JUMADIBA - そうですね。自分の中から出てくる言葉と同じくらい、DAWの中の音を気に入った音色にしたり、サンプリングしたものを気に入った音色にするのが楽しいです。

 - サンプリングのセンスもユニークですよね。“Spike!”のサンプリングに衝撃を受けた人も多いと思いますし、JUMADIBAさんが手がけたトラックはミックスのバランスやテクスチャーも独特というか。ラフなんだけど乾いたカッコよさがあると思うんですけど、好きなサウンドのルーツはどこなんでしょうか?

JUMADIBA - それはやっぱりOasisとかかもしれないですね。ちょっとファズがかかった感じというか。やっぱりUKのアーティストが大きいです。UKのサウンドの感じからは影響を受けたかな。

 - それこそドリルやグライム、例えばslowthaiが凄くお好きだと思うんですけど、UKの雰囲気は大きな要素としてあるんですね。

JUMADIBA - slowthaiは影響を受けざるを得なかった。でも、ベースラインを作るのが自分はあまり得意じゃなくて。それはOasisとかビートルズから来てると思うんですけど、上に強い特性が自分にはあると思っていて。だからこれからは下の方も頑張っていきたい(笑)。

 - ビートのジャンルやリズムの幅もどんどん広がっていると思いますし、今後の進化が凄く楽しみなところなんですが、今後挑戦してみたいビートのアプローチなどはありますか?

JUMADIBA - うーん、あんまり具体的には出てこないですね。あっても内緒にしていきたい(笑)。

 - それはそうですね(笑)。『Kusabi』の楽曲には他の人も巻き込んで上がっていくことに対する意志が凄く歌詞に表れていると思うんですが、そう思うようになったのはやっぱり最近のことなんでしょうか?

JUMADIBA - 一人だけカッコよくても根付いていかないというか。全体の雰囲気がカッコよくなっていく感じにしたいというか、それがカッコいいなと思っていて。自分が好きだったりカッコいいと思うアーティストが身の回りにいたりするから、自分一人がゲットしたいとか、そういうのは無くて。

 - その価値観は元からあるものだった?

JUMADIBA - そうかもしれないですね。

 - リスナーとして、今後JUMADIBAさんを一つの中心とした動きが起こる気配を凄く感じているんですが、ご自身の中で自分が中心になって牽引していきたいという意志があるわけではない?

JUMADIBA - 元々はあんまり無かったけど、『Kusabi』を出した後の周りの反応とか、他の音楽を聴いて自分のシーンの中のポジションを考えると、そういうことをしていった方が良いかなっていうか......言い方は難しいけど、「そうしていかなきゃ」っていう自覚は段々芽生えてきた。

 - それは、やっぱりご自身のクリエイションに対する自信がついてきたことと地続きなんでしょうか?

JUMADIBA - それは本当にそうですね。

 - 楽曲を聴いていても、そうした意志が以前と比べて強く出てくるようになったと思いますし、「変化を起こしていきたい」という気持ちを強く感じます。今後JUMADIBAさんを中心に身の回りやシーン全体を塗り替える上で、どのようなビジョンを描いていますか?

JUMADIBA - ちょっと語弊があるかもしれないけど、音楽のシーンにいると、一般人と別の世界っていう感覚があると思っていて。それが、根付いていない証拠だと思うんです。別に、俺も一般人だし......みんな一般人だけど、みんな一般人じゃないっていうか。自分は東京にいるけど他のところでも、そういう垣根が無くなっていけばいいと思う。中学生とか小学生が色んなアーティストを知っていて、「これカッコいいよね」みたいなことが学校とかでも話される、みたいな。もしかしたら少しずつそうなってきてるのかもしれないけど、まだ「一般人」と乖離している感じがあって。その垣根を無くしていきたいって思っています。でも、それを嫌だと思う人もいっぱいいると思うし、それが良いか悪いかは分からないけど、俺はそうしたい。

 - 以前Instagramのライブで、先日の小田急の事件についてお話されていましたよね。リリックの中にも、音楽のシーンに留まらず、今の政治だったり時代が纏っているネガティブな空気を冷静に見ている視点があると思うんですが、社会のネガティブな歪みについて普段考えることも多いですか?

JUMADIBA - 「変だな、これおかしいな」っていうことは、自分の身の回りも、関係無いところも含めてずっと思っていて。あんまり言葉に出来ていなかったし、今もそんなに言葉には出来ないけど、「ん?」って疑問に思うことが本当にずっとあったんです。それを共有出来る人がずっといなくて。今はこういう時代っていうのもあるし、年齢を重ねたっていうこともあるからそういう話題を話せる人が段々増えてきたけど、体感としてはどんどんヤバくなっていて。そのことは本当に、考えない日は無いぐらい考えちゃう。これからもずっと考えちゃうところだし、音楽をやるきっかけにも、もしかしたらそういうことが部分的に入っているかもしれないです。

 - 自分の中にあるモヤモヤしたものを、単純な言葉ではなく一つの作品として出したいというか。先日の事件は凄くショッキングなものだし、個人の問題だけに回収出来ない構造的な歪みもありますよね。

JUMADIBA - 男尊女卑って言葉が合ってるかは分からないけど、全部環境に根付いていて、歯止めが効かなくなってるというか......。難しいけど。

 - そういったものに対する疑問や違和感は今作に収録されている楽曲の他、“眼光”のような楽曲にも表れていると思いますが、そうしたものを自分の眼で見て、表現していきたいという気持ちがある?

JUMADIBA - そうですね。でも、音楽はそうしたものを加味出来るものでもある一方で、全く別の役割も持つことが出来て。音楽が持てる幅みたいなものが凄く大きい気がしているんです。怒りもあれば、快楽的な部分もあるし。自分も、音楽としては色んなものも作りたいかな。その幅があるのが、本当に今の自分の状態な気がする。

 - 最後に、表現の幅をどんどん拡張していく中で、今後どのようなアーティストになっていきたいですか?

JUMADIBA - 凄く先のことというか、大きな括りになっちゃうけど、音楽だけに縛られてやりたくないというか。もっと色々なフォーマットも可能性があるなら、そこの窓が開いた状態のアーティストになりたいですね。例えば自分の作品の映像をディレクションしたり、他の形でも納得行くものを作りたいです。

 - ありがとうございました。

RELATED

【インタビュー】JUBEE 『Liberation (Deluxe Edition)』|

2020年代における国内ストリートカルチャーの相関図を俯瞰した時に、いま最もハブとなっている一人がJUBEEであることに疑いの余地はないだろう。

【インタビュー】PAS TASTA 『GRAND POP』 │ おれたちの戦いはこれからだ

FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大きな舞台への出演を経験した6人組は、今度の2ndアルバム『GRAND POP』にて新たな挑戦を試みたようだ

【インタビュー】LANA 『20』 | LANAがみんなの隣にいる

"TURN IT UP (feat. Candee & ZOT on the WAVE)"や"BASH BASH (feat. JP THE WAVY & Awich)"などのヒットを連発しているLANAが、自身初のアルバム『20』をリリースした。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。