【コラム】SKATELOG by hakase Vol.1|CHUNKY SHOES
突然ですがみなさんこんにちは。Diaspora Skateboardsというスケートボードクルーで、滑るだけ担当をしているhakase(ハカセ)と申します。この度ご縁がありまして、FNMNL様にてコラムを書かせて頂く事になりました。このコーナーは、スケートボードには興味がある、あるいはファッションは好きだけど、詳しいことはいまいちわからない、マニアックなネタはちょっと、という読者の方にもわかりやすく読める、スケートボード関連のファッションやカルチャー、トレンドについて、毎回テーマを絞って解説させて頂くコーナーです。
そして第一回目となる今回のテーマは、「CHUNKY SHOES」です。いきなりなんじゃそりゃ?って声が聞こえてきそうですが、そんな方々にこそぜひ読んで頂きたいと思います。少し長くなりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
文:hakase
写真:Cho Ongo
さて、最近ボリュームのあるスケートシューズが再燃しています。ここ10年、スケートシューズといえば、いわゆるバルカナイズドソールと呼ばれる薄型のソールを使用したローテクタイプが主流でした。代表的なもので挙げるとすればVANSのオールドスクールや、コンバースのオールスターなどを想像してもらうとわかりやすいかと思います。
これらのシューズの特徴やメリットは、無駄を省いたシンプルな構造で、スケートボードを素足感覚でコントロールすることが可能ということがまず第一に挙げられます。また、見た目の面においても、近年流行のハイウォーターパンツ(丈の短いパンツ)などと相性がよく、現在では一般的に広い範囲のスケーターに受け入れられているタイプとなっています。
皆さんご存知のsean pablo。
しかしここへ来て最近、DCなどの元祖スケートシューズブランド達が、90年代後半から2000年代前半にかけてブームだったハイテクスケートシューズ全盛期の名作を復刻させ即完売になるなど、約20年の時を経てこれらのごついフォルムのシューズの人気が再燃しています。これらのシューズは本場アメリカでは"CHUNKY"(チャンキー、分厚いの意)シューズと呼ばれていて、踵にエアを搭載していたり、タンが極厚だったりと、足を守ることや耐久性を高めることで、機能性を重視した構造となっています。
先程紹介した薄型ローテクタイプのスケシューと比べて、板が足に当たっても痛くなさそうですよね?トリック時に摩耗する側面やソール部分も分厚いことで耐久性も大幅にアップし、着地の衝撃からも守ってくれます。しかし一方で、分厚さゆえに足裏で感じるスケートボードと足の間隔は遠くなります。複雑かつ難解に回転する板を正確にコントロールするためには、指先の繊細な感覚がカギとなります。つまり、分厚いCHUNKY SHOESは、スケートがかなりやりづらいです!ではなぜそんなやりづらい靴がまた再燃しているのでしょうか?
ここ最近は、スケーターファッションと言われるものの中で、先ほどでもふれたVANSなどのローテクシューズと、ディッキーズなどのワークパンツを、ロールアップしたりカットオフしたりするスタイルが定番化し、街でも見かける機会が増えました。しかし、一度流行してしまうとやりたくなくなるのがスケーターのあまのじゃくなところ。そこで次なるトレンドとして今流行し始めているのが、リーバイスのシルバータブの様なアイスウォッシュのバギージーンズです。
もしかすると、これを読まれている方の中にはすでにそんな感じのジーンズを履いている方もいると思います。しかし一方で、「え、それって一昔前のダサいやつじゃん?」と思う方もいるでしょう。そうです、そのくらいの絶妙なタイミングで、ダサいと言われていたものをオシャレに着こなしていくのがイケてるスケーターの条件なのです。そしてそんなアイスウォッシュデニムの足元に相性ばっちりなのが、今回のテーマのCHUNKY SHOESなのです。
仮にあなたが、「スケーターといえばディッキーズVANSでしょ」とイメージしていたとします。そこでスケートパークで滑っている時に、バギーなアイスウォッシュにCHUNKYシューズを履いたスケーターが入ってきたとしたらきっと、「あんな靴履いてやりづらそうだな」と思うでしょう。しかしそのスケーターが滑り出した途端に、空気が一変。あんなにやりづらそうな靴を履いているのに、そのパークにいる誰よりも上手かったとしたらどうでしょうか?きっと誰もが「あんなやりづらそうな靴履いてるのに上手い!かっこいい!」となるわけです。
また、本来このようなバギーパンツにCHUNKY SHOESのスタイルは2000年前後に流行したスタイルなので、2019年にもなるとそんな時代を知るはずもない若いスケーターがほとんどです。つまりその格好をするということは、同時に元ネタを知って通なスケーターである事の証明にもなるのです。
DCといえばこの人。バギーパンツにボリュームのあるシューズを履いたスタイルで全世界に影響を与えたレジェンドJosh Kalis。今年、およそ20年の時を経て彼のファーストシグネチャーモデルが復刻。大きな話題を呼び、即完売となりました。
ブームの火付け役とも言うべきJohn Shanahan。彼が復刻ではないオリジナルのDCを履いてスケートしていたことが再燃する大きなきっかけとなりました。
ローテクなシューズも履いていますが、バギージーンズにアディダスがクールなHeitor Da Silva。ちょっと前にPalace Skateboardsに加入したことでも話題に。
さて少し長くなってしまいましたが、なんとなくCHUNKY SHOESが再燃している理由がおわかりいただけましたでしょうか?難易度の高いトリックができる=かっこいいではないのがスケートボード。どれだけ上手でもアスリートみたいなピチピチのトレーニングウェアを着ていたらカッコ悪いですよね。どんなスタイルで滑るかもスケートボーディングの重要な要素となります。多少のやりづらさよりも見た目のカッコよさを優先してしまう、そんなスタイルありきなスケートボードだからこそ、いつの時代もストリートのファッションをリードするのはスケーターなのかもしれません。
PROFILE
hakase
長野県出身。Diaspora Skateboardsのメンバー。あだ名のhakaseは、詳しい方の博士ではなく、ひょっこりひょうたん島の同名キャラクターが由来。