【ライヴレポート】『LIVE in JAPAN 2018 星野源 × MARK RONSON』| 国境を越えて共鳴するモダンなポップミュージック

星野源とMark Ronsonのダブルヘッドライナー公演「LIVE in JAPAN 2018星野源×MARK RONSON」が12月17日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールにて開催された。

そもそもこの公演の企画はイベンター側から星野に提案されたものだったという。

星野は2016年リリースの『YELLOW DANCER』で、R&Bやソウルという音楽に挑戦した。本人的には「今のJ-POPでこの音楽をやってもいいものか?」という不安が大きかったという。だがその不安を払拭させたのが、偶然に入ったコンビニで聴いたMarkの大ヒット作"Uptown Funk"だった。なんの変哲もない日常に鳴り響くBruno Marsのアツすぎるヴォーカルと、跳ねる演奏に心が踊った。自分も怯まずやってみようと背中を押されたと今回のMCでも語っていた。

まず最初に登場したのはMark Ronson。レザージャケットにリーゼントというファンキーな出で立ちでDJブースに入る。開演前、メッセのコンクリートの床は寒かった。そんな会場をまずはMiley Cyrusをフィーチャーした最新曲"Nothing Breaks Like A Heart"で徐々に温めていく。さらにDiploとのユニット・Silk Cityの"Electricity"で、ベースラインのグルーヴが気持ちいいハウスを続ける。Markはここからロウなビートにシフト。まずはGhostface KillahとNate Doggとのヒップホップトラック"Ooh Wee"、野生的なファンクネスを秘めた"Daffodils feat. Kevin Parker"、"Feel Right feat. Mystikal"と畳み掛ける。

MarkはそのままハイライトとなるMichael Jacksonのメドレーミックスに突入する。今年8月に発表されたマッシュアップ曲"Michael Jackson x Mark Ronson: Diamonds are Invincible"を彷彿とさせつつ、よりMichaelのファンキーな側面にフォーカスしたミックスだ。特に"Smooth Criminal"から"Billie Jean"へと繋がっていく流れでは大きな声援が起きた。そしてMarkは「自分にとってはマイケルと同じくらいレジェンドだ」と話してから、盟友である故Amy Winehouseのクラシックをプレイした。なんと感動的な流れか。クライマックスはもちろん"Uptown Funk"。ファンクと愛だけで構成された名曲で会場をブチ上げまくった。ラストはMiley Cyrusが歌う新曲"Happy Xmas (War Is Over) feat. Sean Ono Lennon"。オリジナルは言わずと知れたJohn Lennonとオノ・ヨーコだ。日本で、星野源とのツーマンを意識した素晴らしいセットリストだった。

星野源はフルバンドセットだった。メンバーは、河村“カースケ”智康(Dr)、長岡亮介(G)、ハマ・オカモト(B)、櫻田泰啓(Key)、石橋英子(Syn)に加え、3管のブラス・セクション、さらにカルテット編成のストリングス。星野源にとって、今回は昨年行われたツアー「星野源 Live Tour 2017『Continues』」以来、久しぶりのライヴとなった。

「こんばんは、星野源です」というおなじみの挨拶からエキゾチックな"Firecracker"で盛大に幕を開け、アップテンポな「地獄でなぜ悪い」で一気に観客のハートを掴む。ここからは、星野が前作『YELLOW DANCER』で定義したイエローミュージックの色合いが濃くなっていく。イエローミュージックとは「日本人のフィルターを通して作られたブラックミュージック」のこと。ミッドテンポのバンドアンサンブルが心地よい"桜の森"、"Night Troop"、さらに最新アルバム『Pop Virus』にも収録の"肌"、長岡亮介のギターフレーズがリズムを牽引する"Snow Men"がプレイされた。

ここで小休憩。星野は「暑い……」とジャケットを脱ぐ。冷えびえとしていた会場は、いつの間にか空気が薄くなるほどの熱気に包まれていた。星野は「見てて気持ちがいいですよ。みんなほんと自由にバラバラに動いてて。でもそれがいいんだって。みんなで一緒に同じように手を振るんじゃなくてさ」と話し、最後に「みんな自分の踊りを踊ってください」と結んだ。

さらに「みんな違うダンスを踊ったあとは、同じダンスを踊ってみるのはどうでしょうか?」というMCからなだれ込んだ"恋"では、間奏で星野も恋ダンスを披露。観客も複雑な振り付けを踊っていた。続く"SUN"ではMJ愛をMark Ronsonにアンサー。演奏後、星野は「MarkのMJメドレーも最高でしたよね。僕も観てて胸が熱くなった」と語ると、長岡も「(NHK番組)『おげんさん(といっしょ)』でも(星野は)Michaelの話をしてたしね。みんなこれを機にもっとMichaelを聴いてほしいよね」と続けた。

星野は久しぶりのライヴがMark Ronsonとのツーマンになったことを心から楽しんでいるようだった。そんな思いを新曲"アイデア"で爆発させる。会場にいたすべての人に生きるエネルギーを与える素晴らしいパフォーマンスだった。そしてラストソング"Friend Ship"と、アンコールの"Week End"を歌った。あまりにテンションが上がったのか、星野は最後の最後に客出しBGMに合わせて新曲"Pop Virus"を1コーラスだけ歌い、満面の笑みでダブルピースをしてステージを降りた。

2人がツーマンを開催すると聞いた時、Mark Ronsonが人気トーク番組「TED」に出演してサンプリングの意義について語っていたことを思い出した。その中で彼はDuran Duranの大ファンだった9歳の頃の話をする。友達と「The Wild Boys"を披露したけど大ブーイングされてステージを追い出された、と。「でも、そんなことはどうでも良かった。僕はなんとかしてあの曲の歴史の中に1分でも存在したかった。ただあの曲が好きで自分がその中に入ってしまおうと思ったんです」と話し、サンプリングとは盗用ではなく、音楽に対する深い愛とリスペクトで成り立っていることを力説した。星野の活動もまさに同じことだ。さまざまな音楽を深く愛し、自分なりの表現に落とし込む。ただの真似じゃない。それこそがイエローミュージックの本質。異なる表現で自分の音楽を鳴らすこのツーマンを観て、そんなことを思い出した。(宮崎敬太)

「LIVE in JAPAN 2018星野源×MARK RONSON」セットリスト
Mark Ronson
01. Nothing Breaks Like A Heart feat. Miley Cyrus
02. Electricity / Silk City & Dua Lipa
03. Ooh Wee feat. Ghostface Killah, Nate Dogg, Trife & Saigon
04. Daffodils feat. Kevin Parker
05. Feel Right feat. Mystikal
06. Michael Jackson Medley
07. Valerie feat. Amy Winehouse
08. Uptown Funk feat. Bruno Mars
09. Happy Xmas (War Is Over) feat. Sean Ono Lennon / Miley Cyrus, Mark Ronson

星野源
01. Firecracker
02. 地獄でなぜ悪い
03. 桜の森
04. Night Troop
05. 肌
06. Snow Men
07. 恋
08. SUN
09. アイデア
10. Friend Ship
<ENCORE>
11. Week End

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