福岡市のカルチャースポットが登場するムービー『HAKATag CLAPS』
4/30に、福岡県福岡市のPR映像としてYouTubeに挙げられた動画『HAKATag CLAPS | The Deepest Fukuoka City Guide #博多手一本』が九州を中心に話題となっている。
『HAKATag CLAPS』は主観カメラの映像で、福岡の知る人ぞ知るディープなスポットを巡っていくもので、福岡に訪れたのならば立ち寄るべきショップ、カフェ、居酒屋など名店の数々を映し出していく。Instagram的なテロップで人やショップが紹介される構成もSNSに慣れ親しんだ世代と相性がいい。
制作は世界各地のストリートダンサーを取り上げる映像集団「YAKfilms」のメンバーでもある映像作家、ベンジャミン・ターキン。大学時代に留学経験がある福岡を第二の故郷という彼に白羽の矢が立った。
「博多手一本」というステップをご存知であろうか。福岡在住の筆者や当地の人間にはおなじみの、この行いは通常、お祭りや宴会など、お祝い事の最後のお開きに行われるもので、皆で規則正しいリズムで拍手を取り、場をしっかり締めることを目的に、長い間受け継がれている恒例行事である。
なぜこの伝統文化「博多手一本」を紹介したかというと、それは終始動画内で音として視聴者に届いていたからである。
どのくらいの人が気付いただろう。「HAKATag CLAPS」というタイトルの通り、この動画で流れている音楽は「博多手一本」の拍手のリズムをサンプリングしたビートで構成されているのである。
作曲はベンジャンミン自身が担当しており、伝統文化をしっかり織り込んだ軽快なビートに仕上げている。しかし、さきほど説明したように「博多手一本」というのは本来、お祝い事をお開きにするために用いられるもの。つまり、拍手で締めるその前後には何らかのパーティの痕跡が残されているのだ。
それを裏付けるようなポイントが、動画内に登場するたくさんの人や人たち。観光PRという体を取りつつもこの動画では多くの人々が登場する。後半に至っては、本当に街のPR動画なのかと思うほどたくさんの人が登場して、ただ乾杯の音色をかき鳴らしていく映像が続く。
しかし、福岡をPRする場合はこれがもっともベストなやり方なのだ。なぜならこの街は毎日宴会<パーティー>会場であり、街はいつも人なのだから。
そこではストリートダンサーの少年たちが音楽に任せて本能のままに踊るダンスを体感してもいいし、現地のスタッフを伝手にとびきりのおしゃれをしてもよし、ソウルフードを満喫するのもありだ。または趣向を変えてみて、ディープな飲み屋へと吸い寄せられて隣席の人に声をかけてみてもいいし、バーでカラオケを嗜むのもよし、クラブでDJの音楽を頼りに見知らぬ男女と共に踊り狂うのも粋な旅となるだろう。
締めには毎日どこでも「博多手一本」のステップが必要不可欠で、それは翌日、誰も経験したことがない次のパーティーを作る下準備が大切だから。
全くありがたいことに、この街はいつだってパーティーで忙しいので拍手する手のひらが痺れてならない。(大坪 磨亜久)