【メールインタビュー】KYNE 『KYNE TOKYO 2』 | 表面的な視覚効果として描く
福岡の街を歩けば、必ずと言っていいほど見かける、KYNE(キネ)のグラフィティ。
福岡出身の彼は、どこか儚げであったり意味深な表情の美少女をモノトーンの線画で描き、ストリートだけでなくアジア圏含めた幅広い層から支持を得ている。日本のグラフィティライターでもっとも成功したうちの1人と言えるだろう。
現在、都内では2度目となるKYNEのソロエキシビジョン『KYNE TOKYO 2』が、アートスペース・SAIにて開催中。本展は、渋谷駅からほど近い、新しくできた巨大な商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK内」にて、ギャラリーとビューイングという、2つのスペースで構成された本展は、SAIのオープン記念エキシビジョン第1弾として行われる大規模な展覧会だ。
今回個展を記念して、人前に顔を出さないKYNEにメールインタビューを行った。長年の経験から導き出されたであろう、安心感のある内容の返信をもらえた。実際に展示に足を運んで、彼ならではの洗練された筆致と個展ならではのサイズ感に圧倒されてほしい。
質問・構成:高岡謙太郎
写真:Cho Ongo
存在しない女性の絵に囲まれた空間
- すべてが新作という今回の展示ですが、テーマがありましたら教えて下さい。また、いちばん気に入っている作品があればコメントも頂けましたら。
KYNE - 特に今回の展覧会に限定したテーマなどはないので、自由に観てもらえたらと思います。メインの作品(MIYASHITA PARKが描かれた作品)が気に入っています。
- 珍しく風景が描かれていますね。RAYARD MIYASHITA PARKに対しての印象をお聞かせください。
KYNE - 宮下公園は何度か通ったことがありましたが、変貌ぶりと開発の規模に東京のパワーを感じました。同時にホームレスの方や支援団体の方のデモを見て都市開発の正解がなんなのかを考えました。
- 今回は大きいサイズの作品が並びますが、今回の展示で苦労した点はありますか?
KYNE - 制作のプロセスは同じなので大きいと物理的に大変な部分が増えて苦労しました。キャンバスを動かすだけで複数人必要であったり、材料や作業時間が増えたりなど。
- 女性を描き続ける制作のモチベーションについてお聞かせください。モチーフは実在する人物ですか?
KYNE - 過去に仕事として実在の人物を描いた事もありますが、基本的には実在しない人物です。性格や名前はもちろん存在しませんし、そこに対する表現ではなく、あくまで表面的な視覚効果として女性を用いています。
- KYNEさんはグラフィティ出身ですが、どういったきっかけでギャラリーと繋がりましたか?グラフィティとは現在はどういった距離感で接していますか?顔出ししないのもグラフィティのマナーですか?
KYNE - グラフィティを始めた当初から並行して作品制作はしていたので、自然な形で作品展などは参加していました。現在のギャラリーはお世話になっている先輩に紹介していただいたのがきっかけです。
今はグラフィティはやっていません。色々と理由はありますが、これだけ表で活動していたら確実にすぐ捕まります。そこから別のグラフィティライターを巻き込む可能性があるので。
顔を出さないのは当初はグラフィティのマナーでしたが、自分の性格に合ってることや作品鑑賞の邪魔にならないようにと思っています。
- 2006年頃から活動をスタートされていますが、KYNEさん御自身の活動を時期によって区切ることができますか?
KYNE - 2010年までは色々な事に興味を持って経験してきたと思います。2010年から今の作風になるんですが、それまでに自分の中で別モノと捉えていた活動が重なって答えが出たような気がします。
- ご自身の中では、イラストやアートの歴史のなかでどういった立ち位置になりますか。江口寿史やジュリアン・オピーの影響が色濃く思えますが、ご自身の作品の魅力に関して、自分で分析したことはありますか?
KYNE - 江口寿史さんはよく言われますが直接的な影響はあまり受けていないつもりです。もちろん作品は知っていますし潜在的な影響はあるかもしれません。漫画家だとカネコアツシさんの絵は実際に模写をしてみたり同じペンを真似して買ったり、ハーフトーンを使わない表現など直接的に影響が濃いと思っています。ジュリアンオピーに関してもあまり自発的に観ていなかったので潜在的な影響はあるかもしれないです。
最終的な作品のビジュアルと自分の知っている範囲の作品で影響を結びつける事は簡単で理解した気がするんですが、プロセスや活動コミュニティについて深く知る必要があると思います。
- 最近気になっているグラフィティアーティストはいますか?
KYNE - グラフィティに関しては10代の頃に見た地元のグラフィティライターを超える衝撃はないと思います。素晴らしい方はたくさんいると思いますが個人的なインパクトはやはり最初に出会った身近な人達です。
- 顔を出さないまま活動を続けていますが、その長所と短所を教えていただけますか。
KYNE - 長所は面倒な場面で気付かれにくいこと。短所は必要な場面で気付いてもらえないこと。
- 福岡のアーティストで気になっている方はいますか?また福岡らしさというものはありますか?
KYNE - 一緒にオンエアをやっているNONCHELEEEくんや高校時代の先輩であるRyohei Sasakiくんなどは毎回作品を楽しみにしています。福岡らしさというのはわかりません。
- 運営されている福岡のカルチャーショップON AIRの東京支店もできましたね。福岡でおすすめのお店があれば教えて下さい。
KYNE - だいたいのオススメは調べれば出てくるので、あまり上がらないお店だと「ドライブイン鳥」という焼き鳥屋さんです。バイク仲間でよく行きます。
- 過去に内田洋一朗さん山口歴さんなどとコラボレーションされていますが、今後コラボレーションしたい方やチャレンジしてみたいことなどあれば教えて下さい。
KYNE - コラボレーションに関しては現在は特に考えておりません。出会いや作家とのコミュニケーションで生まれる事はあるかもしれません。
チャレンジしてみたい事は一人では作れないものや規模の作品を作ることです。
- 最後に今年の夏の過ごし方についてお聞かせください。
KYNE - アトリエの近くに海があるのでたまに散歩したり絵を描いたりだと思います。
Info
『KYNE TOKYO 2』
TERM : 2020 年 7 月 28 日(火)~8 月 24 日(月)
PLACE : SAI
ADDRESS : 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6-20-10
RAYARD MIYASHITA PARK South 3F
HOURS : 11:00 - 21:00(無休)
TEL : 03-6712-5706
MAIL : INFO@SAIART.JP
Co sponsored by GALLERY TARGET
※館内の3密を避けるため、7月28 日(火)から当面の間は、事前予約制・入場制限を実施いたします。
詳しくは施設ホームページへ
https://mitsui-shopping-park.co/urban/miyashita/