向井太一インタビュー | FM802 『LNEM』出演時のトークが未発表部分含め公開
FM802で深夜3:00〜5:00に日替わりで異なるDJが担当する番組『LNEM』。火曜の『LNEM Tuesday』ではヒップホップやR&Bなどがフェイバリットな河嶋奈津実がDJを担当し海外のHIP-HOP/R&B/POPS/EDMなどのニューリリースを中心に選曲している。
そんな『LNEM Tuesday』とFNMNLのコラボ企画がスタート、番組に出演するゲストとのトークコーナーを、番組では惜しくも放送できなかった部分も含めて公開していく。
記念すべき1回目はアーバンミュージックやエレクトロニカなどをベースに日本人特有の言葉選び、空間を意識した音作りで注目されるシンガーソングライターの向井太一が登場。
DJの河嶋と自身のEP『24』や影響を受けた楽曲について語り合う。
河嶋 - 1年越しの願いが届いて、やっと向井太一さんにスタジオに来ていただきました。
向井 - 嬉しいです、ほんと。
河嶋 - 1stEPの『Pool』という作品を手にしたときから虜でございまして。なんて実験的なシンガーが日本にいるんだって。
向井 - あはは(笑)
河嶋 - すごいぞと思ってTwitterをフォローしたら、向井さんが好きだって発信してる曲がとことんかぶるっていうミラクルが起こって。私がライブを見に行ったBJ The Chcago Kidもすごいお好きみたいで。
向井 - ライブ最高でしたよね。東京のBillboardで、もちろん良かったんですけど、もっとクラブとかでも聴いてみたいなっていうパフォーマンスでしたよね。
河嶋 - めちゃめちゃエネルギッシュで音源から想像できないくらい熱かったですよね。
向井 - めちゃくちゃかっこよかったです。
河嶋 - 放送日の前日3/13が、お誕生日ということで、おめでとうございます!
向井 - ありがとうございます、25歳になりました。
河嶋 - 25歳になりたての向井さんのお声をお届けしてますが、ちなみにこの番組『LNEM』をオンエアしている深夜3時という時間帯は起きてらっしゃることはありますか?
向井 - だいたい起きてます(笑)この時間帯はだいたい制作をしていて、最近Netflixに手を出してしまって、それがちょっとヤバいですね。バカっぽい番組が好きで『チャーリーズエンジェル』とか、『スパイキッズ』とか、映像で流して飽きないやつ。『スパイキッズ』はわざわざ検索までして観ました(笑)
河嶋 - テーマ曲めっちゃかっこよくないですか?
向井 - そうそう、あれなんで最初はラテン系だったんですかね。そこがすごい引っかかって。なんていうかなんか観たくなる作品ですよね。
河嶋 - 制作の時もあれば、夜な夜なNetflix見てるときもあるよってことで。そんな時間帯にお届けしてますが、初めましてということで毎回ゲストの方に自分に所縁のある音楽を持ってきてもらって、聴きながらお話をするコーナーをやっているんですが、向井太一さんに3曲用意してきてもらいました。これを聴きながら向井さんの音楽を紐解いていきたいんですが。まずテーマその1は、最もお気に入りのアーティストの影響を受けた1曲です。
向井 - 宇多田ヒカルさんの「Passion」です。僕はこれを聴くと、走り出したくなるというか。僕は帰り道PV風に帰るのをよくやるんですけど、これを聴くと号泣しますね、大体。
河嶋 - わかるな、空を飛んでる気分になる。
向井 - この曲は『キングダムハーツ 2』のテーマソングですよね。
河嶋 - 「光」が1の方で、どっちもいいんですけど私は「Passion」派なんですよね。パーカッションがめちゃめちゃいいですよね。
向井 - 宇多田さんってファーストアルバムのR&Bのイメージをずっと言われるんですけど、僕はジャンルを超えたあとの宇多田さんのオリジナリティーあふれる感じとか、本当に最高に好きです。
河嶋 - 途中ですごい曲調変わるとこわかります?ベースとギターだけで刻むところがあるんですよ。それを弾きたいがために当時エレキギターを買って、弾いてましたね。
向井 - えー、「Passion」がすごい。ちょっとそれチェックしてみます。
河嶋 - テーマその2、ライブで共演したり作品でコラボをしたり、今一番会いたいアーティストの1曲は?
向井 - Troye Sivanの「Fools」です。
河嶋 - 去年フジロックに出てましたよね。見れましたか?
向井 - 見れなかったんですよ。フジロックにも行けてなくて。Troye Sivanは僕に近いところがあったなって。ビジュアルも中性的でアンニュイな感じとかも。最初はトラックから入って、めちゃくちゃディープで空間があって、飛ばしまくってて。僕もどっちかというとトラックは空間を作ることを意識した曲作りをしてたんで、まずはそこの共通点と、あとはビデオとかビジュアルがすごく綺麗で。そういう神秘性のあるイメージが、僕がしたいこととリンクしていて。2マンしたら絶対楽しいなって。
河嶋 - すごい絵が浮かびますもんね。世界観が近い気がしていて、フジロックのバックステージでTroye Sivanを見たんですよね。そしたらこの世のものとは思えない美しさの青年が歩いてきて、なんだあの造形美って。向井さんと一緒にライブすると浮世離れしたライブになるんだろうなって。実現するといいですね。
向井 - 海外アーティストと曲をやってみたいなと思ってて。もうやったこともあるんですけど、親和性のあるシンガーとがっつりやってみたいなってことで、Troye Sivanを選びました。
河嶋 - 絵はすぐ浮かぶので実現するといいですよね。では最後に男性シンガーが歌う、甘い1曲といえば?
向井 - R Kellyの「Love Letter」です。甘い男性といえばR Kelly先生。
河嶋 - 90年代からずっと変わらないどセクシー路線。
向井 - エロいですよね。事前に曲を選んでくださいって言われたときに、男性シンガーで甘いって言ったらR Kellyだろって。R&Bって快楽主義者の音楽だと思うんですけど、僕の中では世代もそうなんですけど、R Kellyが一番っていうので、この曲を選びました。
河嶋 - R Kellyはいろんなラブソングもありますし、もっと過激な曲もある中で、「Love Letter」は非常にマイルドで耳なじみもよくて、好きな人に送るにはピッタリですよね。3月なんで季節外れなんですけど、クリスマスリミックスもありますよね。それもめっちゃいいんですよ。
向井 - R kellyはボイトレでも歌ってました。「I Believe I Can Fly」とか。R&Bを歌う人って、あれから入ること多いんですよね。
河嶋 - あんなにハードル高いところからいくんですか?
向井 - あれから突き落とすみたいな。フェイクできないんですよね。
河嶋 - それくらいR Kellyは重鎮的存在ですよね。以上の3曲でした。ここまでは自分にまつわる音楽を伺ったんですが、そろそろご自身の作品について。昨年リリースのEP『24』、本当にハマりました。7曲収録なんですが、ここまで日本の音楽シーンで踏み込んだ人はあまりいなかったんじゃないかなって思うような。音作りもそうですし、言葉のハメ方だったり、日本語が日本語に聴こえないような歌い回しだったり。それが向井さんの特徴かなって思うんですが、この7曲は『24』のために作ったんですか?
向井 - EPを作るってなって、制作を始めました。あとは既存曲を作り替えたのもあって。それは去年1年間SoundCloudで、毎月1日に新曲をアップしてたんですけど、その中の曲も入ってます。でも基本的にはEPに向けて作ったって感じですね。
河嶋 - 「SPEECHLESS」という楽曲が、よくラジオでもかかっていたしすごい印象に残ってる方もいらっしゃると思うんですが、この曲が音の空間だったり隙間を生かした立体的な音楽になっていて。この曲は初めの方にできた曲なんですか?
向井 - ちょうど真ん中くらいで、これはレーベルメイトでLAで活動してるstarRoさんと作ってるんですけど、これがやりたかった集大成でLAのリアルなサウンドを使いつつ、どう日本の曲に噛み砕いていくかというところで。このトラックで日本語で歌うっていうのが、僕が挑戦したかった意味が濃い曲かなと思って。
河嶋 - こういうトラックに、日本語をハメるときに意識してることはあるんですか?
向井 - 最初はメロディーを適当な英語で作ってて、それに日本語をのっけたんですけど、めちゃくちゃ難しかったんですよ。三連符のフロウを崩さずどうやって日本語にしていくかっていうのは、難しかったですね。歌詞のベースにあるストーリーは本能的な感じなんですけど、リズムにハメるっていう意味では一番意識して作った曲ですね。
河嶋 - この曲でまずガツンとくると思うんですよね。私は2曲目の「STAY GOLD」もすごい好きで。2番のバース途中でリズムが倍になるところがあるじゃないですか。そこがトラップ的なアプローチも感じて。
向井 - そのときBJ The Chicago KidとかAnderson .Paakとかを聴いていたんで、そういう影響がリアルに出たんだと思いますね。もともとヒップホップはずっと聴いていたんで、がっつり歌い込むというよりは、リズムがあるメロディーを色濃く出した感じですね。割とこれは自然にメロディーを作った感じですね。
河嶋 - 4曲目の「SIN」は今まで3曲は割とゆったりした曲なんですけど、これはダンスナンバーで。トロピカルっぽい音を随所に感じますよね。
向井 - わかりやすくトレンドっていうか、トロピカルハウスっぽいものとか、民族っぽい音色っていうトラックのイメージを先に作ってって感じですね。
河嶋 - トラックはstarRoさんとかyahyelとかと共同で作られてると思うんですが。どのように作っていきましたか?
向井 - いろんな方法で作っていて、starRoさんはセッションしてそのあとはデータでやりとりして、yahyelはトラックを最初にもらって、そこからちょっとイジってもらったりとか。yahyelが僕に持っているイメージを出してもらって、そこにメロディーとリリックをのっけて。「SIN」はCELSIOR COUPEってトラックメイカーが作っていて。音楽的趣向としては一番近い人ですね。この曲のあの感じっていうのがすぐ伝わる。テンションとか熱量も一緒なので、個人的にもすごい好きなトラックメーカーですね。
河嶋 - 他にも「SLOW DOWN」や最後にタイトル曲が収録されていますね。これがまた名曲ですね。私が今24歳だから余計に刺さる部分もあると思うんですけど。すごいポジティブな志向がつまってますよね。
向井 - まさになんですけど、この曲は僕自身の過去と現在と未来の全てを歌っている曲で、僕が音楽をしていて良かったなと思うのは人とのつながりを常に感じられるっていうのが一番の収穫だと思っていて。曲を作るのもそうだし、リリースするのも、ライブできるのも誰かが必要で、いつも感じてる人との絆とか、嫌なことがあってもそれが自分の力になって、現在がある。その先にある未来ってすごく楽しみだなっていう24歳の自分の思いをこの曲にぶつけてます。
河嶋 - 24歳の向井さんにしか書けない曲ってことですよね。自分に重ねて聴いちゃいますね。ぜひEPを聴いてもらいたいですね。向井さんは今後音楽以外でもいいので、今後これをやってみたいなというものはありますか?
向井 - 一番やりたいことというか、最近やったことで新鮮だったのは映像にモデルとして出演したことですかね。それが面白かったですね。やっていないことをどんどん今後もやっていきたいですね。
河嶋 - 演技とかはいかがですか?ライブでも表情が豊かで。
向井 - やってみたいですね、台詞ってやったことがなくて。それはなんか勉強してみたいなっていうのは。ライブも実は演技ですけどね、ははは(笑)
番組情報
FM802 『LNEM-エルネム-』 月曜〜土曜 深夜3:00〜5:00
6名のDJが日替わりで担当する2時間プログラム。火曜深夜(水曜早朝)は "LNEM Groovy Tuesday”として、「夜と朝の狭間を心地いいグルーヴでつなぐ2時間」をテーマにHIP-HOP/R&B/POP/EDMなどのニューリリースをいち早くお届け。
DJ 河嶋奈津実
10月29日生まれ 奈良県出身。1970年代のFUNK、1990年代のHIP-HOP、2000年代のR&Bなどに影響を受け、現在はブラックミュージックを中心に年代とジャンルを問わず「GROOVYな音楽」を探求中。
Twitter : @ntm_DJ
Instagram : (@ntm_dj)
河嶋奈津実の3月のおすすめアルバム
1. FKJ - 『French Kiwi Juice』
2. Ill Camille -『Heirloom』
3. Drake - 『More Life』
4. Smino - 『Blkswn』
5. Chloe x Halle - 『The Two Of Us』