アーティストエージェントってなに?日本では知られていない仕事についてLeo Diamondが語るPt.2

Pt.1から続く

- NAAFIの場合は?

Leo Diamond - Surefireを通じてだね。かれらがメキシコシティのミュージアムでショーケースをしてたでしょ。NAAFIは北アメリカではSurefireと仕事してたけど、ヨーロッパやアジアなど仕事することになるだろうからって、知り合いに紹介してもらったんだよ。
サンフランシスコで話したんだけど、NAAFIってのは18人位いるんだよね。笑 彼らは「ヨーロッパの市場にリーチするように考えているんだ」って、すごくクレバーで戦略やブランディングを考えてるよ。そういう感じで近くなって、今や世界中が夢中になっているよ。メキシコシティっていうのはKuduloが注目されがちだったけど、クラブミュージックもすごいっていうのをね、みんな注目するようになるよね。ぼくは今後DJ Tetrisをブッキングしたいと思ってるんだよ。Kuduloのレジェンドだよ。けどサウンドはもっと進化したものだよ。こういうチャレンジをするのは楽しいよ。

Leo Diamond - NAAFIはまだまだアンダーグラウンドだけど、日本のフットワークはすごいよね。タイコクラブでFulltono、Aprilと一緒に遊んでウェストコーストツアーをFulltonoと一緒にしようって言ってるんだ。シアトル、ポートランド、サンフランシスコ、LA。Foodman(食品まつり)と一緒にね。彼らの音楽はめちゃくちゃ変なアプローチで、フレッシュだから笑。西海岸はドラムンベースシーンもすごいしBPMもメロディやサンプリングの方法もフットワークとも似てるからね。カモ柄のバンでやつらは乗り込んでくるよ。LAには毎週JUKE BOUNCE WERKっていうレーベルがやってるフットワークを流しているイベントがあってね。 毎週火曜日に彼らのイベントがあるんだよ。クレイジーだよ。サンディエゴやラスベガスからやって来るんだよ。わざわざ。

- メディアに対してプロモーションなどをエージェントがすることはある?

Leo Diamond - 大きなレーベルに所属していないアーティストもいるから、その時は彼らを助けたりするよ。MixmagやFactなんかに情報を流したり。けどそういうのはレーベルがするよね。アーティストがロンドンに行くときはRadar RadioやNTS Radioなんかに出演できるように話をしてみたり。PRエージェンシーが入っているアーティストやレーベルにはそういう事しないよ。そもそもPRなどはぼくの強いポイントではないから。

- 次はどんなアーティストと仕事したいと思っているの?

Leo Diamond - D.J.Fulltonoや食品まつりなんかは本当に素晴らしいと思っているよ。Booty Tuneなんかは歴史もあるし素晴らしいよね。Booty TuneやFulltonoがアメリカやヨーロッパでDJしたら、イベントに違うエッセンスを加えることができると保証するよ。ユニークさと一貫性があるよね。名もないアーティストたちをチェックしてるウォッチリストを持っていて、彼らのSoundCloudを度々チェックしてるんだ。彼らがどのように音楽性を進化させて、プロモーションして、自分のSoundCloudのアカウントを成長させていくか
を見てるんだ。他のエージェントも同じようにチェックしてるからね。誰が最初に手を付けるかっていうのはハラハラドキドキするよ。笑
今は白人の男性のDJが多すぎるから、才能ある女性のDJを探しているんだ。Juliana Huxtableはきっとヤバイことになると思うよ。

- じゃあシーンの地図みたいなものを変えようとしているわけ?

Leo Diamond - クラブシーン自体も変えたいよね。オーディエンスも含めて。SNSは本当にクラブシーンを変えつつあると思うよ。たとえばどこかのクラブが来月のスケジュールをどこかにアップロードした瞬間に「ありがとう◯◯、ラインアップの中に1人も黒人や女性がいないなんて最高だね」みたいに声を上げることができるから。クラブはそういうことを考えなくてはいけなくなってきている。自分のクラブのラインアップがどういう影響を与えて、どういう評判に繋がるということも考えなくちゃいけないから。ソーシャルメディアはダイレクトなレスポンス、もっと言えば収入に関わってくることだから。ソーシャルメディアはいい面も良くない面もあるけど、クラブのことに関してはいい影響を与えているのではないだろうかと思う。

- 他のエージェンシーとの競争は激しい?

Leo Diamond - 自分はビジネスシーンからアウトサイドにいようとしているよ。ぼくは大きなエージェントになろうとは思っていないからね。そういうエージェント同士の競争は激しいよ。毎月いくら稼がないといけないとか。自分のエージェントはぼくと1人だけしかいないから。ぼくが一緒に仕事をしているアーティストっていうのは、ニッチのアーティストばかりだしね。ハウスとテクノのDJと一緒にやればもっとお金は入ってくるんだろうけど。EDMとかをやっているエージェンシーがうらやましく思ったりするけどね。EDMシーンの土台っていうのは本当にしっかりしているし、お金も回っているからね。レーベルもちゃんとしてるし。音楽性はちょっと自分にはキツイけど。ぼくはヨーロッパでMikeQと一緒にヴォーグやボールルームという音楽を根付かせようと、もちろDJ EarlやTraxmanらと一緒にフットワークやジュークのシーンを、RashadやSpinnらと一緒に広げたりしようとがんばってきた。ぼくらは音楽シーンをより、おかしくて、いい意味でクソみたいなものに変えていきたいと思ってるんだよ。分かるだろ、ヴォーグやフットワークやエクスペリメンタルなんておかしくて狂ってるだろ。

Leo Diamond

Leo Diamond - DJ EarlにはFootworkの文化はどういうものかっていうのを教えてもらったね。誰に会うべきだとか。ぼくの音楽の趣味っていうのはそういう出会いみたいなもので出来てるし、仕事は将来こうなるっていうのを予想することでもあるから。ぼくが音楽聴く時は、リスナーや消費者の立場で聴くこともあるけど、もっと統計的に聴くこともある。DJみたいにここにブレイクがあって…みたいな。エージェントとしては、もうすこし社会的な意味なようなものを聴き取るようにしているよ。Juliana Huxtableはエクスペリメンタルなんだけど、人々が聞きたいものをどう提供するかっていうのを考えているよね。ぼくが関わっているアーティストっていうのは自分の考えがすべて反映されたものじゃないけど、ぼくが考える良い音楽の反映にはなっていると思う。いつもアーティストと音楽と社会っていうのを常に意識しているよ。誰がフレッシュで、この社会で意味のあるメッセージを発信しているかっていうことを大事に考えているよ。自分にとって、このビジネスはパーソナルなものだから、誰かがエージェントを去るっていう時は本当にキツいよ。けど初めての彼女が一緒のパートナーっていうことではないということは分かっているだろ?笑 すごく感情的なビジネスなんだよ。人間関係だからね。

- アーティストにアドバイスをすることはあるの?

Leo Diamond - いつもするよ。けどみんな聞かないね笑どんなミュージシャンを探しているかいうと、ということについてもうちょっと言いたいことがあって。音楽の流行の変化のスピードはどんどん速くなっているよね。個人的にはグライムとハウスというジャンルがすごく大きくて、自分の人生を変えたと言っても過言ではない。けどトレンドが移り変わっていくなかで、ぼくは一貫性や、変化にどう対応していくミュージシャンを探している。もちろんレーベルだって同じで。TraxmanみたいなユニークなDJが、自分と一緒に仕事する前はアメリカの外で数回しかDJをしたことがなかったんじゃないかな。

- 一番最近誰と契約したの?

Leo Diamond - Fulltonoだよ。昨日決めたんだ。ただ握手しただけだけど。笑

- エージェントとして一番大事にしていることは?

Leo Diamond - 忍耐強く、そしてある程度のお金を取ってくることかな。そして新しいクラブや人々とのネットワーキングへの興味を失わないことだね。会うべき人に会うべき場所、特に楽屋で会うこと。そういう場所で会うと、ビジネスに繋がりやすいよね。「それはヤバイね、ぜひやろうよ」ってね。一番大事なことはアーティストに自信を持つこと、そうすれば仕事も自信を持ってできるよ。細かいことにも気を掛けることも大事だね。どういうスケジュールで動くか、どういう人に、どういう場所でやってもらうか…など。間違いがなければ、もう一度仕事しようという風になるから。そうすれば、アグレッシブにならなくても上手くいくから。

RELATED

【インタビュー】JAKOPS | XGと僕は狼

11月8日に、セカンドミニアルバム『AWE』をリリースしたXG。

【インタビュー】JUBEE 『Liberation (Deluxe Edition)』| 泥臭く自分の場所を作る

2020年代における国内ストリートカルチャーの相関図を俯瞰した時に、いま最もハブとなっている一人がJUBEEであることに疑いの余地はないだろう。

【インタビュー】PAS TASTA 『GRAND POP』 │ おれたちの戦いはこれからだ

FUJI ROCKやSUMMER SONICをはじめ大きな舞台への出演を経験した6人組は、今度の2ndアルバム『GRAND POP』にて新たな挑戦を試みたようだ

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。