誰よりもスタイリッシュな男は家を持たない?ドキュメンタリー映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』
ミニマル主義が進む中、『365日のシンプルライフ』等それを加勢するドキュメンタリー映画も増えてきている。そして今年も新たにシンプルな生活を好む男を捉えたドキュメンタリーが公開されるのだが、これがまた異色過ぎる。
1月28日に公開する『ホームレス ニューヨークと寝た男』
この色男Mark Reay(マーク・レイ)は、元ランウェイモデルでありながら現在は名の知れたファッションフォトグラファーとして、NYを拠点に活躍中である。
現在は57歳、この映画は彼が2008年から2014年の約6年間をホームレスとして過ごしていた時の事を描いている。
オーバーフィフティでありながら、今でもモデルの仕事も受けているほどのイケメン。マンハッタンを闊歩する姿は高級そうなスーツを着こなし、白髪のオールバックが非常にセクシーだ。しかし、彼はその見た目からは想像もできない程のミニマリストなのであった。
そう、彼はなんと家を持たない「ホームレス」。ビルの屋上を“我が家”として生活しているのだ。彼は自由を追求しすぎた結果、家を持たないという選択をしただけなのである。なので、ジムにも通ったり朝は素敵なカフェでご飯を食べたり、快活な生活を送っている。
彼の持ち物は通っているジムのロッカー4個分、そこからスーツを引っ張りだし、ジムのシャワールームや公園のトイレで身なりを整えてから毎日街へと繰り出しているのだ。しかも、そのスーツのアイロンがけもしっかり怠らない。
しかし、Mark Reayのその世捨て人的な生活の背後にあるメンズモデル界、そしてファッション業界の厳しい現実が垣間見える時、怖いものなしに見える彼の弱い部分が我々の前に姿を現すだろう。
この前代未聞な家なし人を捉えたのは、今作が初の長編映画監督作となるThomas Wirthensohn(トーマス・ヴィルテンゾーン)だ。
彼もまたNYCを活動拠点とし、pierre cardin(ピエール・カルダン)やFacebookなどの企業プロモーション動画を手がけてきた。
監督だけでなく、写真家としての顔も持つThomas Wirthensohnは、自身の旧友である色男と夢を追う街、NYを魅力的に映す。
映画は1月28日より、ヒューマントラストシネマ渋谷をはじめ各都市で公開予定だ。
映画の邦題も含め、映画全体から滲み出る艶やかな雰囲気とは裏腹な屋上生活。孤独を感じさせながらも、それすら笑い飛ばして飄々と生きるMark Reayに人々は羨望するのか、それとも……。
男性なら彼と同じ生活スタイルを、一度は持ちたいと強く思うのでは?
雑誌「エルガール」のオフィシャルキュレーターを務めながら、フリーライター兼モデルとして活動中。映画を中心に、カルチャー全般の執筆を行っている。
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