ISSUGI & GRADIS NICE 『DAY and NITE』リリーススペシャル企画 Vol.1 インタビュー - ヒップホップ・東京・リアリティ -

FEATURED  2016.11.02

MONJUや、SICK TEAMで活動するDOWN NORTH CAMPのラッパーISSUGIが、NY在住のビートメーカーGRADIS NICEが全曲プロデュースを行ったアルバム『DAY and NITE』を本日リリースした。常にブレることなく、自身のヒップホップ観を掲示してきたISSUGIは、今作ではGRADIS NICEによるメロウでありつつスケールの大きいタフなビートの上で、東京に生きる日常をラップしている。『DAY and NITE』には東京という大都市で生きる1人のラッパーが、しなやかに街を動き続けていく、力強い足跡が残されている。

アルバム『DAY and NITE』はどのようにGRADIS NICEと共に制作されたのか、そしてISSUGIが感じるヒップホップのリアリティーとは。NYのGRADIS NICEも参加して話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎 取材協力 : P-VINE RECORDS

- 今回のアルバム『DAY and NITE』はGRADIS NICEさんと2人で制作したものですが、どのように進めたのですか?

ISSUGI - 基本的におれがGRADIS NICEからビートを送ってもらって、その中から自分が気に入ったものをチョイスして、声を乗っけて送り返すっていう感じですね。

- ビートはどれくらい聴いたんですか?

ISSUGI - 聴いたビートは60前後って感じですかね。その中から良いと思ったものと、今回の自分が作りたいカラーに合わせていったって感じですね。

- 前からISSUGIさんのインタビューを読むと色とかカラーとかがよく出てくるんですが、今回のカラーはどんな感じですか?

ISSUGI - 今回はおれはシンプルなものを選んだつもりですね。

- GRADIS NICEさんから見てISSUGIさんが選んだビートはいかがでしたか?

GRADIS NICE - 結構予想外でしたね。自分が想像していたのとは違うのが返ってきたから、面白かった。

- 制作で悩んだりした部分はありましたか?

ISSUGI - 今回は特にないですね、GRADIS NICEも作ったビートを送るっていう作業だったんで、特になかったんじゃないかな。

- 新しく今回のために作ったビートもあったんですか?

ISSUGI - どうなんだろう、新しく作ったやつとかもあった?

GRADIS NICE - 何曲かはあった。でも全体の中から良いやつを送った感じ。

- 今作のタイトルが『DAY and NITE』で曲のタイトルも朝から夜って流れがありますよね。朝っぽい曲は実際にリリックも朝にできたりするんですか?

ISSUGI - そういうのは特に関係ないかもしれないですね。そういう時の感情を覚えていて、書く時は全然バラバラもあるかもしれないですけど、リリックは夜に書いているパターンが多いかもしれないですね。

- 夜どういうときに書くことが多いですか?リリックはノートに書くんですよね。

ISSUGI - 基本的にノートを持ち歩いているんで、いつでも書いてるっちゃ書いてるんですけど、ビートを聞きながら思い浮かんだら外とかでも書いてますね。

- 今回GRADIS NICEさんと一緒にやってみようと思ったのはどうしてなんですか?

ISSUGI - もともとGRADIS NICEのビート自体は好きで、今までも何回もやってるんですけど、多分GRADIS NICEってラッパーと1枚丸々やったことってそんなにないよね?

GRADIS NICE - そんなのないないない。

ISSUGI - そうだよね、なさそうだなと思って、おれは1枚同じプロデューサーで作るの好きだったから、ちょっと1回作っておきたいなって感じで作りましたね。

- GRADIS NICEさんはISSUGIさんからオファーを受けてどうでしたか?

GRADIS NICE - へへへ、じゃあやろうみたいな感じで。

ISSUGI - ははは(笑)

GRADIS NICE - でもマジでこんな感じやったよな、多分。

ISSUGI - いや全然普通にこんな感じだね。やろうやろうみたいな。

- それがいつ頃ですか?

ISSUGI - それがいつ頃か覚えてないんですけど、SCRATCH NICEとのアルバムが出た2~3ヶ月後くらいでしたね。

- SCRATCH NICEさんとアルバムを作ったときはNYも行かれてたじゃないですか。今回は特に行かずに。

ISSUGI - そうですね。今回のアルバムは、行って作りたいって気持ちもなかったんでGRADIS NICEのビートをもらってコッチでいつも通り作ってましたね。ここに住んでる日々の事や、そういうことを歌おうと思いました。

- 東京の街が似合うアルバムというか、1人で街の中にいるんだけど、いろんな人が周りにいるっていうのがわかるっていうか。

ISSUGI - 自分の普段っていったらあれになっちゃうんですけど、今回は特にそういう感じが多いと思いますね。

- それはGRADIS NICEさんのビートでやるんだったら、こういうテーマでやりたいっていうのがあったんですか?

ISSUGI - ていうのは特にないですね。GRADIS NICEのビートを聴くと、どんな感じだろうな。でもそう言われるとGRADIS NICEのビートは外に出かけたくなるビートかもしれないですね。なんて言えば良いんだろうな(笑)。

でも家で寝てるビートじゃないんですよね。GRADISのビートは寝るときに聴くビートじゃないと思うんですよね。聴いたら乗っちゃうビートで、ラップしたくなるし、むしろライブもしたくなりますね、ははははは(笑)。さっきも言ったんですけど、ビートのノリがでかいんですよね。破壊力あると思うんですよね、ズドンというか。話してるとなんの質問か忘れちゃいますね、なんでしたっけ(笑)

- 東京の街を意識してるっていう部分ですね。

ISSUGI - 自分では意識はしてないですね。毎日東京にいるので。でも今回地方でライブやって帰ってきたときの、あ、「東京のにおいだ」っていう気持ちとかを、Mr.PUGとやってる曲でも入れたりしてて。

- GRADIS NICEさんはISSUGIさんのビートに対する評価に対していかがですか?

GRADIS NICE - いやあ、ありがとうしかないですね、ほんとに。あんまり人に聴かせることないので。恥ずかしいねん、めっちゃ。

ISSUGI - らしいんですよ、あんな豪快なビート作っておいて恥ずかしいとか言って。謎ですよね、そこに関しては、ははは(笑)絶対違うでしょ。

GRADIS NICE - マジでなんか恥ずかしいねんな、人に聴かせるの。ISSUGIくんに送るのとか、めっちゃ頑張ってるからおれ。

ISSUGI - マジで?無用だよ、その心配。

- 今回Interludeで丸々インストだけの曲もありますよね、個人的にあのビートがとても好きなんですが、あれを入れようと思ったのはなぜですか?

ISSUGI - おれもすげー好きです。あのビートをどこの段階で入れようと思ったかは忘れちゃったんですけど、入れたいなと思ってて、GRADISにそれを言ったら、「おれもそれ使って欲しいと思ってたんだよ」って言ってて、だったら尚更入れたいなと思って、元々ラップを入れるつもりはなかったんですよ。それで位置的にもあそこらへんに入れたいなと思って、入れた感じですね。

- ラップを入れたくないっていうのは曲として成立してるからってことですか?

ISSUGI - あのトラックってGRADISが送ってくれたビートで1番音質が悪かったんですよ。

GRADIS NICE - それや、それや。

ISSUGI - マジでエグいノイズが全編入ってて、あれ使いたいっていうおれも結構ヤバいと思うんですよ(笑)

GRADIS NICE - ヤバいよ(笑)ちょっとごめん、でもデータが残ってなくて。

ISSUGI - でもあの音質だから良かったっつうか、あの音質だから入れたくなったっていうのもあるかもしれないですね。

GRADIS NICE - あのビートは最悪でしょ。

ISSUGI - ミックスのときにノイズが減るように調整してもらって、でもそのくせにあのビート使ってほしかったって言ってますからね(笑)

GRADIS NICE - ははははは。

ISSUGI - あとデモについてるタイトルが"Sexo's Way"でそのタイトルも好きだった。そういう感じですね、音質悪くてラップ乗せる気にならなかったのかもしれないですね(笑)でも入れたかった。

GRADIS NICE - すごいな。

ISSUGI - あのビート選ばれなさそうだよね。

GRADIS NICE - 選ばないよ、誰も。綺麗にミックスしてたら良かったんだけど、おれもあれはああいう使い方しかできひん。

ISSUGI - ベストな使い方だったでしょ(笑)

- あのインタルードからクライマックスに繋がってる感じがすごくして、その次の曲も派手じゃないですけど、高揚感があって。

ISSUGI - ありがとうございます。あのビートもすごい好きで、最初GRADISがSoundCloudにあげてて、使いたいんだけどって連絡して。

- フィーチャリングのアーティストについて聞きたいんですが、Besさんが入ってるのが印象的でしたが。

ISSUGI - そうですね、ビート聴いてて今回Besと1曲やりたいなっていうのは漠然と感じてて、どのビートでやろうっていうのはなかったんですけど、聴いていくうちに、あのビートでやろうって固まっていった感じですね。

- 他の曲に関してもビートを聴いていくうちにイメージが浮かんでくる感じなんですか?

ISSUGI - 個人的な視点なので呼ばれた人間がどう思ってるかはわからないですけど、自分の中での直感はありますね。自分がその人を見たり聞いてきたりした中で音楽感というか趣向がわかってくるじゃないですか?

こういうビートが好きなんだなとか、こういうビートでやってる時ヤバいなとか、それで自分のアルバムに誘う時は、こういうビートでやって欲しいなというのが、自然と思い浮かぶし、見えてきます。

- やはりイメージはとても大事なんですね。

ISSUGI - そうですね、おれの場合はイメージを形にするだけっていうのもあるので。頭にあるものをモノにするっていうか。

- ちなみにBesさんはISSUGIさんの中でどんなイメージですか?

ISSUGI - Besはラップめっちゃうまいですよね、リズム感もすごいし。すごい良いラッパーだと思います。言葉も面白いし。あとビート選びも良いとおもいますね。自分より年が4つくらい上なのもあって、俺がリアルタイムにまだ聞けてなかったEasy Mo Bee(Biggieの1stとかのproducer) とかそこらへんのプロデューサーのノリも超わかってて、Besの中にそのノリが有るんですよね。おれが自分のビート聞かせると日本人だと敬遠しがちな厳かな重たいビートとかも、「これヤバいよ」とか反応してくれてそういうのが嬉しいです。BesとMalikでやる時が特に好きです。

- 前のアルバムリリースの時のamebreakのインタビューでノリは1人じゃ作れないって言ってましたが、今回もそれは変わらないですか?

ISSUGI - あの時言った意味とまた違うかもしれないですけど、ヒップホップ自体が1人のノリで形容されるものじゃないと思ってるから。それがそういう言葉に繋がってるというか。ヒップホップってクルーだったり価値観の共同体みたいなところがあるじゃないですか。おれもずっと前からラップやってて、最初は東京の限られた人間、例えばダウンノースっていう友達とやるなかで、自分たちのノリを形成していったと思うんですよね。それからソロアルバムとか出して東京以外でライブやるようになっていったりして、大阪のSCRATCH NICE,GRADIS NICEに会ってあいつらホントNY好きだからNYのかっこよさとか自然に教えてもらって、その友達にEndrunとかK-Flash、DJ Shoeがいて。さらに熊本出身のDJ IMGやRyuhei君と一緒に初めて九州、福岡、熊本とか行った時もここにはこういうヒップホップが根付いてるんだ、いいなと思ったし。そこでFreezさんっていうラッパーがその場所の精神的支柱みたいな感じでずっとやってて地元の皆の気持ちを上げれる人のかっこよさとかもヒップホップだと思うし。松本のMASS-HOLEとかもそうですね。

全部場所場所で持ってる空気感が違うんですよね、でも皆共通してるヒップホップの好きな部分が確実にあって。そうやっていいと思える価値観を共有してお互いにリスペクトできるヤツとまた切磋琢磨してそれぞれが曲作ってライブしてっていうそういう遊びが好きなんですよね。おれが今喋ってるような事は、メディアがすぐ取りあげてくれるような煌びやかな世界とは違うから、そういうのって注目されにくいけど実は、そういうのがヒップホップにとって大事だと思うし忘れちゃいけない所だなって、自分にとっても大切ですね。そういうのをもっと目に見える形にしたいなと最近は思っています。そういう動きが、さらなるいいノリを生み出してくれる気がして。

- 動きっていうのは実際の体の使い方とかですか?

ISSUGI - あ、そういうのじゃなくて、おれだったらMONJUやってて、それとは別でSICK TEAMの活動もあって、新たに知ったビートメーカーと新しく曲つくったり、今年だったら毎月7インチ出してみたり、それでいろんな街でライブやってとか。最近だとCarharttとかNixonとかが協力してくれて自分だけじゃ届かない人や、自分を違う角度から見せてくれたりするので、それもいい動きをさせてもらってると感じてます。動きっていうのは、ダンスの体の動き方じゃなくて日々の動きですね。活動というか。ヒップホップのゲームが有るとしたら、その中のそいつらのやり方っていうか、その各自の動きですね。

次ページ : バトルに帰還した理由

MUSIC

FASHION

CULTURE