【ライブレポート】JJJ 『July Tour』| 思いの全てが溢れた2時間

JJJが7/11(木)にZepp Hanedaにて初のワンマンツアー『July Tour』の東京公演を行った。

昨年5月に発表した6年ぶりのアルバム『MAKTUB』において、困難に直面した自身の内面に渦巻く感情をありのままにスピットすることで、プロデューサーとしての才能に比肩するラッパーとしての存在感を揺るぎないものにしたJJJ。その後、各地で行ったリリースライブでも溢れ出して止まらない思いを吐き出し続け、シーン屈指のライブアクトとして、そのステージにおいても新たなフェーズに到達したことを強く印象付けた。

そして、長く続いた『MAKTUB』のモードを締めくくった今年1月のEX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブから今回のワンマンツアー「July Tour」へ。JJJの新たな一歩は果たしてどこへ向かうのか。川崎の地元からほど近い多摩川の対岸に位置するZepp Hanedaをソールドアウトさせたヘッズたちに向けて、選び抜いた最高のヒップホップを届ける16FLIPのオープニングDJからバックDJのAru-2がブースを引き継ぐと、暗転した会場に鳴り響く高らかなホーンのフレーズ。登場したJJJは、今年5月にリリースされた韓国のBLASÉ、Bonberoとのコラボ曲"YW"の自身のヴァースを荒々しく蹴ると、「羽田いこうぜ!」というシャウトから今年1月リリースの"Kids Return"へ。DJ SCRATCH NICEがビートに織り込んだゴスペルの高揚感とラップの力強くポジティブな響き、そこにオーディエンスの無数の歌声が重なることで生まれる会場の一体感は作品のリスニング体験を超越した破格のものだ。

16FLIP(撮影は全て三浦大輝)
Aru-2
JJJ

さらに、ここからライブは誰もが想像しなかった展開を迎える。続く"Synthese Freestyle"ではSTUTSバンドの一員でもあるコントラバス奏者の岩見継吾が加わり、アグレッシブなビートに弓弾きでストリングスのスリリングなフレーズをプレイすると、"Mihara"ではなんと箏奏者の岡村秀太郎と尺八奏者の瀧北榮山が登場。UKロックやEDM、ヒップホップを聴き親しんできた岡村、2018年にジャズアルバム『innocence』を発表している瀧北は共に古典のみならず、現代音楽の表現を模索している音楽家だ。彼らとのコラボレーションは安易に「ヒップホップと和楽器の融合」と呼ばれるものではなく、自身のルーツを深く掘り下げたサン・ラやアリス・コルトレーンに象徴されるブラックジャズがそうであるように、JJJの奥底に流れる日本の情緒性を具現化させる挑戦的な試みといえよう。原曲でドリーミーな箏のサンプルフレーズを用いていた"wakamatsu"、Febbのビートでエモーショナルなラップを極めた"Beautiful Mind"、JJJの叙情性が投影された"Maktub"や"July"など、今回のライブでは箏と尺八をフィーチャーした楽曲が多数披露されたが、CampanellaとJJJがマイクでしのぎを削る"Friendskill"は冒頭の尺八ソロから妖しくディープな世界にオーディエンスを引き込む、この日のハイライトの一つであった。

Campanella

また、このライブでは最新アルバム『MAKTUB』に参加したゲストを軸に、アルバム収録曲のみならず、JJJがプロデュースを手掛けた楽曲やJJJが参加した外部コラボ曲も多数披露された。コントラバスの躍動するグルーヴで増強したビートにKEIJUを迎えた"STRAND"、STUTSのMPCと岩見のコントラバスによるジャムからOMSBをフィーチャーした本編に雪崩れ込んだ"心"、KMプロデュースのダンストラックにCampanellaと相乗りした"Filter"、兄貴と慕うISSUGIと紡ぐ極上のブーンバップ"366247 Remix"。C.O.S.A.とJJJがそれぞれの家族へのひたむきな思いを歌った"Leave Me Alone"、JJJがプロデュースとフィーチャリング、岩見がコントラバスで参加したDaichi Yamamotoのソウルディープな"Find A Way"、MFSとJJJがビートとラップで鋭利な表現を極めた"Mirror"。その全てはとても書き切れないが、歩みを止めることなく、ビート、ラップ両面の更新を続ける近年のJJJワークスが一晩のステージでこれほどまでに凝縮された形で歌われることはそうそうないだろう。

KEIJU
STUTS
OMSB
ISSUGI
C.O.S.A.
Daichi Yamamoto
MFS

2時間の濃密な時間を駆け抜け、MCを挟まずノンストップのパフォーマンスで全35曲 、一切の迷いもなく、真っ直ぐにマイクに向かい、その思いの全てを溢れるままに解き放った迫真のステージでは、"Orange feat. Sticky"、Fla$hBackS名義の"Sour Picture"と"Fla$hBackS"、KID FRESINOを迎えた"2024"、STUTSのMPC、岩見のベースをフィーチャーした"Changes"と、すでにこの世を去った2人の偉大なラッパー、StickyとFebbのスピリットを呼び起こす楽曲も余すところなく披露された。2017年のセカンドアルバム『HIKARI』以降のJJJは、多くのものを失ったが、長い時間、自身を蝕んできた喪失感と向き合い、共存したまま作り上げた最新アルバム『MAKTUB』からそのさらに先へ。尽きることのない彼の創造性は「書かれていない」未来を力強く切り拓いていくことだろう。そう確信させるほどに、この日のパフォーマンスは素晴らしかった。(TEXT:小野田雄)

KID FRESINO

Info

JJJ – July Tour at Zepp Haneda setlist (July 11, 2024)
https://ssm.lnk.to/JulyTour_Tokyo

01.YW
02.Kids Return
03.Synthese Freestyle
04.Mihara
05.Scav
06.July
07.Friendskill feat. Campanella
08.Filter feat. Campanella
09.366247 feat. ISSUGI
10.Cyberpunk
11.Taxi feat. Daichi Yamamoto
12.Find A Way feat. Daichi Yamamoto
13.Mirror feat. MFS
14.Drink feat. MFS
15.Babe
16.loops
17.PLACE TO GO
18.SOUL
19.ORANGE feat. STICKY
20.Jiga
21.Leave Me Alone feat. C.O.S.A.
22.U feat. C.O.S.A.
23.Maktub
24.Something feat. Campanella
25.Beautiful Mind
26.room
27.STRAND feat. KEIJU
28.心 feat. OMSB, STUTS
29.Eye Splice
30.2024 feat. Fla$hBackS
31.Sour Picture
32.Oneluv
33.wakamatsu
34.Fla$hBackS
35.Changes feat. STUTS

OPENING DJ : 16FLIP

JJJ with
DJ : Aru-2
Contrabass, Bass : 岩見継吾
箏 : 岡村秀太郎
尺八 : 瀧北榮山
MPC : STUTS
客演 : Campanella, ISSUGI, Daichi Yamamoto, MFS, STICKY, C.O.S.A., KEIJU, OMSB, KID FRESINO, Febb

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