アーティストエージェントってなに?日本では知られていない仕事についてLeo Diamondが語るPt.1
6月に開催されたタイコクラブで来日したシカゴ・ジュークシーンのトップDJ、Traxman。彼が無事来日してプレイをするために細かい調整をおこなうのがアーティストエージェントの仕事だ。日本ではあまり馴染みのないアーティストエージェントだが、欧米ではプロDJならエージェントがつくのは普通。そんな名前だけは知ってるけど、実際なにをやっているかいまいちわからないエージェントの仕事についてTraxmanやNAAFI、NON Worldwideなど先鋭的なアーティストたちと契約をしているAwesome AgencyのLeo Diamondに渋谷のタイ料理屋で語ってもらった。
写真/翻訳 : 横山純 取材 : FNMNL
- どうやって音楽シーンに入ったの?
Leo Diamond - スウェーデンからベルリンに、グラフィックデザイナーとして仕事を得ようとやって来たんだ。でもあまりうまく行かなくてね。当時付き合ってた彼女、今では妻だけど、彼女はデトロイトから来ていてね。あるクラブのオーナーがぼくら2人共デトロイト出身と勘違いして、DJをさせてくれることになったんだ。そこからめちゃくちゃ連絡してね。Abletonをダウンロードして使い方を付け焼き刃で学んでね。「ぼくらはデトロイトでは結構有名で…」とか言ってたら、5週間のレジデントを務めることになっちゃって。それでそのクラブでオーナーの彼と一緒に働くことになって、エージェントを彼と一緒に始めたんだよ。
- いつAwesome Agencyを始めたの?
Leo Diamond - 1回Awesome Agencyの活動をやめてもう一度始めたんだ。2009年にベルリンで友達と一緒にクラブを経営してたんだ。Reebokがスポンサーになってくれててね。小さいクラブだし、有名でもなかったから大物アーティストをブッキングすることはできなかったんだ。ブッキング出来たとしても、契約してからホテルをアップグレードしてくれなかったらキャンセルするよって言われたり。そこでいつも衝突があったんだよ。で、クソ野郎ってなってね。自分たちでエージェントをはじめようってなったんだよ。初めてブッキングしたアーティストはCobra Kramesで2009年当時BMOREシーンで有名なやつだったよ。かっこいいよね。
- Diploがシーンに関わっていたときだね
Leo Diamond - そうそうDiploが当時BMOREのMixtapeとか出してたよね。で、ぼくらのエージェントはUSのアーティストがヨーロッパをツアーするっていうのを助けるようになったんだよ。USのやつらの連絡先を結構知ってたしね。けどぼくらは「どのアーティストが今後ビッグになるのか」っていうのは全然わからなかったんだ。で、ぼくらがどうしたかっていうとResident Advisorをチェックしてね、ミックスが上がるでしょ。そのトラックリストをチェックするんだ。それらを全部データベースに入れて、どのアーティストの曲がよくミックスに入ってるかどうかっていう数値を計算するんだ。
- めちゃくちゃ科学的だね
Leo Diamond - 当たり前だろおれはドイツ人だぞ笑 めちゃくちゃかしこいやり方だと思ってね。それでMikeQを見つけたんだよ。BokBokやKingdomがMikeQをミックスに入れはじめててね、名前がどんどんミックスで出てきてね、トラックをチェックしてみたら「めちゃくちゃクールじゃん」って。よし連絡しようってなったわけだよ。今のところMikeQが一番長く契約しているアーティストなんじゃないかな。で、その時彼はニュージャージーを出たこともなかったとかそんなんじゃなかったかな。ベルリンまで来てもらったんだよ、2週間のヨーロッパツアーをしてね。毎日バーガーキングだったよ。笑 めちゃくちゃかわいいやつで、いいやつだよ。で、彼が尋ねるわけだよ「どうしておれをブッキングしたんだ」って。「最高だからだよ」って答えたよ笑。2009年にエージェントを始めて、2015年にSurefire Agencyに入って
- SurefireはBokbokなどと契約をしてるよね
Leo Diamond - そうそう、HyperdubとかブリストルのダブステップのアーティストのUSツアーとかをしてて。彼らと一緒に仕事をするっていうのは、パーフェクトな出会いだよね。だけど彼らが考えているアーティストとは、ちょっと違う新しいアーティストをプッシュしてたから、あんまりうまく行かなくてね。「彼はちょっと違うんじゃないか」とか「もっと儲かるアーティストを」みたいなね感じで、お互いのフラストレーションが溜まってね。そこで12月に別れることになったんだ。そしてもう一度Awesome Agencyを始めることになったんだ。1年位一緒にやってたのかな。いろいろ学ぶ機会になったね。データベースの使い方みたいなものも学んだよ。それからJuliana HuxtableやDJ Marfoxと仕事をするようになったのかな。
- エージェントとしての一日どう過ごすかを教えて
Leo Diamond - それは1日というよりは1週間どう過ごすかっていう答えになっちゃうけど、いいかな?クラブミュージック産業にいる人は大抵月曜日は休みだよね。プロモーターにとっての日曜日みたいなもんで。月曜日になると200件のメールが来てる。ぼくはこれまでは1週間休みなしで働いていたけど、そうしてたらおかしくなっちゃう。だから金曜日の午後6時になったらパソコンを閉じて、月曜日になるまで開けないっていうルールを作ったんだ。もし重要なメールがあればその時は返したりもするけど。プロモーターっていうのは普通の仕事もしてるから、週末にしかメールできない。それは仕方ないことだけどね。そして銀行口座のチェックでしょ。そしてそのお金をアーティストに送金したりと、それだけで月曜日っていうのは終わっちゃうね。火曜日はメールを送る日だね。火曜日は逆にメールに返信はしないね。何ヶ月後にこのアーティストをこの地域をツアーしてもらいたいからこの人にメールを送ろうとか、そういう感じだね。どのプロモーターがいいかなぁとか考えたり。水曜日と木曜日はメールに返信する日だね。金曜日は電話の日。大事な事や話さないといけないことは全部金曜日に当てたりするよ。もちろんちょっとしたメールはその合間合間に返したりするよ。金曜日は素敵なプロジェクトについて話し合ったり、そういうチリンな日だよ。
Leo Diamond - 要はぼくの仕事っていうのはemailをすることだよ笑。ぼくはemailが好きだね。手紙を書くより全然マシだよ笑 昔は契約書なんかを手書きで書いて送ったりしてたんだからね。2週間くらいかかるんだから。あとはFacebookでのおしゃべりに費やしてるよ笑 だれがクラブのプレイ動画をアップロードしたり、フライヤー画像をアップロードしたら「おれここに行ったことあるよ」とか、そういうことだったり笑。 プロモーターに対しては「だれかが動画をアップロードしてたのを見たんだけど、うちのアーティストの情報を流したいからメーリングリストに登録させてもらってもいいかな?」なんてね。まあすぐに購読解除されてしまっても、まあフィットしないって思ったんだから仕方ないけど。
- いつ新しいアーティストをチェックしたりしてるの?
Leo Diamond - 何もすることが無い時だよ笑。
- そんな時間あるの?
Leo Diamond - もちろん。1月みたいなヒマな時にするよ。ほとんどのアーティストもプロモーターもクソ忙しい12月の後は疲れきってるからね。クリスマスや年越しとかで。1月はみんなあんまり飲まないからイイ子になるからね。最初の数年はRAなんかのミックスのトラックリストから新しいタレントを探してたけど、今は契約しているアーティストの曲を聴くだけでもう大変。彼らのトラックのカタログを聴いておかないと、アーティストと話した時に分からなかったりしたら大変なことになる。気まずいでしょ、もし彼らの新しいEPの名前が分からなかったりしたら… 笑
もちろんそういう事もあるよ笑 けどそういう曲や新しい音楽性みたいなものを理解していなかったら、いい仕事もできないからね。しかもアーティストのプライドを傷つけることにもなってしまうから。リスペクトされているっていう気持ちって大事だろ。そうしてると彼らの曲の中に聞いたことのないアーティストの名前が入ってくることがある。「最近君がリミックスした彼女は誰なんだい?」なんて聞いたりしてね。MC Bin Ladenっていうアーティストをその中で見付けたり…。Rushmoreとはこの先の展望のことをよく話するよ。かれはすごくクレバーで、マーケティングのセンスもあるんだ。そういえばRushmoreはスニーカーを出したよ。プーマと一緒になって。
- 何人くらいのアーティストのエージェントをしているの?
Leo Diamond - 時によるけどだいたい20人くらいで、それが最大だね。けどその中にはこれからのアーティストなんかかもいるよ。Red Bull Music Academyは、すごく小さなシーンやこれからのアーティストをサポートしてるから、Red Bull Music Academy Radioなんかを聴くようにしてるね。その中に「なんだこのアーティストは?」っていうのを見つけることが出来るからね。そういうアーティストと何かやろうぜって感じで。
- そういうタレントを発見したらどうするの?
Leo Diamond - とりあえずその街にいる知り合いに連絡して、その人について聞いてみるね。「このアーティスト聴いたことある?知ってる?」みたいなことを聞いてみるね。こっからは性格っていうことが大事になってくるからね。で、仕事を始めるまでにお互いの事が気に入らなかったらもちろんそれから一緒にやることはないし。Juliana Huxtableなんて電話して、3時間しゃべった後、その次の日にブッキングを決めたりしてたからね笑
- どうやってアーティストとビジネスをはじめるの?
Leo Diamond - 最初はいろんなプロモーターに話をしてみるね。こんなアーティストがいるんだけど…って。みんな個人的に自分の考えとかを理解してくれてるプロモーターだよ。お金があるイベンターに先に話を持っていくってこともないね。同じようにフェスにブッキングするにしろしっかりコンセプトがあるUNSOUNDなどに話を持っていくよ。