ナチス・ゲッベルスがユダヤ人カメラマンに向けた「ヘイトに満ち溢れた目」のポートレート写真
1933年9月『LIFE』誌のフォトグラファーであり、フォトジャーナリストの草分け的存在アルフレッド・アイゼンスタットはスイス・ジュネーブに渡り国際連盟をドキュメントした。
1933年のドイツはナチ党党首のアドルフ・ヒトラーが大統領よりドイツ国首相に任命された歴史的な年である。選挙でも大勝利し、ユダヤ人の書いた書物を押収し、焼き払った。
もちろんそのナチス大躍進の影にいた政治家がプロパガンダの天才ことパウル・ヨーゼフ・ゲッベルスだ。彼が青年の頃から抱いていた反ユダヤ主義はのちのホロコーストなどに繋がった。
一方写真家のアルフレッド・アイゼンスタットは1898年にドイツ生まれたユダヤ人だ。1928年頃から写真家として活動し、1935年頃にドイツで反ユダヤ主義が広まるとアメリカに移住し、『ライフ』誌のカメラマンとして活動した。
1933年に開催された国際連盟の会合の取材でアイゼンスタットはゲッベルスとレンズ越しに対面する。最初、アイゼンスタットに対してゲッベルスはフレンドリーに接し、数枚の笑顔の写真や、彼が一人でたたずんでいる場面を撮影することに成功した。
しかし、アイゼンスタットがユダヤ人であることを知った後のゲッベルスのポートレイト写真は憎しみに溢れ、その後「憎しみの目」と呼ばれる世紀の写真となった。
その時のことをアイゼンスタットは以下のように回想している。
彼は憎悪に満ちた目で私を睨みつけ、私がすくみ上がるまで睨みつけた。。しかし、私はすくむことはなかった。よくその時のことを聞かれるが、もちろん良い経験ではなかった。しかしカメラを持っているのは私だ。恐れなど知ることはない。
「権力という激しい傲慢さが善きユーモアという偽善で取り繕いられていたことをアイゼンスタットのフィルムは明らかにした」とLIFE誌は評している。
アルフレッド・アイゼンスタットは第二次世界大戦後、日本の降伏が伝えられた1945年8月14日、タイムズスクエアで水兵と女性がキスをする写真を撮影し「20世紀の米国を語る一枚」を撮影したフォトグラファーとしてして知られている。(昨年、この女性が92歳で肺炎のために死去した)