【コラム】SKATELOG by hakase Vol.3|2020 and STREET

みなさんこんにちは、ハカセです。気づけばもう2019年も後半戦ですね。あと3カ月で2020年がやってきます。2020年といえば、はいそうですね。オリンピックです。そして今回のそれはいままでと一味違います。あの不良の遊びとも言われたスケートボードが、由緒正しきスポーツの祭典オリンピックで史上初めて競技として採用され、しかもその第1回目がここ日本で行われようとしています。これは快挙であります。

さて第三回目となりましたこのSKATELOG、今回はそんなスケートボードの歴史上でも最も大ニュース、オリンピックについて書いてみたいと思います。

文:hakase
写真:Cho Ongo

 

時代の変化にともない、オリンピック側は若年層の関心を高める一つのきっかけとして、スケートボードを追加種目として決定したとも言われていますが、これを受け世間での注目度は一気に上昇。連日のようにテレビでスケートボード関連のニュースも目にするようになりました。いままであまりスケートに関して聞いてこなかった自分の母親ですら「あんたはオリンピック出れないの?」と聞いてくるような状況です。

ではオリンピックオリンピックって言うけど実際スケートボードでどんなことをやるのでしょうか?スノーボードのハーフパイプみたいなやつ?手すりシャーってやつ?
今のところ、オリンピックでのスケートボード競技の種目は"ストリート"と"パーク"という二つのスタイルに分かれて行われるようです。

まず"ストリート“ですが、以下のような感じ。

で、"パーク"はこんなかんじ

なんとなくわかりますかね?
ストリートはその名の通り、街中にあるような手すりや階段とかを滑るスタイル。パークは、海外のでかいスケートパークにあるようなお椀型のボウルとかプールとか呼ばれる斜面をシャーっと滑るスタイルです。

いずれのスタイルも、決められた時間内にどれだけ難しいトリックを数多く成功させるかを競うのですが、もうほんとにオリンピックなんて出場しちゃうレベルのスケーターのその成功率の高さたるや、ぼくらみたいな街によくいるスケーターのそれと比較になりません。1000回やっても1回もできないような高難易度なトリックの数々を、1分や2分くらいしかない競技時間の中で次から次へと成功させていきます。また、近年では日本人選手の海外有名大会での活躍も目覚ましく、金メダルを獲得する可能性も大いに期待されています。

しかし先日こんな事がありました。いつものように街中で滑っていたら、おまわりさんに「せっかくオリンピックにもなったんだから、ちゃんと練習できる場所でやらないと頑張ってる仲間にも迷惑かけるでしょ〜」と言われてしまったのです。

実は、オリンピックが実現するかもしれないと噂され始めた時点から、スケートボードがよりスポーツとして認識されることで様々な弊害もでてくるのではと懸念するスケーターも少なくありませんでした。

街中、つまり"ストリート"でのスケートはひとたび誰かが危ないまたはうるさいという理由で通報し、警察官が来てしまえば即座に強制終了です。が、それを罰するための明確な法律も存在しないため、注意されることは頻繁にあっても、逮捕されたり切符を切られたりすることはほぼ無し。とりあえずその場は解散して場所を移してまた滑るの繰り返しです。

しかし、このままオリンピックを迎え、スケート人口が増加、それに伴って全国にスケートパークが増加し、決められた場所でルールを守って行う一つのスポーツとしてスケートボードの認知が広がれば広がるほど、もともと"ストリート"で滑っていたスケーター達に対する世間の目は「ルール違反をして真面目にスケートパークで一生懸命練習しているスケーターの足をひっぱる人たち」という印象が強くなる事も考えられます。

また、過去にはブレーキを持たないピストバイクがブームになりすぎ、その扱いの難しさから事故が絶えなかったため結果として2013年にノーブレーキ自転車を販売してはいけないという明確な法律ができたように、現状特に取り締まるルールがないスケートボードに対しても、何かしらの決まりが制定される可能性も否定できません。

これは単に自分達がストリートで滑りづらくなってしまうのを懸念しているわけではありません。そもそも"ストリート"で生まれたスケートボードが、オリンピックの1競技としての"ストリート"に殺される事になったらなんとも皮肉だなと思っているわけです。


halloween hellbomb 2018


dime glory challenge 2018


cph pro 2019

最近では、難易度や成功率などスケートボードのトリック面ばかりにフォーカスした従来のコンテストシーンに一石を投じるかのごとく、上のビデオのようなスケートボードが本来持つ、自由さや楽しさ、そして激しさを思い出させてくれるハチャメチャなコンテストが数々開催されています。中でもカナダはモントリオールのDimeが主催するおふざけ全開のイベント"DIME GLORY CHALLANGE"はその勢いを年々増し、世界中のトッププロが毎年カナダに集結して本気でふざけ合う注目のコンテストとなっています。(しかも噂ではなんと来年オリンピックに合わせて日本での開催を企んでいるとか。流石です。)

順位もルールもない、海に行かなくても山に行かなくても、ドアを開けた瞬間から世界が遊び場に変わるのがスケートボードの最大の魅力です。来年以降、果たして日本のスケーターの心の中に、この根っこの部分がどれだけ残っているのでしょうか?オリンピックは何をもたらしてくれるのか?
東京2020までいよいよです。

 

 

PROFILE

hakase

長野県出身。Diaspora Skateboardsのメンバー。あだ名のhakaseは、詳しい方の博士ではなく、ひょっこりひょうたん島の同名キャラクターが由来。

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