【ロングレポート】POP YOURS | 2022年日本のポップカルチャーはヒップホップ

株式会社スペースシャワーネットワーク主催のヒップホップフェス『POPYOURS』が千葉・幕張メッセ国際展示場9〜11ホールで5月21日と22日に開催された。各日それぞれのヘッドライナーはPUNPEEとBAD HOP。2日間合わせて37組ものヒップホップアーティストが出演し、2日間合計で約16000人の観客を動員した。またYouTubeの生配信は合計で約18万人、視聴回数は78万回に達した。

DAY1 dodo, ピーナッツくん, SKY-HI

初日の記念すべきトップバッターはdodo。「足下が悪いなか今日はみんな来てくれてありがとうございます」と開演の挨拶。この日の関東地方はあいにくの雨模様。だが開場時間には入場ゲートに長蛇の列ができるほど多くのヒップホップファンが集まった。『POPYOURS』は全席指定でマスクは常時着用。大声、歓声、合唱は禁止。アルコール販売もなし。ほろ酔いの観客とコールアンドレスポンスで一体感を作っていくライブスタイルのラッパーたちにとっては簡単な状況ではない。しかもメッセ規模の会場が初体験のアーティストも多い。だがアーティストたちはみんなこの環境を楽しんでるようだった。「みなさんもサバイブしていると思いますので、これからもサバイブソングを作っていきたいと思います」と話したdodoは“era it”、”im“、”kill more it“など人気曲をしっかりと聴かせた。

dodo photo by cherry chill will.

通しのラインナップでもっとも異色な存在だったバーチャルYouTuberのピーナッツくん。「今日は面白がられにきたわけじゃなくちゃんとカマしに来たから!」と宣言し、“グミ超うめぇ”や“School Boy”、“Drippin Life”でポジティブで楽しいながらもエモいラップをぶちかました。

ピーナッツくん photo by cherry chill will.

さまざまなシーンで活躍するSKY-HIは、自身がMCバトル勃興期に小さいクラブでビール瓶を投げられたエピソードを話した。そこから数えて10数年、メッセ規模のヒップホップフェスに自分が呼ばれたことに感謝の意を伝えた。また自身のレーベル・BMSGに所属するedhiii boi 、Aile The Shotaを客演に迎え、“Brave Generation Remix”、“I Think, I Sing, I Say”などをエネルギッシュにラップした。

SKY-HI photo by Daiki Miura

DADA, (sic)boy, NEW COMER SHOT LIVE(Candee, CYBER RUI, JUMADIBA, Sound’s Deli)

「こんにちは! 福岡の団地からここまで来ました」と自己紹介した注目ラッパー・DADAは、ドラッグ中毒や自殺などハードな環境を変えるためにヒップホップを選んだ。彼はステージに登場して「エイーーーー」と絶叫。全身からエネルギーを放出して場内の空気を一変させた。“DOWN”をはじめ、盟友AZUとの新曲“Typhoon”、人気曲“High School Dropout”などを自らの存在を観客の記憶に刻み込んでいった。

DADA photo by Jun Yokoyama

(sic)boyは現在の東京のオルタナティブでミクスチュアな感覚を体現するラッパーだ。ロックスターのような出で立ちでギター・RyuとDJ・Sathyを従えてパフォーマンスした。ルーツであるJ-POPの退廃さをトラップの柔軟性にまぜて自分だけのスタイルに昇華させた。“Social Phobia”、“爆撃機”、“(stress)”はもちろん、“Heaven’s Drive”を歌った。

(sic)boy photo by Jun Yokoyama

NEW COMER SHOT LIVEでは「ラップスタア誕生!」で注目されたCYBER RUI、川崎のCandee、ralphとの“Kick Up”が人気のJumadiba、東京のニューカマー・Sound’s Deliらが堂々としたパフォーマンスをカマす。

Candee photo by Yukitaka Amemiya
CYBER RUI photo by Jun Yokoyama
JUMADIBA photo by Jun Yokoyama
Sound's Deli photo by Yukitaka Amemiya

OZworld, VaVa, SALU

素晴らしいヒップホップアーティストを輩出し続ける沖縄。OZworldは「高校生RAP選手権」から這い上がってきた。スタイリッシュなトラップに乗せて歌うのはポジティブなメッセージ。“AKIRAメナイ”、“Peter Son”などで聴衆をピースなバイブスに包み込んだ。“NINOKUNI”のイントロが鳴ると観客はスマホライトを点灯してレスポンスした。

OZworld photo by cherry chill will.

VaVaのライブパフォーマンスには定評がある。彼はかなり前からPOP YOURS出演を打診されていたという。そこまでに新しいアルバムを出したいですねと話していたことを明かした。ライブでは6月1日にリリースされる約3年ぶりの3rdアルバム『VVARP』から“tAtu”、代表曲“現実 Feelin’ on my mind”、“Virtual Luv”を歌い、“Fruite Juice”ではCreative Drug Stroreの盟友・BIMが客演し沸かすパフォーマンス。

VaVa photo by Daiki Miura

金髪をコーンロウに編み込んだSALU。兄弟と言ってはばからないELIONEとともにバイラルチューンの “Good Vibes Only”、人気曲“Walk This Way”、懐かしの“In My Life”をラップする。多様なラッパーが大きな会場を沸かすを見て「俺が出てきた時は歌うフロウはラップじゃないって言われたんだ」と回想するシーンも印象的。“LIFE STYLE”、“RGTO”といったクラシックをボムして中盤を盛り上げる。

SALU photo by cherry chill will.

田我流, JJJ, STUTS

田我流はバックDJのMAHBIEに加え、サックスに後関好宏、トランペットに川崎太一朗という編成。ハイライトはなんと言っても“やべ〜勢いですげー盛り上がる”でstillichimiyaが全員集合したこと。あの勢いを初体験したヒップホップファンも少なくなかったようだったが、メッセにいた全員の脳内でアドレナリンを噴出させた。さらに新曲“VIBE”では神奈川・藤沢のBLAHRMYと丸をフィーチャー。ハードなブーンバップで躍らせる。からの、“ゆれる”アカペラ、そこから “夢の続き”で感情を揺さぶった。

田我流 photo by Yukitaka Amemiya

最高のプロデューサーであると同時に、テクニカルなラッパーとしても知られるJJJ。なんとKID FRESINOがバックDJを務めた。「今日は友達いっぱい連れてきてるから」と話すと、“Cyberpunk”でBADHOPのBenjazzy、“filter”ではCampanellaも登場。緻密なマイクリレーだがJJJらしい硬いグルーヴをしっかり感じる。また“2024”ではKID FRESINOもマイクを握る。故Febbのラインに差し掛かると、まるでFla$hBackSの3人がメッセの舞台に立ってるような気持ちになれた。

JJJ photo by Jun Yokoyama

STUTSは登場するなり、MPCで爆音のキックを連打する。あまりの音の大きさに驚いた。彼はニューヨーク・ハーレムの路上で観客を踊らせている動画で知名度が上がった。キモはこのキックなのだ。これこそヒップホップ。ゲストも豪華で“Mirrors”にDaichi Yamamoto、“Summer Situation”にSIKK-Oと鈴木真海子、“マジックアワー”にBIMとRYO-Z、“Changes”にJJJ。ハイライトはBIMとDaichi Yamamotoを迎えた“Presence”。“ONE”では花道を歩きながら自身のヴァースを堂々とスピットした。

STUTS photo by Yukitaka Amemiya

LEX, JP THE WAVY

LEXはメインステージ、花道、突き出しのセンターステージ全体を使って、細部までこだわったハイクオリティなパフォーマンスを見せた。ライブDJはなんとKM。“Guess What”、“ALIEN”、“NiPPON”をメドレーで聴かせ、“ERiCA”からはおなじみのHezronが客演に入る。圧巻だったのは“I GOT U”から参加したダンサー4人との絡み。イエローのライティングでダンサーを引き連れ花道を歩きセンターステージでラップする姿はまさに新世代のスターだった。未発表の新曲“Have A Nice Day”、人気曲“Romeo & Juliet”、リリースされたばかりの“大金持ちのあなたと貧乏な私”も披露した。ラストはもちろん“なんでも言っちゃって”。次の出演者でもあるJP THE WAVYと大人気曲をキックしてハイライトを作り上げる。

LEX photo by Daiki Miura

JP THE WAVYとLEXといえば“WAVEBODY”。OZworldもステージに出て、タイトなヴァースをかました。続く“We Comin’”からはパートナーのNiina、おなじみのYURINOに加えダンサーのAmami Queen、MITSUGU、SHOTA、Rhymeも来てステージは一気に華やかに。ELIONEとの“Ashita”、“Real Life”を歌ったあと、WAVYは「SALUくんと一緒にステージに立ちたかった。ずっと俺を引っ張ってくれた」とリスペクトのメッセージを送った。ラストは映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』のOST曲“BUSHIDO”で締めくくった。

JP THE WAVY photo by Daiki Miura

KANDYTOWN

KANDYTOWNのライブは最新曲“Blue Verse”が流れたかと思うと、Ryohu、BSC、DIANが現れダークなライティングの中“Sky”を披露。以降も参加楽曲にあわせて各メンバーがどんどんメンバーが増える演出は圧巻。ウータン・クランを彷彿とさせる大所帯ならではのパワフルさがある(実際に“Paper Chase”をウータンの"C.R.E.A.M."の上で披露)。ステージには盟友:オカモトレイジの姿も。前半はオールドスクールな90’sのバイブスで中盤からはトラップへ。ほとんどの曲はトラックがアップデートされている。まったく観客に媚びない。なんのてらいもなくクールを徹頭徹尾貫けるのが彼らの強みだろう。

KANDYTOWN photo by Jun Yokoyama

PUNPEE

DAY1のトリ、PUNPEEはオープニング映像から設定盛り盛り。『POP YOURS』をドタキャンした2042年のマルチヴァースからタイムマシンの車で2022年の幕張にやってくるというもの。OP映像が終わると後方の大型ビジョンが開いて、映像に出てきた実際の車に乗ってPUNPEEが登場。場内がどよめく。ビジョンを存分に使って『水曜日のダウンタウン』や『ODDTAXI』など自身が関わったコンテンツを惜しみなく見せていく。サービス精神の塊。名曲“Renaissance”をはじめ、OMSBをフィーチャーした“Life Goes On(あんじょうやっとります)”、スカート(澤部渡)が歌う“ODDTAXI”、JJJと制作した“Step Into The Arena”、STUTSとの“夜を使いはたして”とゲストも豪華。長丁場だったが、音楽だけでなく、視覚的にもエンタメ要素満載だったPUNPEEのステージに観客の疲れもぶっ飛んだ。

PUNPEE photo by cherry chill will.
photo by Yukitaka Amemiya
photo by Daiki Miura

DAY2 どんぐりず, Fuji Taito, ralph

DAY2のトップバッターはどんぐりず。ダンスミュージックを取り入れ、唯一無二のハイセンスなラップミュージックをクリエイトするデュオだ。“NO WAY”では午前中とは思えないベースを響かせて観客を一気に覚醒させた。歓声を出せなくてもダンスはできる。“Bomboclap”、“E-jan”などをプレイした。

どんぐりず photo by Jun Yokoyama

Fuji Taitoの代表曲といえば“曇天晴れた”。DAY2は前日とは打って変わって快晴。コロナ禍にも終わりが見え、ライブも徐々に再開され、なにより幕張メッセでヒップホップフェスができる。これ以上ない1曲だ。Fuji Taitoはいつも以上にバイブスをたぎらせて“Crayon”、“All The Day n’ Night”をエネルギッシュに歌い切った。

Fuji Taito photo by Jun Yokoyama

“斜に構える”でシーンに登場したRalph。ドリルでラップし、現在は世界で活躍するロックバンド・Crossfaithとも共演する。ステレオタイプとは程遠いスタンスが彼の魅力。この日はフェスの名前とICE-TのバンドBody Countの名曲“Cop Killer”にひっかけた「POP KILLERS」Tシャツを着用し、「『POP YOURS』ってイベントですけど、俺はポップじゃないやつを増やしに来ました」と話し、代表曲“Selfish”、“Fvck4eve”、などをタイトにかました。

ralph photo by Yukitaka Amemiya

NEW COMER SHOT LIVE (eyed, homarelanka, MFS, Skaai), Hideyoshi, kZm

DAY2のNEW COMER SHOT LIVEには「ラップスタア誕生!」で注目されたSkaaiとeyden、CampanellaやC.O.S.Aとの共演で知られる名古屋のhomarelanka、大阪を去年に活動するMFSが登場。この舞台に臆することない、むしろ楽しんでいるかのようなパフォーマンスを見せた。

eyden photo by Daiki Miura
homarelanka photo by Daiki Miura
MFS photo by Daiki Miura
Skaai photo by cherry chill will.

Hideyoshiのライブはキャリアの転換点となった“majinahanashi”からスタート。Ralphが参加した“Jitsuryoku”をぶちかますと、「今日はTOKYO YOUNG VISIONみんな連れてきたぞー!」とYoung Dalu、OSAMI、Big Mikeを呼び込み“TOKIOKI”に流れ込む。人気曲“Innocence”で観客が一斉にスマホをかざし、“Sucide Remix”(BAD HOP)ではライトも点灯。客席を見てHideyoshiは「今ケータイの光を見て幸せな気持ちになってますが、そのケータイで誰かを傷つけることもできるので、みなさんはそんな使い方しないでください」と話した。

Hideyoshi photo by Daiki Miura

kZmは一発目から“TEENAGE VIBE”で場内のテンションのギアを上げる。メッセの観客がぶち上がる様子を見て「俺らのやってるヒップホップでこんな景色が見られると思わなかった」と話す。“27 club”の前には観客全員を座らせてから合図で全員ジャンプさせる。ここで場内の一体感が増す。MonyHorseが客演した“バグり”でメッセは大爆発した。後半のkZmは“But She Cries”、“Yuki Nakajo”、そして“叫悲”で内面の繊細さをラップで表現。“Dream Chaser”では初期衝動と成長を同時に感じさせた。

kZm photo by cherry chill will.

Daichi Yamamoto, MONJU, C.O.S.A.

トレードマークのドレッドを切ったDaichi Yamamotoはソウルシンガーを思わせるスーツ姿。バックDJはPhennel Koliander、トークボックスはKzyboostというおなじみの編成。前半から“Let it Be”、“One Way”、“MYPPL”とグルーヴィなナンバーを畳み掛ける。中盤はSTUTSを迎えた“Cage Birds”を経て、髪型を変えた気持ちを赤裸々に歌詞にした“Afro”、“Everyday People”をしっかりと聴かせ、Gil Scott-Heronの歌詞を引用した“Paradise”につないでライブを締めた。

Daichi Yamamoto photo by Yukitaka Amemiya

アンダーグラウンドシーンの金字塔であるMONJU『Black de.ep』がリリースされた2008年に、ISSUGI、仙人掌、Mr.PUGが幕張メッセでライブすると誰が想像しただろうか。“U.N.K.U.T.”、“stepinblack”、“Blackdeep”などヘッズにはたまらないナンバーを連発。もちろん昨年発表したEP『Proof Of Magnetic Field』から大名曲“Ear to street”や“In the night”などもがっちり聴かせた。“Incredible”のリリックにある通り「属性はDope」。横に揺れるグルーヴは黒く輝いていた。

MONJU photo by Jun Yokoyama

続いて登場したのはC.O.S.A.。信念が落とし込まれた歌詞を魂とともにスピットする。“Cool Kids”、NEW COMER SHOT LIVEにも出たhomarelankaをフィーチャーした“Stay Gold”、C.O.S.A.の名前を世に広めた“知立Babylon Child”を聴くと、彼がどんな場所でどんな気持ちでどのように育ったのかが伝わってきた。同時に“LOVE”、“Mikiura”、“Girl Queen”ではC.O.S.A.の誠実な人間性が溢れ出る。フェスのライブで自身の多面性を表現したC.O.S.Aのパフォーマンスに多くの観客が聴き入った。

C.O.S.A. photo by Yukitaka Amemiya

Tohji, 5lack

Tohjiはのっけから“Higher”、“mallin’”というフロアバンガーを投下。さらに「“TEENAGE VIBE”もいいけどこれだろ?」と“GOKU VIBE”を続ける。Elle Teresaが花道を歩いてくるとメッセのバイブスはより高まった。Tohjiは「どんだけ(フェスの)ルールが厳しいか俺にはわからないけど、(ルールは)お題なので大喜利的にどこまでやれるのかやってみよう」と語る。言葉が通じないロンドンや韓国でのライブ体験から制作した新曲“ねるねるねるね”、みんな大好き“ULTRA RARE”、“POOL SIDE”から、夏に向けた新曲“Super Ocean Man”もパフォーマンス。大舞台でもなんの違和感なく、ナチュラルにトリップする新世代のヒップホップのバイブスを炸裂させた。

Tohji photo by cherry chill will.

5lackはラップのマエストロだ。彼の声は特別で、フロウは誰も真似できない。シングルシリーズ・白い円盤からの“Ocean”でライブがスタート。“Grind”、“近未来200X”などヒップホップをベースに独自に進化させた楽曲が続く。また“Nove”ではラップから派生したハイセンスなヴォーカルも聴かせる。ファンへのプレゼントはここから。CM曲になった“東京”、2ndアルバム『WHALABOUT?』から“That's Me”、1stアルバム『My Space』から“Hot Cake”を歌った。また『POP YOURS』でプレイされているさまざまなラップミュージックを、先入観なく素直に楽しんでほしいと話していたことも印象に残った。

5lack photo by Daiki Miura

BIM

フェスはここから長いクライマックスに突入する。まずはBIM。今回はバンドセット。バックDJはCreative Drug Storeのdooo、スクラッチはDJ ZAI(SIMI LAB)、ギターは竹村郁哉(Yogee New Waves)、ベースはスズキシンゴ(Ovall)、キーボードはTAIHEI(Suchmos)、ドラムはカンノソウ(BREIMEN)というスペシャル編成。“What More I Can Say”から始まり、“Yearn”を挟んで、STUTSがゲストの“Veranda”、盟友・kZmを招いた“Runnin”、"RASEN"にSkaai、『POP UP LIVE』でもプレイした“Celebration”にDaichi Yamamoto、どんぐりずをフィーチャーした“Anchovy”までを一気に駆け抜ける。バンドとBIMのラップのアンサンブルの気持ち良さ。ステージで見せるBIMのアクションの楽しさ。豪華ゲストとのケミストリーも毎回新鮮でトークも楽しい。あっという間に時間がすぎる。“BUDDY”ではBIMをフックアップしたPUNPEEが登場。PUNPEEはなぜか寿司屋のデリバリー店員の衣装を着ていた。BIMのキャリアは決して順風満帆ではなかった。過小評価された時期もあった。だがBIMは日本全国いろんな街のいろんなパーティーでヤバいライブをぶちかまし続けて批判を賛辞に変えていった。ラストの“BONITA”前にMCでこう話した。「自信を失って落ち込んでた時、VaVaちゃんが『このビートは俺よりBIMに合いそう』とプレゼントしてくれたんです。そしたらありのままの自分が出せて、いろんな人から『あの曲良いね』って言ってもらえるようになったんです」。とても楽しく感動的なライブだった。

BIM photo by Jun Yokoyama

¥ellow Bucks, Awich

次の¥ellow BucksはBIMとはまったく違うベクトルで凄まじかった。「ラップスタア誕生シーズン3」の優勝者は伊達じゃない。ヒップホップMCとしてのスケール感がとてつもない。うまいのは当たり前。声が良く、カリスマ性があり、立ち振る舞いのすべてがかっこいい。“Ready or Not”のあと「去年は後半にいろいろ騒がしたけど、2022年も俺は騒がしていくぜ」と自信満々。“To The Top”から“Yessir”ではみんなスマホを片手にジャンプした。“With My Way”と“どうってことねえ Remix”でとてつもないラップスキルを見せつけると「調子はどうっすか? 楽しんでますか?」と話して“Keep Smoking”から“Wow Wow Wow”。サプライズに“WAVEBODY”。しかもJP THE WAVYがゲスト。“GIOTF”も一緒にラップした。“My Resort”では会場一体となってジャンプしてヒップホップすぎるパフォーマンスを終えた。

photo by Daiki Miura

¥ellow Bucksの衝撃に場内の興奮が収まらずざわつきが収まらない。暗転して会場に一筋のスポットライトが当たる。そこにAwich。“Queendom”だ。彼女の半生をリリックにした強烈なナンバー。彼女のエモーションが場内を新しい興奮に包む。1マイク。1DJ。誰もが息を飲む迫力。「絶対楽しませるから最後まで見て行って」と力強く話す。“NEBUTA”にはkZm。Awichにとっても大事な友人。曲終わりに2人は熱い抱擁を交わす。“洗脳”、“どれにしようかな”では女性たちがひときわ高くジャンプして共感を表明した。Awichは“Revenge”の前に「リベンジの光を見せてください!」とスマホのライト点灯を促す。明るくなった客席を見て彼女は涙を拭う。「私も諦めないでやってきたからこんなステージに立ててる」と話した。娘が通う学校に米軍の飛行機が墜落した時に書いた“TSUBASA”には愛娘・Yomi Jahもラップを披露した。終わった後に「マミーがんばってね」とかけた声が微笑ましかった。ここからまた大きな盛り上がりが来る。“GILA GILA”にJP THE WAVY、“Link Up”にKEIJUと¥ellow Bucksが出てきた。さらにKEIJUは「俺らにはもう1曲ヒット曲があるよね」と“Remember”。みんなバイブスマックス。「次はBAD HOPなのに大丈夫?」と思った。最後に“BAD BAD”を歌った後、Awichは「『POP YOURS』、来年もやろうぜ! みんながもう1人ずつ連れてくれば次は倍の広さでできるじゃん」と話し、Awichはもちろん観客もスタッフもみんな笑顔になった。

Awich photo by cherry chill will.

BAD HOP

ヒップホップの多面的な魅力をいろんな角度から表現した『POP YOURS』もついに最後。みんなお待ちかねのBAD HOPだ。どんなに疲れてても別腹。観客も最後の力を振り絞る。お楽しみはここから。やはりステージ上の存在感がすごい。YzerrとT-Pablowはもちろん、全員のラップが異常にうまい。誰のどのパートも見どころ。“No Melody”はBenjazzyとPablowのラップがすざまじい。“BATMAN”はVingo、Bark、Tiji jojoが不穏な空気を作り出す。なんなんだ、このグループは……。ひと段落した後、切り込み隊長Benjazzyが「最後まで盛り上がれるやつらは手を上げろ」と“Handz Up”、そしてアゲ曲“Poppin”ではステージから炎が柱が巻き上がる。“I Feel Like Goku”では全員がジャンプ。みんな正気でいられないほど楽しい。この盛り上がりは奇跡に近い。

“Chop Stick”の前にはJojoが「俺らめちゃくちゃ気合い入ってるんで今日寿司をデリバリーしてもらったんですよ」と話し出す。そこにすかさずPablowが「おう? それがどうしたんだよ?」とツッコミを入れたところに、古いファンはBAD HOPの伝説的ラジオ番組『リバトーク』を思い出したはず。Jojoは「寿司は箸で食べるだろ!」と“Chop Stick”へ。さらに「この2日間で一番の盛り上がりを見せてくれるやつは手をあげてくれ」と観客を煽る。ハッピーな“High Land”、“Ocean View”から、一転“Rusty Knife”と“Suicide”でBAD HOPの壮絶なルーツも歌う。ヒップホップは社会の外にいた人たちが社会の中へアクセスするためのツール。“Bayside Dream”はそんな彼らを体現した1曲でもある。

2日間にわたった『POP YOURS』を締めくくるのはこの曲。“Kawasaki Drift”。帰り際にこんなツイートを見つけた。「川崎区で有名になりたきゃ、人殺すかラッパーになるかだ、」は、日本語ラップ最高のパンチライン「悪そうな奴は大体友達」を更新した。問答無用でかっこいい。その意味で“Kawasaki Drift”はポップだ。さらにこの1ラインにヒップホップのコンテクストが詰まってる。表面だけじゃない。ディグすればするほど新しい魅力が見つかる。ヒップホップは現代のポップカルチャーなのだ。(宮崎敬太)

BAD HOP photo by cherry chill will.
photo by Daiki Miura
photo by Jun Yokoyama

Info

POP YOURS

日程 : 2022年5月21日(土)・5月22日(日)

場所 : 幕張メッセ国際展示場9~11ホール

出演者

DAY1:5月21日(土)

PUNPEE

DADA 

田我流

dodo

JJJ

JP THE WAVY

KANDYTOWN

LEX

OZworld

ピーナッツくん

SALU

(sic)boy

SKY-HI

STUTS

VaVa

《NEW COMER SHOT LIVE》

Candee

CYBER RUI

JUMADIBA

Sound’s Deli

(AtoZ)

DAY2:5月22日(日)

BAD HOP

Awich

BIM (BAND SET)

C.O.S.A.

Daichi Yamamoto

どんぐりず

Fuji Taito

Hideyoshi

kZm

MONJU

ralph

5lack

Tohji

¥ellow Bucks

《NEW COMER SHOT LIVE》

eyden

homarelanka

MFS

Skaai

(AtoZ)

オフィシャルサイト

popyours.jp

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