【インタビュー】SUMIN | 宇宙のような愛を

Photo Via HYPEBEAST KOREA
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2018年はJvcki WaiやCIFIKAといった強烈な個性を放つ韓国の女性アーティストが日本でも話題となったが、もう一人、ぜひ注目してほしいシンガー・ソングライターがいる。それが、ここで紹介するSUMINだ。

2015年よりSUMINとして活動を開始。自身の楽曲を発表しながら、LOCOやPrimary、DOK2の作品に参加するほか、BTSやRed Velvet、最近ではBoAといったK-Pop勢に楽曲提供を行うなど活動の幅を広げるなか、2018年に初のフル・アルバム『Your Home』をリリースした。さらに同年末には、ZEN-LA-LOCKとのコラボでも知られるKIRINとの共作EP『Club 33』を発表と、目が離せない存在となっている。

90年代R&Bのムードも携えながら、ビート・ミュージックとトラップ以降の感覚で鳴らしたポップでアヴァンなナンバーで魅了するSUMINに、これまでの活動からアルバム『Your Home』、今後の展望などについてメール・インタビューを行った。

インタビュー:加藤直子、soulitude

写真 : 青いTシャツのものはすべて©HYPEBEAST Korea

- 2015年にSUMINとして始動するまでは、どのような音楽活動をしていましたか?

SUMIN - それまではジャズ・シーンを中心に活動していました。今よりもボーカリストに近くて、自分のオリジナル曲は一切やっていなかったんです。自分のオリジナルを作りたいという気持ちはあったんですが、どうすればいいかわからなくて悩んでいましたね。

それでLuv Jones Records(韓国のレーベル)に合流することになってからは、少しずつ自分の音楽について考えられるようになりました。

- その頃から自身でトラックメイキングを行うようになったのでしょうか?

SUMIN - その前からトラックは作っていましたが、オフィシャルにリリースしたことはなく、ただの練習みたいな感じでした。「自分の音楽」というよりは、さまざまな楽曲を真似してみて習っていく感じでしたね。そのプロセスの中で多くを身につけるようになって、自分らしいというかシグネチャー的なサウンドを作り、「自分の音楽」と言えるものをプロデュースして歌えるようになりました。

私はMELON(韓国最大の音源配信サービス)のTOP100チャートに入るような、普通に韓国のポップスが好きです。そういう音楽を作りたいという気持ちは常にありました。そして、いいチャンスがやってきて、プロデュース・チームを組んでドラマのOSTを作ったことがオフィシャルで発表した最初の楽曲でした。

- SUMINさんの楽曲は、ビート・ミュージックやトラップ以降の感覚がベースになっていながら、90年代R&Bやアシッドジャズなどの要素を感じるものがあります。90年代の音楽はSUMINさんのインスピレーション源のひとつといえるのでしょうか?

SUMIN - 私は90年代に生まれたので、やはり90~2000年代のサウンドがオリジンだと言えますが、ただその時代のサウンドにとどまっているわけではありません。その時代の音も活用しながら、新たなサウンドの研究を行っています。

- リスナーとしてはどういった音楽を聴いていましたか?

SUMIN - 私はアーバンミュージックももちろん好きですが、幅広いジャンルの音楽を楽しんできました。Michael Jackson、Prince、Madonna、Dido、Chick Corea、Toto、David Foster、Perfume、Jinbo、オム・ジョンファ、NCT、BoA…最近は私の楽曲も手掛けているベルギーのプロデューサーのPomradや、イギリスSOPHIEにハマっています。

最近もっとも気になっているアーティストはSlom(※)です!彼はソウルとLAを行き来しながら生活している、私とも仲のいいプロデューサーですが、すごすぎると思います。さまざまなスタイルの音楽を作ることができるし、表現力も高いです。なので多くのアーティストが彼を求めていて、愛しています。

※Slom…JAY PARKやZion.T、Hoodyらの楽曲プロデュースで知られる、気鋭の韓国人プロデューサー。2017年にはYonYon&向井太一とのコラボ曲「Period」も手掛けている。

- 2016年頃から楽曲提供の仕事をされるようになりましたね。BTSの"Lie"やRed Velvetへの"봐(Look)"、BoAの"너와 나(U&I)"とK-Popアーティストの楽曲も手掛けているのが印象的ですね。

SUMIN - 私はK-Popが大好きで、たくさん学んでいます。K-Popの一番の魅力は、1曲の中にさまざまな展開があるという点ですね。アレンジの面で影響されています。私を含めて周りのプロデューサーたちも少しずつK-Popのシーンで活動するようになって、それぞれのカラーと説得力を持った音楽を披露しているので、K-Popの中でも多様性が色濃くなってきていると思います。

K-Popの作業で特徴的なのは、何より音楽への執着と粘り。そして、作品を作り上げるプロセスにおける几帳面さですね。ひとつのプロジェクトに多くの人たちが関わっていて、ディテールにすごくこだわっているところが素晴らしいんです。

また、アイドル・グループのメンバーは7~10人、10人以上のチームもありますが、1つのトラックの中にすべてメンバーの声と魅力を盛り込むなんて、とても簡単ではないこと。それを実現していく中での戦略などが勉強になりますね。

- なかでも印象に残っている仕事は?

SUMIN - BoAさんと、シンガーとしても参加したSultan Of The Disco(「미끄럼틀」)のトラックを作ったことです。2組とも私が大好きなアーティストですし、いつかは一緒に仕事をしてみたいなと思っていたのですが、2018年にその夢が叶いました!

特にBoAさんは、私が幼い頃から彼女を見て育ち、多くの影響を受けたアーティストです。日本でも有名ですよね。日本で音楽活動をしながら成長していく粘り強い姿、多言語を操り、多くのスタッフと働く中でも常にプロフェッショナルな様子は本当に尊敬します。スタジオで初めて会ったときは、すごく緊張しました。

- さまざまなアーティストの楽曲にフィーチャーされることも、ここ数年でかなり多くなってきていますが、参加を決める際の基準はどういったものですか?

SUMIN - 参加する基準は簡単です。音楽のジャンルは問いませんが、「私の心にショックを与える音楽」か「お金」か、そのいずれかです。正直すぎますかね(笑)。

- では、SUMINさん自身の作品について聞かせてください。Jinbo(韓国のR&Bシンガー)が参加した2016年のシングル"U & Me"あたりから、SUMINさんの楽曲の強度が増したような印象があります。それまでの作品と変わったところはありましたか?

SUMIN - 確かに、その前と違う私がいましたね。どこかコンパクトになったというか、きれいに整った彫り物のようになった感じですね。それまでは生音をレコーディング&ミックスしていたんですが、この曲からはMIDIの作業に慣れて、もっと濃くなった気がします。

- そして、2018年にリリースされた初フル作『Your Home』ですが、聴き応えのある楽曲が揃っていますね。トラックだけでなく、ヴォーカルの表現もこれまでにない挑戦が散りばめられていますが、アルバムを作るにあたって最もこだわった部分はどういったところですか?

SUMIN - 私は愛から最も影響されますし、それが音楽でも多くの割合を占めています。このアルバムは「愛」という言葉から感じられる、多様な感情を表現してみました。

例えば、甘さ、湧き上がる気持ち、飽き、愛憎など、愛という言葉には本当にたくさんの感情が含まれていると思います。私はその愛を時には不思議な感じで表現したり、時にはウィットのある表現で表したりしています。

私には愛というものがまるで宇宙のように思えます。果てがどこにあるのかわからない。でも、すべての感情、すべての色がひとつになったら黒になるじゃないですか。だから、私が思う宇宙は「黒い」というイメージで、その宇宙のような愛を表現しようと努力しました。

- Xin Sehaが参加した"In Your Home"は、Xin SehaならではのシンセワークとSUMINさんの浮遊感のあるトラックの相性が抜群にいいなと思いました。これはどういった感じで曲作りを進めたのでしょうか?

SUMIN - Xin Sehaとはそれまで親しい関係ではなかったのですが、さまざまなアーティストの楽曲に参加していることは知っていました。"In Your Home"の1ヴァースまでできた段階で、この曲を彼と一緒にやりたいと思い、Instagramでメッセージを送ったんです。そうしたら「とてもいいですね」という返信が来て、あとは順調に進められました。Sehaはやっぱり最高です!

- "Seoul, Seoul, Seoul"では、同じ曲とは思えないエキセントリックで予想できない展開に驚きました。この曲はどういったものから着想を得たのでしょうか?

SUMIN - 私が暮らしている韓国・ソウルはとてもせわしなく、目まぐるしい都市。だからか、どんどん人々が冷たく、世知辛くなっているような気がします。よくキレるし、相手の感情を大事にしないから、車が向き合ったら挨拶ではなくクラクションを鳴らすばかり…。そんなシーンを憂いながら、「何でそんなに怒っているの、ソウル?」と歌いました。

でも、後半ではそれとは矛盾した考え方が出てきます。それでもソウルが一番便利だと。「私は便利なソウルが好きだ。地下鉄もよく整ってるし、LAみたいに車でどこかへ行かなくても、近くにコンビニがあるし」という感じです。だから前半と後半を分けて破格のアレンジをすることで、それを表現しました。

- "Your Home"では、先ほども名前が挙がったベルギーのPomradと、かねてより交流のあるViannが外部プロデューサーとして参加しています。各々の個性が出たトラックで、今作において良いスパイスになっています。

SUMIN - これまでの私の作品を聴いてきた方々はもうおわかりかと思いますが、私は自分のアルバムではあまり外部のプロデューサーと一緒に何かをするタイプじゃありません。自分の気持ちは自分が一番うまく表現できると思うから。ですが、彼らはむしろ、私が彼らの感情と感性に合わせたくなるくらい素晴らしいプロデューサーなんです。

まず私と同い年のプロデューサー/DJのViannは、私と性格がとても似ています。そして彼の音楽は何というか、私にいつもショックを与えてくれます。そんな人と一緒に曲を作るのは大歓迎ですね。Pomradもそう。多才で、幅広いスタイルの音楽を理解して作れる人です。ジャズ、ゴスペル、ヒップホップ…それらの要素を絶妙なバランスでミックスして個性的なサウンドを作り上げます。ViannもPomradも、私にとっては化け物みたいなアーティストですよ。

- ファースト・アルバムとしてはすごい完成度のものが仕上がったと思いますが、ご自身の手応えはいかがですか?

SUMIN - 私にとって、とても大きな意味のあるアルバムで、人生のマイルストーンみたいな作品です。年を追うごとに成熟していく中で、愛という言葉のさまざまな感情を幅広く経験しましたし、それを思いっきり盛り込んでいますからね。

さらに、以前からプロデューサーとしても認めてもらいたいという気持ちはありましたが、それを多くの人たちにわかってもらえて嬉しいです。私がこのアルバムを作ることができたのは、私を励ましてくれたり助けてくれたりした人たちがたくさんいたから。サポートしてくれた人たちへの感謝の気持ちを忘れず、またもっと格好良くて面白い音楽を作りたいです。

このアルバムのすべてに満足しているとは言えませんが、そのように完璧ではない私の音楽を愛しています。

- そして、ニュー・ジャック・スイングを今に伝えるKIRINとのコラボEP『Club 33』も話題ですね。

SUMIN - 『Club 33』のプロジェクトは本当にゆっくり、気楽に、プレッシャーなく進めたプロジェクトです。それぞれ自分の活動をしながら楽しく作業しました。このEPは、90年代~2000年代の音楽を意識しています。新しい音楽のスタイルに挑戦するのではなく、ノスタルジアと面白さに重点を置きました。

アイディアの宝庫のKIRINさんとこのプロジェクトを進めていたら、本当にたくさんのアイディアが山ほど出てくるんです。MVも3本作りますが、音楽は真面目に作っているのに、ビデオはとてもコミカル。だからそれらをライブで披露するときに、撮影のときを思い出して、ステージで笑っちゃいそうで…。だからとても心配(笑)。

- アーティストとして今後成し遂げたいことはありますか?

SUMIN - 私はこれまで活動する中で多くの人たちに助けられ、支えられてきました。なので、そういった人たちが私を必要とするときは、積極的に自分のできることで力になれるのが目標ですね。また、私は変わった表現で、退屈な感情や物事もユニークに表現できるアーティストになりたいです。そして、ひとつのジャンルではなく、Michael Jacksonのように「時代」のアイコンと言われるようなアーティストになりたいですね。

- ありがとうございました。では、最後に日本のリスナーに伝えたいことがありましたら。

SUMIN - 私は少しだけ日本語を話せるのですが、もっと上手になって私の音楽への愛情や考えを伝えられるようにしたいです。これからもっともっと楽しく音楽活動をやっていきますので、私の進化のプロセスを一緒に楽しんでください。

そして日本でライブもしたいです!日本の関係者の方々、これを見たら連絡ください!そして皆さん風邪に気を付けて、2019年が幸せなことでいっぱいになるよう願います!(編注 : SUMINの願いが叶ったのか2/15(金)にVISIONで開催されるパーティで初来日となる。一緒にColdeやJinboも来日する。詳細はこちら。)

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