【コラム】SKATELOG by hakase Vol.2|SKINNY STYLE

こんにちは、ハカセです。暑いですね。いよいよ夏本番です。スケーターもそうでない方もこまめな水分補給を忘れずに熱中症には気をつけていきましょう〜。

文:hakase
写真:Cho Ongo

さて前回はスニーカーの話からバギーなパンツについて書かせていただきました。もともとスケーターというとルーズなファッションをイメージする方が多いかと思われますが、ここ最近はそのイメージ以上にバギーなサイジングが流行してきています。しかし一口にスケーターと言っても、もちろんみんながみんな同じカッコをしているわけではありません。バギーなパンツを履いているスケーターもいれば、当然スキニーなパンツを履いているスケーターもいるわけです。

思えば自分がスケートを始めた15年くらい前は、もっとたくさんスキニーなパンツを履いたスケーターがいたような気がします。そこで今回は、スキニーなパンツで一世を風靡したレジェンドから、スキニーなスタイルで存在感を放つ注目の若手まで何人かご紹介しつつ、こんなヤツらもいるんだなぁ〜っとスケートカルチャーの幅広さを感じていただけたらと思います。


コリー・ダッフェル

さて、いきなりクセの強いスケーターを出してしまいました。すみません。が、スキニーなパンツを履いたスケーターを紹介するにあたり避けられないのがこの人です。

2000年から2010年あたりまで活躍した彼ですが、見ての通りのパンク野郎で、当時のスケートシーンにおいてもここまでスキニーなパンツを履いているスケーターはいませんでした。そして彼はその独特なファッションはもちろんですが、それ以上に危険度の高いスケートスタイルで人気を博しました。他の有名プロスケーターでも恐れるような巨大な階段やその手すりにハイスピードでガンガン突っ込みまくる。腕が折れていようがギプスのまま滑り続ける、まさにパンクを滑りで体現したような漢です。高いところから飛び降りる部門では堂々の殿堂入りスケーターでしょう。


ディラン・リーダー

説明不要かに思われますが、あえて説明します。白血病を患い28歳という若さで他界してしまい文字通り伝説のスケーターとなってしまったこの人。
モデルとしても活躍していた彼は見ての通りの男前。2010年にGravisから発表されたビデオ『dylan.』では、まるでファッションショーから飛び出してきたかのようなスタイルで登場し、全世界に衝撃を与えました。

彼はもともと『dylan.』以前よりイケメンかつスタイリッシュなスケーターとしてコアなファンが多かったのですが、この映像ではトレードマーク?でもあったロングヘアをばっさり切り、ロールアップした細いパンツに白シャツという当時だれもしていなかった服装で現れ、イメージを一新。
しかし何より彼を有名にしたのはこのビデオ内でのスケーティングでした。スピード、スキル、度胸、トリックの完成度など、どれをとっても当時のスケートレベルの数段上。加えてそのモデルのような体型もあいまって、その滑りはまさに芸術の域に達していました。パート内のトリック一つ一つに声を出さずには見られない衝撃の内容だったのです。

この『dylan.』公開後のスケートシーンへの影響は凄まじく、以降ロールアップした細めのパンツを履いたスケーターが急増。彼の必殺技でもあるデッキを足に絡ませながら一回転させる「impossible」というトリックも大流行。(ちなみにimpossibleは当時あまりかっこいいトリックとはされていなかった)
スケートスタイルに「ディラン・リーダー」という新たなジャンルが生まれた瞬間でした。


ベン・カドウ

前述の二人はレジェンド枠ですが、現在進行形で活躍中なのがこちらのベン・カドウさん。

まあよく見たらそんなにスキニーでもないんですが、おおまかに分類すれば上記の二人よりな感じなのでご紹介。

Supremeが2018年にリリースしたビデオ『BLESSED』内でいきなりトップバッターに大抜擢。その異質なファッションと挙動不審さ加減はまさに狂人と言われても仕方なしな、いい意味でも悪い意味でも存在感抜群な問題児です。Supremeっぽくなくない?って声が聞こえてきそうなやつがトップバッターなのがSupremeっぽくて最高です。

彼はぶっちゃけ気合いです。スキルは前述の二人と比べるとだいぶ劣ります。
しかし、うまけりゃいいじゃないのがスケートボード。足りないスキルを気合いでカバー。何度ぶちこけてもゾンビのように這い上がる。洋服ぼろぼろなのは見掛けだけじゃないんです。全身から滲み出る彼にしか出せないオーラが出まくっていて、見る者全ての脳天に何かが刺さっちゃうスケーターです。

さて他にもまだまだ語りつくせないほどスキニーなスタイルで名を馳せたスケーターはおりますが、今回はひとまず以上の三名をご紹介させていただきました。

一見、彼らは細身のスタイルという点では共通しているようにも思われますが、よくよく見るとなんとなくファッションも滑り方もそれぞれ違います。きっとルーツもバラバラであるのも想像がつきます。ではこの三人、いや、いまトレンドのバギーなスタイルで人気を博している前回紹介したようなスケーター達も含めて、スケートシーンにおいて確固たる存在感を放っているヤツらに共通していることはなんでしょうか?

それはずばりオリジナリティです。他のスケーターの真似をするだけではなく、良いとこどりしてそこに自分の色をつけていく。たくさんのカッコいいスケーターを見て育ち、そのたくさんのスケーターから受けた影響を自分なりに消化して、自分のスタイルとしてアウトプットする。それが出来るか出来ないかでだいぶ違います。上手い下手があるのは当たり前です。しかしそれ以上にそのスケーターの好きな音楽や、性格、ライフスタイルにまでわたる全てがスケートに現れるから面白いのです。

真似するだけではそれ以上になることは絶対にあり得ませんが、そこに自分のスタイルが加われば唯一無二のオリジナルとなります。
ちなみに三人目に紹介したベンさんの影響を受けたスケーターはディラン・リーダーだそうです。

さて今回はスキニーなスタイルのスケーターについて書かせていただきましたがいかがでしたでしょうか?オリンピックを目前に控えている今だからこそ、スケートの競技的でない、カルチャー面を感じていただけたら幸いです。
それではまた次回!

 

 

PROFILE

hakase

長野県出身。Diaspora Skateboardsのメンバー。あだ名のhakaseは、詳しい方の博士ではなく、ひょっこりひょうたん島の同名キャラクターが由来。

hakase Instagram

Diaspora Skateboards

Diaspora Skateboards Instagram

RELATED

【コラム】SKATELOG by hakase Vol.10|Q&A

今回は記念すべき第10回目となる。予めInstagramから募った読者の質問の中からピックアップし、hakaseが回答していく。

【コラム】SKATELOG by hakase Vol.9|シグネチャーモデル

今回のコラムではプロとはなんぞや?について書いていこうと思います。

【コラム】SKATELOG by hakase Vol.8|Story behind the board

みなさんこんにちは、ハカセです。さて、前回のコラムではスケートする上での心構えのようなものについて書かせていただきましたが、今回はそれに関連してもう少しスケートの「スキル」より「メンタル面」について書かせていただこうかなと思っております。 文:hakase 写真:Cho Ongo 早速...

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。