Baauer、"Harlem Shake"の栄光と呪いを振り払い完成した、渾身の最新作について語る
LuckyMeよりアルバム・デビュー作『Aa(ダブルA)』の詳細を発表したBaauer(バウワー)が、「Harlem Shake(ハーレム・シェイク)」の誕生〜大ヒットによる苦悩、そして最新作の制作に至とるまで、自身の音楽人生を振り返りながら、米Rolling Stons誌に胸の内を打ち明けた。その記事を一部抜粋しながらご紹介する。
先日、米人気音楽番組「The Late Show with Stephen Colbert」にて初テレビ出演を果たし、ダンス・ミュージシャンのわざとらしい演出に違和感を覚えた数日後、NYCブルックリンはBushwick地区に3年ほど住んでいるBaauerは、近所の名レコード屋Superior Elevationで音源漁りをしていた。ソカのダンス・コンピや、Bernard Herrmannのサウンド・トラック、ゴスペル・グループClark Sisters、古くさいジャケのレコードなど、適当に選んではニヤッと笑みを浮かべていた。
サンプリングに使えそうな面白い宝(音源)に出会えないかなって、いつもここで探してるんだ。
フィラデルフィア生まれ、コネチカット州とロンドン育ちのBaauerは、父親のSteely Dan、Paul Simonやジャズなどのレコードを生まれた時から聞いて育ってきた。「 僕はいつも学校のバンド部に所属して、毎年違う楽器を演奏してたんだ。一つの楽器に熱心になって習得するってことができなかったんだよね。ジャズバンドでサックス、それからチェロにクラリネット。すべての初心者レベルは体験したよ」。だが、熱中できず長続きしない彼にも終わりが来た。クラスメートが音楽制作ソフトをくれたことをきっかけに、当時13歳だった彼はビートを作り始めたのだ。
2007年には、オーディオ・テクノロジーを勉強するためにNYCへ移住。その頃から、ヒップ・ホップ・ビートやうねるシンセを駆使した音楽を作るようになり、やがてレゲトン・アーティストHéctor DelgadoとPlastic Littleのボーカルをサンプリングした、あの伝説的バイラル・ヒット曲"Harlem Shake"が誕生した。
「"Harlem Shake"はうれしい偶然によって出来たもので、そんなに時間はかからなかったんだよね」。そう語る彼は、当時聞きたい人がいれば、とにかく配って歩いていた言う。そして、最終的に彼が憧れるDJ、RustieとJackmasterの手元に渡り、さらにはRinse FMでも流された。「 最高の気分だった。だけど理由はないけど、あの曲がそんなクレイジーなものだなんて考えてなかったよ」
"Harlem Shake"をフリー・ダウンロード・リリースしてから約半年後、Baauerと同じ大学でコミュニケーション科を専攻していたFrankとその3人の友人たちは、パワーレンジャーやエイリアンなどの派手な仮装を身にまとい曲のブレイク部分までひたすら踊っている面白ビデオを撮って公開した。このおふざけ動画は瞬く間に広がり、Jimmmy FallonやT-Painの耳にまでも届き、まさかの一世を風靡するにいたった。
このバイラル・ヒットは、Baauerを一躍トップ・アーティストにのし上げてくれものの、異常なる流行に当時23歳のBaauerは嫌気がさしてしまったそうだ。1年前までフリーで配り歩いていたものが、突然ビルボード・チャートのトップにまで君臨したものの、Baauerはこう言う
ダサいし、うざったいし、最悪な存在になっていったんだ。おまけに僕の名前も一緒にくっついていたしね。
「急速」と「不可避」というこの二つの言葉は、彼にとって異常なるバイラル・ヒットを巻き起こした"Harlem Shake"を意味するものとなった。しかし、一生そのしがらみに捕われるのはいやだという強い思いが、彼を自由にさせてくれたそうだ。「Harlem Shakeによって得たチャンスはプライスレスだけど、実際どれだけの収益があったか全くわからないんだ」と彼は言う。彼の収益に関する問題は解決したが、ともかく、至る所にはびこるその曲のおかげで彼はお金で買えない絶好のチャンスを得る事が出来たのだ。"Harlem Shake"がバズりはじめた当初、M.I.A.が一行だけの謎めいたメッセージで一緒に曲を作りたいとメールしてきた出来事のような。
「M.I.A.に返信したんだけど、その時は何も起こらなかった」とBaauerは言った。それでも、彼は彼女のいるロンドンへ"Harlem Shake"のしがらみからにげるためにも旅立った。そして、BauuerはM.I.A.とのコラボレーションに漕ぎ着け、琴の弦をはじく音をフィーチャーした新曲"Temple"を、先日ついに公開した。
"Harlem Shake"の成功を繰り返すよりも、さらに変わった曲を作りたいって気持ちにあの曲にはさせられたんだ。
変わった要素でいっぱいで、Baauerのお気に入りであるデビューアルバム『Aa』は、M.I.A.とのコラボ曲だけが特別というわけではないようだ。なぜならば、Pusha TとFutureが参加したGrimeとTrap要素を含んだ"Kung Fu」"やギターの音をフィーチャーし、新開拓したトラップ"Way From Me"など、興味深い新曲揃いなのである。
"Harlem Shake"による有名人の洗礼を受けたBaauerは、最後にこう語る。「四六時中注目されながら生きているKanye Westを見ていて、一体どんな人間がそんなことに耐えられるんだろうって想像もつかないよ。その体験をほんのちょっとしただけで、僕はもうお腹いっぱいだね」と。
そしてBaauerは「Kurt Cobainがどんな気持ちだったかよくわかるよ」とニヤッとしながら締めくくった。
Via Rolling Stone