【対談】BIM × STUTS|ヒップホップから広がっていく
昨年、RYO-Zも参加したコラボ曲"マジックアワー"を機に親交を深めたBIMとSTUTS。8月にBIMがリリースしたばかりの2ndアルバム『Boston Bag』には、昨年リリースされていた"Veranda"をはじめ、"Tokyo Motion feat. 高城晶平"、"想定内"とSTUTSがビートを手がけた楽曲が収録されている。BIMは本作でこれまでにない多彩なビートへのアプローチを試しており、デリバリーも豊富になりアーティストとしての変化を見せてくれた。
それに対しSTUTSも本日9/16(水)にミニアルバム『Contrast』をリリース。前作でも感じさせていた、自身の音楽性を深化させている。さらに自身でのボーカル・ラップをはじめ、ギターやベースなども自身で演奏するなど、これまでにないチャレンジを行っている。
大のヒップホップ好きということで話が合ったというBIMとSTUTSだが、根っこを大事にしつつも、より幅広く自身の音楽を表現しはじめている両者の対談を刊行した。
取材・構成:和田哲郎
撮影 : 横山純
- 今日はお互いの作品のリリースと、去年の“マジックアワー”以降のお二人の関係性も含めて聞けたらなと思います。そもそも二人の出会いはいつになりますか?
BIM - ちゃんと初めて話したのは、4年前のSTUTSくんの“夜を使いはたして”のMV撮影の時ですね。ビデオのディレクションで少し関わったので。
STUTS - それまでは、たまにライブの現場で会ってちょっと挨拶するみたいな感じで。でもその撮影以後もまたあまり話していなかったです。
BIM - 俺も音楽をあまりやっていなかったし。大阪のイベントでSTUTSくんとかKID FRESINOとかC.O.S.Aさん、KEIJUくん、kZmとかがいた時に、STUTSくんと結構楽屋で話したんだよね。
STUTS - その時はまだ“マジックアワー”の話はしてなかったっけ?
BIM - VaVaくんのワンマンのときに、「こういう話があるよ」って言われたから、大阪のイベントはその前かな。
- “Veranda”はいつ?
BIM - “Veranda”は、去年のフジロックにSTUTSくんと俺と地元の友達の3人で前々日ぐらいに「行こう」って決めて。でも当日ホテルなんて取れないから、キャンピングカーで行くことになって。キャンピングカーを借りてそこで寝泊まりして、その道中で“Veranda”のビートを聴かせてくれたんです。“マジックアワー”はもう作ってたんですけど、”Veranda”のビートを聴かせてもらったら「これめちゃくちゃ良いじゃないですか。ちょうどこんな感じでやりたかったんです」って言ったら、「これ“マジックアワー”の時にBIMくんがボツにしたビートだよ」って言われて(笑)。その時に“Veranda”と“Tokyo Motion”のビートの基盤を頂いた感じですね。その時に車の中で鼻歌をとって、なんとなくフリースタイルでメロを入れたりして。
- フジロックに一緒に行くぐらいだから、その時にはもう相当仲は良くなっていたんですね。
STUTS - ”マジックアワー”を一緒に作るってなってから、一気に。最初は二人で飲むって感じになって、その時に色々話して。
BIM - 俺の家で先に録って、STUTSくんの家でサビ録って、その後また飲んだり。二人で中華料理屋行って、その後に下北のNasが来たっていうバーに行ったりしましたね。
- 二人はどんなところで気が合ったと思いますか?
STUTS - 割と音楽遍歴が似てて。
BIM - 普通に根本が、完全にヒップホップしか聴かない男たちってところからスタートしてて。お互いに見た目からヒップホップ好きとは捉えられないから、あまり表で「実は僕、日本語ラップとか結構好きなんだよ」ってことをわざわざ言うのも違うかなって思うし、みたいな感覚がお互いあったから、2人ともブワーってダムが決壊したように「あの時のバトルがこうだ」とか、日本語ラップのハードコアなところを聴いたりしてたとかを話し合って。やっぱり音楽が繋いでくれたと思いますね(笑)。
STUTS - いい話にしてくれました(笑)。
BIM - 今、主に聴いてる音楽はちょっと違うかもしれないけど、大きく括って「あ、俺もそれ何回も聴きました。やっぱあれ良いんですね」みたいな感じの情報交換をさせてもらったり。あとは2人ともお酒好きですからね。
STUTS - あとまあ、音楽との接し方とか、どんなものを作るかってところでシンパシーを覚えたところもあるのかな。根本にあるヒップホップ的な部分は大事にしながら、アンダーグラウンドというよりは、より幅広く色んな人に聴いてもらいたいっていう。
- 二人の新作を聴いていても、ヒップホップ的なところからスタートしつつ、そこからどう広がりを持たせていくかってことを、お互い考えて音楽をやってるのかなというのは感じました。
BIM - 俺は、ビートを作るときもあるけどラップがメインというか、ラップに生活の殆どの時間を割いてるんですよね。STUTS君は逆で、今回は歌ったりもしているけど、基本はトラックメイカー。俺は自分のトラックがあの時より上達したとか分からないけど、STUTSくんとやる度に「こんなに進化してるんだ」って感じるんですよね。年上だし失礼な言い方かもしれないけど。俺もラップに関しては自分で進化してるから楽しくて続けられてるし、それがモチベーションだし、って感じで、一緒に作る度にステージをアップさせられてるのかなって感じはありますね。
- 今回の『Boston Bag』に入ってる“想定内”と“Tokyo Motion”は歌い方も全然違うし、STUTSさんのビートもこれまでには無いダイナミックなダンスミュージックっぽさがあ理ますよね。その2曲についてはどうやって作っていったんですか?
STUTS - 結構対極かなと思っていて。“Tokyo Motion”のトラックに関しては2017年ぐらいからあったもので。僕の2枚目のアルバム『Eutopia』を作るときにバンドでセッションしていた時に、そのトラックの上に楽器を足してもらったりしてて。それをBIMくんに聴かせて、そこから完成するには1年ぐらいかかったよね。
BIM - 元がフィルタードファンクっていう、ファンクにフィルターがかかって、ドラムが4つで入ってる曲だから、凄く難しくて。トラックとして完成しちゃってる感じが俺の中にずっとあって、「俺に何が出来るのかな」っていうのをずっと思ってたんです。『Not Busy』の時の俺だと、ちょっとどうやってやれば良いか分からなかったんですけど、今回色々な曲を作る上で自分の中でリミッターを解除出来た部分があって、最後の最後に“Tokyo Motion”が出来た感じです。その逆が“想定内”でした。
STUTS - “想定内”は本当に一瞬で出来たね。元々“想定内”は入る予定じゃなかったけど、一応ストック的なものを「これBIMくん合うかもな」って感じで送っていて。そしたらその1時間、2時間後ぐらいに曲が返ってきたんです。
BIM - いつもはビートを聴いた時に「あ、なんか思いついた!けど今すぐ録れないから......」ってなって、後から「思いついたものが出てこない」ってなるから時間がかかるんですね。でも “想定内”は他のを聴く前にやろうってなって、1ヴァース目をバーって録って。その後にRENくん(レーベルSUMMITのBIMの担当A&R)に「STUTSくんから来たんですけど、どれが良いですか?」って言ったら、“想定内”を「全部聴いたけどこれが良いです」って言ってて。「分かってるなー!」って(笑)。俺が今日30分遅刻したぐらいの時間で出来ちゃった。本当に速かったですよね。
REN - 昔はあまりそういうことは無かったんですけど、このアルバムに関しては2回ぐらいそういうことがありました。
STUTS - すぐに返ってきて凄く良い感じだったので、「あー、凄いな」って思って。
BIM - STUTSくんもそういうつもりじゃなかったというか、その中に良いビートがあったらそれをブラッシュアップして送ってくれるイメージだったみたいで。
STUTS - 最終的にブラッシュアップして完成に至ったよね。
- “想定内”もこれまでとは違う歌い方でしたよね。“Tokyo Motion”とのやりやすさの違いはどの辺りだったんでしょうか?
BIM - 昔みんなでルームシェアしてた時とか、OTOGIBANASHI'Sの時はソフトが何も使えなかったんでVaVaくんにレコーディングして貰ったりソフトいじってもらったりしてたんですけど、気を遣って「もう一回!」っていうのが中々言いにくかったりして。最初は「これ良いのかな?」みたいな感じで録ってるし、「ここまでやっちゃって良いのかな?」みたいなバリエーションを試すのが、他の人がいると出来なかったのが、一人暮らしになると出来るようになって。例えば昔だったらSTUTSくんの“想定内”とか“Tokyo Motion”のビートを頂いたときも「これは俺にはまだ出来ないと思う」って言っちゃってたかもしれないんですよ。一人でやって色々試せるっていうのが、俺にとってはデカいかもしれないですね。
- 前のインタビューでも「作業時間が単純に長くなった」って話をしていましたね。
BIM - でも今回は短く出来た曲がいっぱいあって。時間がかかったのは“Tokyo Motion”と......でも、あまり無いな。
REN - “Jealous”もかかってたね。でも大体速くて。ビートがあって取り掛かる前のテンションで「行ける」って思って乗せてるって意味で言うと、「これ良さそうだけど、どんな風にやろうかな」って考えてて長かったのが“Jealous”とか。“Non Fiction”も制作期間で言ったら、ずっと熟成させてきた感じ。
STUTS - そうなんですね。じゃあNo Busesの皆さんとも結構前から?
BIM - 去年のクリスマスに近藤君(No BusesのボーカルでソロでCwondoとしても活動)が送ってきてくれて。でもNo Busesに俺がコンタクトを取って会いに行ったのは去年の10月ぐらい。O-Nestに一人でライブ観に行って。
- “想定内”や”Tokyo Motion”のような四つ打ちのビートの曲は、STUTSさんのミニアルバムでもダンスミュージック的な"See The Light"や"Contrast pt.1"などがありますよね。ダンスミュージックっぽいものへの関心は元々あったんですか?
STUTS - 元々少しはあったんですけど、ここ最近になってまた感覚が変わったところはあって。サンプリングっぽい質感ってところでMoodymannとか、ああいう暖かい感じのダンスミュージックは聴いていたんですけど、3、4年前からヒップホップの流れで四つ打ちの曲が結構多くなったかなって思って。
BIM - Kaytranadaとかですね。
STUTS - Drakeの『More Life』だったり、Goldlinkも。四つ打ちでやる感じが凄く腑に落ちるというか、割とそこの境目が無くなった感じはして。自分が作る曲でもそういうのをやってみようって自然となっていった感じでした。
- “Contrast”はワンマンで録った音を元に再現したんですよね?あれはどういう作業だったんですか?
STUTS - 元々トラックがあって、そのトラックの上で皆さんに演奏してもらったんです。大体こういう尺で、こういう感じで盛り上がって欲しいって。それをスタジオとかで合わせて、ライブでやったんですけど。だからベースとなるトラックはあって、その上に生ドラムとかギターとかベースが乗って、それをライブでやって。そのライブの音源を持ち帰ってパラで編集して、それを素材として使った感じでした。
- ミニアルバム全体がそうですが、前作でもバンドメンバーとのセッションの音源を使っていましたよね。今回はその音源素材の置き方の幅が広がっている感じがして。そういう意識はありましたか?
STUTS - あったと思います。前回は割と手探りというか、バーってセッションしたものをサンプリングするってコンセプトで作ってたんですね。それと比べて今回は1曲目のトラックはピアノの高橋佑成さんとのセッションで作ったんですけど、それ以外の楽曲は割と生演奏から始めるというよりは、「トラックの中でどこに生演奏があったら良いかな」っていうのを考えて、それを素材として使っていくような作り方で。そういう意味では前のアルバムとはまた違うかもしれないですね。
- より見えるようになったというか。
STUTS - どうなんでしょうね......(笑)。でも前の、全くやったことが無かった頃よりは「こうやってやっていくのかな」みたいな物はあると思います。今回は割と今までと違う作り方にチャレンジしていて、曲ごとにも結構違ったりもするので。
- 2人のこれまでにあまり無かった部分として、STUTSさんは“Mirrors”で、BIMくんは“One Love”で、それぞれダンスホール的なテイストに挑戦しているのが凄く印象的で。二人のそういうものへの興味はどの辺りからですか?Drakeもダンスホールっぽい曲をやったりしていますが。
BIM - 俺は完全に青春時代にジャパレゲを聴いていたので。FIRE BALLさん、Mighty Jam Rockさん、NG HEADさん、Ryo The SKYWALKERさん、CHEHONさんとかも。
STUTS - その時の方がヒップホップとレゲエの距離が近かったですよね。
BIM - でも、そのもっと前よりは離れちゃってる時ですよね。
STUTS - そうか、90年代とかの方がもっと近かったんだろうな。
BIM - 昔の日本語ラップの曲を聴くとレゲエが入ってたりするけど、今はそんなに無いなって。でも最近やってもいいかなって流れが世界的に見てもある感じで、「じゃあ俺もやりたい!」って。俺のファンとしての経験値を使いつつ、今のBIMのフィルターを通して作りましたね。kZmはダンスホールは通ってなかったみたいなんですけど、「お前、これどんな風にやればいいんだよ」って感じでセッションして。STUTSくんはどういう感じだったの?
STUTS - “Mirrors”に関してはここ数年で受けた影響で、イギリスの音楽がカッコいいなと思うことが多くて。ちょっとそういうものも作ってみたいなと思って作ってみたトラックが、「これDaichi Yamamotoくんと鎮座DOPENESSさんにやって貰えたら良いかも」って思った感じです。
- UKのダンスホールというかアフロっぽいものを消化したのって、ちょっとクールさやヒヤっとした部分もありますよね。
STUTS - アメリカとはまた違う空気感ですよね。
- そこにSUMINを入れたのはどういう経緯で?
STUTS - SUMINさんは去年韓国でライブさせて貰ったときにその次の日に対バンさせてもらって。KIRIN × SUMINっていう二人組のユニットでの出演だったんですけど、その時に初めて会ってライブで聴いて、「凄く良い声で良い曲だな」と思って。いつかご一緒出来たらなと思っていたのですが、今回トラックが出来て「フックどうしようかな」って思った時に、SUMINさんの声質が凄く合うなって思ってお願いした感じですね。
- なるほど。今年は夏を中々実感しづらかったですが、両曲ともサマーチューンになっていますよね。
BIM - 今年の夏だからこそ出来た歌詞って部分もありますよね。今年じゃなくて 過去の話になっちゃってる。クラブで女の子を見てた時とか。今しか書けない歌詞にしようと思ったんです。今年の夏は逆にレアかもしれないから。
- “Jealous”もそういう曲かなと思いました。
BIM - “Jealous”は完全に、KEIJUくんと並ぶと俺は生物学的に敗者ってことを歌詞にした(笑)。
- 歌詞にする時に悔しくなりませんか?(笑)
BIM - 悔しいのはもちろんあって、KEIJUくんと話せなかった時期も結構あったし。
- 二人が仲良いってこともあまり知られていなかったですよね。
BIM - KEIJUくんからは部活の先輩が一個しか離れてなくても凄く上に感じる雰囲気があって、「男のパイセン」っていう。だからそういう面で凄く尊敬したり、刺激を受けたりしてるからKEIJUくんとやるならそういう部分を表現したかった。俺が背伸びして合わせるわけでも、KEIJUくんが俺に合わせるわけでもなく、トラックに対してどんなアプローチが出来るのかな思ったら、あの形になりましたね。
STUTS - 今日来るときに聴いてて、今の気候に凄く合うなと思って。
BIM - 俺があれ書いてた時は完全に晴れてた日で、RENくんも「完全に天気に引っ張られてますね」って(笑)。
- 凄く良い対比の曲になってて、お互いがお互いを活かし合う感じで。ある意味凄く自然に嵌まってる感じがしましたね
BIM - 凸と凹感が(笑)。KEIJUくんは女の子を車で拾いに行くってことを書いてて、俺はPESさんからの引用もあって「上手くいかないでマス掻く」っていう感じでヴァース終わって。「桃色のジェラシー」(笑)。
- KEIJUくんのあのヴァースの本気っぷりが......。
BIM - 本当ですよね。俺もそれが嬉しかったんですよ。「ガチじゃん」って(笑)。
- さっき「部活の先輩」と言っていましたが、もう少し掘り下げるなら彼はどんな人だと思いますか?
BIM - 一見厳しそうに見えるけどめちゃめちゃ大らかな人で、面倒見の神(笑)。「俺に任せとけ!」って感じもありつつ、やっぱり曲のときは「BIMの曲だからBIMに従うよ」って感じで言ってくれて。正直に「最初は歌って欲しくて」ってお伝えした感じです。JUBEEとかVaVaくんは年上だけど友達って感じで、KEIJUくんは本当に先輩って感じ。俺の中でそういう人ってKEIJUくんしかいないんだよな。背筋が伸びる感じです。だって白いベンツで来て、「友達待ってるから帰るね!」って感じが一個上だからな......(笑)。でもOTG'Sの最初の頃はKEIJUくんは多分「OTG'Sのスタンスは違うかな」って思ってただろうし、俺も認めて欲しくてやってたわけではない部分が多いけど、徐々にKEIJUくんが「BIMのアルバム今年聴いた中でかなり好きな方だったわ」って言ってくれたり、「BIMのオファーだったらなんでも受けるよ」って言ってくれて。客演殆どやってないから、そういうのが結構嬉しかったな。“Bonita”の時に最初に連絡くれたんですよ。「リミックスしたいぐらいだわ」って言ってくれて。あと、顔がめっちゃ小さいんですよ(笑)。顔小さくて背が高くて白いベンツ乗ってて。
STUTS - 凄いな~、完璧な......。
BIM - パーフェクトヒューマン(笑)。それの“Jealous”です(笑)。
- なるほど(笑)。STUTSさんは初のボーカル曲を入れようと思ったのはどんなきっかけがあったんですか?
STUTS - 割と昔からボーカル楽曲も一人で完結させたいって欲求はあったんですけど、自分で納得がいく感じに全然出来なくて。チャレンジはしていたんですよね。発表はしていないですけど録ったりはしていて。一個背中を押されるきっかけになったのは、3年前に長岡さんと二人でライブをやったときに、遊びっぽい感じでラップをやることがあって。それでラップを書いたんですけど、その声をA&Rをやってくださってた井坂さんが「良い声だね」って言ってくれて。自分でそんなこと思ったことは一回も無かったので、「いつか挑戦してみるのもアリなのかな」ってちょっとずつ思い始めて。そのタイミングで色々な方と一緒に曲を作り始めるタイミングになって、みんながどうやって曲を作っているのかを見て学んで。それこそBIMくんと曲作った時も「こんな作り方もあるんだ」って。
BIM - 俺の歌詞の書き方は多分変ですよ(笑)。
STUTS - いや、でもその場の感じをすぐに録音したりするじゃん。直感的というか、その感じが凄く良くて、大事だなと。BIMくんはボーカルを音として作っていくというか、一発で全部録るというよりは細かくパンチインする。そういう方法もあるんだっていうのを学んで、自分でも色々試してみようって感じでやってみて、「これなら聴かせられるのかな」というか。
BIM - 謙虚ですね、ボーカル入ってる曲の話になると一気に下向きますね(笑)。
STUTS - (笑)。でも、結構勇気が要りますね。人前でやるってこと自体は10年前とかにオープンマイクでフリースタイルしたこともあったんですけど。多分そういう欲求はずっとあったけど、その時は自分で聴いて全然良いと思えなくて。今回のものもまだ良いのかどうか分かってないですけど、はじめは自分で歌おうと思って作ったトラックじゃなかったんですけど、やってみたら今までと違う感触を得られた感じがあって。
BIM - 結構ラップするんだなって思いました。ラップのときは声低いし、歌は繊細な感じで。
STUTS - ラッパーになりたいって感じではなくて、音としてそういうものが欲しいからやるような感じ。ラッパーさんがやるラップのカッコ良さって自分が出来るようなものでは無いかなって思っていて。
BIM - でも、STUTSくんの性格とか細かさとか、ストイックな、前回会った時よりも一個出来ることが増えていくような感じで、ラップもそうなっていくんじゃないかなって本当に思ったんですよ。今はマサラタウンでオーキド博士にポケモンを貰って、その初々しさの繊細な感じで。でも次会ったときにはもうリザードンみたいな(笑)。最後はもう客演呼んでくれなくなっちゃったら寂しいなって(笑)。
STUTS - 今後どうなるかは全然分からないですけど、ラッパーさんがするラップじゃなくてトラックメイカーがするラップって感じで、MadlibとかAlchemistとか、日本だったらBACHLOGICさんのラップが凄く好きで。
BIM - BLさんは特に「音」って感じですよね。
STUTS - そういう感じで出来たら良いなっていうのは思ってますね。
- でも、STUTSさんらしいキャラクターもしっかり出ていましたね。
BIM - 音楽って本当に人柄出るんだなって思いました。トラックに関してもラップに関しても。
STUTS - 人柄は出ますね。
BIM - 絶対優しいもん、この人って(笑)。そういう感じがありましたね。ほのぼの出来るし、ちゃんと言いたいこと言うしって感じで。
STUTS - 今までは音でしか表現していなかったんですけど、今回は言葉で何かを表現するってことに初めてちゃんと手を出す感じで。歌詞も自分とどれだけ距離を離すか、というか、主観的なものと客観的なものの割合や歌詞を書く距離感は人によって違いますよね。BIMくんはどういう風に考えて歌詞を書いてるのか聞けたらいいな。
BIM - 俺は基本的に全部パンチインで録ってるから、本当に世に出てる一曲の歌詞の5、6倍は書いてるんですよ。そこからパズルみたいに組み立てていくんですけど、今回はツルッと書けた曲が多くて。頭からケツまで書けて、それをパンチインで録って修正していく感じで。例えば俺が子供の頃に思ってたのは、知らないラッパーの自分の話とかって、あんまり聞かなくていいかなって思ってたんですよ。今は人のことに興味あるから聞きたいけど、自分のことに関してはそう思うことがあって。俺のことを知らない人に、俺のことをどこまで言って良いのかなっていうのを今でも悩み続けてる部分があるんだけど、最近はもう開き直って、結構主観が多めです。なんでかって言うと、俺とフィールしてくれる悩みや葛藤を持っていたり、これ楽しいなってフィールしてくれる人ってある程度いるんじゃないかなって。自分が突拍子も無く頭がバチ狂ってる超天才って感じじゃないのはもう分かってるんで、主観で書いても客観的な部分が含まれてるんじゃないかなって割り切りをしています。
STUTS - なるほど。人それぞれで視点とかが違うから。
- STUTSさんは今回客観的な視点が多いですか?
STUTS - 2曲しかないんですけど、割とどっちも自分の感じたことを書いていますね。“Vapor”って曲は割と客観的に自分と距離を置いた感じで書けたんですけど、もう一個の曲は割と自分との距離が近い感じなので、聴いて貰うのにまだ少し恥ずかしさがあります(笑)。でも、今のBIMくんの話を聞いてて、自分が聴いたら凄く距離が近いように感じられるけど人が聴いたらそうでもないのかなって。
BIM - しかも、俺の場合は、変に客観的に言おうとした時の方が伝わらなかったりするかな。結構借りてきた言葉っぽくなって。逆に俺だけの、自分のことを言った方が、その人の何かと置き換えて伝わりやすいのかなって。俺も身近にあるものの方が、それに対して言葉数少なく伝えられるし。でもみんなのことを言おうとすると結構長尺で説明しなきゃいけないから、結局「何が言いたいの?」ってなっちゃう場合が多い。だったら「君の場合は何か分からないけど、俺の場合はこれで説明するね」みたいな感じで。そういう主観って感じですね。人の目線も含めた上での主観。
STUTS - 自分のことを喋った方が伝わるもんね。
BIM - USのヒップホップを聴いててもそうだなと思って。例えばどんなギャングの歌詞でも共感する部分はあるし。でも強盗したときの話を聞いたら、俺は強盗したことないけど、それって何かの葛藤において「強盗をしなきゃいけない」っていうことで、逆に勇気付けられたりとか。そういうことあるじゃないですか。「日本の奴らに強盗の話しても分からないから書かねーよ」って言われたらつまらないし。
- BIMくんは今回一番自分の主観が入ってる曲はどれだと思いますか?
BIM - “Non Fiction”とか。
- タイトル通りですね。“Cushion”もそうかなと思ったんですが?
BIM - “Cushion”は本当にその時を切り取って。イメージ的にはハーゲンダッツのCMみたいな、仕事終わって帰ってきてリラックスする時のBGMになればいいかなと思って作った曲だったので、逆にフィクションな部分が多いかもしれなくて。“Non Fiction”と“Tokyo Motion”と“Good Days”が自分のことですね。
STUTS - “Veranda”は......
BIM - “Veranda”は割となんとなく陽気な曲。もちろん絶対入ってしまうけど、俺の中では楽観的な曲ですね。
STUTS - “Tokyo Motion”は確かに。
BIM - そうですね。うぜーことに対して、オブラートに包みつつ言った感じです。
STUTS - そう考えると、今回のアルバムは今までの作品よりそういう要素が多いのかな。
BIM - そうかもしれない。ツルッと書けたことが多かったってこともあると思います。
STUTS - “マジックアワー”の時はまだ長めに書いていたもんね。
BIM - 長めに書かないと本当に怖かったって感じです。最終原稿チェックじゃないけど、「これはちょっと違う風に捉えられるかな」って感じ。でも今は「別にいいか」って。別に俺が思ってたことが100あったとして、一応歌詞に100詰めた気持ちでも、2、3ぐらいしか取られないだろうし。みんな違うし。逆にずっと書くことが「無駄な作業をしてたな」っていう部分もちょっとあって。
STUTS - 勉強になります。
BIM - いやいや(笑)。まあ俺ぐらい10年も活動して、スキルが凄い人の場合はね(笑)。まだ1枚目でそれは早いかもしれないけど、俺ぐらい凄くなったら(笑)。
- (笑)。
BIM - 赤坂BLITZでワンマンが出来るラッパーだから出来るってところはあるのかな......嘘です(笑)
STUTS - こういう時ってさ、どう突っ込めばいいの?(笑)
BIM - なんでもいいですよ(笑)。考察されちゃった方が......。
STUTS - いやでも、本当にその通りだなと思うので.......。
BIM - いや、嘘でしょ(笑)。歌詞についての客観的な話とかしたことなかったから、自分で整理出来ましたね。
STUTS - 自分が歌詞書くんだったら絶対に自分のことを書いた方がいいって僕は思ってるんですけど、それをどこまで具体的に書くか、抽象的に書くのかってことを言いたかったのかもって思えてきて。BIMくんの今回の作品は前よりもよりBIMくんが見える感じというか、人となりが表れてる感じがしました。
- あまり具体的などのシーンかは想像出来ないけど、自分のことなんだろうなって感じが出ているなと。今回思ったのは、リリック自体というより歌い方で感情が出てるように思って。そこが前と変化した部分なのかなと。
BIM - 『The Beam』は結構前だから、どんな感情で作ってたのかも分からないし、どれだけの満足度があったかも覚えてないんですけど、今聴くと「ここなんでこうしたの?」っていうのがいっぱいあるんです。だから自然と色んな人の音楽を聴く上で自分に対するハードルが上がって行って、そういうことをし始めたのかもしれないですね。PUNPEEくんにもそういうことを言われて。「今回はデリバリーが豊富だね」って。俺は覚えてなかったけど、『The Beam』の時は「デリバリーがもっと豊富だったらいいね」って言ってたらしくて。そういうことを言って貰えたりはしました。
STUTS - 確かに1stの時と比べるとだいぶ豊富になったよね。
BIM - 1stの時はノペーっとしてて。丁寧に丁寧にやろうとしすぎたから。
STUTS - なるほど、逆に丁寧すぎるとノペーっとなるのか。
BIM - 「発音をしっかりしなきゃ」とか。
- 気を遣いすぎてたってことですね。
BIM - そうです。でも今は「最悪ノイズ乗ってもいいか」ぐらいの。ツボイさんや小森さん(今作のMixを担当したエンジニアのIllicit Tsuboiと小森雅仁)がついてるし、って感じで(笑)。前は丁寧に置きに行かなきゃっていうか、自分が敷いたレールの上を絶対にズレないようにラップしなきゃいけないって感じだったんですけど、今は毎回ちょっと違ってもいいかって。それで、一番良かったものを録る。
- STUTSさんは歌詞を書く時間は結構かかる方なんですか?
STUTS - どれくらい時間をかけたのかは覚えていないんですけど、あの2曲を作ったのは去年の10月頃で。10月から12月、今年の1月にかけてブラッシュアップしていたんですけど、歌詞書くのにめちゃくちゃ時間かかったって感じではないかもしれないです。どちらかと言うと、昔ラップやろうと思っていた時は最初にリリックを書いていたんですけど、今回試したのは最初にフロウっぽいのを歌って、そこに言葉を嵌めて、ちゃんと音楽っぽい感じに聞こえる言葉を選んだんです。“Vapor”は合計時間で言えば2日、3日ぐらいですね。
BIM - 俺がフロウを先に作るってやり方を初めて知ったのはSEEDAさんなんですよ。昔何かのインタビューで言ってて、「そういうやり方も確かにあるな」と思って。でも今はそれが主流ですもんね。
STUTS - BIMくんに一番最初に“Tokyo Motion”のトラックを聴かせたときに、すぐにボイスメモでフロウを録ってたじゃん。「なるほどな、こうやってフロウをメモしてるんだ」って思って、自分もその経験があったから“Vapor”のトラックが出来たときに、なんとなくメロディとフロウを無意識で口ずさんでたので、「これ録ってみようかな」ってところで始まったんです。
BIM - “Tokyo Motion”の「ノリノリ/目が覚めるほどに/ほんとに」ってところは、本当に何も考えずに歌ったんですよ。それをそのまま活かして。言葉有りでやったんですけど、意味は無いんですよね。そこから「こういうこと書いていこう」って広がったんですけど、最初はどっちが出るか分からないコイントスみたいな感じで始まった。
STUTS - 第一印象をパッキングして活かすのは取っ掛かりとして良いんでしょうね。僕もこの1年半ぐらいでボイスメモを物凄く使うようになりました。別に歌うだけじゃなくて、メロディを考える時にすぐ録って、後でシンセで弾いたり。
BIM - 一発目が良かったりしますよね。
STUTS - “想定内”のシンセも、最初にパッと弾いたものをボイスメモで録って、後でそれを再現したりしたので。もちろん詰めた方が良い場合もあるんですけど、第一印象が大事なのかなって。
- BIMくんにNo Busesのことを訊きたいんですけど、そもそもどういうきっかけで知ったんですか?
BIM - 友人に教えてもらって。後でその子に感謝のメール送りました(笑)。名前だけでは分からなかったんですけど、「このMVの人」って言われて見せてもらったら「あ、知ってる知ってる!」ってなって、アルバムとかEPを聴いて。全員フォローしたら、ボーカルの近藤くんも知ってたみたいでフォロー返してくれて。そこからライブ行って、みたいな感じですね。普通にヘッズとして。
- バンドとやるのは意外なイメージでした。
BIM - D.A.N.とかDYGLとかずっと好きなバンドとかはいるので、ライブを観に行ったりはしていたんですけど。でも、No Busesにはめちゃめちゃ猛アタックしたいって思って。絶対に良いものが出来ると思ってたら、本当に聴いてる部分が近くて。俺は勝手に性格も合うなと思って。その流れで“Good Days”も出来ました。近藤くんの制作ペースと俺の制作ペースがかなり近い速さで。あまり待たせた感じも無く、俺も待った感じも無く、ポンポン出来た感じです。
STUTS - 良い制作だね。
BIM - 彼がニュージェネレーションすぎて。外で携帯とBluetoothで飛ばせる機材だけ持って、Garage Bandでずっと作ってるらしくて、“Good Days”もそれで作って。帰ってLogicで作り直すらしいんですけど。
STUTS - Garage Bandは感覚で作れるから良いよね。そういう作り方なんだ。
BIM - 結構話早かったですね。三宿の新記って中華料理屋で飲んで。Pennackyくんとタッグで映像やってるKeiくんっていう監督がNo Busesのビデオ撮ってたりしてて、Pennackyくんとやるのも自然な感じだったし。
- みんな意外だったと思うので面白いですね。
BIM - No Busesのファンの人は海外の人が多いって聴いてたんですけど、YouTubeのコメントも英語が多かったですよね。楽しかったです。バンドとやるのは凄く勉強になりましたね。
STUTS - 演奏にBIMくんのビートのパートが入っていくのはどんな感じで作って行ったの?
BIM - 近藤くんが作った基盤があったんですけど、それから結構ベースとかギターの感じが変わって。それを変えていく中で、暇だから「ここ8小節やるか」って、ギターだけ残して全部カットしてベースとドラムを入れて。近藤くんが終わった後に「これ出来たんだけど、どう?」って聞いたら「めっちゃ良いじゃないですか」ってなって、採用。色々やって、残ったものがあるって感じですね。でもやって良かったなと思います。あれこそ言いたいことを俺の中では結構言えて、かつフロウがしっかり良いものになって。海外の人が聴いても面白く聴いてもらえるんじゃないかなって感じが一番出来ました。
- 自分の中でのフロウの評価基準はどういう要素なんですか?
BIM - 超つまらない答えになっちゃうけど、自分が納得するかしないかってだけだから、何かと比べてってことは無いかもしれないですね。俺が「これはカッコいい」「これはカッコよくない」って感じだけにしておかないと、作るのが億劫になっちゃう。RENくんに聴かせてダメってなったらもうダメだし、俺がダメでRENくんに送ることはもう無くなりましたね。前は「ダメかも」って思って良いってなることもありましたけど。今回は俺が「これは良いでしょ!」って送ったものがシンプルに「良いですね!」みたいに(笑)。
REN - 録るのが楽しそうだったんで(笑)。それが一番良いですよね。
BIM - STUTSくんも、俺らが一緒に作ってたときに「風通しが良い制作活動だね」って言ってくれて。
STUTS - その時僕は自分の作品を作ってて、それに物凄く入り込んでた感じだったからだと思うんですけど、無駄なところで変に悩むことが無いというか。そんな感じがして。凄くフットワークも軽く、でもちゃんとこだわってるところは凄くこだわってるし。それが凄く良いなと思ったんです。
BIM - 周りにいる人が俺の中ではめっちゃ信頼出来る人しかいないから、任せるところは任せる感じですね。
STUTS - その感じが凄く良いと思ったんだと思います。
BIM - ツボイさんや小森さんが良いって言うならこのミックスは良いんだと思う、みたいな(笑)。そういう感じが出来るようになったのかな。前は不安だから最後の最後まで自分でやってたけど。
- BIMくんから見て、STUTSくんの安心して任せられる部分はどんなところですか?
BIM - 超細かいから(笑)。俺の持っていない部分っていうか、俺が本当は欲しかったけど諦めた部分をSTUTSくんはいっぱい持ってるから、突き詰められる。俺が「もういっか」みたいな感じになっちゃう部分を、STUTSくんは最後の最後まで磨き上げてくれるので。STUTSくんが良いって言うんなら良いんでしょう!って(笑)。
STUTS - もっと頑張ります......。細かくなるのも場合によるというか......。
BIM - STUTSくんが大雑把になるのは無理でしょ、来世に期待(笑)。それがSTUTSくんの良さだし。車で聴いて、その後イヤホンで聴いて、ヘッドホンで聴いて、別のヘッドホンで聴いて、家のスピーカーで聴いて、ラジカセで聴いて、っていうのを何十回もやってたんですよ。
STUTS - 本当に何十回も繰り返してました。
BIM - それを2週間続けたらしいです。
- 凄い(笑)。
STUTS - ミックス全体のバランスとかを考えるときとか、ミックスチェックもそんな感じでやっちゃってて。でもそれは僕が効率悪いというか、ちゃんとしたモニター環境があれば変わるのかなともと思うんですけど、毎回そうなってしまうんですよね。沼に入り込んでました(笑)。でも、今回の自分の作品は自分でやった範囲が凄く広かったので、よりそうなっちゃったんだと思います。
- 一つのことを追求しながらやれることがどんどん増えてるのは凄いことだなと思って。インストの曲のミックスは自分でやっているんですよね。ギターとボーカルとベースも自分でやっているとのことで。
STUTS - ギターやベースはまだまだ演奏なんて言えるものではないんですけど、打ち込みで出ないニュアンスを自分でも出せたらいいなと思って弾いてみました。ミックスに関しては今までの作品も半分くらいは自分でやっていて。でも自分で弾いた生楽器から作り始めるのは今回初めてやったことかもしれないですね。
- ギターを弾いているのは“Landscapes”ですよね。あのギターも凄く良いなと思って。
BIM - 渋谷系な感じで。
STUTS - あれはギターの練習をしてて、「このコード進行で練習してみよう」ってなった進行を弾いてて、それに合わせてメロディを口ずさんで、その後のコード進行を適当に作ったりして。弾き語りみたいにして作った曲ですね。
BIM - 元々STUTSくんがそういうフェーズに入ってることは勝手にリスナーとして思ってたんですけど、今回は確実に「オトナ」って感じで。ヒップホップってどちらかと言えばヴァースがあってフックがあってヴァースがあって、ブリッジがあって最後にフックって感じですけど。
- “Vapor”も後半の展開が「最初のボーカルからこういう感じに展開するんだ」って。
BIM - “Contrast 2”が俺は好きだった。オトナの余裕感が。
STUTS - 作ってるときに余裕はあまり無かったけど(笑)。
BIM - ヒップホップが「ハンバーグとサイダーおいちー」みたいな感じだとすれば、もう「チョコとバーボン」みたいな感じがあるなって。
STUTS - 確かに1stの時とはまた違った感じになってるかも。
BIM - ヒップホップってジャンルを経ての、今のニューSTUTSって感じ。
- 自分で展開を増やしたいとか、そういうことを考えてやっていた訳ではない?
STUTS - 作っていくうちに「ここにこういう展開あったら良いな」って考えていたら今みたいな感じになって。 選択肢の幅はだいぶ広がりました。あと、1st以前はサンプリングでしか納得いくものが作れなかったので、その状態が縛られている感じがして嫌だなっていうのはずっと思っていて。元々MPCで作り始めたので。色々な作り方をしている人を見て、もっと自由に作れるようになりたいなとは前から思っていました。
BIM - STUTSくんも一緒か分からないけど、ヒップホップの最初に好きなところって「これしかない物なのに生み出してる俺、ヒップホップって最高だな」って思ってたのが、俺もそれがコンプレックスになっていって。メロディーはつけない方がヒップホップって思ってたし、昔はそれがセルアウトって呼ばれてたじゃないですか。今はもう死語になっちゃってたけど。元々ダサいことだと思ってたけど、それがコンプレックスになってきた。俺もボーカル面で「もうちょっとマイクを良いものにしたいな」とか、常にありますね。「メロディーもっとちゃんと付けれるようになりたい」「楽器増やしたい」って。
STUTS - 芯をブレさせずに、変に捉われすぎたくないっていう気持ちがあって。BIMくんもあるのかなって思う。そういう感じのスタンスでやっています(笑)。
- お互いの作品については、今のコメントが綺麗にまとめている感じですね。一つ訊き忘れていたんですが、高城晶平さんはどうして参加することになったんですか?元々想定していたんでしょうか。
BIM - 想定“外”でしたね(笑)。まあ、苗字が一緒だから良いかなと思って(笑)。この前高城くんのソロを聴いて。ceroは元々めちゃめちゃ好きだったんですけど、俺がceroを呼ぶってことはなかなか想像しづらくて。ceroの方にいつか呼んでいただけることはあっても、俺の方でceroに入って貰ったらceroの曲になっちゃうし。そう思って高城くんのソロを聴かせていただいた時には“Tokyo Motion”のビートがあって、「高城くんとやりたいな」って。シンガーの方を入れたいっていうのはあったんですよ。それで高城くんが良いなって。夏っぽくしたかったんで。なんとなく、トラックが軽快に走る車のCMみたいじゃないですか(笑)。そんな感じで、高城くんが入ったら風通しの良い曲になるかなって。
- なるほど。
BIM - どの曲が好きでしたか?
- 僕は“Good Days”が好きで。でも“One Love”も個人的にダンスホールが意外だったし、“Jealous”もそうだけど。
BIM - そうですね。「Fire Fire」って出た時に一人でめっちゃ笑いました(笑)「やっていいのかな?」って。
STUTS - 今日も来る途中に聴いてたんだけど、前に聴いたときとまた印象が違う感じがあって。色々な側面を持ったアルバムだと思うから、色々な時に聴いて「あ、今日はこの曲の気分だ」ってなるんじゃないかなっていうのを、改めて聴いて思った。良いアルバムだなって、
BIM - 凄い嬉しい。
- BIMくんはSTUTSくんの作品だと“Contrast Part 2”が良かった?
BIM - “Contrast Part 2”と、“Landscapes”、“Contrast”......全部良かったな。“Part 1”、“Part 2”って入ってるから、一つって感じがするかも。
STUTS - あれは元々1曲だったんですけど、分けてみた方がこの曲はいいかもって。
BIM - 鎮さんとDaichiくんの曲だけ聴かせてもらってて。でも、そういう曲がいっぱいあるって感じのイメージのアルバムでもないし。“Landscapes”が一番好きかもな。
STUTS - 嬉しい。
BIM - オザケンさん出てきてもおかしくない(笑)。変に巧みなギターの人よりも、俺はSTUTSくんが弾いてる感じの方が好きですね。
STUTS - 生楽器って音の感じが人それぞれで、同じ楽器使ってても全然違う音になるので、上手い演奏をしようというよりは、自分なりに良いなって思う音を弾けるようになったら良いなって感じで挑戦しました。
BIM - ギターとかも、凄く丁寧な人だなっていうのが出てる感じで。絶対ずらさないって感じが。
STUTS - あれは物凄い修正してるから(笑)。自分が歌った2曲に関しては、これを発表するべきかっていうのを凄く悩んで。友達とかにちょっとずつ聴かせていって、「もしかしたら大丈夫かもな」って感じで収録した感じだったんです。最初弟に聴かせて、その後にJJJに聴いてもらってって感じで。聴いてもらった人達には本当感謝してます。
- 背中を押してもらった感じだったんですね。
STUTS - 友達やレーベルの方々に背中を押してもらえたことが大きかったです。
- 二人の関係性から見ても、今後も曲を作ることはありますよね?
BIM - 「でさあね」って感じ(笑)。月2回は会うよね。
STUTS - なんだかんだね。
BIM - この後も一緒に買い物でもいきましょうよ。
STUTS - あ、行きたい、行きたい!
Info
STUTS『Contrast』
https://ssm.lnk.to/contrast
2020.09.16 On Sale
PECF-5004 / 2,000yen+tax
Released by Atik Sounds / SPACE SHOWER MUSIC
[TRACK LIST]
01. Conflicted
02. Mirrors (feat. SUMIN, Daichi Yamamoto & 鎮座DOPENESS)
03. See the Light
04. Contrast, Pt. 1
05. Contrast, Pt. 2
06. Vapor
07. Landscapes
08. Seasons Pass
【ライブ情報】
STUTS "Contrast" Release Live
出演:STUTS with 仰木亮彦 (Gt), 岩見継吾 (Ba), 吉良創太 (Dr), TAIHEI (Key)
東京 ライブ配信 <LIVEWIRE>
10/26 (月)
19:30 - START
19:00 - OPEN
見逃し配信:
2020.11.2 mon 23:59 JSTまで
チケット販売期間:
2020.11.2 mon 21:00 JSTまで
TICKETS NOW ON SALE!
前売り:¥2,000 当日:¥2,500
https://livewire.jp/schedule/stuts201026/
■ツアー詳細
名古屋 10/17 (土) JAMMIN’
(1公演目)open 16:15/ start 17:00
(2公演目)open 19:45/ start 20:30
前売り:¥3,900- (税込・オールスタンディング・ドリンク代別途必要)
Information: 052-936-6041 (JAIL HOUSE)
大阪 10/18 (日) LIVEHOUSE ANIMA
(1公演目)open 16:00/ start 16:30
(2公演目)open 19:30/ start 20:00
前売り:¥3,900- (税込・オールスタンディング・ドリンク代別途必要)
Information: 06-6535-5569 (SMASH WEST)
東京10/26 (月) LIQUIDROOM
open 18:30/ start 19:30
前売り:¥4,200- (税込・オールスタンディング・ドリンク代別途必要)
Information: 03-3444-6751 (SMASH)
チケット一般発売: 9月19日(土)
名古屋・ぴあ(P: 187-142)
大阪・ぴあ(P: 187-248)
東京・ぴあ(P: 187-136)
info:https://smash-jpn.com/live/?id=3419
Info
Artist : BIM
Title : "Boston Bag"
Format : Digital
Release Date : 2020/08/28
Label : SUMMIT, Inc.
No. : SMMT-153
詳細https://www.summit2011.net/bim-boston-bag/
■Track List
1. Get Gas (Hey You Guys) [Prod. by Rascal]
2. Veranda [Prod. by STUTS]
3. 三日坊主 [Prod. by Rascal]
4. One Love feat. kZm [Prod. by G.RINA]
5. Jealous feat. KEIJU [Prod. by Rascal]
6. Cushion [Prod. by Astronote]
7. 想定内 [Prod. by STUTS]
8. Tokyo Motion feat. 高城晶平 [Prod. by STUTS]
9.Good Days feat. Cwondo[Prod. by Cwondo]
10. Time Limit [Prod. by 熊井吾郎]
11. Non Fiction feat. No Buses [Prod. by No Buses]