旅するプラカード ロンドンからソウルへ ― ソウルのクラブシーン フォトレポート PART.1

私は7月に自身の写真展開催のためにソウルを訪れた。その時に見たもの、出会った人、そして彼らによるソウルガイドを全5回に渡って紹介する。

文・写真 横山純

この数年、東アジア圏内のアンダーグラウンド・ダンスミュージックシーンでアーティストやオーガナイザー同士の交流が盛んに進んでいる。日本の各都市のクラブーソウルー北京、上海にあるクラブがハブとなり、都市を代表するDJたちがLCCなどの安い航空券を利用してツアーを行っているようだ。

またUKやUKのアーティストも、2週間ほどのうちに東アジアを一巡りするツアーを敢行したりしている。Twitter、SoundCloud、FacebookなどのSNSが文化交流の促進や音楽の同時代性というものに大きな役割を果たしているのは言うまでもないだろう。

私は7月1日から2日間、ソウルで写真展を行った。私が大阪、京都、東京と写真展を行っていた様子をSNSでチェックしていたソウルのDJらが、ソウルでも写真展をやろうと誘ってくれたのだ。

写真展のタイトルは『London, Beyond Hate』。2015年のちょうど今頃ロンドンの路上で撮影していたドキュメンタリー写真だ。グライムアーティスト、熱狂的なサッカーサポーター、ロンドン・プライドパレード、レイシストへのカウンタープロテストなど、様々な種類の現場で声を上げる人たちを撮影し、その写真を数十点展示した。
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ロンドン・プライドパレード

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Clapton Ultras (イギリスの9部リーグClapton FCのファングループ/アンチファシスト/反レイシズム/反ホモフォビアを掲げ、ホームレスのサポートなどを行っている)

MIC TY

グライムMCのMic TY。Deja Vu FMのイベントで撮影

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ロンドン・プライドパレードで撮影した写真に映っているプラカードに「Korea Queer Culture Festival」という文字書かれているのが見えるだろうか?ロンドンの街で掲げられたこのプラカードは遠く東京からやってきた。2015年6月に開催されたKorea Queer Culture Festival、そしてソウル・クイア・パレードは保守層からの妨害に会い、開催が危ぶまれていた。このプラカードは、その妨害に対して抗議し連帯の意を表明しようと東京のグループ「Tokyo No H8 (Hate)」によって作られた。ロンドンの"Lesbians and Guys Supports the Miners"(映画『パレードへようこそ』の主人公たち)がそのムーブメントをFacebookで知り、「そのプラカードをわたし達もロンドンで掲げよう」ということになった。ロンドンにいた私は東京から連絡を受けて、プラカードが掲げられる様子を撮影するべく私はロンドン・プライドパレードにカメラマンの一人として参加させてもらった。このような経緯から、私の写真はソウルに縁がある。そして一年越しにロンドンで撮影された写真は、その始まりの場所ソウルへ旅をすることになった。

今回の写真展を開催してくれたのは"Phantoms of Riddim"というDJクルーたちだ。彼らはソウルで積極的にUKからアンダーグラウンド・ダンスミュージックシーンのアーティストを招き、ソウルで一番エネルギッシュなクラブCakeshopでクルー名と同名のイベントを開催している。メンバーはQuandol、Von Bueno、Cong Vu、DJ Soulscape、Mood Schulaの5人。海外のアンダーグラウンドシーンのDJがソウルに来たら、まず彼らに出演の声が掛かる。ソウルのアンダーグラウンド・クラブシーンに欠かせないDJたちだ。彼らは2015年に虎子食堂にて、自身らが韓国に招いた「フューチャー・ラガ」伝道師ことPart2Style、音楽評論家の大石始たちと「Phantoms of Riddim in Tokyo」を開催している。また今年は日本を代表するJuke/Footwork プロデューサーのDJ Fulltonoを招くなど、日本のアンダーグラウンド音楽シーンのアーティストらとも多くの交流がある。

fulltono

私の日本に住む友人たちもソウルのクイアパレードに参加し、その保守層の酷さを私に教えてくれたりしていたが、写真展を開催してくれるDJたちも口をそろえて「韓国もこういうヘイトがものすごく広まっている。だからソウルでも写真展をしたい」と写真展の意義を教えてくれた。自分の写真展について何も説明もしていないのに、TwitterやFacebookのポストを見て、写真や意義などをすでに知ってくれていて、準備までしてもらえるのは本当に幸運なことだ。
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pistil

今回2日間の写真展と共に、その写真展の名前を冠に付けた"Phantoms of Riddim: London, Beyond Hate"というイベントをCakeshopにて開催してくれることになった。写真展の場所はCakeshopの姉妹店の「Pistil(ピスティル)」。CakeshopはUKやUSなどアンダーグラウンド・ダンスミュージックの最先端が流れ、エネルギッシュな若者がこぞってやってくる場所であるとするなら、それとは対照的にPistilはテクノやハウスを中心としたDJがメインでプレイする。ここはもう少し年齢層の高い人達が踊りにくる場所だ。100人ほどのキャパシティのPistilはコンパクトながらも落ち着いた内装で少し特別な気分になれる。CakeshopとPistilのオーナーも私の写真のことをSNSを通じてすでに知っていたようで、快く場所を使わせてくれたた、と聞いた。
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次回以降、韓国での写真展とイベントのレポート、ソウル在住のミュージシャンらによるソウルトラベルガイドなどをお届けします。

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